もう少しもう少しで京都編もクライマックス。
しかし、原作が始まるのは予定ではまだまだ先というやばさ。
現在の進行速度で行くと、原作入るのは四十話~五十話ぐらいになりそうな予感。
座っていたオーフィスが一度立ち上がり、空いた椅子に紫は腰を下ろすとその上にオーフィスが座る。
椅子に座るだけならば足が地面に付いていたのだが、間に自身の娘がいるとなると足は空に浮かぶ。
この光景だけを見るとどちらが母親か娘か分からなくなってしまう。
「せやけど、紫はんはの後にオーフィスはんがいるんやろ?ほなら意見は強制的に賛成やない?」
「その事なら大丈夫です。私は意見を一切出さないので」
「ほんとかい?」
「えぇ。朧花との繋がりを案じているならば、朧花の意見も封じます?」
「いや、ええよ。そこまで言うんなら信じるさかい...けどもしその言葉が嘘やったら覚悟しとき」
「分かっていますよ」
二人は同時に微笑み返す。鬼は八重歯が鈍く輝き、紫は口元を紫の扇子で隠しながら。
なんか、女の戦いみたいだな。怖っ、俺も巻き込まれないようにしなくちゃ。
話を纏まったのを確認するため一度朧花は見回し、問題がないようなのでやっと会議を始める。
「ゴホッ!これでようやく始まるのだが、この会議は妖怪の未来がかかっているものだ。
ここにいる中には部下や自分の種族の事を考えている者も多いと思う。なので、会議出席者には何かしら特別な物を与えようと思う」
「特別?なんだそれ、食えるのか?」
「残念ながら食せない。しかし、それ以上に重要であると考えている......名を与えようと考えている」
眠たそうに欠伸をしていた森は今の発言を聞き机に突っ伏す。「眠ぃ」と呟きながら。
慌てて隣の森を揺すり起こそうとさとりは試みるも、残念ながら寝息を立てて本格的に睡眠に入ってしまった。
「ええんやない。ただ、普通の名前だと他にも名があるもんとかぶるから、数字なんか入れてみる?」
「では、私は一番低い八を貰いましょう」
「うげ!マジかよ狙ってたのに...なら俺は七でいいや」
すぐさま、二人は数字を選択していく。
その後も続々と数字は選択されていき、後日発表されることになった八人の新たな名前が決まった。
スキマ妖怪
八岐大蛇
鬼の総大将
覚妖怪
謎の妖怪
河童妖怪
ダイダラボッチ
総指揮
彼ら総勢八名が後に大妖怪と呼ばれる事になる者達だ。
「と、名は後で考えるとして次に本題に入ろう」
「そういえば何を話すんだ?俺は特にないけどよ」
「うむ、ひとまず現状を確認しよう」
両手を合わせると密閉され風一つ通っていないはずの部屋に、風が舞踊り始め机に上に集合していく。
風は机を小さく微かに何度も何度も削っていきここ一体を上空から見た地図を制作する。
精密な妖力のコントロールが要求されるかなりの高等技術に、鬼の総大将はおもろいなとケラケラ笑う。
「今我々は五つの山を所有している。一つ目が我々がいる山、二つ目が古からの祠がある山、他の三つが逃げてきた妖怪達が住んでいる山。ここまではいいな」
地下で二ー活しているさとりと森はおいて、周りの五人は頷く。
それと童子と巌は古の祠を守るためにその山に住んでいる身なので、他の三つの山については詳しくは知らないがうっすらと知っている。
「最近陰陽師達の勢力が増し、多数の妖怪達がこの山へ避難してきている。そのおかげで山に住みきれない者達が出始めている」
「陰陽師達の勢いの原因は安倍晴明だろうな。昔その姿を見たことがあるがアレは人間と呼べる者ではない。人外の領域だ」
エクエスは昔を思い出し、苦虫を噛み潰したような苦痛の声色で伝える。
ここ京都に初めからいたのではなく東北の方から多数の妖怪と一緒にこの山へと向かっていた。
