東方霊想録   作:祐霊

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ちわッス、年越しと共に闇の炎に抱かれた真・祐霊です(大嘘)

お待たせしました。今回も楽しんでいただけたら嬉しいです。


#14「私の悩み」

「んーーー!!」

「…………」

 

 神谷さんは霊力を使い切った影響で倒れそうになった。魔理沙さんの肩を借りて部屋に戻ると、直ぐに眠ってしまったらしい。

 

「あーー!!」

「…………」

 

 霊力と言うのは体力のようなエネルギーのことで、弾幕を作ったり空を飛ぶのに使う物だと教わった。

 

「〜〜!」

「うっるさいわね、何なのよ?」

「くっそー悔しいぜ!」

「あー?」

 

 魔理沙さんが何かを悔しがり、霊夢さんはそんな彼女を見て呆れている様子。

 

「私の全力が容易く跳ね返されたんだぞ?」

「知らないわよ」

「〜〜〜!!」

 

 霊夢さんに冷たい対応をされた彼女は、頭を卓袱台(ちゃぶだい)に付けると、駄々をこねる子供のように首を振る。

 

 霊夢さん曰く、魔理沙さんの全力──マスタースパークは彼女の必殺技だという。そんな技を跳ね返されてしまったのだから悔しがるのはおかしい事ではない。

 

「魔理沙さんの技、凄く綺麗でしたよ」

「そうか? へへ、ありがとな! あ、魔理沙でいいよ。それと、もっと気楽に話してくれ」

「私もよ。祐哉もそうだったけど、外来人は礼儀正しいのね」

「……分かった」

 

 私がいた世界では初対面の人には丁寧語や敬語を使うのが普通だったけど、幻想郷は違うらしい。こういうのなんて言うんだろう。カルチャーショック?

 

「ふう、じゃあ私はもう帰るよ」

「そう、おやすみ」

「おやす──は? まだ朝だぞ」

「私が寝るのよ」

「あんまり寝てばかりいると太るぞ」

「ん?」

 

 霊夢の静かな威圧を受けた魔理沙は、逃げるように飛んでいった。

 

「んー、おやすみ」

「えっおやすみ」

 

 霊夢は本当に眠ってしまった。炬燵に入って寝ると風邪引くのはよく聞く話だけど、大丈夫かな。

 

 ──幻想郷。魑魅魍魎の潜む世界。この世界において人間は圧倒的弱者。妖怪は人間を喰らい、人間は妖怪を畏怖する。これは2日間で身をもって学んだ。

 

 ──私は怖い。どうして皆は活き活きしているんだろう。怖くないのかな。

 

「……この世界が怖い?」

「え、起きてたの?」

「まあね。それで?」

「……うん。妖怪に人間は勝てないんだよね。襲われたらお終い。怖いよ」

「…………。全く、祐哉は何したのかしらね」

 

 霊夢は体を起こすと、真っ直ぐ私を見てくる。

 

「あのね、貴方は多分考えすぎてるのよ」

「え?」

「私はずっと博麗の巫女をやってるから、そんなに妖怪を怖く思うことは無い。でも、奴らが人間を襲った現場は何度も見てる。だから怖がる気持ちはわかるわ」

 

 霊夢は何かを思い出すように語る。その表情は心做しか暗く感じる。

 

「けどそれは大分昔の話。今はもう妖怪に喰われることは殆どない──って、貴方達は喰われそうになったのよね。うーん……例外かぁ」

 

 そう。神谷さんも言っていた。理性を持った妖怪は襲うことがあっても喰うことはないと。あの妖怪──十千刺々は理性を持っているように見えたけど……。

 

「その、例外ってどのくらいいるの?」

「いや、ほんとに少ないわよ。だって、食べたら力を失うようなもんじゃない」

「え?」

「妖怪は人間の恐れる気持ちを糧に生きるの。恐れてくれる相手を消すのよ?」

「あ……そうか」

 

 例外は殆どいない。となると単純に私たちの運が悪かっただけ? いや、アレは竹を切ったのが悪いのか。

 

「怒らせたら別だったりする?」

「まあ、相手によっては──ああ、そうか。竹を切って怒らせたんだっけ?」

「うん。……どうして知ってるの?」

「さっき祐哉に聞いたわ。妹紅の事もね」

 

 妹紅? 竹林で助けてくれた人の事かな。

 

