今回の勝負は本気vs本気です。私も全力で書きました。
楽しんでいってください!
〜ルール〜
スペルカードは三枚。一度でも被弾すると負け。
この二週間、俺は妹紅に勝つためにできる限りの事をした。まともに弾幕ごっこができるようにするために使い魔を作り、彼女にも対抗できるであろうスペルカードを
妹紅のスペルカードは何度も見ているので、注意が必要な物は把握済み。イメージトレーニングを重ねて作戦も立てた。
──大丈夫。絶対勝てる
「それじゃ行ってくるよ」
「いってらっしゃい」
「神谷さん、私も見に行ってもいいですか?」
「いや、危ないから来ないで欲しい。今日は竹林を焼き払うつもりで行くよ」
永遠亭には後日行くつもりだ。その時は霊華も誘うつもりである。……まあ俺が大怪我をしたら話が変わってくるけど。
「本気ですね。余計見に行きたくなっちゃいますけど、待ってます。頑張ってください!」
甲子園風に言うなら、「必ず勝って君を永遠亭に連れていく」ってところか。生憎そんな台詞が似合う程イケてる面してないから言わないけども。
さあ、行こう。
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「彼は妹紅に勝てるでしょうか」
私は主のレミリア・スカーレットとその親友パチュリー・ノーレッジに問う。
「お前はどう思う? 咲夜」
私は永夜異変の後に開催された肝試しで彼女と戦ったことがある。妹紅は不老不死なので長く生きていて戦闘経験が豊富だ。ただの人間だと思って戦っては勝ち目がない。でもなんとなく──
「勝つと思います」
「そういうことよ」
お嬢様の発言にパチュリー様も頷く。そして読んでいる本から目を離して話し始める。
「そもそも、あの能力を最大限に発揮すれば圧勝できるはずなのよ」
「え、創造の力にそんなことが?」
「彼はレーザーを反射する鏡を作れるわ。同じ理屈で色々作れば完封なんて簡単なはず」
「成程。彼はそのことに気づいていないのでしょうか」
「そこまで馬鹿じゃなかったわ。私も聞いたことがあるの。どうして使わないのかってね。なんて答えたと思う」
シンキングタイム。そう言うように指を振る。
「……能力を使って勝っても面白くない。とか」
「近いわね。彼にとって能力を使ってゴリ押すことは狡い事になるそうよ」
「あら、それじゃ咲夜はどうなるのよ」
「さあ。狡の象徴じゃない?」
「……やはりカツ丼に人肉を仕込むべきでしたか」
自分の力をどう使おうがその人の勝手ではないか。相手は大体格上の存在なのだし、ちゃんとスペルカードルールに則った使い方をしている。それに、どう考えても彼の能力の方が狡い。結局時間を止められたのだから。
「違うと思うわ。だって前に言っていたもの。『咲夜さんの能力って便利ですよね。羨ましいです』って。憧れの目をするような人間が狡いなんて思うかしら」
「でもレミィ、憧れと嫉妬はコインの裏表よ。憧れなんて簡単に嫉妬に変わる。それこそ人間は特にね」
お嬢様はパチュリー様の指摘を受けニヤリと笑う。そして
「結局は彼次第よ。聞いてみればいいわ。……で、祐哉の秘策って何?」
「聞いてなかったの? アレは妹紅を最も合理的に
「結局完封するんじゃない。道具を作るのと何が違うの?」
「曰く、『いつでも使えるか、1回きりかの違い』とか」
「故意ではなく飽くまでも副次的に狙うと。成程。それが通用しない相手の方が多いだろうね」
「まあ、臨機応変にやっていくでしょ。それなりに賢いからね」
彼もいつか異変解決に関わるようになるかもしれない。……でもこれ以上必要なのかしら?
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私は湯呑みを持ってお茶を飲む。これで9杯目だ。そろそろトイレに行きたくなってきた。
──気になるなぁ
「らしくないわね。そんなにそわそわして。もしかして祐哉のこと?」
「うん。自信満々だったからね」
「じゃあ、行こっか」
「え、でも来ないでくれって……」
「それは貴方を巻き込みたくなかったからよ。近くで見られていたら、巻き込まないように気をつけなきゃいけないでしょ。余計なことを考えながら勝てる程
私は彼に勝って欲しい。あんなに頑張っていたから。だから邪魔したくないんだけど……霊夢はどうするつもりなんだろう?
