東方霊想録   作:祐霊

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ラリホー! 祐霊です。

1章EXTRA最終回です。久しぶりの平和回ですよ!


#30「勝利祝い」

「丁度終わったみたいね」

「お? 咲夜じゃないか。お前も観戦か? 遅かったな!」

「違うわ。私は彼の迎えに来たの。勝利を祝ってパーティーをするってお嬢様がね。貴方達も良かったらどう?」

 

 彼の勝利を喜んでいると突然メイドさんが現れた。背が高くて綺麗な人だ。これほど銀髪が似合う人は初めて見たと思う。霊夢と魔理沙の知り合いらしく、仲良さそうに話している。……居場所がない。

 

「はじめまして。十六夜咲夜と申します。貴方もいかがですか?」

「はじめまして、博麗霊華です。えっと……」

「私達は行っても構わないが、肝心の祐哉は満身創痍だぜ?」

「大丈夫。夜はまだ始まったばかりよ?」

「……私達人間からすると一日が終わりそうなんだがまあいいか」

 

 ———————————————————

 

「よお妹紅! 彼奴はどうだったよ?」

「魔理沙か。ああ、随分と強くなったな。疲れきって寝てるし永遠亭に連れて行ってやろうと思ってるよ」

「その必要はないぜ。だが運んでくれるとありがたい」

「どういうこと?」

「これから紅魔館でパーティーをやるのさ。お前も来いよ!」

 

 ———————————————————

 

 流れで私も参加することになってしまった。パーティーは既に始まっている。驚いて欲しい。まだ主役(祐哉)は眠っているのだ。……鼾をかきながら。

 

「おーい、起きろって。美味いもん食えるぞ」

 

 ローストビーフを持ってほれほれと顔に近づける。

 

「ん……ハンバーグ……」

「違うな。ローストビーフだ」

「……唐揚げ」

「多分あったよ。ダメだな、完全に寝てる」

 

 私は会場に戻ることにした。

 

 ———————————————————

 

「あー、やけに気持ちいい泥だと思ったらベッドだったわ。何処だここ」

 

 目が覚めると見慣れぬ天井があった。いいね、このフレーズ。一度言ってみたかったんだよね。まぁどこだっていいや。このベッドはふかふかで気持ちいい。

 

「ん……もうひと眠り……」

 

 ドアがノックされた。

 

「失礼します。あれ、まだ寝てる」

「ん、やっほー博麗さん」

「ひゃっ!? 起きてたんですか」

「さっき起きた。これから二度寝するところよ」

「二度寝もいいですけど、美味しいもの無くなっちゃいますよ? 皆待ちきれなくて食べ始めちゃいましたから」

「うーん、ねむ」

「起きてくださいよ〜! パーティーやってるんです。ここは紅魔館。見たことない料理が出てますよ!!」

 

 眠過ぎて話が入って来ず、霊華を無視して寝ようとした時、彼女は俺の身体を揺らして起こそうとしてきた。

 

 ──あ、可愛い……

 

 純粋か! とツッコミが来そうだ。だが疲れ切っている俺にとってこの行為は癒しだ。それをやられると益々眠くなる。

 

 だが……

 

「なんだって!? パーティーだと? うおおおおご飯!! お腹空いたヒャッハー!」

「お、おー」

 

 しまった。また引かれた。ちょっとテンションが上がると直ぐにはしゃいでしまう。日頃の様子とかけ離れているためか頻繁に引かれる。

 

 ところで。

 

「俺いつの間に着替えたん?」

「ああ、それは咲夜さんがポポイと」

「ぽ、ポポイ?」

「はい。泥まみれだから、と着ていた服は捨てちゃいました。だからその……神谷さんは下着しか着ていないはずですよ」

「──! 危なかった。もう少しでセクハラで捕まるところだった」

「着替えはクローゼットに入っているらしいですよ。外で待ってますから着替えちゃってください」

 

 そう言って霊華は部屋を出ていった。ベッドから出ると確かに下着しか着ていないなかった。恥ずかしい。脱がされてしまった。もうお嫁に行けない……。

 

『お前は男だろ!』と脳内で一人ツッコミを入れつつクローゼットを開ける。

 

