東方霊想録   作:祐霊

27 / 125
#26「スペルカード作成」

「来たね。早速始めるか?」

「……すみませんが今日はやめておきます」

「大分窶れているように見える。日々の疲れが溜まっているんじゃないか。なんなら連れて行ってやろうか、永遠亭へ」

「…………」

 

 永遠亭。迷いの竹林のどこかにあるというお屋敷だ。腕の良い薬師がいて、診療所を開いている。そこには会って話してみたい人がいるのだ。その為に俺はこの地に足を踏み入れた。前回は謎の竹妖怪──十千刺々(とおかずちくちく)に行く手を阻まれて探索は失敗に終わってしまった。

 

 眼前の不老不死、藤原妹紅に助けられて何とか無事に外に出ることに成功したものの、俺が竹林に入る事を禁止されてしまった。自由に入るには彼女を認めさせなくてはならない。俺が最近修行に専念している理由はこのためだ。

 

 彼女は言った。「案内してやろうか」と。永遠亭に行くことができれば俺の目的は達成される。だが──

 

「──いや、()()()()()()()()。俺は貴方に認めてもらってから堂々と行く! 必ず勝ってみせますよ」

「へえ、言うね。散々私に負けてるのにさ。まあいい。一度でも勝つことができれば認める。この私にたったの一度でも被弾させることができたら褒めてあげよう」

 

 そんな事があるならな、と笑う妹紅。1300年程生きているという彼女の戦闘経験は相当な物だろう。身体能力、経験、技、全てにおいて俺は劣っている。だが、弾幕勝負で勝つことは可能なはずなのだ。

 

「今日はこの辺で失礼します。また明日」

 

 一礼して神社へ帰る。今日も妖怪に合わないといいな。霊力がまだ回復しきっていないから戦いたくないのだ。一応こんな時の為の()()()があるが使いたくない。

 

 ───────────────

 

「ただいまー」

「おかえりなさい。今日は服が綺麗ですね」

「ああ、戦わなかったんだよ」

 

 神社に帰ると寝巻きを着た霊華が出迎えてくれる。手にタオルを持っているところから察するに、風呂上がりのようだ。まだ少し湿っている黒髪から何となく色気を感じる。

 

 ──変態か俺は

 

「そうなんですか。……修行大変そうですね」

「まあ、ね。でも自分の成長を感じられて楽しいよ」

 

 ───────────────

 

 ふと疑問に思った。何故彼は力を求めているのだろうと。毎日ボロボロになって帰って、泥のように眠る。翌朝早くに出かけて夜にまた疲れ切った状態で帰る。こんなに頑張れることはとても凄いことだと思う。私にはできそうにない。

 

 何が彼を突き動かしているのか気になった。尋ねてみようと思った時、脳裏に答えが浮かんだ。

 

 ──あの時のことを気にしているのかな

 

 迷いの竹林から帰った後、神谷さんは深刻そうに謝罪してきた。「守れなくてごめん」と。私は気にしていない。あの時彼に言ったように、寧ろ感謝している。だって彼がいなかったら私はとっくに死んでいるんだから。

 

 初めて幻想郷に来たあの日あの場所で妖怪に食われておしまいだった。そんな絶望的状況から救ってくれた。それだけで充分有難かった。

 

 十千刺々はとても強かったのだから、あんな事になっても仕方なかった。結果的にあの女性に助けてもらえたわけだし全く気にしていない。

 

 私は彼になんて声をかけたらいいのかな。

 

 

 

 

 

 ───────────────

 

「ふふふ、遂に完成したぞ。俺の使い魔がなあ! はははははははは!!」

「おめでとう祐哉。それと、元気そうでなによりだわ」

「使い魔の完成程度ではしゃぎすぎよ」

「うぐっ……ごめんなさい」

 

 だがこの10日間待ちに待った使い魔の完成だ。喜ばずにはいられない。思わず高笑いしたくなるのも仕方ないじゃあないか。

 

『おはようございます。我が主、Dr.祐哉』

「ドクターはやめてくれ。そんな偉くない」

 

 今回の彫像もお喋りするぞ! コミュニケーションを取れた方が何かと便利だからね! 

