昨日はすみません。お待たせしました(待ってる人がいるのか知らんけど)
霊華を助けると決意して立ち上がった祐哉に悪魔が這い寄る。
「:q:q」
「うるせぇよ……」
「thpe? b@fy、63r@:?」
「俺は、霊華を助けるんだ……」
「qr:.? ;e3? s@aoxj?」
「──邪魔を、するなッ!!」
祐哉は、全身から惜しみなく霊力を放ち、その衝撃波で大量のレベル1を吹き飛ばす。
──雑魚はもう無視だ。
──だが、動きを制限する結界を破られた以上、霊華を無視してレベル4を仕留めることはできない。
──ならば、霊華の相手をしながらレベル4を倒すまで。当然、難易度は高いが──
「──舐めるなよ、悪魔共。俺は必ずやってみせる!」
「くすくす、まだ たちあがりますか。いいですね。ぶざま に あがく すがた、もっと みせてください」
祐哉は、右手に持った妖斬剣を天に突きつけた。
それを合図に、レベル4の斜め上空から無数の刀が雨よりも速く降り注ぐ。広範囲かつ唐突に繰り出された攻撃に対し反応が遅れたレベル4は、辛うじて急所を避けたものの両脚に被弾する。霊力が籠ったそれは簡単に彼の脚を破壊。レベル4はそのまま地に伏す。
「ぐっ!」
「安心しろよ。それはただの剣だ。楽には殺さない。──次は、お前の右腕だ」
今度は、天に向けた刀を振り下ろした。
天に現れた複数の魔法陣。そこから切っ先が顔を覗かせると一斉に投射される。無数の刀が先刻よりも速度を増して地に降り注ぐ。しかし、その射出速度よりも速くに移動した霊華がレベル4に降りかかる刀を弾く。普段の霊華を知っている者が見れば誰もが眼を疑う光景に、祐哉は静かに呟く。
「そう来ると思ったよ、博麗さん」
今の霊華はレベル4の守護者だ。
レベル4を狙えば霊華は必ず守りに来る。
それを理解していた祐哉は、霊華を誘導したのだ。
祐哉は霊華が無数の刀を対処している間にレベル4に肉薄し、斬りかかる。しかし──
──くそ! 結界で天蓋を作ったか。そして空いた手で斬撃を止められた……。霊華の賢さも健在か……!
「ほんっとやりづらい!!」
「…………」
妖斬剣と大幣による鍔迫り合い。瘴気と霊力が衝突し、非物理的な火花が散る。
斬撃を止められた祐哉は一度霊華から離れた後、遠慮なしのフルパワーで追撃する。しかしそれも、涼しい顔で受け止められる。その表情は先程よりも冷たくなっていた。
やはり、今の霊華は祐哉の何倍も強い。それは他でもない祐哉が一番理解していた。だからこそ、大切な想い人に向かって全力の斬撃を繰り出せたのだ。
間違って傷つけてしまう。といった心配が微塵も湧かないほどに実力差を理解させられたから……。
「私は……この方を……守る」
「──っ!」
霊華が静かに言った言葉は、祐哉の心を抉った。
ずっと一緒にいた自分と敵対してまで、共通の敵だったレベル4を守ろうとする姿勢が、まるで突き放されているように感じた。否、実際に突き放された。
「……嘘だ。……それは君の望みじゃないはずだ! 操られているだけなんだ! 目を覚ましてくれ!」
「……貴方は、誰? 何故この方を狙うの?」
そのとき、彼女が頭に付けていたリボンがほどけた。青いリボンは泥まみれの地面に落ちていく。
──誰……か。霊華、俺のこと忘れちゃったんだ……流石に泣きたくなってくるなぁ……
それでも、挫けてはいけないと言い聞かせ、それ以上心が傷つく前に口を開く。
「──俺が!! 絶対に助けるからっ!! だから、もう少しの間辛抱してくれ!」
「意味がわかりません。何故
「くすくす、その ようす だと しょうき に よる しんしょく が すすんで きているみたい。
じゅんちょう じゅんちょう♪
もうすこし で かんせい する。たのしみ だなぁ。
おまえ は どんな かお を するんだろう。
ぜつぼう した かお を そうぞう すると わくわく するなぁ」
「──っ! ……本当はお前を嬲り殺してやるつもりだったが、これ以上外道の声を聞きたくなくなった。そんなに死にたいなら今すぐ消してやるよ! ──
「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア──────!!?? なん、だ、ア……ガァ! このちからはっ……!」
祐哉の妖斬剣は未だ霊華によって行手を阻まれている。つまり、レベル4には触れていない。それにも拘らず、こうしてレベル4にダメージを与えている。それほどまでの力が刀に込められているのだ。
──このまま祓い尽くしてやるッ!