 ──お、これはタキシードって奴ですか。着たことないな。

 

「ねえ博麗さん。蝶ネクタイってどうやって結ぶの」

「え、紐を結ぶだけじゃないんですか?」

「いや、まんまネクタイだね。いつもならググるところだけど圏外だ」

「ちょっと貸してください」

 

 ———————————————————

 

「おそよう祐哉。やっと主役の登場か」

「やあ魔理沙。主役は遅れてくるって言うだろ?」

「それはヒーローじゃないか?」

 

 ちょっとオシャレな服を来ている魔理沙。綺麗な金髪という事もあってか、外国のお姫様と言われても納得しそうな程に綺麗だ。確か魔理沙は日本人で和食派だったはず。どうして金髪なんだろうか。

 

「霊夢は?」

「あそこ」

 

 いつもの巫女服を着て真剣に食事している霊夢。お腹すいているのだろうか。

 

 蝶ネクタイの結び方は咲夜に教わった。主催側に教わるのは何だか恥ずかしい。礼節の勉強をするべきだと痛感した。だがその前に霊華といい感じになれたのは嬉しい。

 

 まあ、あーでもないこーでもないとわちゃわちゃしていただけだが、実質イチャイチャしたようなもの。我ながら気持ち悪い。だが男性諸君は共感してくれると信じる。女の子とわちゃわちゃする。楽しくないですか!?

 

 ……勿論平静を装ったので心の内はバレていないはずだ。

 

「んで、レミリアはあそこだ」

「ありがと。挨拶してくるよ」

 

 会場の奥の方でパチュリーと会話している。あのパチュリーが食事会に参加するとはな。種族の関係で食事が必要ない彼女はこう言ったイベントにもあまり興味がなさそうなイメージがある。

 

「こんばんは。遅れて申し訳ございません。今日はご招待いただきありがとうございます」

「こんばんは。目が覚めたのね。よく似合っているわ」

「レミリアさんも、よくお似合いで」

 

 レミリアが指を鳴らす。直ぐに現れた咲夜にグラスを渡され、そこにシャンパンが注がれる。

 

 ──困ったな。どうしようか。礼節が全くわからない。

 

「勝利おめでとう。貴方ならできると思っていたわ」

「皆さんのお蔭です。ありがとうございました」

 

 グラスを軽く当てて乾杯する。レミリアも飲んでないし取り敢えず飲まないでおきますか。

 

「秘策は上手くいったの」

 

 レミリアの隣にいるパチュリーに聞かれる。

 

「その事なんですが、あの……」

「蒸発したとか?」

「はい……。思った以上に火力が高かったです。ですが決め手にはなりました。後日御礼の品を持ってきますね」

「負けてもよかったのよ。貴方の能力は面白いもの」

「じゃあまた付き合って貰えると嬉しいです」

「ええ、いつでも」

 

 その後軽く話した後、魔理沙達の元へ戻った。霊夢は何故か床に座っていた。機嫌良さそうにお酒を飲んでいるので具合が悪いわけではなさそう。

 

「え!? なんで床に座ってるの!?」

「あ、祐哉。お疲れ様。いいものを見せてもらったわ」

「ありがとう。……うん? どういうこと?」

「外から観戦していたのよ」

「え! 巻き込まれなかった? レーザーとか回転するレーザーとか、雨とか……」

「……巻き込まれたわ」

 

 あーあ、それが嫌だったから来ないでくれって言ったのに。しかし別に怪我をしている様子もないが……

 

「霊夢は里の人達から苦情が来るんじゃないかって焦っているんだよ」

「苦情?」

「ああ、かなりの騒ぎだったからな。主にお前のレーザーが」

 

 げっ。言われてみると竹林から里まではそこそこ近いから聞こえてもおかしくない。

 

「……ごめんなさい」

「別にいいのよ。負けてたら怒ったけど」

 

 成果を上げられてよかった。負けてたらこのパーティーはどうなったんだろうか。「また頑張ろう。次があるさ」と、まるで浪人確定の受験生を励ますようなパーティーに変わったのだろうか。

 

 思えば俺が成果らしい成果をあげたのは初めてかもしれない。妹紅に勝つという大きな目標を達成した。

 

 ──ここまで来るのに沢山失敗した。大変だったなぁ。

 