「さて、これで分かったかしら。過剰に恐れることは無いのよ。でもね、幻想郷で身の安全が保証されているのは人里か博麗神社(ここ)くらい。出歩くなら誰かに付いてもらうべきよ」

「人里って、人間の里?」

「そう、今から行ってみる?」

「うん、行きたい!」

 

 こうして私は人里に出かけることになった。

 

 

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 その数時間後

 

「ん〜良く寝た。今何時──うっわまじかよ」

 

 夕焼けが見える。どうやらかなりの時間眠ってしまったらしい。ほぼ一日を無駄にしたが、その甲斐あって霊力は半分程回復した。

 

 霊力の回復は、体力と比べると少し時間がかかる。全回復するのは明日の朝くらいかな。

 

「凡そ千本の刀を創造するだけで霊力切れ、か」

 

 弾幕ごっこでスターバーストと弾幕ノ時雨を使った場合、通常弾幕に割ける霊力はほんの僅か。刀の本数で表すと四百から五百程度。

 

 弾幕ごっこで相手を追い詰めるには『弾の密度』『弾速』を上げるのが手っ取り早い。密度の強化を行った際に懸念されることといえば、戦える時間が短くなってしまうことだ。

 

 霊力の絶対数が変わらない限り、創造できる弾数は変わらないからだ。長く戦うには同時に放つ弾を減らさなければならない。しかし今度は被弾させることが難しくなる。

 

 必要最低限の弾数で、無駄なく戦うのは論外。弾幕ごっこのコンセプトを無視しているからだ。

 

 これを解決するには──

 

「需要曲線と供給曲線の均衡……つまり、『弾の密度』と『戦える時間』のバランスが最も良い割合を模索する……いや、無いな」

 

 確かにこれは理想かもしれない。だが霊力量に伸び代がある内は無駄だろう。均衡が直ぐにブレてしまう。

 

 ──となるとやっぱり、霊力を増やすのが一番かな

 

 これでも飛躍的に増えた方なんだけどね。最初なんか一分間の飛行さえ辛かったのだから。

 

「よし、修行しよ」

 

 

 

 

 

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 試しにスターバーストを何秒間撃ち続けられるか測ってみた。結果は大体二分。また倒れる訳には行かないので、霊力消費量は全体の四分の一に抑えてある。

 

 少し前までは短時間でもキツかったのだが、想定よりも長く撃てた。

 

 霊力が増えたからだろうか。しかしそれだけでは説明がつかない。霊力の増加量に対して発動時間が伸び過ぎだ。それよりは、消費霊力量が減ったと説明した方が納得いく。だが、そんなことが有り得るのか? 霊夢に聞いてみよう。

 

「おーい霊夢ー」

 

 ……居間に入ると、誰もいなかった。

 

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「わぁ……」

 

 人里は私が想像していたよりも賑やかだった。ちょっとした商店街みたいな雰囲気だ。外の世界には失われつつある文化。忘れかけ、知識(データ)でしかなかった光景を見て、私は感嘆の声を上げた。

 

「やっぱり珍しいの? 他の外来人も大抵同じような反応するのよね。祐哉は違ったけど」

「うん。実際に見たのは初めて。買い物はスーパーで済むからね」

「……うん?」

 

 神谷さんはどんな反応したんだろう。気になって聞いてみた。

 

「ウエノ? から……なんだっけ、あ、あき──」

「上野から秋葉原?」

「多分それよ。よく分かったわね」

「えへへ」

 

 上野から秋葉原。多分、上野駅から秋葉原駅まで行く途中にあるもの。アメ横の事だろう。有名だから知ってはいる。行ったことないけどね。

 

 けど人里とアメ横は雰囲気が大分違うんじゃないかな。

 

「あれ、あの人って……」

「ん? ああ、チルノね。話しかけてみる?」

 

 あの人、人間には見えないんだけど大丈夫かな。氷のような羽根付けてるし。コスプレにしては中々……

 

「あ、霊夢と……ニセ霊夢?」

「いや、この子は霊華。外来人よ。仲良くしてあげて」

「そっかー、あたいはチルノ。宜しく霊華! 霊夢とそっくりだね」

「よろしく、チルノちゃん。ひゃっ!?」

 

 差し伸べられた手を取り、握手をした。とても冷たい。氷みたいだ。

 

