東方霊想録   作:祐霊

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どうも、祐霊です。私が前書きに書きたいことはただ一言。

『──聞かれてるんだよなぁ』





#48「守矢神社」

 紅魔館を出た後、俺達は妖怪の山へ向かった。山の中にはできれば入りたくないという事で、上空から山の様子を観察したが特に怪しい物や人物は見当たらなかった。

 

 しつこいようだが俺達は()()()()()山に入りたくないので、妖怪の山の探索を後回しにして比較的安全そうな神社に向かっている。

 

「山の上に神社があるなんて。知らなかったです」

「守矢神社と言ってね、外の世界から湖ごと引っ越してきた神様がいるんだよ」

「湖ごと? 一体どうなっているんでしょう」

「理屈で考えても仕方ないだろうね。多分八雲(ゆかり)がやった事だから」

 

 紫が勝手に移動させたというよりは、二柱の神が紫に依頼したと考えた方が自然だろう。紫の境界を操る程度の能力を使えば造作もない。時空を超えることができる引越し業者だな。

 

 どうやって境界を操っているのかとても気になるところだが、恐らく俺が理解することはできないと思う。平たく言えば数学と物理学の分野だろう。それも、難関大学で扱うレベルの──或いはそれ以上の知識が必要と見た。

 

 外の世界にある大学で扱う知識で満足するのなら、21世紀の世はもう少し近未来的な物で溢れているはず。某ネコ型ロボットのひみつ道具のように、まだ再現できないのであれば技術と知識は不足しているということになる。或いは単純にやる気と資金の問題か……。

 

 ──世界一位を目指さなくなった日本では無理だろうな

 

『なんの話ですか』

 

 ──ちょっとした皮肉です

 

「八雲紫。ああ、私に巫女服をくれた人ですね。確かにあの人は他の妖怪とは違う力を持っていました」

「妖力にも質があるの?」

 

 霊華は頷いて解説を始める。

 

「本体の性質と言いますか、邪悪な妖怪から放たれる妖気は禍々しく、密度も濃いです。対して邪気の薄い妖怪は妖気も薄いんです。因みに霊力も同じですよ」

「へえ、邪気を感じることができるのか。凄いな」

「そうですか?」

 

 今度は俺が頷くと、霊華は嬉しそうに笑った。

 

「良かった。私も少しは役に立てるかな」

「頼りにしてるよ。俺にはそういうの分からないからね」

 

 隠さずに殺気を出してこられたら分かるが多分それは極普通のことだ。人間の直勘って奴で。

 

 お喋りをしているとようやく神社に到着した。

 

 博麗神社より少し大きい鳥居を(くぐ)って境内に進む。境内に積もった雪は綺麗に退かされているため歩くのに支障はない。

 

「神様は何処にいるんでしょう。参拝とかした方がいいのかな」

「『たのもー』とか言えばいいんじゃね?」

「道場破りですか? さては貴方たち、新手の宗派ですね?」

 

 俺のボケに言葉を返したのは霊華では無い。

 

 ──うおっ! ロングストレート美少女キター!! 

 

「悪いですが今は相手をしている暇はないんです。お引き取りください」

 

 緑色の長い髪に白と青を基調とした巫女服を着た女の子。身長は霊華より少し高いようだ。頭にはカエル、横に下ろした髪には蛇の髪飾りがついている。

 

 ──可愛い

 

『浮気ですか?』

「ええ!? なんで!?」

 

 アテナのコメントに思わず声を出してしまった。周りから見れば俺は女の子に対して言ったことになる。

 

「今は忙しいのです。早くこの雪をどうにかしないと霊夢さんが……あわわわ」

「おう、その話詳しく聞かせてくれませんか」

「霊夢を知っているんですね? 私達は霊夢に頼まれて異変を調査しています」

 

 どういう事かと訊ねられたので、異変解決もとい異変調査に出かけた俺達が守矢神社に来た経緯を話す。どうやらドンピシャのようだ。

 

「話はわかりました。事情を話しますから、場所を変えましょう」

 