 それに、俺一人ではとても達成できなかっただろう。この二週間、紅魔館の皆と霊夢達にたくさん助けられた。いつか恩返ししないとな。

 

「やあ、お疲れ」

「あ、妹紅さん。お疲れ様です」

「約束通り永遠亭まで案内するよ。いつでも来てくれ」

「ありがとうございます!」

 

 永遠亭に行けばあの子に会えるぞ。早くあのスペルカードを生で見てみたい。

 

「あら、永遠亭に行きたいなら私が連れていったのに。何回か行ったことあるし場所知ってるわよ」

「な、なんだって……」

 

 あれ? 俺って遠回りしていたのか? てっきり妹紅や永遠亭の人くらいしか場所がわからないものだと思っていたのだけど。

 

「これが灯台デモクラシーって奴か……」

「民主主義な灯台ってなんだよ! もとくらしな?」

「いえーい! ナイスツッコミ!」

「……なあ、こいつってこんな事言う奴だったのか?」

 

 ボケたのは俺。ツッコミを入れたのは魔理沙。やり取りを見て呆れているのは妹紅だ。

 

「ああ、割と軽いノリだな」

「そうなのか。なら私にも軽い感じで接してくれていい」

「分かりました」

「…………」

 

 タメ口で話せってことだったのだろうか。流石にそうもいかない。妹紅にはお世話になったから、感謝している。対等な友達というよりは先生のようなものだ。

 

「まあいい。私はこの辺で帰るよ。またな」

「はい、おやすみなさい」

 

 今は何時だろうか。お腹も空いているし眠たい。

 

「この立食パーティーはコミュニケーションを第一として、食事はオマケである。つまり、ガツガツ食べるのはマナー違反なのだ」

「え、どうしたのよ急に」

「マナー違反なのだよ! 霊夢君」

「な、なんで私に言うの?」

「ふふん」

 

 さて、さっきから口をつけていないシャンパンだが、どうしようか。俺、神谷祐哉は17歳。健全な高校生である。飲酒や喫煙はしないのだ。とはいえ同年代の霊夢や魔理沙が普通に飲んでいる訳だし、幻想郷には通じない。

 

「……ねえ博麗さん。お酒飲んだ?」

「いえ、私は咲夜さんにお願いして林檎ジュースをいただきました」

「いいね。俺も貰ってこようかな。そういえば博麗さんって何歳なの?」

「17歳ですよ。それも最近なったばかりです」

「あれ、同い年……?」

「えっ」

 

 これには驚きである。ずっと敬語で話してきたからなんとなく年下なのかと思っていた。

 

「そっか。じゃあ別に敬語使わなくてもいいんじゃない?」

「そう、かな。でも慣れちゃってますしこのままでもいいかなって」

「せめて”さん付け”は変えて欲しいな。なかなか慣れないんだ」

「そうですか。なら先輩と呼びましょうか?」

 

 なんでさ。いや後輩キャラ好きだけどさ。同い年に先輩と呼ばれるのは落ち着かない。

 

「冗談ですよ。神谷()。乾杯しましょう」

「うん」

「今日はお疲れ様でした。カッコ良かったです! 乾杯!」

 

 若干照れながら褒めてくれた霊華に一瞬だが心が奪われそうになった。俺はそれを誤魔化すように()()()()()()()()()を口に含む。おかしいな。何も飲んでいないのに酔ってしまったのだろうか。顔が赤くなっている気がする。

 

 ──ん、待てよ

 

「あれっ神谷君、りんごジュースもらいに行くんじゃないんですか?」

「うん。今思った。これは林檎じゃない」

 

 ──どうやら俺はすでに酔ってしまっているようだ。

 

 グラスに入っていた液体に。

 

 或いは、彼女の照れた顔に……。




ありがとうございました。
私は簡易的な蝶ネクタイしか見た事がなかったので、調べた時驚きました。ネクタイを結ぶより難しそうです。

さて、長かった1章も遂におしまいです。おかしい。こんなに長くなるとは思いませんでした\(^o^)/

2章は十千刺々の詳細がわかり、祐哉と霊華の仲が深まる予定です。
7月上旬迄に完成できたらいいなと思っています。
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