東方霊想録   作:祐霊

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どうも、ストックが無くなった祐霊です。

絶賛鬱な主人公君。早く立ち直ってくれい。前回よりかは暗くないと思います。

では楽しんでいってください。


#12「濁った心、熱いお茶」

「はぁ……」

 

 神社に戻った後俺は一人縁側で項垂れている。冬特有の乾いた空気が身を包む。風がないので今日はそこまで寒くない。

 

 ──真っ黒だ

 

 身体は酷い脱力感に襲われ、まるで底なし沼に足を踏み入れたような精神状態だ。そんな暗く濁った気持ちで空を見上げる。

 

 ──ここの星は凄く綺麗だ。

 

 俺の気持ちとは正反対の空。雲一つない満天の星空だ。多くて数個程度しか見えない外の世界とは違って、ここでは文字通り無数に見ることができる。

 

 ──疲れたな

 

 本当に……疲れた。

 

 白玉楼で出会った妖夢は思っていたよりもしっかりしてる印象を受けた。俺の知識では周りから半人前だと言われていたのだが、成長したのかもしれない。今の時系列が分からないからなんとも言えないのだが。

 

 白玉楼に続いて永遠亭に行こうとしたものの、十千刺々に襲われて絶望的な状況に陥った。あの少女が来てくれなかったらどうなっていたか……。

 

「今のお前では私に勝てない、か」

 

 そんなの、当然だ。だってあの人は()()()()なのだから。弾幕ごっこで戦うことが前提だろうが、それにしたって無茶だ。

 

 ──もっと無茶なことをしていたくせに、何言ってんだかな

 

「無理に行く必要はないけど……悔しいな」

 

 折角幻想入りしたのだから、色々な人に会って話したい。それにはある程度の強さが必要だ。今でも充分。そう思っていたが甘かった。俺の甘い認識が他人を巻き込んでしまった。

 

 ──もっと、力を付けないと

 

 何より、女の子一人守ることもできなかった自分が情けない。

 

「神谷さん、隣いいですか?」

「いいけど、寒いよ?」

「そう思ってお茶持ってきました」

「ありがとう」

 

 居間からやってきた霊華は、お盆を隣に置いて座った。……湯呑みがものすごく熱い。暫く置いておこう。霊華の湯呑みは熱くないのだろうか。普通に飲んでいるし、ずっと手に持っている。

 

「寒いのにどうしてここにいたんですか?」

「考え事してた」

「あ、邪魔しちゃいましたか?」

「大丈夫だよ」

 

 そこまで話すと、二人とも黙ってしまった。今は人と話す気分ではない。溜息が零れそうになるのを堪える。

 

「今日は大変でしたね。疲れちゃいました」

「ごめん」

「え? 別に神谷さんのせいじゃないですよ」

「違う。竹林で、守るとか言ったのに守れなかった」

「いやいや、何度も守ってくれたじゃないですか。神谷さんがいなかったら私は生きてないですよ?」

 

「あの妖怪が出てきた時はもうダメかと思いましたけどね」と言って苦笑いを浮かべる。

 

 ……ダメなんだ。“守る”といった以上、失敗は許されない。例えたったの一回でもだ。その一回の失敗で命を落とすのだから。刺々の件だって、あの人が助けてくれなかったら今頃……。

 

「神谷さん、相談に乗ってもらえませんか」

「いいよ」

 

 霊華はお茶を一口飲んでから話し始めた。湯呑みが熱いだけでお茶はそんなに熱くないのかな。……そもそも湯呑みを持てないんだけど。

 

「昨日と今日だけでも、私がいた世界とは全然環境が違うことがわかりました。もし幻想郷で暮らすなら、ここのルールに従わなければならない。妖怪はとても怖いけど……でも、この世界の人たちは皆生き生きとしていて、魅力的だなって思うんです」

「うん。それは同感だ」

「私、もっとこの世界を見てみたいんです。でも、元いた世界に戻れないとなると、どうしたらいいのかわからなくて……」

 

 霊夢曰く、幻想入りして一週間以上経過すると戻ることが難しくなるらしい。博麗大結界を弄る際の危険が増すとか。

 

 紫の力を借りればなんてこともないのだろうが、彼女は本来、冬眠する時期らしい。……地中で眠るのかな。

 

 そんなどうでもいい事を考えていると、居間から霊夢の声が聞こえた。風呂が空いたようだ。

 