「させない!」
しかし、守護対象が滅ぼされようとしているのを見逃すほど、霊華は無能ではなかった。
彼女は祐哉を蹴り飛ばした。相変わらずのパワーに押し負けた祐哉は遠くまで吹き飛ばされるが、祐哉が足掻かないはずがない。
彼は吹き飛びながらもレベル4の体内に直接妖斬剣を創造して祓い尽くさんとする。
「無駄です」
霊華がそう言って大幣を振るうと
????????????????
理解不能。
──今のは、なんだ? 大幣を振ったようにしか見えなかった。たったそれだけで妖斬剣が消えるわけがない。
不可解な現象を目の当たりにした祐哉が愕然としていると、霊華を包む瘴気が一層強まった。
「……うぐぅ……ぁ……」
霊華が苦悶の表情を浮かべる。しかし、直ぐに冷たい表情に戻った。吸い込まれる程綺麗で透き通っていた瞳の面影はなく、底無し沼のように濁っている。最早そこに生気は感じられなくなってしまった。
「それが貴方の能力ですか。厄介だ。よもや体内に刀を生成するとは……」
声を聞いただけで冷たい心が伝わってくる。変わり果てた彼女を見た祐哉は更に心を傷める。もう、かつての霊華はいなくなってしまった。
「──!?」
祐哉は、突然目の前に現れた霊華の斬撃を受け止めながら話しかける。
「…………よぉ、
「その通り。この身体の持ち主は、心の奥底で泣いている。実に無力で、哀れだ。嗚呼……その様を見ると身震いが止まらない。心が昂る!!」
そう言った彼女は初めて笑った。心底楽しそうに……。
「外道が……!」
──人の不幸に対してしか笑わない。これじゃ霊華の真逆だ。
祐哉には知る由もないが、レベル4の術を食らった霊華には別の人格が作られていた。
レベル4の力は負の感情を増幅させることだが、それは誰もが持ち合わせながらも理性で押し殺している感情を刺激して溢れさせるというもの。要は、1を100にも1000にも強化できるのだ。
しかし、霊華が持つ負の感情は皆無と言えるほど少なかった。
故に、レベル4は強引に負の感情を
負の感情を自在に操れる彼は、周りにいる悪魔の悪意を少しずつ抽出し、瘴気に変えた。それを吸い込ませて体内に入れることで負の感情を作ったのだ。霊華に根付いた悪意は、彼女の身体を糧として増殖する。先刻、祐哉の「邪気祓いの御札」で払えなかったのは、瘴気が非常に強力で、なおかつ無尽蔵に湧いていたからだ。
さて、負の感情が霊華の中に侵入し、もはや彼女の面影が無くなってしまった今、正の彼女は消滅したのだろうか。答えは否だ。負の感情は霊華の人格に溶け込むことができず、結果として「正」と「負」の2つの人格を内包する形になった。
そして今は負の感情が身体を支配しているのだ。
「外道、か。当然だろう。
「その割に静かだな。理性を失って暴れ狂うものかと思ったが?」
「負の感情と言ってもいくつか種類がある。もちろん、破壊衝動に身を委ねることもあるが、今の私は人間の哀れで惨めな姿を見ることに快楽を得るのだ。この身体の持ち主が良い例だ。現に今、己の無力さに涙しているのだぞ? 実に儚く、美しい。嗚呼っ! もっと見せて欲しい!!」
「…………あっそ」
清々しい程の屑だ。
ここまでくると却って冷静になれる。
「どうでもいいけど、隙だらけだぜ」
祐哉は創造した御札を霊華の額に貼り付けた。
この札は瘴気と負の感情を祓うというもの。
ピンポイントで都合良くできるのが『物体を創造する程度の能力』だ。
普段ならば、相手の能力を対策し尽くし無力化するような使い方をしない。
何故なら、その行為は彼にとって、相手の矜恃を踏みにじり、侮辱することにほかならないからだ。
しかし、「自分の主義」と「霊華を救うこと」どちらが大切かと言えば当然後者に天秤が傾く。
故に、この一件が始まってから常に全力で能力を使っているというわけだ。
「無駄だ」
だが、その全力もまるで意味を成していない。
霊華に貼ったお札が、次の瞬間には霧散してしまった。
──まただ。一体どうして? こいつの能力か?
