霧がなくなり眩しいほど太陽の陽射しが差し込み視界は良好。道に迷うわけなく一時間程度で山を抜け、舗装された道へと出るのだが
「おかしい。建物が古い」
鬱陶しい木からでた時に視界に飛び込んできたのは明らかに時代の古い建物だった。
コンクリートなどの化学物質は使われておらず、その殆どが木で作られていて建物の高さも高くない。
しまいには小さな集落にいる人達は全員がもれなく着物である。
──タイムスリップでもしたのか?いや、舞台かもしれな...それにしては凝りすぎなような気が
戸惑いながらもゆっくりと歩を進め、第一村人へと話しかける。
「ここはどこ?」
「おっ!なんだ嬢ちゃんか...うん?その服は」
「ここは」
「なんじゃそりゃ!!なんだその服!!ちっとこっち来い」
第一村人の男に引きずられながら家の裏に連れていかれる。
正直抵抗をしようと思えば出来たけど、いましたら間違えて殺しちゃいそうだから無抵抗なだけだ。
けして、中二病だからとかじゃないからな!本心だからなこれ
誰に話しかけるわけでもなく心の中で考えていると、ハゲの男は頭皮を輝かせながら両肩を鷲掴みにする。
「なんだこの服見たことねぇぞ。この京一の商売の渉様が知らねぇなんざやべぇ品だろそれ」
「これ?洋服だけど」
「洋?まさか南蛮か!そうかそうかやっぱりそうなんだな、たくだから南蛮に目を向けろってあれほど」
顎に手を当て渉はブツブツ何かを小声で呟き始める。
─この反応本気?まさか...ガチのタイムスリップかよ......それに格好から戦国時代ぐらいか?いや分からんけど。こんな事なら歴史ちゃんと学んどけばな
こちらもこちらでその無表情な顔に似合わず、渉を見つめながら長考に入る。
旗から見なくても今の二人はかなり異常であり、現代ならばすぐ警察を呼ばれてしまうだろう。
「おっと、すまねえ一人物思いにフケちまってな」
「別にいい」
独り言をじっと見つめて暇そうにしている幼女が目に入り、すぐにやめ会話を再開させた。
と、言ってもゴスロリ服に見惚れたのか高速で言葉を綴り、どんどん熱がこもりもうついていけない。
──大丈夫か?このおっさん?
そんな事を思い始めた時だ、おっさんに家へ招待されたのは。
なんでもこの服を詳しく調べたいらしい。まぁ特に問題ないので大人しく後ろをついていく。
「いやぁー助かったぜ。お得意様に服を作ろうと思っていたんだがよ、アイディアが湧かなくてな。だが、それを見たらビビッと来たんだ」
「ならいる?我特に大事じゃ─」
「マジか!!いよっし!さらに捗るぜ!!そしたら、代わりの服をやるよ!楽しみにしてな俺の最高傑作だからよ」
渉はガッツポーズを決めながら大喜びしているが、頭のスキンヘッドなどを含めるとかなりいかつい。
最初に出会った場所から数分歩き案内されたのは店と家が合体した建物だった。
壁の素材は天然の木であり、木のいい香りが漂い荒れている精神を落ち着かせる。
外には木の机の上に並べられた色とりどりの大量の着物が陳列されていて、周りと比べるとここだけ別世界になっている。
どうぞと中に案内され、昔懐かしい和室へと足を入れる。西洋のゴスロリと和室。本来見ることのできないその光景はまさにカオスだ。
「にしてもおかしい。建物が古すぎる」
ここに来るまでに建物を見ていたがその全てが古い木造建築だった。化学物質のコンクリートなどの建物はない。窓もガラスはなく木の板がハメられている。
それこそ過去に戻ったように思ってしまう。
──あっ、そう言えば渉が京って言ってたな。てことはここは京都だろ...あぁ分かったそう言う街なんだな。
昔言った時はあんまりそう感じなかったけど、そうなんだろう。そう思いたい。
現実逃避するように早々に結論づける。
「すまねぇな待たせた」
「問題ない」
襖を器用に足で開け和室へと数着の着物を抱えながら入ってくる。
かなり重さがあったのか畳に置くとドスッと音がなり軽く埃が飛び上がる。
「さっき話してた新しい服だ。一応あんたに似合いそうなの選んだぜ、どっちがいい?」
畳に軽く二着の着物を広げる。
片方は中に着る薄い布が血のように真っ赤に染まっていて、その上から羽織る黒い布により禍々しさを増している。
その上帯には赤と黒が交互にクロスしていて、もう着れば魔王の風格を醸し出す。
確実にないな。魔王を目指してる訳でもないしこれはない。
速攻で否定しもう片方の着物に視線を移す。
今度はしたの布は純白の白であるのだが、その上から羽織る布は漆黒な黒である。
袖の先やつま先などの先端にはフリフリの白い布が付いていて、何処と無くゴスロリ風着物と捉えてしまう。
「こっち」
「おう、そっちだな。ならそっちで調整するぜ、寸法サイズ貰うぜいいか?」
「構わない」
「よし頼むわ」
俺はそそくさと立ち上がり両手を横に広げピンと停止する。
渉はどこからとなく取り出した丈の定規で全身の寸法を図り始める。
「なるほどな。新たな妖怪が現れたか...ふむ、実力が不明か...さてどうしたものか」
黄緑色の着物に身を包み、低く強い声色で語った男は周りにいる自分と同じ格好をした男達に声をかける。
そのうち三人は顎に手を当て思考しているがいい案は浮かんでいない様子だ。
だが一人は違った。手を上にあげ意見があるのを示す。
「亜月か、申してみろ」
「はっ。戦力確認とした私の娘の知り合いを戦わせるべきかと」
「お主の娘の......椛か」
「はい。あの娘も自分の使命は理解してるかと」
先程から仕切っている男は亜月の意見について考える。
つい先日、一つ隣の山を守護していたオンボノヤスが突如として現れた者に、襲撃を受け今現在も目を覚ましていない。
今は新たに別の守護者を向かわせたとはいえ、その者が京にいる間は安心などできない。
陰陽師に襲われ逃げ出した妖怪が殆どのこの山では戦闘できる者など数少ない。正直今すぐ自分が赴きたいが、指導者を失えばどうなるかなど目に見えている。
十分に及ぶ沈黙の後重い口を開く。
「椛いるな」
「ここに」
葉っぱが風に誘われ踊り、指導者の前に集まると途端に飛び散り現れたのは一人の少女だった。
白く短い髪は風に微かに靡き、その端正な顔と合間り素直に美しいと言いたくなる。髪の白に対し目立つように瞳は紅葉した椛のように赤い。
上半身の服は白いが下半身のミニスカートは黒く、袖口が赤く模様として何枚か椛が入っている。
片膝をつき頭を垂れている椛に男は宣告する。
「犬走椛、死ね」
「御意に」
現れた時とは逆に身体が葉っぱとなり風に乗り外へと消えていく。
宣告した男は悲しげな表情を浮かべていた。