「要はバレなきゃいいのよ。祐哉は思い切り戦える。霊華は戦いを見られる」
「──そして安全面は私達が保証する。だろ? 霊夢」
突然外から声がした。この声は聞き覚えがある。久しぶりに聞く声の主は──
「魔理沙!」
「よっ! 久しぶりだな、二人共」
「あんた、祐哉のこと聞いてるの?」
「ああ、あいつ本人からな。昨日会いに来てくれたんだよ」
魔理沙の家。魔法の森にあるって聞いたけど行ったことないな。
「祐哉って彼処に行っても大丈夫なの?」
「いや、ぶっ倒れそうになってたな。ドアを開けた時はゾンビでも来たのかと思ったよ」
ははは! と笑う魔理沙。元気そうでよかった。あの彫像が壊れてしまってから元気を無くしたと聞いてたから、心配していた。
「じゃあ行きますか」
「「おー!」」
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「こんばんは。今日は肝試しに来ました」
「へぇ。そういえば昔同じことを言う人妖が来たな。お前は随分と歯ごたえがなさそうだ」
「おや、俺の肝を食べる気か。本当に人間ですか?」
「何を今更。私はどこからどう見ても人間だろ。少し……いや、かなり特殊だが。さて、肝の味付けはどうしようか」
「そのままいっても良さそうだけどそうだなぁ……擦り潰せば薬を作れるだろうか。例えば──蓬莱の薬……とか」
しばらく間も開けて、ある単語を口にする。薬の作り方なんて全く重要じゃない。彼女を刺激させる単語を言えるならそれでいい。案の定、彼女の目つきは変わった。
「それは人間が口にしてはいけない禁忌の薬だ」
「ああ……永琳に作ってもらった方が早いか」
「お前、その為に彼処に行こうとしていたのか。いいかよく聞け。蓬莱の薬は一度手をだしゃ大人になれぬ。──二度手を出しゃ病苦も忘れる。──三度手をだしゃ……」
「──不死になる? いいね、是非とも欲しいものだ」
「そうか。ならばお前も永遠の苦輪に悩むがいい!」
「不老不死の肝、頂戴致す!」
──なーんてね。妹紅が本気になってくれればそれで良い
相手の慢心で勝つのは嫌だ。ここまで頑張ったんだ。本気の相手に何処まで通用するか試したいじゃあないか!
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「ひゅ~煽るねぇ」
「なんでわざわざ相手を刺激するのよ」
「本気で戦いたいんだろう。いいじゃないか。これで勝ったらカッコいいな!」
「負けたらカッコ悪いけどね。笑ってあげよっと」
「えっ、霊夢は応援してるの? してないの? 私分からなくなってきたよ……」
「さて、ここから離れましょう。なんせ祐哉は竹林を焼き払うつもりみたいだからね」
「へえ、そいつは頼もしいな」
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大量の御札と光弾が竹林を飛び交う。今回の戦いはこれまでとは比較にならないほど苛烈なものになっていた。
「使い魔を作ったのか」
「ああ、これで俺の一番の課題を解決した」
「それで勝てると? ──虚人『ウー』」
妹紅の背に赤い翼が生える。今まで何度も見た光景。不死鳥の羽を表しているのだろう。気分を盛り上げるための飾りなのか、使い魔のような役割を持っているのか不明だが、アレはかなりカッコイイ。
実は真似して創造したことがある。こういう時便利だよね! 俺の能力。まあ制服と合わなかったからやめたけど。
「いいや。この程度で倒せる程甘くないって知っているさ。だから、それなりに準備してきたよ」
襲いかかる火の粉を避けながら叫ぶ。このスペルカードを見るのは数回目。避けるのは慣れている。
「それは頼もしい。まあ、負ける気は無いがな!」
不死鳥のように舞う妹紅は巨大な鉤爪で上から俺を裂こうとする。それを避けるだけでは不十分。生まれた爪痕が暫く宙に残った後辺りに広がっていくのだ。更に時間経過と共に爪痕が襲ってくる頻度が高くなる。
──後のことも考えて少しずつ避ける……
初見の時は技の迫力に圧倒され、闇雲に避けていた。避けられないことも無いのだが、上手く誘導して爪痕を残させないと弾だらけで焦ることになる。
「大分やるようになったじゃないか」
「散々見てきたからな。次はこっちの番だ。行くぜ──星符『スターバースト』!」
眼前に巨大な魔法陣を生成し、霊力を集める。何度もこの技を使ったからか、最近では光が溜まるのが速くなった。
レーザーに少し遅れて轟音が響く。それは竹林中に響き渡り、大気や地面をビリビリと激しく揺らす。妹紅は背中の翼を羽ばたかせて空を飛び、水色のレーザーを躱していく。
──いいぞ、その調子で逃げ回れ
「やれ、使い魔君」
『『弾幕制御──スターバースト』』
後ろの使い魔は左右に大きく別れ、渦状に弾幕を撒き散らしていく。俺のスターバーストは
正直言って俺ならこのスペルカードを攻略できないだろう。だがこの世界の人達なら可能なはず。その経験、技術は確かな物だ。相手が高レベルだからこそ使える技。それが真のスターバーストだ。
