つひせいなえとなこづすえ!
祐哉の霊力が霊華を包み込むと、彼女の巫女服にオリーブの木をモチーフとした装飾が施された。
現在、彼が物体に付与できる力の数は6つに増えている。そして、今創造した装飾に付与された加護は最大の6つである。
彼が1つの物体にここまで力を盛り込んだのは、使い魔を作ったときが最初で最後だった。大抵の場合は能力を1つ付与するだけで十分だったからだ。
しかし、今回は霊華を守りたいという一心で惜しみなく力を行使した。
【装飾に付与された機能】
1.『体質制御』
霊華の『愛される程度の能力』を制御することで、黒い生物から伝わる負の感情を99%カットするもの。残り1%を残した理由は、霊華に最低限の緊張感を持たせるため。同じ理由で、『精神安定』などの機能を付与しなかった。戦場における過度なリラックスは死を招くためだ。
2.『身体機能向上』
身に付けた者の身体能力を大幅に向上させるもの。運動神経は勿論、暗視能力や動体視力といった力も向上する。ただし、嗅覚や聴覚は任意で向上する。(敏感になり過ぎては戦闘に支障をきたすため)
3.『交信機能』
祐哉と念話する為の機能。別行動を取ったときや緊急用。
4.『霊力貯蔵』
霊力のストック。身に付けた者の霊力が尽きそうになると自動で回復させる機能。(祐哉が持つMP回復のストックを分け与えた)
5.『妖祓い』
身に付けた者に妖斬剣と同じ効果を付与する機能。徒手空拳による攻撃は勿論、御札や大幣を使った攻撃にも補正がかかる。
6.『
身に付けた者や祐哉が望んだときに、望んだ位置にテレポートできる機能。
以上
まさに神憑った力が霊華に与えられた。
これが、彼の『物体を創造する程度の能力』の本気である。
神業とも言える行いの対価は全体の霊力の半分程度だった。これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは人それぞれだろう。少なくとも彼は「霊華を守るためならば、全霊力を費やしても良い」と考えていたため、意外と少なく感じていた。
「一瞬で行くから準備して」
祐哉はそう言って霊華の肩に手を置いた。
──『座標転換』発動。人里へ。
祐哉が頭の中で唱えたことによって、装飾の力が発動した。
───────────────
俺達は瞬く間に人里へ移動した。
しかし──
「可笑しい。確かに人里に飛んだはずなのに」
「あ、あれ? 神社は……?」
「ここは人里だよ。さっき創造の力で博麗さんにとある能力を渡したんだ。その効果でテレポートしたんだよ。でもどこにも人里がないな」
「……なんか、前にもこういうことがありましたよね。竹林異変のときだったかな」
そういえば、竹林異変のときも里が見えなかったな。これは慧音の仕業だったな。確かあれは慧音より強力な者には効果がないはず。果たして、黒い生物相手にはどうなのか。そもそも慧音の力は「なかったことにする」だけであって、消すわけではなかったはずだ。そのため、もし見えていなくても、人里に侵入することはできる。そう考えると黒い生物相手にはあまり効果がないかもしれない。
『このままでは不便ですね』
──あんまりこういうことしたくないんですけど、見えないなら見えるようにするしかないですね。
特殊な眼鏡を創造して身に付けることでいつも通りの視界を取り戻す。
「博麗さんはこれを」
俺は霊華に目薬を渡す。これを使えば人里が見えるはずだ。
「おお、ちゃんと見えます」
「よし、行こうか」
早速里に入ろうと1歩踏み出したとき、俺は底無しの穴に落ちた。
「うわぁぁぁあああ──────!?」
慌てて空を飛ぼうとするも間に合わず、そのまま穴に吸い込まれてしまった。
「くそ、敵か!?」
「騒がせてごめんなさいね」
謝罪してきた人物は八雲紫だった。それを確認した俺は、抜刀しかけた刀を戻して質問する。
「──レミーの場所は?」
「捜索中よ。状況の整理と今後の流れについて話すために来てもらったわ」
「それはいいんですが、早く戻りたいので手短にお願いしますね」
「そう心配することはないと思うけれど。だって、今のあの子は
「貴女から見てもそう思いますか」
俺をスキマに引きずり込む際に霊華の様子に気づいたのだろう。紫ならば一瞥しただけで霊華に掛けたバフを見切れるはずだ。
「ヘタをすれば霊夢にも匹敵する。そう思わせるほどの力を持っているわ。彼女を守りたいのは分かるけど、あそこまでする必要はあったの? あれじゃあ守られるのは貴方の方よ」
「必要だからやったんです。勘違いしているようですが、俺は別に『守ったという実績』が欲しいわけじゃない。あの子が危険な目に遭わなければそれでいいんです」
「つまり、あの子の気を引く為に守ろうとしているわけではないということね?」
「そうですが? …………俺は今まで下心で動いてると思われてたんですか?」
紫は暫く間を空けて口を開いた。
「……本題に入りましょうか」
