今回の異変は竹林異変の数日後です! まだ宴会を開いていません。開く前に次の異変が始まりました。
べりーはーどすけじゅーる(´×ω×`)
#44「大切なコト」
「いや、無理でしょ。霊華はともかく、祐哉は病み上がりなのよ?」
朝起きたら、ちゃぶ台の上に書状が置かれていた。寝る前にはなかったはずだと思いながら読んでみると、思わずツッコミを入れたくなることが書かれていた。
──御機嫌よう。近頃は雪がよく降るわね。もうすぐ春が訪れるというのに。いくら何でも降りすぎじゃないかしら。気になって眠れないわ。
──さて、異変の調査に行ってもらいたいのだけどね、霊夢、貴方はお留守番よ。
私が異変解決に行かなくていいなんて初めて。寒い中外に行かなくていいから嬉しいけど、じゃあ誰が行くのかしら?
──今回は、貴方のところの居候二人にお願いするわ。心配せずとも、先日の異変よりも安全。今回の目的は解決というより調査ですもの。ただ、緊急であるのは変わらないから宜しくね。
書状はそこで終わりだ。
ついこの前の異変が終わってから数日後、祐哉は無事に退院した。後は毎日消毒をするための通院がある程度。日常生活はもちろん、弾幕ごっこのような運動をしても平気とのこと。
数日間ゆっくり休んでいたから体力は戻っているようだが、それでも病み上がりに変わりない。そんな彼をわざわざ出かけさせたくない。
「本当に
───────────────
「異変解決の依頼?」
「ええ、病み上がりで悪いけどね、貴方達二人が指名されているの」
「ずっと雪が降っているのは異変だったんだ」
霊華の言葉に、霊夢が首肯する。
「早速向かった方がいい?」
「うん、お願い。──雪が降り止まないという事は冬が終わらないこととほぼ同じ。私なら白玉楼に向かうわ」
今回の異変の内容は雪が降り止まないことだ。今思えば竹林異変の時から既に始まっていたのかもしれない。あれから4日経過した今、ほぼ常に降り続ける雪の影響で銀世界になっている。
大したことのない異変に感じるが、里の人間にとってはかなり苦しい。
幻想郷でも例年雪が降るが、雪国と呼ばれる程降る訳では無い。つまり雪対策がされていないのだ。除雪の技術も、精々シャベルで掻く程度だろう。
現在の積雪量は2メートル程度。やはり雪国と呼べるほどではないのだが、事態は深刻だ。雪はどんどん溜まっていき、雪掻きにも限界がある。特に懸念される事は人里の建物の屋根が雪の重さで潰れることだ。
もしかしたら、夜中の間に雪が積もったせいでドアが開かないという可能性もある。そうなれば里の人々は家から外に出ることができない。それは雪掻きが進まないことを指し、事態は益々深刻になる。
「分かった。直ぐに出かけよう」
因みに、博麗神社にはそこまで積もっていない。寝る前に境内と建物の屋根に、『高温』を付与した創造物を置いておいたためだ。どんな原理で高温を保ち続けているのかは謎だが、これのお陰で雪掻きもあまり必要なかった。
尤も、高温の地面を歩く際に注意を払う必要があるのだが……まあそこは仕方がない。最悪宙を浮かべば問題ない。
「私は里の様子を見に行って、雪掻きを手伝ってくるわ」
「……ごめんね、除雪車とかの創造ができたらよかったけど、流石にできそうにない」
「大丈夫よ。無理しないでね」
「ああ、分かっているよ」
───────────────
「大丈夫? 寒くない?」
「はい、おかげさまで」
俺達は霊夢と話した後直ぐに白玉楼へ向かった。
──便利な能力があってよかった
俺は寒いのが嫌いだ。寒いのなら厚着すればいいと言うが、俺は服を沢山着込むのが好きではない。そんなことをするくらいなら必要最低限の服装で我慢するタイプである。よって、今までの俺なら雪が降っているのにわざわざ外出をしたがらなかっただろう。
だがそれも、創造の能力があれば解決できる。寒い中外出をしたくない、しかしどうしても出かけなければならない。そんな時に役立つのが『防寒機能』である。なんと、これさえあれば1枚服を着るだけで4枚程着込むのと同じくらいになるのだ。
この能力、絶対ビジネスに使える。商売の勉強でも始めようか。材料費がかからないのはかなり大きい。相手のニーズに合わせて創造する物と付与する内容を変えればボロ儲けよ! ワクワクすっぞ!