その途中で安倍晴明の一行と激突。結果は百もいた妖怪が自分を含めたったの三人になるまで祓われてしまったのだ。あの時の光景は目をつぶった今でも思い出す。
逃げようと背を向けてたり、命乞いをしたり。恐怖の象徴たる妖怪達が逆に恐怖し、なんの躊躇いなく祓っていく悪魔のような人間を。
実力は今でも勝てるか怪しい。それほどまでの化け物が人間側にいるのだ、それは勢いづくのは当たり前だ。
「そこでだ住居を拡張しようと思う」
「おいおいそりゃ無茶だろ。この近場にはこの三つの山しかねぇだろ?それともここから離れるのか?」
「いいや。それはできん。何しろ祠があるからこそ我ら妖怪がどうにかここを守護できているのだ。なのに捨てるなど出来るはずがない」
首を横に振りすぐさま否定する。
だろうなと机の背もたれに巌は全体重をかけ、頭を使うのは向かねぇよと天井を見上げる。
予めその反論は予定しており、そのカウンターとしてある方法を語る。
「一つだけ方法がある」
「ほうほうやて?なんやそれ」
「紫、お前の能力スキマのことを話せ」
「それでは話しましょうか。私の能力について」
待ってましたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべながら指を鳴らす。
紫の横に来た時と同じ亀裂が走り気味の悪い謎の空間を見せつける。
「私はスキマを操れるの。これは、お母様の次元の狭間と呼ばれる空間を操る能力の劣化ね」
「次元の狭間?なんですかそれ」
齢二十年のさとりは聞き慣れない言葉に疑問符を浮かべる。
「そうね。別次元と別次元を隔てる壁かしら。例えるならば人間界と天界や冥界の間にある、絶対に交わることのない壁ね」
「壁ですか」
「そうよ。だからお母様は自由自在に別次元へ出入りできるわ。私はその一歩手前、言わば裏世界へ立ち入れる能力と言えばわかる?」
紫が行き来できるのは人間界とその裏の人間界だけであり、能力で別の次元へと渡る事は出来ない。
と、聞くだけなら弱く聞こえるがこの能力は圧倒的に強い。
裏世界に逃げ込めば同じく次元に干渉できる攻撃しか受けず、一度スキマに入れば誰にも妨害されずに人間界の好きな所に行くことが出来る。
妖怪の中では次元に干渉できるのはオーフィスだけであり、他の人外や人間を含めても片手で数えられる程度しかいない。
そのような説明を受けた童子は何をしようとしているのか気づき口を三日月に歪める。
「そのスキマに妖怪を移住させるんやな」
「その通りだ。だが、スキマは到底住める場所ではない。なのでニトリよ、お主の技術力が頼りになる」
「わ、私ですかァァァ!!」
「あぁ。河童の技術力を総動員して、紫の能力を活用しどうにか住める環境を整えて欲しい」
妖怪全土の命運が自分の肩に乗ったのに気づき、途端にプレッシャーに押しつぶされそうになる。
そんな大それたことを出来るはずがない。自分には荷が重いと拒否しようと、下ろしていた頭を上げると深々く頭を下げている大天狗がいる。
縦社会の象徴たりそのトップでもあるプライドの高いであろう大天狗が、自分のような下級妖怪に頭を下げている。その事実は胸を深々く抉る。
「.........時間はかかりますけどいいですか」
「構わない。終わりの見えない道より、終わりの見える道の方が圧倒的に楽だからな。時間がどれだけかかろうと、完成さえすればいいのだ。頼むぞニトリ」
「は、はい!!」
椅子を弾き飛ばして勢いよく立ち上がり、手を頭の横に当て敬礼をする。
緊張からか声は裏返りどんどんゆでダコのように赤く染まっていく。
「して、作戦名はどうする?そう言うのが必要なのだろう?」
「そうだな......幻想の郷、幻想郷...以後この事を幻想郷制作と名付けて行う。異論はあるか?」
満場一致でこの意見は議決され、妖怪の新たな住処の制作が始まっていく。