最近の話には独自解釈要素が含まれているので、混同しないようお願いします……
「……せん、にじゅう……! はあ、はあ、21、22……うっ……ダメ、だ」
日の出前に起床し、ラジオ体操とストレッチをして凝り固まった身体を解した俺は、日課の創造をしていた。
いつもは針を千本創造するのが日課だったが、今日からは創造する物を針から刀へ変更し、ノルマの数を千以上へ増やした。
強くなると決意したのはいいが、どうすればいいのか分からない。霊夢や魔理沙が起きるまでの間、一人でできることをしていた。
「はあ、やっぱ千を超えてくると一気にきつくなってくるな」
「それが貴方の限界なんでしょ」
地に座り込み、疲労故に震える身体を休ませていると、後ろから
「でも霊力は確実に増えてるでしょ? 伸び代はあるはずよ」
縁側の方を見ると、霊夢が欠伸をしながら手を振ってきた。寝間着姿の彼女も可愛い。本当、推しと一つ屋根の下で暮らせるなんて、幸せすぎる。
「おはよう、霊夢」
「おはよ。今日はやけに早いわね」
「うん。……決めたんだ。強くなるって」
「……ふーん? ま、頑張って。私はもう何も教えられないから、頼るなら魔理沙にしてね」
ウッソだろお前、そんな「もう教えることは何もない。本当に強くなったな、○○」という師弟関係のテンプレをぶち込んできても誤魔化せないからな。単純に教えるのが嫌なんですよね分かります。
そう、霊夢は教えることが好きではないのだ。得意ではないというのと、ただ面倒臭いという考えなのだろう。三ヶ月の修行だって霊力の基本くらいしか教わってない。技術面の殆どは魔理沙に教わったのだ。魔理沙のマスタースパークを真似た、スターバーストがわかりやすい例だ。
そもそも霊夢は努力という物を軽んじる傾向がある。天才故になんでもできるのだ。ジャンプの漫画に出てくる天才は努力を惜しまないが、彼女は努力を惜しむ天才である。こう言うと霊夢が弱く思えるかもしれない。だがそれでも霊夢は幻想郷最強と言ってもいい程の力を持っている。それが博麗の巫女──博麗霊夢だ。
「よっす! お? なんだ、今日はやけに早いな。たまには早く来てみるもんだな」
「おお魔理沙、おはよ。待ってたよ」
「おはよう。待ってたってどういうことだ?」
「教えて欲しいことがあるんだ」
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「なるほどなー、あの不老不死、意外と熱い奴なんだな。それでお前はあいつに勝ちたいと」
「厳密には違うけど、あの人に認めてもらえるくらい強くなりたい」
「しかしそんな竹妖怪がいたとはな。霊夢は知ってたか?」
「初耳ね。竹なんか折ってないし、会わなくてもおかしくないんじゃない?」
霊夢と魔理沙に昨日の出来事を全て話した。やはり二人とも刺々を知らなかった。それもその筈だ。原作に出てきていないのだから。
あの強さから見て、「原作に出てくる程の強さが無い」という訳では無いだろう。一体、十千刺々は何者なのだろう。
「それで、弾幕ごっこにおける強さがなんなのか知りたいんだ」
「弾幕の速さ、密度、美しさじゃないか? 後は火力だな!」
「美しさ……」
「そう、それに関しては幽々子や紫なんかが凄いな。と言っても人間が真似できるようなものじゃないが……」
反魂蝶と弾幕結界かな? 確かにアレは人間の力では無理がありそうだ。そもそも大妖怪の技を真似ようとすること自体が無謀である。恐らく霊力が足りない。
弾幕ごっこは美しさを競う
敢えて避けられる隙間を作った弾幕を張り、被弾した方が負けとなる。もし仮に美しさのない弾幕だったらどうなるだろうか。美しさが無ければ、効率を求めるはずだ。それは相手を迷路世界に取り込み、嵌めるだけの単純作業である。これでは機械と会話をするのと同じだ。
『美しさ』という要素を取り入れることで、弾幕に各々の個性が現れるようになる。それは感情とも言えるだろう。
そう、弾幕ごっこは決闘法であっても遊び。遊び心は美を生み出し、美は人に感銘を与える。
「うーん、美しさってよく分からないんだよな」
「ダメだなあ、お前には乙女心が足りてないんだ」
「そりゃ俺、男ですから」
そういえば、弾幕ごっこは女の子の遊びだったか。この世界の決闘法は弾幕ごっこ。男はどうすればいいのだろうか。殴り合えばいいのかな?
