八雲紫とレミーの戦いが始まって数時間。
紫はレミーの苛烈な攻撃を受け続けても平然としていた。
この数時間で幾度も技が交差しているが、両名共ほとんど無傷である。
「クハハ! 管理者というだけのことはある。我を相手に渡り合うとはな。だが、貴様に我は倒せん。時間の無駄だ」
「時間の無駄? 周りをよく見てみなさい」
紫にそう言われたレミーは、素直に辺りを見渡した。
「──不味い。もう夜明けか」
「そう。貴女の時間は終わったの」
陽が昇りつつあることに気づいたレミーは、慌てて霧を出した。
かつての紅霧異変と異なるのは、霧の色が青いことだ。
「そんなことをしても無駄よ。これからは彼らの時間なのだから」
紫は自身の前にスキマを展開した。
そこから現れたのは、3人の人間だった。
───────────────
「フン、下等種3匹が雁首揃えてやってきたか。なんだその目は。よもや、貴様らもこの我を倒そうなどと抜かすまい?」
「見下した態度は相変わらずだな。まあ、好きにすればいいさ。さて、悪いことは言わない。俺達とスペルカードルールに則った弾幕戦をしよう。3対1だが、お前は強い。多少のハンデはくれてもいいだろ?」
「前に言ったはずだ。ルールに従うのは貴様らの方だと。ルールは我が作る」
「
「クハハ……貴様には我の力を見せつけたはずだ。どいつもこいつも、勝ち目がないことが何故わからん? おツムの弱さもそこまでいくと道化に見えるぞ」
レミーはそう言って嗤う。
「人間舐めんなよ上位種が。こと成長性に関しては俺達人間の方が優れているということを思い知らせてやる。そして断言しよう。お前は俺達に負けて消滅するんだ。最後に、もう一度だけ訊く。──弾幕戦に応じれば命だけは助けてやるが、どうする?」
「不敬者が。この我を見下すか! いいだろう。まずはお前から仕留め、他の女共も食い殺すまでだ!」
長かった押し問答は終わりを迎えた。
結局、話し合いで解決はできないのだ。
まあもっとも、誰も話し合いで解決しようと考えていないのだが。
「──行くぞ、下等種」
レミーが蝙蝠のような羽にグッと力を入れると、猛スピードで肉薄する。
──やっぱり速いな。でも……
俺は掌を目の前に翳し、
「あがっ!?」
手応えあり。
その鋭い鉤爪で俺を切り裂かんとしたレミーは、領域の壁に触れた事で跡形もなく霧散する。
「あら、もうすっかりモノにしたんじゃない? 霊華のお蔭かしらね」
「止してくれ、調子に乗れば失敗する。それに、もしモノにできたなら霊夢のお蔭でもあるだろ」
「──二人共、今ので一度仕留めたのは確かだけど、油断しないで」
そうだ。
「油断はしてないわ。暇潰しよ。──ほら、こうしている間に罠にかかったみたい」
咲夜の忠告に、霊夢は答えた。
周辺にはいつの間にか無数の御札が広がっていた。
「──『八方鬼縛陣』」
「札で我の動きを制限するつもりか。だがそれだけでは殺れんぞ」
「そんなこと、アンタに言われるまでもないわ。
「
──『
俺は、数え切れないほどの魔法陣を創造し、そこから無数の刀を放つ。ばら撒き弾に自機狙い弾、鉛直方向からの刀の雨が、レミーを襲う。
二人の連携技は高密度で、隙間と呼べる隙間は無かった。
しかし、レミーは持ち前の素早さを活かして弾幕を掻い潜る。
「クハハ……まさか貴様ら、弾幕ごっことやらをやっているのか? この弾幕の隙間は意図的に作られたものだな。舐められたものだ」
「いーや? 勘違いしてないか? もう俺達はお前を生かすつもりはない。なあ、霊夢?」
「当然。退治されたいみたいだからお望み通り退治するわよ」
そう、今行われている戦闘はいつもの遊びではない。正真正銘の殺し合い。加減などするはずもない。
要するに、弾幕ごっこでは禁止されている必中の攻撃が許されるわけだ。
霊夢は手に持った大幣を横に振り払った。それが合図となり、吸血
「小癪な!!」
「陣から逃れることができないと判断して、陣と刀を破壊するつもりか。だが、忘れていないか? 俺の刀はお前を滅ぼせるということを……」
──祓え、妖斬剣
創造した全ての刀が力を解放する。
「あがッ……」
妖斬剣が放つ
──これで、2回。
今、レミーは八方鬼縛陣と妖祓の五月雨の術中にある。レミーは復活するが、陣から逃れることができない以上、このまま時間が経過すれば倒せる。
否。
運命を書き換える能力を持っている奴をそう簡単に倒せるはずがない。
「おのれッ……!」
復活直後、
