東方霊想録   作:祐霊

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#9「白玉楼でブレイジングスター」

「ほら、見えてきた。あれが冥界への入口だ」

「大丈夫? あの中に入っても死なないよね?」

「ああ、もし死ぬなら私と霊夢は死んでるよ」

 

 俺達は今、顕界と冥界を隔てるもの──幽明結界を潜った。目的は一つ。冥界に行って死ぬ事で死霊となり、人間以上の力を得る為だ。

 

 

 

 ──というのは嘘だ。そんなに力を得たいと思っていないし、そもそも冥界に行くだけなら死なない。

 

 では何故、死者の住まう冥界に向かっているのか疑問に思うだろうか。その答えは簡単、冥界に会いたい人がいるのだ。あの世に行く理由なんてそれで十分だろう? 

 

「よし、ここまで来れば白玉楼はもう目の前だ」

「うぉっ、階段が……ヤバい」

「語彙力が低くないか?」

 

 巨大な扉(幽明結界)の先には長い長い階段があった。高さの推定は千メートル以上。こんな階段を目にすれば誰だって語彙力を失うだろう。

 

 ───────────────

 

「そんじゃ早速入るか」

 

 空を飛んで5分。漸く門前に到着し、魔理沙が扉の取手に手をかける。不法侵入は不味くないか? それになんか……

 

「魔理沙」

「どうした?」

「何か嫌な予感するから俺が開けるよ」

 

 俺が知っている二次創作では何故かここで()()()()()()。今いる世界が原作通りならば問題は無いだろうが、対策はしておくに越したことはないだろう。

 

「そうか、なら任せるよ」

 

 全ては半人半霊さんの性格によるんだけどね。どうか突然斬りかかってくる子じゃありませんように。

 

 ──創造、反射結界

 

 俺は結界を創造してから扉の前に立つ。そしてノックして声を掛ける。

 

「どなたでしょうか」

「あー、私だ。私の友人がここに用があるっていうから連れてきた」

「魔理沙? わかった。今開けるね」

 

 インターホンがない世界だ。声を張るしかないとはなかなか不便だなと思いつつ、警戒心は薄れていった。

 

「なんだ、いらない心配だった────ぬぁああああああ!?」

 

 しかし扉が開いた時、()()が飛んできた。目にも止まらぬ速さでぶつかるソレは結界を容易く貫き、俺を一番下の段(振り出し)まで戻そうとする。

 

 ──スペルカード。半霊『振り出しに()()』……なんちゃって

 

 今のって()()の半霊だよな。てか待って、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。この高さから落ちるのはヤバいって! 

 

 幸い勢いが強かったので、まだ階段に落ちてはいない。だが転がり始めたら最後。──あ、力学的エネルギー保存則を思い出した。ぐちゃぐちゃになるぞ。これが走馬灯か……。まさか死ぬ直前に物理の公式を思い出すとは思わなかった。もう少しまともな走馬灯は無かったのか。──なんて言ってる暇はない! 吹っ飛ばされてる今のうちに手を打たないと。

 

「ええい、一か八か魔理沙のアレを!」

 

 危機的状況から抜け出す為に急いで箒を創造する。それを手に持った後箒の先に魔法陣を埋め込み……

 

「人間は、何時如何なる時でも挑戦する気持ちを忘れちゃいけないんだぜ──星符『スターバースト』!!」

 

 地面に向けてスターバーストを放つ事でそれを推進力に運動ベクトルの方向を強引に変える。

 

「うわぁあああ!! なにこれなにこれ怖い! ジェットコースターかよ!!」

 

 発想力と()()力はあったが、俺には致命的に欠けているものがあった。それは──

 

「ごふぁっ!!」

 

 ──操縦スキルだ。

 

 

 ───────────────

 

「おー! 楽しそうなことしてるなあ」

「放っておいて大丈夫なんですか!?」

「大丈夫だろ。にしても下手くそだなあ」

 

 昨日私を助けてくれた神谷さん。彼も私と同じ幻想入りをした人らしい。彼はこの世界で暮らすと決めて挨拶回りをしている途中とのこと。幻想郷の見学がてら私もついていくことになったけど……大丈夫かな、あっ落ちた。

 

 神谷さんは箒に滅茶苦茶に振り回されて階段に激突した。その衝撃で階段に穴が空いている。隣の魔理沙さんはお腹を抱えて笑っている。え、生きてるかな? 

