東方霊想録   作:祐霊

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どうも、祐霊です。
最近高評価を頂いてモチベが向上したので、霊華視点の番外編を書いてみました。(評価ありがとうございます)
時系列としては110話頃の話です。まだ霊華は色々悩んでいます。


番外編 #124「私にできること」

 神谷くんが帰ってきた日に宴会をして、その翌日にレミーという吸血鬼に襲われた。逃がしてもらった私は無事だったけど、彼は全治3ヶ月の怪我を負って入院することになった。しかし、次の日には完治して退院した。

 

 これらがたった3日間のうちに起こったなんて、誰が信じるだろうか。とても慌ただしい3日間だったけど、今度こそゆっくりできるはずだと期待していた。

 

 それなのに──

 

「今日1日祐哉を借りるわ。でも安心して。夜にはちゃんと返してあげるから。存分に夜を楽しんでね」

 

 紫さんにそう言われ、私は神社に帰ることになった。

 

 神社まで送ってくれた紫さんが霊夢に何かを話すと、霊夢まで出かけてしまった。

 

 ──皆、忙しいのかな。寂しいな……

 

「さて、霊華。美味しい和菓子を持ってきたのだけど、一緒に食べない?」

 

 ショックが大きかったのでそんな気分ではなかったけど、笑顔で箱を差し出す彼女の誘いを断ることはできなかった。

 

「ありがとうございます。お茶を淹れますね」

 

 ───────────────

 

 紫さんが持ってきてくれたお土産はカステラだった。濃厚な玉子の味がベースで、ザラメが程よい甘味を醸し出している。人工甘味料のような不自然な味はしない、高級そうなカステラだ。

 

 ──わあ、美味しい。

 

 外の世界で食べたカステラはスーパーに売っている安物だっただけに、思わず目を見開くほど美味しい。

 

 私の様子を見て僅かに微笑んだ紫さんも、菓子楊枝で一口サイズに切って口にする。

 

 ──私だけこんな美味しい物貰って皆に申し訳ないな……

 

 ──神谷くんと霊夢はどこに行ったのかな。また危険な目に遭わないと良いんだけど……

 

「祐哉が心配?」

 

 考え事をしていたのがバレたみたいだ。それにしても、何で心配してることまで分かったんだろう? 

 

「えっ…………はい……」

「心配せずとも、彼は強いわ。だから大丈夫」

 

 紫さんがそう言うくらいだから、相当強いのだろう。

 

「でも、神谷くんはしょっちゅう永遠亭に入院しているんです。昨日なんて全治数ヶ月の怪我をしたんですよ。それなのにいつの間にか治ってるし……何がなんだか分からなくて……。きっと能力で治したんだろうけど、私は不安なんです。あれだけの傷を治せる力にリスクがないとは思えません。仮にノーリスクだとしても、神谷くんは怪我を恐れなくなるかもしれない。……どっちにしても、このままじゃいつか……神谷くんが…………」

 

 頭の中でぐちゃぐちゃになっている考えを吐き出していく内に不安な気持ちが一気に強まった。

 

「……かみやくんが…………しんじゃうんじゃないかって…………!」

 

 目頭が熱くなる。紫さんの前で泣くのは恥ずかしいので俯いて隠そうとしたけど無理だ。

 

 紫さんは黙って私の横に座り直すと、まるでお母さんのように優しく抱きしめてくれる。

 

 気を使ってくれたのはありがたかった。

 

 でも、素直に喜ぶことはできない自分がいる。

 

 ──同い年の霊夢達は心も身体も強い。自分より格上の存在に対しても怯まずに立ち向かえる。

 

 ──それなのに私はどうだ。こんなところで、泣くことしかできないなんて、情けない……

 

 ──私は元高校生だ。もう、大人に慰めてもらうような歳じゃない。

 

 ──いつまでも泣いてちゃダメだよね。でも、どうしたらいいのか分からないよ……。私はただ皆と……神谷くんと一緒に過ごしたいだけなのになぁ。

 

 ──「もう戦わないで。危険なことしないで」って言いたいけど、私のワガママで神谷くんを縛り付けたくない。せめて無事に帰ってきて欲しい。

 

 ──何か私にできないかな……

 

「本当に、あの子は幸せ者ね」

「え……?」

「だってそうでしょう。あの子は、こんなにも愛されているのよ」

 

 宴会のときも言ってたな、紫さん。

 

 愛してる、かぁ……。

 

 ちょっと前の私は首を傾げたかもしれないけど、今は違う。

 

 ──私は、神谷くんが大好きで大切で、愛してるんだ

 

「あ、その、神谷くんには内緒でお願いします……」

「あら、もう気付かれているかもよ?」

「ふぇっ!? え!? そうなんですか!?」

「ふふっ。良い反応ね。……まあ、可能性はあるんじゃないかしら」

 

 わわわっわわわたしの気持ちが、気付かれている!?!? 

 

 ──え! やだやだ! そんなの……恥ずかしい! 

 

「貴女は感情が豊かなのね。見ていて可愛らしいわ。なるほど、彼はそこに惹かれたのね」

 

 大変だ。動揺して紫さんの言葉が頭に入ってこなくなっちゃった! あああああああ恥ずかしい……顔と耳が熱い。絶対赤くなってるよぉ! 