「言い忘れてたけどチルノは妖精よ。でも人里にいる限り妖怪には襲われない。決まりがあるのよ」

「あたいは何でも凍らせられるんだ! 今度カエルあげる」

「か、カエル?」

 

 カエルって、蛙? もしかしてチルノちゃんにとって価値があるものなのかな。つまり蛙を食べ──

 

「さ、行くわよ」

 

 チルノちゃんと別れ、人里の探索を再開する。

 

 こうして見ると、『如何にも妖怪!』という人がチラホラ見える。なんというか、人間からは感じない“チカラ”を感じる。これは霊夢も例外じゃない。

 

「ねえ、普通の人間は霊力持ってないの?」

「そんなことないわよ。皆ほんの僅かに持ってるわ。修行すれば霊力を扱えるようになるの。祐哉がいい例ね。急にどうしたの?」

「妖怪から感じるんだ。ここに来て初めて知った。霊夢も凄い人なんだね」

「──!?」

 

 そう、霊夢から感じるもの。これが霊力だと言うのなら、相当濃い。ここの人は皆そうなんだと思っていたけどそうではないみたい。思えば昨日会った人それぞれからも感じるものがあった。

 

「もしかして、紫さんと幽々子さんは相当強かったりするの?」

「ええ、まあ。……貴方、本当にただの人間なの?」

「えっ?」

「何も教えられていないのに霊力を感じ取ることができる。それは間違いなく才能よ」

「……私は特別なの?」

「そうね。魔理沙や祐哉にはない才能だと思う」

 

 ……私の才能。力。

 

 ()()()。才能なんて要らない。それがあるとろくな事にならないのだから……。この感覚は昔にも覚えがある。とても、辛い記憶……。

 

 ──どうしよう、()()()も私を虐めるのかな

 

「そうか、これからは知らないふりするよ」

「なんで?」

「だって、気持ち悪いでしょ? だから皆、攻撃するんだよね」

「なんでよ。別に、普通じゃないの? 私にもできるし」

「えっ!?」

「まあ、人間の中では私くらいしか持たない力を、外来人の貴方が持ってるんだから驚きではあるけどね。気持ち悪いとは思わない」

 

 ……この世界には、元いた世界の常識は通用しないのか。この世界ならもう、あんな思いしなくても済むのかな。

 

「ありがとう、霊夢」

「え? なにが?」

「ふふ、なんでもないよ」

 

 それから私達は甘味処で団子を食べ、他愛のない話をした後神社に戻った。

 

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「私は部屋で休むね。今日はありがとう、霊夢」

 

 借りた部屋に入り、灯りをつけて座布団の上に座る。ひんやりとした部屋には、神谷さんが作ってくれた卓袱台と箪笥、座布団しか置いていない。

 

「どうしようかな」

 

 霊夢は、私がここに残った時の衣食住の保障はすると言ってくれた。勿論そうなったら、ただの居候でいるつもりは無い。

 

 神谷さんが残ったのは、この世界を知っていたから。外の世界に無数に存在する創作世界。幻想郷はそのうちの一つ。どうしてそんな世界に行くことができたのかは分からないけど、そこは別にいい。

 

 ──この世界に残る事と、元いた世界に戻る。どっちがいいのかな。

 

 元いた世界には──友達がいた。今、向こうの世界では私が行方不明になっているのかな。……あ、でも一人暮らしだし、暫くは学校の無断欠席程度かな?

 

 将来の夢とかは特にない。小さい頃抱いていた夢は失ってしまった。現実を知った時、「将来の夢」は「将来就きたい職業」へと変わった。そんなものに未練なんて無いんだ。

 

 かといって、向こうの世界がつまらない訳でもない。友達と出掛けたり、美味しいものを食べる。これはとても楽しい。

 

 元いた世界に戻るメリットはコレだろう。

 

 じゃあ、デメリットは?

 

「……どうしてまた聞こえるようになったんだろう」

 

 私が幼い時に持っていた超能力のようなもの。動物の声を聞く力だ。それは当時の私にとって、当たり前の事だった。つまり、皆にもある力だと思っていた。

 

 私の力は特別で、他の人にはないと知ったのは幼稚園児の時だ。

 

 

 

 これは、私の根底を作り出した大切な記憶……

 

 




ありがとうございました。最近鬱っぽい話多いですな。でもやっぱり必要なんですよね。

次回、霊華は答えを出します。ぜひその過程を楽しみにしててください!
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