 

 

 ───────────────

 

「……カツカレー、マグロ……ハンバーグ……うっ! ここは!? ──ガフッ!?」

「〜〜っ!?」

 

 意識が戻って体を起こしたらなにかに頭をぶつけた。それも結構な勢いで。めっちゃ頭痛い! 涙出てきた。

 

「痛い……」

 

 おでこを押さえて俺の毛布に顔を埋める女の子。この声は霊夢。──じゃなくて霊華の方か。制服着てるし。

 

 どうやら霊華と頭をぶつけたらしい。待って、超痛い。頭ガンガン言ってる。

 

「えっと、ごめん。大丈夫?」

「痛いよ!」

「ご、ごめんなさい……」

「…………」

 

 霊華もまた涙目だった。睨まれている気がするのは気のせいだろうか……いや、睨まれてますわ。ほんと、ごめんなさい。

 

「しかしどうして頭を……」

 

 俺は真っ直ぐに体を起こしたのだから、顔を覗き込んでいない限りぶつかるはずが無い。……覗き込んでたのか。恥ずかしい。

 

「中々目を覚まさないから心配で様子を見てたんですよ。そしたら急に起きて……」

「うっ、ごめんなさい」

「もう平気です。それより、大丈夫ですか? 凄い勢いで落ちてましたけど」

 

 ……そうか、俺は階段に頭ぶつけたんだっけ。結構腫れてるけど頭蓋骨にまでダメージは行ってないだろう。……多分。落下する瞬間にクッションを創造したのが良かったか。咄嗟に作ったため酷い出来だったがそれなりの成果を出した。

 

「たんこぶができたくらいで済んだみたい」

「運が良かったですね」

 

 全くだ。あんな事になるなら普通に落ちた方がマシだったな。推進力を利用して浮上するつもりが階段に突進してしまった。魔理沙のアレ(ブレイジングスター)はもう二度とやらん。騎乗スキルE-の俺が使いこなせる技ではない。

 

 

 ───────────────

 

「お、起きたのか。災難だったな!」

「あ、あの。先程は私の半霊が勢い余って……申し訳ございません」

 

 館内を()()に歩いていると居間に着いた。そこで白髪の女の子が土下座をしてきた。

 

 まあなんだ、その、()()()()()というか俺を殺しにかかってたよね。

 

「気にしないでください、なんとか生きてるし大丈夫ですから」

「具合が悪くなったらすぐに言ってください。診療所まで連れていきますから」

 

 そう言って白髪の女の子は氷嚢を持ってきてくれた。ありがたいです。

 

「うちの庭師が迷惑かけちゃったみたいね。ごめんなさい」

「いえいえ、とんでもな──あ、貴方は……」

「私は西行寺幽々子。宜しくね?」

 

 ゆゆこさまだ!! 本物だ! 

 

 水色と白の着物を着て、ナイトキャップのようなもの──通称ZUN帽を被っている。ピンク色の髪は華麗な桜を彷彿させる。少女というよりは綺麗なお姉さんといった印象だ。

 

「初めまして。神谷祐哉です。今日は御挨拶に伺ったのですが、早々御迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございません」

「気にしないで。迷惑かけたのはこちらだもの。話は魔理沙から聞いたわ。ゆっくり寛いでいってね」

 

 幽々子はそう言って部屋を出て行った。立ち上がる時の仕草、歩き方、どれをとっても美しい。

 

 さて──

 

「改めて、神谷祐哉です。宜しくお願いします」

「私は魂魄妖夢です。宜しくお願いします。あの、外来人の方なんですよね? どうして此処に?」

 

 おや、魔理沙はどこまで話したのだろうか。この様子では殆ど知らないようだ。

 