 

 この彫像には『絶対服従』『人工知能』『浮遊機能』『弾幕制御機能』『解析機能』『霊力・魔力変換機能』『人語理解』等など多数の機能を学習させた。機能がスロットの限界まで詰まっているため、これ以上学習させるには別の手段を取る必要が出てくる。まあ一先ずはこれでいいだろう。

 

「使い魔が完成したということはいよいよね」

「はい。早速試してみましょう」

 

 今から俺が試すのはパチュリーと共に練った秘策だ。新スペルカードの完成には使い魔が必要なのだ。よし、ここまで来ればもうすぐだ。

 

 ───────────────

 

「木と火を合わせたフォレストブレイズを打ち消す程の威力……合格ね」

 

 新スペルカードの作成を初めてから2日。数回の実験と修正を繰り返して漸く完成した。範囲、威力、美しさとあらゆる面を意識した最高のカードだ。

 

「やった……。パチュリーさん、ありがとうございました」

「お礼を言うのは早いわ。これで勝てなかったら試行錯誤のやり直しなんだから。ここまで来たら最後まで協力してあげる」

 

 パチュリーがパチンと指を鳴らすと、()()()()()になっていた床が一瞬で乾いた。図書館全体にかけられた魔法だろうか。これだけ広範囲に魔法を仕掛けられるのだから、彼女は凄腕の魔法使いなのだろう。

 

 やっぱり恵まれているな。

 

「明日は勝ちに行きます。良い報告ができるように頑張ります!」

「ええ、頑張って」

 

 ───────────────

 

「それなら今日はお赤飯を炊かなきゃかしら」

「まだ勝ってないですよ!」

「ああ、カツ丼の方が良かった?」

「いいっすねー、カツ丼!」

「夕飯に作ってあげる。肉は人肉でいい?」

「ありがとうござ──ゑ……?」

 

 咲夜にいよいよ妹紅と戦う準備ができたと伝えると、話の流れでカツ丼を作ってもらえることになった。……人肉で。

 

「待ってくださいそれは不味い。いけない。ちょっと里で肉買ってくるんでそれで作ってくださいお願いしま──」

「──じゃあね」

 

 なんてこった。俺が全て言い終わる前に咲夜がいなくなってしまった。

 

 確か人間が人肉を食べると病気になるんじゃなかったかな……。

 

「お待たせ」

「早っ!? 1分提供なんてもんじゃあない。某牛丼屋よりも提供が早い!」

「大丈夫。きちんと豚肉を使っているわ。私は人間だからね。()()の肉があってもおかしくないでしょう?」

 

 うむ。だがあんなことを言われると本当に豚肉を使っているのか怪しいというか……

 

「大体人肉でカツを作るには肉が小さすぎるわ。肉団子が基本なの」

 

 と、食事前の人間を相手に話す咲夜。俺は必死に違うことを考えて想像力を封印するのだ。

 

「冷める前に食べてね」

「本当に豚肉ですよね? ……いただきます」

 

 食べやすいサイズに均等に切られたアツアツのカツを齧る。サクッという気持ちの良い音と共に噛みちぎる。丼タレと卵、カツ全てがマッチしていてとても美味しい。どれか一つが強く主張することがなく、本当に上手に噛み合っているような感じだ。

 

「美味しい……」

「それはよかった。その肉、ただの肉じゃないの」

「や、やっぱり……人肉!?」

「いや違うわ。もうそれは忘れなさいよ。……イベリコ豚の最高級品よ」

「──!? 一体どこから入手しているんですか?」

「それは内緒」

 

 イベリコ豚か。有名な物だし幻想入りしているとは思えない。紫が幻想郷に招き入れて殖やした可能性も無くはないが限りなくゼロに近いだろう。……気になるな。闇のルートなのだろうか。

 

「ごちそうさまでした! すごく美味しかったです」

「それは良かった。頑張ってね。この2週間ずっと頑張ったんだから、きっと勝てるわよ」

「はい、頑張ります!」

 




ありがとうございました

遂に使い魔が完成しました。(ここまで長かった)
やっとまともに戦えるようになりましたよー

次回は今回完成した秘策のお披露目です。お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。