転生したら無限スタートでした。リメイク   作:暁紅

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無限対人間

 

 

隣の山。この世界にオーフィスとして誕生した時に居た山である。

 

オンボノヤスが守護者として守っていて、あの時の傷から復活し今でも守護者として活躍をしている。

 

が、現状この山に妖怪は一人としていない。理由としては、綺麗に着地を決めた二人を囲んでいる犬型の魔獣達である。

 

緑色の草木に赤い鮮血が所々微かに付いていて、銀色の魔獣達の牙には肉の欠片や赤い血が残っている。

 

─十体...いや百体近くいるのか

 

清明が魔獣の数を察知している中、邪魔だと判断したオーフィスの動きは迅速だった。

 

手の平に魔力を集中させ、地面へぶつける。オンボノヤスを倒した時と同じ戦法だが、今は明らかに違う点がある。

 

それは魔力を制御して放っている点だ。

 

「百体近く居たと思ったんだけどな......まさか一撃なんて」

 

知性の欠片もない、本能だけで殺してきた魔獣には『回避』の二文字はなく、口から尻尾にかけて水平に真っ二つになり、肉が地面へ落ちる気色の悪い音が森を包む。

 

「このぐらい余裕」

「ははっ勝てる気がしないな」

 

笑っているが、そこに先程までの余裕さは無く自分を鼓舞するための笑だった。

 

ゆっくりと右手を背中へ伸ばし布で包まれている剣を持ち上げ前へ移動させ、両手持ちにして体の正面に構える。

 

構えに武術的な何かは無い。明らかに使い慣れていない様子だ。

 

「だとしても、負けると分かっていても、やらなければいけない事があるんだ!封を開けろ、急急如律令ッッ!!」

 

剣を覆っていた布が弾け飛ぶ。そこから現れた剣は不気味だった。

 

塚は黄金を放ち、刀身は波打つようにうねっている。しかし、そこに刃は付いていないのか鈍い銀色が輝く。

 

のだが、オーフィスは直感的に避けなければいけない。そう思い、後ろへ飛び回避をするも僅かに間に合わない。

 

宙を漂う左手がまるで豆腐を切るように呆気なくいとも容易く両断される。奇跡的に骨には掠っただけだが、肉は断たたれ切断面から血が溢れる。

 

「外した...今のを避けるのか」

「なにそれ、なぜ我の腕を切れる?」

 

初めて椛と戦った時は魔力操作など一切出来ず、元の軟弱な生身で戦闘をしてかすり傷を負っていた。軟弱とは言うが、並の生き物より圧倒的な防御力を誇る。

 

その時に比べ今は魔力操作が行えるので防御力は飛躍的に上がっている。例え惑星級の隕石が落ちてきたとしても生きているレベルにはある。

 

それを、刃もない異様な剣は容易く断つ。

 

「君は知らないようだねこれについて」

 

千載一遇のチャンスを逃した清明は距離を離して声をかける。それは既に倒すチャンスを失い、時間稼ぎに徹しているに過ぎない。

 

「知らないなにそれ」

「日本の三種の神器の一つ【天叢雲剣】だね。詳しい説明は省くけど、これには龍殺しと龍の破壊力の本来相反する力が宿っているんだ。

 

確か、中国ではこれを矛盾って言うんだっけかな。博識には疎いからよく分からないや」

 

後ろ髪を掻きむしりながら剣の秘密を語っていく。

 

天叢雲剣とは日本神話における最高峰の剣である。高天原より追放された須佐之男が八岐大蛇を退治し、その際に尻尾より剣が現れた。

 

後に剣はアマテラスの元へ献上され【天叢雲剣】とされ、天皇の元へ伝わっている。

 

八岐大蛇の力を蓄えられ龍の破壊力を内包しつつ、八岐大蛇の死を体験し龍殺しを得た。矛盾を内包するそれは、龍に対する絶対的な有利性を誇る。

 

事実、オーフィスの肉体を切断できた。これだけでも上々だろう。

 

もし、清明が剣術を使えた場合最強の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の称号を得ていた可能性すらある。剣のノウハウのない清明でこれなのだから。

 

「三種の神器...八尺瓊勾玉とあとなんだっけ?」

「以外と知ってるみたいだね。なら隠すのも無粋か..今は八尺瓊勾玉は持ってないけど、もう一つ八咫鏡ならここにあるよ」

 

そう言い、左手に盾のように身体を映す鏡部分を上にして付ける。肌に押し付けられている方の模様はほとんど何もなく、中心地点に太陽のような模様がある限りである。

 

「どんな能力?」

「うーん語ってもいいけど、見てもらった方が早いと思うな。何かしら魔力攻撃を放ってみてよ」

「分かった」

 

手に平に蹴鞠玉程度の大きさに魔力を圧縮させる。二十人いた陰陽師達の霊力の総合以上ある。

 

「ふん」

 

清明の指示通り投げつける。

 

幼女の見た目とは反し、投げられた玉は高速回転をし地面を抉りあげながら進む。

 

自分で指示しておいてなんだが、あまりにも大きい魔力に冷や汗が額を滴っている。

 

着弾すれば一溜りもなく、如何に清明とは言え死は必死。避けるのが普通だが避けず、鏡に魔力玉を映し待ち構える。

 

数秒後...魔力玉は八咫鏡に激突。

 

「くッッゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

足に力を込め吹き飛ばされないように踏ん張る。数cm身体が後退した所で鏡が異様な光を放つ。

 

そして、魔力玉はオーフィスの方へ逆走する。

 

「?なんで」

 

右手を前に突き出し手を開いてなぜ魔力玉が跳ね返されたのか小首を傾げる。

 

最初に投擲した時と同じ魔力量に同じ速度。まるで、そのまま跳ね返されたようだった。

 