「白玉楼と()()()の事は霊夢と魔理沙から聞きました。観光がてら御挨拶に伺いました。……御迷惑でしたか」

「とんでもないです。御丁寧にありがとうございます」

 

「「「「…………」」」」

 

 ふむ。話すネタが無い。挨拶回りに来たのはいい。だが他に用事がないのだ。となれば用は一瞬で済んでしまうのも当然。流石に今すぐ帰るのも変だし何か話題を……

 

「え、貴方も外来人ですか。それに、博麗……?」

「そうなんです。偶然ですかね」

 

 おや。俺がぼーっとしてる間に霊華と妖夢が仲良くなってる。いいなー。

 

「それで、お前の用はもう済んだのか?」

「ですねぇ」

「でも今帰るとお前は頭ぶつけに来たみたいになるぞ? なんせ強烈すぎて……ぷぷっ」

「ですねぇ」

 

 笑うなよ。こっちは死ぬかと思ったんだぞ。

 

「あれ、お前昨日言ってなかったか?   妖夢に会ったら頼みたいことがあるって」

「ですねぇ」

「言えばいいじゃん」

「ですねぇ」

「……おい」

「ですねぇ」

「…………1+1は?」

「その回答はとても難しい。何故ならその質問は算数としての問題なのか、それとも『田んぼの田』とかいう引っかけなのか分からないからだ。中には、2と答えた場合は『田んぼの田』になり、『田んぼの田』と答えた時は『は?   何言ってるん、2に決まってんだろ頭大丈夫か』という、相手の答えによって正答を変えてくるやつまでも──」

「──そこは『ですねぇ』って言えよ!   なに急に語ってんだよ。いや、分かる。分かるよ?   2って答えた時の『残念!   田んぼの田でした〜』っていう謎のドヤ顔がうざいよな!?」

「そう、そうなんだよ。俺はそのうち相手にしなくなった」

「それが正しい」

 

 魔理沙は腕を組んで頷く。どうやら幻想郷でもこの問題はあるらしい。最近聞かなくなったし幻想入りした説あるか……? 

 

 さて、と。霊華と妖夢の話も一区切りしたようだしお願いしてもいいかな。

 

「妖夢さん、実はもう一つ用があるんですが」

「なんでしょう」

「俺に剣術を教えてください」

「剣術、ですか?」

 

 俺の発言に全員が驚いた。

 

「……理由を教えて貰えますか?」

 

 理由は護身術の為だ。妖怪がいる幻想郷で自由に動くには、それなりの戦闘力が必要だ。弾幕の腕を上げればいいと言われたらそれまでだが、単純に日本刀を使ってみたい気持ちもある。日本刀は小さい頃からの憧れだからね。もっと言うと、俺の能力と合わせて使えば戦いの幅が広がると思うのだ。

 

 妖夢は俺の目を見て話を聞いてくれた。思いは伝わっただろうか。

 

「わかりました。ですが返事は待ってもらえますか?」

 

 これではまるで告白したみたいだ。そう思いつつ頷く。

 

「うん? 神谷さんにも能力あるんですか?」

「そっか、霊華は知らないんだったな。コイツの能力は贋作だ」

「おうふ」

 

 確かに、『物体を創造する程度の能力』とか言っても基本的には贋作に過ぎない。俺が真の意味で創造した物はほんの少しだ。だから魔理沙の説明は何も間違っちゃいないのだけど……

 

 なんというかその、心に刺さる。

 

「まあそんな感じ。色々物を作れるよ。……そうだ。もし嫌じゃなかったら刀を見せて貰えませんか」

「あれ、持ってないのですか?」

「はい」

 

 妖夢は居間を出て行った後、暫くして一本の刀を持ってきた。かたなを手に持ってみると思っていたよりも軽い印象を受けた。

 

 よく、『刀は重い』と聞くけど精々2kg……それ以下かもしれない。居間を出て、刀身を鞘から引き抜く。これが()()の日本刀か。曇りの無い刀身は太陽の光を反射して眩しい。よく分からないけどきっとすごい刀匠に鍛錬されたのだろう。