「難しいね。まだ時間あるしお風呂でじっくり考えてみたらどうかな? また相談に乗るから」

「そうします」

 

 霊華が風呂に向かったところで俺は再び湯飲みを手にとった。

 

「──()っつ!?」

 

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「なあ霊夢。俺のお茶めちゃくちゃ熱いんだが」

「ふっ……そうなの?」

「おい今笑ったろ。嫌がらせか?」

「私じゃないわ」

「嘘付け! 寒い環境に置いていたのに冷めないのはおかしいだろ」

「うるさいわねー! 暇つぶしよ暇つぶし。なに? 駄目? 何か文句ある?」

「大アリだよ」

 

 何で俺は逆切れされてるんだ。まぁいいけど。

 

 炬燵に入って蜜柑を取る。良かった、甘い。食べごろだ。霊夢は炬燵に顔を伏せている。風呂上がりに汗かいたら風邪引くぞ? そのまま寝るなんてもっと駄目だからな。──さて、

 

「ねえ霊夢」

「ん~?」

()()()のことなんだけど、もし残るなら人里に住ませるの?」

「そうね。……いや、それはそれでめんどくさそうね。博麗の巫女そっくりだし。服もなんか被ってるし」

「ああ、可愛いよね」

「どっちが? 服? 霊華?」

 

 話の流れ的に服一択だと思うが。霊華も可愛いとは思うけどさ。

 

「霊華、可愛いよね。祐哉も思うでしょ?」

「……そうですね」

「えへへ」

 

 いや、何で霊夢が照れるんだよ。確かに霊夢と霊華はそっくりな見た目だけども。……それはそうと今の「えへへ」って奴、可愛かったな。よし、ちゃんと言ってみるか。

 

「霊夢、可愛いよ」

「あー、そう」

 

 は……? いや、は? なんか反応おかしくない? 「可愛いよ」って言うのに結構勇気を振り絞ったんだぞ。

  

「あの子、うちに住ませようかな」

「そっくりだから気になるの?」

「今更もう一人増えても変わらないわ」

 

 ふむ。取り敢えずこれで家の確保はできた。あとはあの子次第か。

 

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 冷えきった布団の中で思考を巡らせている。あの後、霊夢との話は思わぬ方向へ進み、割と大きな内容になった。

  

「あの子が残るならもっと強くならないとな」

 

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「もうひとつ聞きたいことがあるんだけど」

「だめ」

「……俺、霊夢に何かした? 今日はやけに意地悪だね。まあいいや。単刀直入に聞くけどさ──()()()()()()()?」

「は? なんでよ」

 

 俺は()()()()()()()()()()()を霊夢に話した。しかし、他にそのような報告を聞いていないらしい。となればこれは異変ではないのかもしれない。だとするなら……。

 

「あの子と一番長くいる貴方が言うならそうなのかな。だとすると……」

「「()()()()()()?」」

 

 面白いことに、俺と霊夢は同じ結論に至った。

 

「それなら帰らせたほうがいい?」

「どうかしらね。発現した以上、外の世界でも効果は発揮するんじゃない? 凡そ霊力を使わない()()()()()()()、つまり体質なのだから」

「そうだとして、何の問題が?」

「そうね、分かりやすく言うと()()()()よ」

「ああ」

 

 なるほど、事故や病気は勿論、強姦に痴漢、空き巣や通り魔等といった犯罪に巻き込まれる可能性もあるっていうことか。そんなことになるくらいならここにいたほうが安全だ。

 

「外よりもこっちのほうが自己防衛手段もあるでしょうね」

「弾幕ごっこか。なるほど」

「ま、教えるなら祐哉が教えてね」

「面倒臭がらないでくださいよ先生。同じ博麗なんだし、使()()()かもよ?」

 

 霊夢は少し考えた後、僅かに笑みを浮かべて頷いた。

  

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 今日は改めて幻想郷の力関係を思い知った。この失敗は絶対に無駄にはしない。次は必ず俺が守る。そのために俺は強くならなければならない。

 

 あの時──刺々が霊華を貫こうとした時、あの状況でもスターバーストは撃てたはずだ。俺の能力ならば彼女を巻き込む心配もなかっただろう。

 

 これに気づくことができなかったのは俺の修行不足だ。絶対に使いこなせるようになってみせる!

 

 早速朝から行動しよう。




ありがとうございました。ちょっとずつ話は進んでます。5ミリ程度でしょうか。
紫の行動、なんか変ですよね。何かあると思いますよ。
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