「心外ですね」
「ついさっき、里の人間を安全な場所へ運んだわ。朝までに戦争が終われば彼らは何事もなかったように活動するでしょう」
──話を逸らしやがった。
「……犠牲者の数は?」
「居ないはず。わざわざ私が起きているときに攻めてきてくれたんですもの。対処は直ぐにできたわ」
──流石は紫。有能だ。紫としても里の人間が虐殺されるとあっては無視できないからな。
「俺のやるべきことは?」
「悪魔退治よ」
「悪魔? あの黒いヤツは悪魔なんですか?」
「そう。正体を突き止めるのに苦労したのよ? 言語の壁を破壊するところからスタートしたからね。流石に
「悪魔は何体いるんですかね。戦力差を考えると朝までに片付けるどころかこっちが負けると思いますが」
「
わざわざそんな数にしたのか。妙なこだわりを感じるな。
──じゃなくて
「66万!? え、ヤバくないですか?」
「このままなら勝てるから問題ないわ。戦力の心配もいらない」
紫はそう言って数個のスキマを開いた。
「ご覧なさい。各勢力が至る所で悪魔と戦っているでしょう。もっとも、多くの者は祭りのように楽しんでいるようだけど。まあ皆、自分の領域を攻められて黙ってないのよ」
──本当だ。怒っている人もいるけど、殆ど楽しそうに戦っているな。暇つぶしになるのかな。呑気過ぎて呆れてくる……
「私の見立てでは、悪魔は朝になれば力を失うか元いた世界に戻るわ。それまでの間、人里に入り込んでいる悪魔を全て退治してくれる? 建物を壊されると修復が大変なのよ」
──えーと、今何時だっけ?
『丁度日付が変わった頃かと』
──本気で言ってます?
『ええ』
「私はレミーの捜索に集中するわ。悪魔を召喚したのは彼女だろうから、可能なら解除させる。まあ、あまり期待できないけどね。戦いになったとしても夜明けまで時間を稼ぐわ。弱点の太陽が昇り次第、貴方達の出番だから宜しくね」
「え、それってつまり──」
「──宜しくね」
紫は俺に有無を言わさずにスキマを開いた。俺は紫に文句を言い切る前に人里へ戻されてしまった。
──正気か!? 俺に死ねって言ってるのアイツ?
今から夜明けまで戦えって、体力がもつわけない。
ふと気付くと、俺は大量の悪魔に囲まれていた。
──アイツほんっと……!
──敵群の中心なんかに転送しやがって!
「
「──頭おかしいんじゃねえの!?」
俺は愚痴を言いながら刀をばら撒いていく。適当に弾幕を放ったこともあって結構な数を撃ち漏らすが、瞬時に抜刀し斬撃を飛ばすことでリカバリーする。
「──案外大したことなさそうだな。数は多いけど力は弱いみたいだ」
妖斬剣ではなく、普通の刀で倒せたのが何よりの証拠だ。
──早く霊華と合流したいな。
霊華と『交信』できることを思い出した俺は、悪魔から距離を取るために一旦空を飛んで彼女に念話を掛けた。
「もしもし、聞こえる?」
『うわわっ!? え! 神谷くんですか!? 一体どこに!?』
「あー、ごめん。今、貴女の頭に直接語りかけています……。さっき紫に誘拐されて今戻ってきたところ。人里のどこかに居るんだけど、博麗さんはどこにいる?」
『なんだか電話みたいですね。……私も里の中で黒い生物を退治しているところですよ』
戦闘中なのか、声の抑揚に違和感がある。
「もしかして俺、邪魔してる?」
『いえ、何だか調子がいいんです。身体が軽いし、黒いのが私に近づいただけで霧散していくんですよ』
「それも言い忘れていたね。実はさっき、博麗さんを超強くしたんだよ。けど、力の源は巫女服の装飾だから、万一服が破れたら一気に元通りだ。気を付けてね」
覚悟を決めたとはいえ、戦場に行けばまたダメになるかもしれないと思っていたが、声を聞く限りは平気そうだ。
『凄いですね……でも神谷くんは大丈夫なんですか?』
「どういうこと?」
『いや、その……私を強くしてくれたんですよね? そのために無理をさせちゃったんじゃないかって……』
「なるほど。全然問題ないから気にしないで。霊力もまだ残っているし」
『そうですか……。ところで、神谷くんは戦闘中じゃないんですか?』
丁度その頃、豪邸にありそうな椅子を空中に作り、その椅子から下を眺めていた。
「一応戦闘中、かな。いやあ、里を埋め尽くすくらいワラワラと居るとかえって楽だねぇ」
俺は、道路の幅と同じ長さの妖斬剣を里の端に創造した。その後、妖斬剣を徐々に横に動かしていくことで大量の悪魔を祓っている。
まるで箒でゴミを掃いているみたいだ。
「ところで、霊夢は見なかった?」
『霊夢なら、少し離れたところで力を感じますよ』
「じゃあ、一旦合流しようか。今から博麗さんを呼ぶね」
──『座標転換』発動。霊華を俺の元へ。
脳内で唱えるだけで直ぐに霊華と合流することができた。
「やっほ」
「わっ……! ……これはさっきのテレポート? あ、神谷くん、良かった。黒い生物に紛れちゃって神谷くんが感知できないから心配してました」