「ふふ、本当に便利な力だな。この女とお前は相性が良いようだ。お前にとっては最悪だがな」
「どういうことだ」
「さあ? お前に教えて私に何の得がある? ──さて、今の私は気分が良い。お前がこの女のことを諦め、あの方を攻撃しないと誓うのなら見逃してやろう」
「おい。その約束はよ、俺に
「阿呆か? 貴様の命が助かるのだ。それともまさか、この後に及んで私に勝てるとでも思っているのか?」
「ハッ、阿呆はお前だろ。大切な子が独りで泣いているっていうのに、それを見捨てて逃げるやつがどこにいるんだよ!」
「ほう。では、私からこの女を取り返してみせろ。尤も、それは不可能だがな。私が完全にこの身体を支配したとき、お前は敗北するのだ。そこで絶望したお前の姿を見るのもまた一興」
『……祐哉、恐らくですが霊華は貴方の創造を打ち消す能力があります。どういった理屈かはわかりませんが、そうとしか考えられません』
──なるほど。それなら全ての疑問を解消できる。じゃあ、粘り強く攻めるしかないな
霊華から距離を取った祐哉は、自身の背後に
この刀は妖斬剣ではなく、全く新しい物……。
「
「こんな
──『感情のリンク』、『退魔』、『潜在意識強化』、『斬れ味大幅減少』付与
「ハッタリか? 私には冷徹な殺気を放つ刀に見えるが」
「
「ふむ。物体を生成し、力を付与する。お前は
創造した刀を霊華に向けて放つ。
当然、霊華は大幣で刀を次々打ち払っていく。
その際、彼女は祐哉の刀を「弾く」のではなく、文字通り「霧散」させている。
故に彼の攻撃は完全なる無駄と言える。
見かけ上は、だが。
「くっ……これは……?」
刀を打ち払う度に霊華の動きが鈍くなっていく。
その隙に、祐哉が手に持った刀で斬り込む。
「霊華を返せ!」
「無駄だと何度言えばわかる? お前が何度刀を作ろうが、私はその度に打ち消せるのだ!」
「……ああそうだろうよ。だがな、お前が何度刀を打ち消そうが、俺はその度に創造できる!」
祐哉はすかさず新たな刀を創造し、間髪入れずに巻き技を繰り出す。それにより、今度は霊華の手から大幣が弾かれる。
「……実に厄介な能力だ」
すると、たった今遠くへ飛んでいったはずの大幣が直線的な軌道を描いて彼女の手元に戻ってきた。
「厄介、ねぇ。創造を打ち消しておいてよく言うぜ。こんなことされたのは初めてだ。それに、遠くにある物を引き寄せられるのか? 厄介なのはお互い様だろ」
霊華が大幣を手にしたことで、戦いは振り出しに戻った。
──さて、どうしたものか……
ありがとうございました。
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祐霊の感想「闇の霊ちゃんめっちゃ強ない? びっくりしてんだけど」
東方霊想録の作品中で最も熱い戦いだと思う話を教えてください。
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