 

「どうですか?」

 

 目を閉じて脳内に設計図を浮かべる。……ま、こんなもんか。

 

 ──発動

 

 目を開けると同じ刀が二本。創造は成功した。見た目は完璧に複製できている。

 

「よし!」

「…………!」

「妖夢さん、この刀、ありがとうございました。お返しします」

「……もう良いのですか?」

「はい。一度作れば複製できるので」

 

 俺は一度創造したものなら、何時でも幾つでも複製できる。ここまではただの贋作能力。だがこの能力は創造能力だ。今複製した刀を参考に自分好みの刀を創造できる。今回はそのサンプルを得たのだ。

 

「ハァーイ。お着替えの時間よ」

「「「「わっ!?」」」」

 

 その人は、突然現れた。紫さんである。この人とは何度か会っているが毎回びっくりする。霊夢レベルとなるとほとんど驚いた様子は見せないが、常人にとってはたまったものではない。

 

「はじめまして。八雲紫よ。よろしくね、博麗霊華さん」

「え、どうして私の名前を?」

「ふふ、どうしてかしらね?」

「お前が霊華を連れてきたのか?」

「さて、早速だけど貴女には服を贈るわ」

「無視すんなよ……」

 

 紫は空間の裂け目(スキマ)に手を入れ、何やらゴソゴソと探っている。四次元ポケットかな? 

 

 と、そんなことを思っていると後ろから引っ張られる。

 

「レディーの着替えを見ようとする変態はしまっちゃうわ」

「うわわっ!?」

 

 待て、なんのことだ。ふざけるな。

 

 ───────────────

 

 俺は尻餅をついた。俺を片手で掴んでそのままポイッと投げる辺り種族の違いを思い知らされる。どうやら、スキマで部屋の外につまみ出されたらしい。何故か水の入ったバケツが置いてあるんだが、昔あった「これを持って立ってなさい」って奴? 今これをやると訴えられて有名になっちゃいますよ? ……悪い意味でな。

 

「はぁ──ーしょうがないなぁ」

 

 俺はバケツを持つ。……惨めだ。

 

 ──五分後

 

 飽きた。着替え長くね? 女子って着替え長いよな、着ている物が多いのかね。なんでかわからないけどいっぱい着てるよね。

 

「祐哉さん、もう入って大丈──何やってるんですか……?」

「あ、妖夢さん。暇だからバケツ振り回してました」

「そうですか……」

 

 ──やべ、引かれた。

 

 なんか前にもこんなこと無かったっけ? 

 

 ───────────────

 

「神谷さん、この服似合ってますか?」

 

 バケツを置いて部屋に戻ると綺麗な服を着た女の子がいた。水色と白の巫女服を着て、頭にリボンを付けている。フリルが可愛らしい。

 

 ──控えめに言って、どストライクですありがとうございます。

 

 とは言えないので何かまともなコメントを残そう。

 

「どストライクですって。最高の褒め言葉じゃない?」

「あれ、声に出してました!?」

「あらあら。私は適当に言っただけなのだけど……」

 

 き、貴様! 謀ったな!? 

 

 昨日会ったばかりの実質初対面の人に『どストライクです』なんて言ったら引かれるに決まってる。俺が逆の立場なら警戒する。おいおい印象下がったんじゃないの?

 

「こんな可愛い服貰っちゃっていいんですか?」

「もちろん。貴方のために用意したのだから」

「ありがとうございます! 嬉しいです」

 

 ──いい感じに話が逸れたし平気か。

 

「それで、次はどこに行くんだ?」

「永遠亭に行こうかなって」

「ああ、あの宇宙人のところか。何しに?」

「何しにってそりゃあ……なんとなく?」

「そうか。霊華はどうする?」

「私も行っていいですか?」

「もちろん。行こう、博麗さん」

 

 時間はまだ昼。今から行けば夜までには帰れるだろう。確か場所は()()()()()のどこかだったはずだ。

 

 ところで、

 

 

 

 ──迷いの竹林ってどこにあるの? 

 

 

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