 

 恥ずかしくて目を瞑っていると、肩を叩かれた。目を開けるとグラスを持った紫さんが居た。

 

「水を飲んで落ち着きなさいな」

「あ、ありがとうございます……」

 

 私は受け取った水を一気飲みした後深呼吸する。

 

「その、ごめんなさい。おもてなしする側なのに……」

「気にしないで。よく遊びに来てるから物の配置は知っているのよ。それより、落ち着いた?」

「おかげさまで……」

「良かったわ〜 これでやっと本題に入れるわね」

「本題?」

 

 紫さんは向かいの席でお茶を一口飲むと少し真面目な雰囲気で話し始めた。

 

「私の見立てだと、貴女は祐哉の助けになりたいと考えているけど、どうすればいいか分からず悩んでいる。という感じなんだけど、当たってる?」

「当たってます! 凄いですね」

「結論から言うと、貴女の望みは叶えられるわ」

 

 紫さんは立ち上がると「ついてきて」と言って歩き出した。

 

 紫さんが向かった先は御札や御籤(おみくじ)などの授与品が保管してある部屋だった。箪笥の引き出しを上から順に開け、目当ての物を見つけた彼女はそれを取り出した。

 

「今からこれを作りましょう」

「御守り、ですか? ごめんなさい、私はまだ神事のお手伝いしかしたことがなくて、授与品を作ったことはないんです」

「問題ないわ。ねえ、御守りってなんだと思う?」

「……持ち主を守ってくれる有難いアイテム……?」

「平たく言えばそんな感じね。嬉しいことに、これを作れば祐哉を守れるのよ」

 

 御守りは神様の御加護が宿った物。これは嘘っぱちではなく、本当のことだ。ただし、神職の人が作ることで初めてその効力を発揮するから、私のような素人が作っても気休めにもならない。

 

 ──紫さんはまだ私を慰めてくれてるのかな……

 

「素人が作った御守りが役に立つのか疑問に思っていそうな顔ね」

「──! ……なんでもお見通しなんですね。巫女見習いが作っても効果があるんですか?」

「この場合、作り手が神職である必要はないわ。大事なのは持ち主への想いよ」

 

 紫さんが言ってることを理解する前に裁縫箱と布袋、御札と小さい木板を渡された。

 

 そのとき、紫さんは何処かで聞いたことあるようなフレーズを発した。

 

「想い人の安全と必勝を祈願した世界でたった一つの御守りを作ろう。──創刊号特別価格、今なら無料! ()()()()()()()()()♪」

 

 ──ディ〇ゴステ〇ーニ? 

 

「久しぶりに聞きました。外の世界のCMなのにご存知なんですね」

「外の世界からの漂流物を見たことがあってね、部品が足りなくて外の世界を探しているときにたまたま耳にしたのよ」

 

 確かに、あれは一回で完結しないもんね。

 

「さあ、早速取り掛かりましょう」

 

 居間に戻ると、紫さんが御守りの作り方を教えてくれた。

 

 まずは布袋に刺繍をするのだが、特別性ということで不思議な紋様を縫うことになった。

 

 その際は必ず神谷くんのことを考えるように言われた。紫さんによれば、相手の安全や幸福を願いながら御守りを作ることで効力が強まるとか。

 

「貴女の祐哉に対する気持ちは世界で一番強く、美しい。だから、完成すれば祐哉を必ず護ってくれるわ」

「頑張ります」

 

 そこから半日程刺繍をした。お昼前に始めて、夢中になっていたらご飯を食べることもなく夕方になっていた。随分とかかったけど遂に完成だ。

 

「次ね」

 

 紫さんに言われた通りの手順で木板と御札を布袋に入れて封をする。

 

「さて、ここからが本番よ」

「あれ、そうなんですか?」

「今のは下準備。これから1週間、常に霊力を注ぐのよ。勿論、心を込めてね」

「1週間、ですか」

「注意点がひとつ。注ぐ霊力は量より質よ。少しずつ丁寧に注いでね」

 

 ──なんだか難しそうだけどやってみよう。

 

 早速御守りに霊力を込めてみると、思いの外簡単にできた。

 

 ──よくよく考えると普段から霊力を込める修行をしてたな。慣れてるけど、これを1週間も続けられるかな? 

 

 ──思えば、この技術を教えてくれたのは神谷くんだったなぁ。御札を真っ直ぐ飛ばせなくて悩んでいた私に「御札に霊力を込めたらどうか」ってアドバイスしてくれた。やってみたら本当に御札を飛ばせたんだよね。嬉しかったなぁ。

 

「上手上手。その調子よ。──さて、私はそろそろ戻るわね。続きは霊夢に聞くといいわ」

「良かったらお夕飯食べていきませんか? 御礼も兼ねてご馳走させてください」

「ごめんなさい。今日は用があるの。また今度来るから、そのときはお言葉に甘えさせてもらうわ」

「分かりました。今日はありがとうございました」

「頑張ってね」

 

 紫さんはそっと微笑むと、スキマを開いて中に入っていった。

 

 ──御守りかぁ。神谷くん、喜んでくれるかなあ

 

 私は手に握った御守りを胸に近づけて祈る。

 

 ──神谷くんを守ってあげてね

 




ありがとうございました。
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東方霊想録の作品中で最も熱い戦いだと思う話を教えてください。

  • VS妹紅(#27-29)
  • VS鈴仙(#33)
  • VS十千刺々(#38-40)
  • VSレミリア(#46)
  • VS風見幽香(#71)
  • VS EXルーミア(#86-87)
  • VS分裂野郎(通称)(#89)
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