相変わらず冬用の学生服を愛用しているため、見た目は何処にでもいる男子高校生だ。しかし、中身は違う。寒さ対策に全フリした装備なのだ。
──付与する力のおかげでゲーム感覚で対策できるのがいいよね
隣にいる霊華もいつもと同じ青い巫女服を着ているが、これにも防寒機能を付与している。
彼女の服を創造するまでの過程に一悶着あったのだがそれは置いておくとしよう。
──今はあまり風が強くない。今のうちに冥界に行こう。
───────────────
白玉楼に着いた俺達は、妖夢に用件を話して幽々子の元へ案内してもらった。そして今、幽々子に異変の事を話し終わったところである。
「そう。雪が降り続いているのは冥界だけじゃないのね」
「はい。ここ数日ずっと止まないのです。もうすぐ4月……卯月だと言うのに……。これは異変に違いないということで、調査に来ました」
「ずっと雪が降っていてもいいじゃない。涼しくて過ごしやすいわ」
「そうですか? 自分は寒いのが苦手なのでよく分かりません……。仮に過ごしやすいとしても降りすぎなのですよ。これ以上雪が続くと人里に被害がいきます」
「そんなこと、私の知ったことではないわ」
うーむ。確かに幽々子の言う通りだ。他人が困ろうがどうでもいいというのは一理ある。しかしそうもいかないのだ。
「貴方は何故雪を止めたいの?」
「……これ以上降ると里が埋もれてなくなるからです。幻想郷の人間の数も相当減るでしょうね。影響を受けるのは俺達と言うよりは……
妖怪は人間に恐れられることで力を持つ。逆に、存在を忘れられたりする影響で恐れる人間がいなくなると、妖怪は存在できなくなってしまう。
だから、幻想郷に人里は必要なのだ。妖怪にとって人里は動物園のようなもの。人間は里で大人しく過ごしていればいい。
「あら。雪が積もるなら、雪掻きをすればいいじゃない」
「雪掻きが間に合う程度を超えているのです」
「それなら雪対策を施せばいいだけよ」
「成程。屋根を合掌造りに
「そうそう」
馬鹿馬鹿しい。そんなことできるわけがない。幽々子だってそれは分かっているはずだ。……多分。
何故幽々子は中身のない話をしてくるのか。いや、元々難しい言い回しをするような人で、従者の妖夢はしょっちゅう翻弄されていたが……。
──急いでいる時にのんびりされると困るな
「──ですがそれは根本的な解決にならないですね。これが異変である以上、解決しない限り永遠に雪が降り続ける。そんな状況下で雪対策をした所で、延命措置にしかなりません」
幽々子は蝶の絵が描かれた紫色の扇子をパタパタと仰いでいる。
なんだろう。微妙に話が通じていない感覚だ。俺は異変が起きているから、何か知らないかと尋ねに来た。しかし、会話を始めてから十分ほど経過したというのに用件の半分も話せていない。
異変については話した。だが、肝心の「貴方がやったのか」という事を聴けていない。
何故俺が白玉楼に来たのかと言うと、幽々子は以前春雪異変というものを起こしたことがあるからだ。
幻想郷中から春を集めて冥界にある桜の木、
その異変が起きたのは数年前で霊夢と魔理沙、咲夜が解決に関わった。
同一人物が全く同じ異変を起こすとは考えにくいが、
「……もしかしたら、静観している方がいいかもしれないわ。雪が降り止まないという事と、春が来ないということは近似であって同義ではないもの」
「貴方達は関わっていないと……?」
「さあ、どうかしら。ね、妖夢?」
突然話に巻き込まれた妖夢は目に見える程慌てた後、頷いた。
「はい? えっと、どうでしょう……?」