でも、男だからと言って弾幕ごっこをやっては行けないということは無いらしい。少なくとも俺がいるこの世界では。男女差別がなくて助かった。
仲間はずれって辛いよな。忘れもしない小学二年生。同じマンションに住んでいる子達が遊んでいるから、仲間に入れてもらおうとしたのに「君とは遊ばない」と言われたんだ。泣いたよ。
「単純に、弾幕が美しければ見蕩れるだろ? 相手の弾幕に惚れたらお終い。あっという間に被弾するってわけだ」
「なるほどなあ」
美しい物の強みは理解した。しかし俺には難しい。となれば──
「密度と速度ね。貴方の創造ならできるんじゃない? 一度に創造する弾を増やせばいいのよ。見た目は不可能に見えて実際は避けられる。勝ちにこだわるならこれが理想ね」
「まあ、固く考えることもないと思うけどな。いっそ弾幕を捨てて、全部の弾を避けきるのはどうだ?」
などと無茶なことを言う魔理沙。いくらなんでも手持ちのスペルカード二枚は少なすぎると思うんだよ。一試合の内にスペルカードが重複するのはダメだし。
「うーん、お前は面白い能力持ってるんだし、上手く行けば個性の塊になると思うんだが……」
「能力、ねえ。……スペルカードでなくても、創造した物を使うのはアリなの?」
「問題ないわ。勿論必中と必殺は厳禁だけど。皆意外と能力を使ってるのよ?」
「咲夜とか平気で時間を止めてくるもんな」
なるほど。これはいい。考えておこう。
「そっか、じゃあ能力の研究をしようかな。何かいい方法ない?」
「ん? そんなもん決まってるだろ──」
魔理沙は立ち上がると、帽子を深く被って箒を構えた。
「──実践あるのみだ! 早速付き合うぜ」
「ありがとう魔理沙。お願いするよ」
「え、ちょっと待ちなさいよ祐哉。貴方──」
「──うっかり神社を壊したらヤバい。場所を変えようぜ」
霊夢の忠告は魔理沙に掻き消される。『霊力』という単語だけは聞き取れたのだが……なんて言おうとしたんだろ?
まあいい。今日こそ魔理沙に勝つぞ!
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「あーあ、もう勝手にしなさいよ」
今の祐哉は霊力が尽きかけているはず。折角止めようとしたのに聞かないんだから、もう知らない。
私が溜息を着くと、隣に気配を感じた。
「あら、霊華。おはよう。ちゃんと休めた?」
「おはようございます。お陰様で」
「丁度いいわ。今から祐哉と魔理沙が弾幕ごっこをするの。これを見たら決心できるかもよ?」
そう言うと霊華は私の隣に座ってきた。しかし寒いわね。
「祐哉、何か温かいもの頂戴」
「ん……これでいい?」
「ありがと」
「わぁ……温かいです。何だかブランケットとは違う温もりを感じますよ」
……へぇ? これはなかなか。
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「行くぜ、光符『アースライトレイ』!」
魔理沙は、帽子の中から取り出したいくつかの物体を俺の足元に落とす。
すると、その物体は光を放ち始めた。足元から生まれるレーザーが柱となり、動きが多少制限される。
「そらそら! ここからが本番だぜ」
魔理沙は弾幕を放ってくる。なるほど、動きを制限して被弾させやすくする構造か。
アースライトとは地球光のこと。月が太陽光を反射して放つ光を月光と呼ぶように、地球が放つ光のことを地球光と呼ぶ。
──魔理沙が投げたものは地球儀か。
イルミネーションのようなそれは、軈て時間を迎えて打ち止めとなる。
「──創造『
弾幕ノ時雨・刀。これは針を刀に変えたものだ。変更点は特にない。チルノと戯れた時の物と同じ密度。そんなものが魔理沙に通用するはずはなく、容易く躱されてしまう。
「前と比べて弾が鋭利になっただけだな。もっと密度を増やしたらどうだ?」
そう言われ、俺は一旦弾幕ノ時雨を止める。
「……いや、できることならしたいんだけど」
「ん?」
「──霊力尽きかけてるの忘れてましたあ!!」
「……あ"っ。 じゃあどうする。一旦閉めるか?」
「これをやってからね……! 星符──」
「手は抜かないからな? 恋符──」
マスタースパークとスターバースト。どちらが強いかの勝負だ。魔理沙と弾幕ごっこをする時、必ずこの力比べをするのだ。因みに勝ったことは一度もない。
俺は魔法陣を展開し、魔理沙は八角柱の箱──ミニ八卦炉を構える。それぞれから火花が生まれ、エネルギーが溜まっていく──
──はずなのだ。
「行くぜ、祐哉!」
「……お、おう」
──あれあれあれ? あれれ?
魔法陣にエネルギーが溜まることは無く、有ろうことか魔法陣さえも消滅してしまった。
本格的な霊力切れ。もう魔法陣を一回創造するくらいしか残っていない。終わった……魔理沙はコンマ数秒後には撃ち始めるだろう。時間の流れが止まって見える。
──まさか、死ぬのか?
馬鹿な。脳が死を悟るほど焦っているだけだ。まだ終わっちゃいない。冴え切った思考を働かせるんだ。
「──マスタースパーク!!」
魔理沙の必殺技が放たれた。軌道予告線は真っ直ぐ俺に向かっている。
「死んで、たまるかよっ!」
──創造!!
咄嗟に創造したソレはマスタースパークの軌道を逸らし、明後日の方向へ流れて行った。
『反射鏡』──それは読んで字のごとく反射する鏡だ。しかしただの鏡ではない。この鏡は
太陽光のように物理的攻撃力を持たない光は勿論、マスタースパークのような、破壊力を持つ光線も跳ね返すことができる。
理論は一ミリも理解できないが、取り敢えず助かった。
「な、なんだ今の!?」
「あ、もうダメだ。いよいよヤバい」
飛行を維持する力も尽き、浮力を失った俺は自由落下を始めた……
ありがとうございました。便利道具登場!
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