瞬間、蒼き大妖力弾が目の前を埋め尽くした。
普段の弾幕ごっこで見ているソレと同じものだが、やはり密度が異なる。隙間なく、猛スピードで放たれた妖力弾は一つの巨大な壁を構成している。
「──『スターバースト』」
「──『夢想封印』」
回避不能と判断した俺は、極太レーザーで壁を貫く。それによって生まれた穴を霊夢から放たれた光弾が突き抜けていく。
レミーは突如として飛来した光弾を躱すため、高速で飛び回る。十数個におよぶホーミング弾が何処までも彼女を追い続けるが、空中を高速で飛び回るレミーには当たらない。
「──執拗い!!」
レミーにとって、夢想封印を避けることは簡単だった。だが、霊夢は何処までも光弾の数を増やし、その数が数十個に達したとき、レミーが痺れを切らす。
掌に集めた妖力を解放、凝縮。それは形状を変えて槍となる。
レミーは蒼き神槍を薙ぎ払うことで光弾を蹴散らした。
──霊夢の夢想封印を弾くのか!? そんなこと、少なくとも妖怪にはできないはずだ。やっぱりコイツは強い。どうする?
「舐めんじゃないわよ!!」
突如として霊夢が叫んだ。
彼女が大幣を縦に振ると、レミーの上部に光弾が現れた。
「──なんだ、この大きさはッ!?」
そう、一口に光弾と言っても、その大きさは他の光弾の数十倍。直径10mは優に超えるだろう。
「神聖な輝きに呑まれなさい!!」
「グゥゥゥゥゥアアアアアアア!!」
超巨大という表現では足りない程大きな光弾に呑まれたレミーは3度目の死を迎えた。
──すげぇ……カッコイイな、霊夢! これが博麗の巫女の力なんだ!!
「ふぅ、このまま封印されてくれたらいいんだけど」
「どうだろうな。アイツの強さはこんなものじゃないから、余裕で復活してきてもおかしくないよ」
「でも、このまま夢想封印で攻め続ければそのうち倒せるんじゃない?」
「霊夢、貴女はあの規模の技をあと4回も使えるの?」
「行けるんじゃない? やったことないけど」
──マジかよ。
あれだけ大きな弾だ。それを作る為には膨大な霊力を消費するはず。
──霊力を最大までチャージした使い魔十体分は使ったんじゃないのか?
──もしかして、霊夢ってとんでもない量の霊力を持ってる?
『おや、気づいていなかったんですか? 彼女の霊力量は貴方の百倍はありますよ』
──なんかもう、流石っすねって感じ。
「クク……クハハハハハハ!! どうやら、下等種の中にも多少は力を持つ者がいるようだな。良いだろう。少しばかり力を奮ってやる」
「本当に生き返るんだ。まるで不老不死ね」
「ああ、だけど奴の命は有限だ。霊夢にとってはチョロいっしょ?」
今回の戦いで、霊夢の強さを改めて実感した。この子は俺の何倍も強い。霊夢がいれば勝てる。
「そうね。そんなに大したことないわ」
霊夢はそう言って、再び夢想封印を放った。
迫り来る光弾に対しレミーは不敵に笑うだけで避けようとする素振りをみせない。
光弾はそのままレミーに直撃する。
しかし──
「その技は
──どういうことだ? 夢想封印は確実に命中したはず! どう見ても効いてないぞ。
「……以前、そこの小僧と戦ったときは何度も同じ手を食い、手を焼いたからな……。その対策はしている」
──対策。…………同じ手を食い、手を焼いた……その対策……。
「2人とも、分かったかもしれない」
「なにが?」
「霊夢の夢想封印が急に効かなくなった理由だよ。簡単だ。アイツが能力を使ったんだ。例えば、『夢想封印が自分にとって弱点である運命を書き換える』とか」
「回りくどいことするわね。それなら『全ての攻撃に強い運命』に書き換えればいいんじゃないの?」
「まあね。でも、それはできないんじゃない? 俺たちが思っているより便利な能力ではないのかもしれない。ある程度の制約がある可能性がある。例えば、さっき言った運命の改変を行うには『対象の技を一度食らう必要がある』とか、『一度死まで追い込んだ技にしか使えない』とか」
まあ、能力の詳細が分からない以上、仕組みを考えても仕方ない。
「っと……俺が言いたいのはこんなことじゃなくてだな。
「それならそうと言いなさいよ」
「え、すみません……」
「2人とも、集中して」
突如、地上から真紅の線が伸びた。それは真っ直ぐにレミーの元へ向かっていく。
──速すぎてよく見えないけど、アレは多分レミリアの……
レミーはその
「やはりこの
紅槍の性質を瞬時に見抜いたレミーは、神速で迫る槍を
レミーの
──この軌道、狙いは俺か!!