何故はぐらかすのか。やっていないのならやっていないと言って欲しいのだが。俺だって暇じゃない。やっていない人と無駄話を楽しむ程時間的余裕がない。白玉楼が異変に関わっていないのなら、他に浮かぶ犯人候補がない。一刻も早く主犯を探さねば手遅れになってしまう。
「折角雪が降っているのだから、もっと楽しめたらいいわね。どんな時も慌てないことが長生きのコツよ」
「……?」
本当に、幽々子が何を言いたいのか分からない。
「神谷君。ちょっといいですか?」
「どうしたの?」
「根拠と言える根拠はないですが、何となくこの人達は関係ない気がします」
そう、だろうか。今の2人の様子からして可能性は五分五分。仮に他を当たったとして、最終的にやはり白玉楼の仕業だと分かったら圧倒的に時間の無駄になる。ここはもう少し情報を聞き出したいところだ。
「ご、ごめんなさい。ただの勘です。口出ししてすみません」
『祐哉。今の貴方、相当目つきが悪いですよ』
『マジですか』
いけない。すっかり疑心暗鬼になっている。もう全てが疑わしく、かなり慎重になっているからか目付きが悪くなっているらしい。自分では気づかなかった。
『霊華が謝ったのは、貴方の目付きが怖かったからかと』
『あー』
俺は一度深呼吸をする。目を瞑ったあと、ゆっくり息を吸って、吐く。
「いや、ごめん。博麗さんの勘を信じるよ」
「答えは出たのかしら」
「ええ。貴方達は異変に関わっていないと仮定します」
「それじゃあこれからどうするの? 雪だるまでも作るのかしら」
「久しぶりに作るのもアリですね。ですがそれは全てが終わってからにします。彼女の勘を頼りに
幽々子は仰いでいた扇子を畳んで机の上に置いた。
「勘を頼りに? そんなにのんびりしていて大丈夫なのかしら。貴方は急いでいるのよね」
「確かに急いでいました。でももう少し
「……そう。それは良かった。頑張って」
そう言うと幽々子は部屋を出て行った。
「ふう……行こうか、博麗さん。完全に頼る事になるけど俺は君の勘を信じるよ」
「……私、異変の主犯の場所とか分かりませんよ?」
「だからあちこち回るのさ。早速行こう!」
俺達は妖夢に一言挨拶した後、白玉楼を後にした。
───────────────
「幽々子様」
「どうしたの? 妖夢」
「何故彼の質問にちゃんと答えなかったのですか」
「ちゃんとって?」
「……私達は異変に関わっていませんよね。その事を何故伝えなかったのか、気になるのです。手助けしてあげてもよかったのでは……」
「……妖夢はまだまだね。手助けならしたわよ。
「ええ……? どういう事ですか?」
私達が異変に関わっているかいないかは答える必要が無い。直接言葉にせずとも、見当がつくはず。
私が彼に伝えたのはもっと重要な事。
焦って物事を見ていては大事な物を見落とす。常に状況を楽しむ心を持てば、余裕が生まれ物事を正しく見分けることができる。
それが
妖夢には分からなかったようだけど、あの子には伝わったようね……。
「──さぁ、どういう事かしらね?」
ありがとうございました。
実はこの異変、竹林異変を解決しに行った日から始まっていました。だから雪が降っていたのです。
さて、慌てて物事を見てはいけないと学習しましたね。次は何処に行くのか、お楽しみに。
〜東方霊想録時系列〜
冬:祐哉、幻想入り
2月下旬:霊華幻想入り⇨白玉楼+迷いの竹林
3月上旬:使い魔作成+紅魔館で修行
3月中旬:VS妹紅⇨永遠亭へ⇨竹林異変⇨春奇異変
実はあまり時間経過していないのです。