妹紅は一度目のレーザーを避けきった。二度目のレーザーが放たれる頃には使い魔が生み出す
「さて、ここからがスターバーストの本番だ」
スターバーストの名前は天体現象から来ている。スターバーストとは銀河同士の衝突などで星の素になるガスが一気に沢山できることで、一度に大量の星が形成される現象だ。
現在、二つの使い魔によって複数の
ここまで来ると流石にキツイだろう。そう思って、一定の距離まで進むと粒子に戻る弾を放つようにプログラムしてある。だが面白いことに、救済処置はさらなる地獄を生むのだった。
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「わぁ……」
「綺麗……」
「ああ……」
外野から観戦している私達は全員スターバーストに見取れていた。ちょっと前まではただのレーザーで、たまに星型弾幕が飛んでくる程度だった。それがどうだ。ちょっと見ない間に大きな銀河に変わっているじゃないか。
スターバースト。彼奴はこの名前を雰囲気で付けたと言っていたが、考え直したんだな。このスターバースト銀河は迫力あり、それでいてとても美しい。遠くから見るとそれがよく分かる。
──1回目のレーザーは掃除用だな。2回目はやけに静かだ。あれは唯の……
「見物人からすれば最高のプラネタリウムだな。避けるとなるとキツそうだが」
「銀河の外側の方が霧がかってきたね」
「あれは恐らくガス雲を表しているな。器用なやつだ」
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「くっ……」
こいつ、急に強くなりすぎだ。正直舐めていた。いつも通り軽く遊んでやるつもりだった。だがこれは油断すると
少し前に見た時は未完成だと思ったが、これが完成品か。悔しいが美しい。できれば外から眺めていたい、そう思わせる程にな。
距離を取って弾を避けていると左からレーザーが向かってくる。私はそれを
──2回目のレーザーは唯の光! これはハッタリだ。
だが私は直ぐに避けなかったことを後悔した。せめて目を瞑るべきだった。眩しさで目がやられてしまった。
「へっ、いいよ。本気で相手してやる」
私は自らの手に焔を纏い、そのまま顔面を殴りつけた。
「ぐぁっ!」
前髪は燃え尽き、鼻は折れて目も失った。皮膚は捲れ、顔全体の熱が急激に上がり、まるで細胞の一つ一つが針で突かれているように痛い。
──はは、この手を使うのは何時ぶりかな
だがその痛みと傷は直ぐに
さあ、続きだ。もっと楽しもうじゃないか。
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「……流石としか言い様がないな」
正直、この新生スターバーストにはかなりの自信があった。二つの銀河に極太レーザー。強力な光と轟音は相手の神経を削る。そして銀河は大きくなると星粒が一気に増える。一定の距離まで進むと粒子に戻り、視界を奪う。
──勝てると思ったんだけどなぁ。ていうかこれ、霊夢や魔理沙に見せたらビックリするレベルじゃないの?
幻想郷の住人は化物揃いだ。これだけやっても攻略されるとは。そろそろ
スターバーストを止めると再び御札と光弾の攻め合いが始まった。
「やっと終わりか。長かった気がする」
「多分2分くらいかと」
「偉く豪華なスペルカードだったが、まだやれるな? こっちは火がついちまったんだ。終わってもらっちゃ困るんだよ」
「安心して良い。俺は取っておきをまだ2つも残しているぞ!」
「いいねえ! ──こっちの番だ。当たってくれるなよ! 不滅『フェニックスの尾』!!」
フェニックスの尾。使うと死んだ仲間を蘇生できる道具。確か比較的安価で、初期から買えたような気がする。
それは某ゲームのアイテムだ。妹紅が使うフェニックスの尾はそんな優しいアイテムじゃあない。
妹紅に取り憑いた首の無い大きな不死鳥の尻尾から炎が飛んでくる。辺り一面がこの炎に埋め尽くされる。弾があまり熱くないことが救いだ。これは炎に見える光弾。
──これだけ密度の濃い弾幕を簡単に……やっぱり凄いな
俺がここまで濃い弾幕を張るには使い魔を何体用意すればいいのだろうか。力の差を思い知ったが今は関係ないこと。落ち着いて通れる隙間を探せ。
「──ッ! 創造」
見ていると眩しくて頭がおかしくなってくる。妹紅のように目潰ししたら失明するだけだからな。俺は俺のやり方で行く。
俺が今作ったのは輝度調節ができる眼鏡だ。おかげで目を傷めずに弾幕を見られる。皆は眩しくないのかね。我慢しているんだったらプレゼントしようかな。
「お洒落か? よく似合っているよ」
「ハッ! 俺は至って真面目だよ。さあ、次だ」
俺は二つの魔法陣を創造し、二枚目のスペルカード名を大きな声で宣言する。
「──星爆『デュアルバースト』!!」
ありがとうございました。
次回。#29「蓬莱人形」お楽しみに!