「くっ……」
咄嗟に縮地を使おうとするが迫る槍の方が一瞬速い。
──死……
───────────────
──時が止まる。
「……ヤツめ、お嬢様のグングニルを乗っ取ったのか」
モノクロになった世界の中で唯一動ける者が呟いた。
「そのまま自分の技で死になさい」
時の支配者は手に持った懐中時計の蓋を閉じた。
───────────────
──??? 何が起きた?
目の前には蒼き槍がある。それは間違いない。
しかし──
「何事だ!? 何故槍が我に向かってきているのだ」
そう、「
「……フン、原因はわからんが我には当たらんぞ?」
そのままレミーを穿つと思われた蒼槍は、ジグザグに軌道を変えた。物理法則を無視したその動きは明らかにレミーの力の影響を受けている。
つまり、どうあっても槍は俺に当たる。
「させないよ! 『スピア・ザ・グングニル』!!」
声と共に、地上から真紅の槍が飛んで来る。それは蒼槍に衝突し、爆発する。
「──必中の槍がこんなに厄介だとは思わなかったわね」
「咲夜さん!?」
気付くと咲夜に抱えられていた。よく見ればさっきとは違う場所に移動している。
「助かりました。あのままだったら槍の直撃は免れても爆風でやられてました」
「危なくなったらまた助けるから、どんどん攻めて」
助かるな。咲夜が援護してくれるなら俺達は防御を捨てて特攻できる。
「ふむ。多すぎるな。1匹ずつ相手にしていては埒が明かない。ならば──」
「──嘘だろ……」
レミーが手を上げると、背後に無数のグングニルが次々に生成されていく。
「あれじゃまるで祐哉の……」
霊夢の言う通り、無数の武器を生成して投擲する攻撃は俺のやり方と似ている。
「でも、規模が違うぞ。アレは俺達どころか、下にある湖や紅魔館、その周辺ごと穿つだろう」
「クハハ。最早逃げ場はない。先刻貴様らが我にしたことだ。卑怯とは抜かすまい? ──せめて足掻いてみせろ」
レミーが手を振り下ろすのを合図に、不可避の群槍が飛来する。
「──『スターバースト』!!」
「──『夢想封印』!!」
「──『殺人ドール』!!」
俺は7つの魔法陣を創造し、それぞれから極太のレーザーを放つ。
霊夢と咲夜も各々の技で迫り来る蒼群槍に立ち向かう。
──ダメだ! グングニルの力が強過ぎて相殺できない!!
──明鏡止水を使うか? だが、この数の槍を削るには霊力が足りない。
明鏡止水は、無数の攻撃に対して弱い。何故なら、この技は物体が領域に侵入する度に創造の力を使うからだ。創造には霊力を用いる。一回の創造に使う霊力は少なくても、塵が積もって馬鹿に出来なくなる。
──妖斬剣でもこの数のグングニルは祓えない。やるならそれこそ神様並の力が必要だろう
──どうする、どうする! どうする!?
霊夢も咲夜も、作戦があるようには見えない。
このままでは全滅する──。
ありがとうございました!!
よかったら感想ください(˙◁˙)
東方霊想録の作品中で最も熱い戦いだと思う話を教えてください。
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