手の平に魔力玉が当たった瞬間握りしめ魔力を散々させる。

 

─普通は自分の攻撃で傷ぐらい負うと思うんだけどな...耐えちゃうか。

 

余裕の表情を崩さず僅かに燃えた服の袖を突き出しているオーフィスを見据える。

 

「今のが八咫鏡の能力で、全魔力を問答無用で反射するんだ。びっくりしただろ?」

「凄いびっくりした」

 

嘘つけ。心の中でその言葉を吐き捨てる。

 

これにて自身の手札を全て明かした清明の首には、死神の鎌がその時を待つように添えられている。

 

首を軽く二回回してから、一度深いため息を放つ。

 

「さて、続きをやろうか」

「うん」

 

無数の魔力弾を放つ。

そこに手加減や油断はなく広範囲に避ける場所を与えない。

 

八咫鏡を前へ突き出し自分に当たる魔力弾を全て弾き返す。剣を土と平行にして突貫する。

 

速度は山を移動した時より数倍速い。

 

駆け抜けた道は一段下へ凹み、高速で動くため自然発生したソニックウェーブによって木がなぎ倒されていく。

 

「はぁぁぁぁあああ゛ああああ゛゛!!」

 

全力全開の突き。刃のない剣だが受ける訳にはいかない。

 

回避の他に選択は存在せず、身体を横に大きく捻り剣先は先程までオーフィスの居た位置を貫く。

 

目の端で行方を追っていた清明は、剣を右下へ振り下ろす。身体を捻っているオーフィスに回避の術はない。

 

次元の裂け目(ディメンション・エリア)

 

小さく呟くと、小さな身体は一瞬にして消える。光の速度よりも速い。

 

剣は空気を両断し地面へ突き刺さる。当たると思った斬撃は空を切り終いには姿を見失った。

 

慌てて周りを見渡す前に、後頭部に重い衝撃が走る。

 

「がはァッ!」

「終わ...何これ?」

 

暗殺者などが使う首を叩いて意識を失わせる技を真似して使ってみたのだが、叩いた直後から身体全部が札となってオーフィスの身体全体に貼り付く。

 

【呪符分身】清明が考案し自分だけが使えるオリジナル陰陽術。効果としては分身を作るだけのシンプルな物だが、その凶悪性はその先にある。

 

ある一定の攻撃を受けると擬態を解除し、攻撃してきた物へと自身を構築していた札を貼り付ける。

 

そこから放つは清明の霊力全力の一撃。

 

「邪を払い浄化せよ、急急如律令」

 

淡く白い光を札達は放ち、一秒も経たずに大爆発を起こす。

 

【呪符分身】と交代し無事だった清明は、木の影から顔を覗かせ爆心地を見つめる。

 

爆発により舞い散る砂や草木が収まり、爆心地が視界に収まるとすぐに呆れた声を零す。

 

「ですよねー」

「肩こりとれた」

「今ので肩こりか...笑うしかないわ」

 

隠れるだけ無駄だと判断し木の影からゆっくりと全身を見せる。

 

「いつ入れ替わった?」

 

目を離した時は一度たりとも無い。なのにいつ入れ替わったのか?純粋な疑問を問いかける。

 

あの奇天烈な手はもう使えないなと諦め手品を明かす。

 

「八咫鏡で跳ね返した時だよ。僕が受けた時に既に分身を作っておいて、跳ね返したら隠形で気配をして隠れたんだ。どう?答えはお気に召したかな?」

「大満足。お礼にこれ上げる」

 

人差し指の先に小さく魔力を圧縮させる。その位置で固定したまま、指を指すように清明に向ける。

 

「デスビ」

「待ってくださいお母様」

「ん?紫何」

 

清明を殺すはずだった攻撃を止めたのは陰陽師達ではなく、オーフィスの娘八雲紫だった。

 

スキマから現れた紫は、フリフリの紫ドレスを揺らしながら地面へ足をつける。

 

「安倍晴明、彼には利用価値があります」

「利用価値?」

「はい。今ここでは言えませんが、幻想郷に関わることですので」

「なら、いいよ。我はもうやらない」

「ありがとうございます。お母様」

 

医師を汲み取ってくれた母に深く頭を下げ、未だに何が起きたのか分からずキョトンとしている清明の方に身体を向ける。

 

─えっと...多分彼女も妖怪なんだろうけど、何で助けたんだ?それに幻想郷って何よ

 

彼女は美しい。今まで会ってきた女性の誰よりも魔性の魅力がある。ずっと眺めていれば命を吸われてしまような。

 

扇子を振って開き口元をすべて覆う。

 

「貴方の命を助ける代わりに、私達に協力できるかしら?」

「妖怪が助ける?随分と面白いことをいうね。僕は君達を大量に始末してきた。敵のような僕の命を助けるなんて無駄な事を」

「シエルと言ったかしら、彼女も助けてあげるわよ?」

 

ピクリ...表情が変わる。

 

「何でそんな事を僕に関係な」

「貴方が彼女にどんな感情を向けているのか全て把握してるわよ。私達には心を読むスペシャリストがいるのよ、それともここで語った方がいいかしら?」

「......本当にシエルを助けてくれるのか?」

「ええ当たり前よ。私達妖怪は約束を違う事は絶対にしない」

 

─信じるべきか信じないべきか...断ればどうせ殺されてしまう。だからと言って助けてもらうのも......いや、自分のことなんてどうでもいいだろ。今はシエルを助ける方が先決だ。

 

十秒程唸るように考えた清明は、剣を投げ捨て手両腕を上に上げ諦める。

 

「分かった、なら契約を結ぼう」

「話が分かる人間で何より」

 

紫の策略により清明は人間側を捨て妖怪側へと着く事になる。

 

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