「霊夢は感知できたのに俺の位置は分からなかったの?」
「霊夢は夢想封印を連発しているので。簡単に言えば、力を放出している分感知しやすいんです」
なるほど。それに比べて俺は1回能力を使っただけで呑気に椅子に座っているだけだから感知できないのか。
俺は霊華に頼んで霊夢がいる場所まで案内してもらった。これにより、霊夢と合流することができた。
「おつかれ、霊夢」
「2人とも無事だったのね──って霊華!? 貴女、霊華よね?」
「う、うん……」
「なんか、力強い気がするのは気のせい?」
凄いな。みんな一目見ただけで分かっちゃうんだ。因みに俺は変化が全然わからない。俺の感知スキルが低いだけなのか、みんなが優秀なのか……。
「さて、さっき紫から情報を貰ったよ。あの黒い生物は悪魔らしい。悪魔は666666体いて、各地で妖怪も戦っているらしい」
「私もさっき聞いたわ」
──朝まで時間を稼ぐことと、その後レミーと戦うことは霊華に言わないようにアドバイスされたな
紫曰く、下手に伝えてしまったら彼女を不安にさせてしまうからだそうだ。
「里の人達は無事かな……あの黒い悪魔は家の中には侵入していないみたいなんだけど……」
「ああ、皆避難させたらしいわよ」
霊華の心配は霊夢によって解消された。
「だから後は家を守りつつ里の掃除をするだけなんだけど、数が多すぎるわ。大技を使えばその辺の家まで壊しちゃうし……」
俺達は今、空で会話している。幸いなことに悪魔は空を飛べないようなのだ。悪魔は人里の道という道を埋め尽くすように蠢いている。
それを見下ろしていると、一つの案を思いついた。
「レーザーで焼き払おうと思う。2人には結界で家を守って欲しいんだけど、できそうかな」
「そうしようか。2人でやればできると思うわ」
二人は、より強力な結界を張るため、民家の一つ一つに御札を張りに行った。その間襲ってくる悪魔は体力温存のために極力無視することになっている。持久戦ということもあって使う霊力は最小限にしたいからだ。
2人が準備している間に里の外を眺めていると、遠くの方に気になるものを見つけた。
双眼鏡を作って覗き込んだ瞬間、一気に不安感が高まった。
──嫌な予感がする。
早くコイツらを倒さないと……
うれぐにおじずえむせつ。りくとつるくいちおこづすえ!
ヒント:五十音表。規則性あり。
「暇すぎて呼吸しかやることない!」っていう方は解読してみてください。見たことがある人はいると思います。
東方霊想録の作品中で最も熱い戦いだと思う話を教えてください。
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VS妹紅(#27-29)
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VS鈴仙(#33)
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VS十千刺々(#38-40)
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VSレミリア(#46)
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VS風見幽香(#71)
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VS EXルーミア(#86-87)
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VS分裂野郎(通称)(#89)
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VS叶夢(#90-91)
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VS魂魄妖梨(#93)
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VS茨木華扇(#96)
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VSフランドール&レミリア(#98)
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VS八雲藍(#100)
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VS八雲紫(#101-102)
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VS紅美鈴(#106)
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VSレミー(#107)