 ───────────────

 

「お前達が霊夢の使いの者か? 君なんて霊夢そっくりだ。分身を作れるようになるとはやるねえ」

「いえ、この子は霊夢とは別人です」

「博麗霊華と申します。苗字が同じで瓜二つですが血縁関係は無いです」

「本当かい?」

「私達は幻想郷で初めて出会いましたから」

 

 ほほーう。と意味ありげに相槌を打った神は八坂神奈子(やさかかなこ)だ。

 

「私達と同じように、外の世界から幻想郷に来たんだね」

 

 神奈子の隣に居り、今喋ったのが洩矢諏訪子(もりやすわこ)だ。こちらも神様。

 

 四角いテーブルを囲うように5人で向かい合っている。こちら側は俺と霊華の2人。向かい側には左から諏訪子、神奈子、そして先程の巫女さんが座っている。

 

 巫女さんの名前は東風谷早苗。「ひがしかぜたに」や「とうふうたに」ではなく、東風谷(こちや)と読む。

 

 軽い自己紹介を済ませた後、今も振り続ける雪について話を聞く。俺達の事情は早苗が話しておいてくれたのでスムーズに進んだ。

 

 ───────────────

 

「──つまり、この異変は貴方たちが起こした。そしてこれはあと数日で収まるということですね」

「不可抗力だけどねー」

 

 諏訪子がのんびりと返事をする。

 

 この異変は守矢の3人が起こしたものらしい。とはいえ悪気があった訳では無いという。彼女等が行動したのは人里の信仰者の願いがあったから。

 

 今年の冬は例年と比べて降雪量が少なかった。里の少年少女はそれを残念に思い、信仰集めに来ていた早苗に嘆いたそうだ。少年少女──それも一人や二人どころの話ではないようで、多くの子供達に頼まれてしまった早苗は二柱に相談したのだ。それを聞いた二柱は思った。

 

 ならば! 

 

 やるしかなかろう! 

 

 と。

 

 早苗の能力は『奇跡を起こす程度の能力』。早苗は二柱の力を借りることで、天、地、海全てを操ることができる。奇跡を起こすには詠唱が必要で、起こす奇跡の程度によって必要になる長さは変わるそうだ。

 

 天変地異を起こすことも可能だろうが、それは理論上の話であって現実的ではないだろう。何故って、早苗は人間だから食事もするし睡眠も取るからね。

 

 雪を降らせること自体は容易く、直ぐに実行した。しかし問題が起きた。それが今回の異変というわけだ。張り切りすぎて奇跡の規模を間違えたらしい。「てへぺろ」「やっちゃったぜ」とでも言いそうなノリで説明を受けた俺は苦笑いを浮かべたのだった。

 

「……あと数日で収まるという根拠はあるのですか」

「それは確実です。今まで何度も奇跡を起こしてきましたから、感覚でわかります。まあ……2日後か3日後、5日後、いつ収まるのかはわかりませんが」

 

 俺の質問に早苗が答えた。色々ツッコミを入れたいがまあいいだろう。これが外の世界だったら許されなかった。復旧の目処が立たない等と言えば炎上しかねない。ブラックな雰囲気が労働者に無理を強いるためにブラック企業という物が生まれるのかもしれない。

 

 ──向こうの世界から逃げられて良かったな

 

 ここはのんびりしていていい。焦る必要は無いのだ。誰もスピード解決を求めていないのならこれでいいだろう。

 

「わかりました。用も済んだことですし、俺達はこれで失礼します」

「ああ、待ちな」

 

 帰ってお風呂で温まろうと考えていると神奈子に止められる。──うっわ、なんか嫌な予感がするぞぉ! 俺にはわかる。こんな顔何度も見たもん。

 

「折角だ。早苗と戦ってみなよ」

 

 ──この感じ。俺に言っているというよりは……

 

「私……ですか?」

 

 霊華が自身を指さして確認を取る。「嘘でしょ。なんで私?」みたいな気持ちが伝わってくる。そりゃそうなるわ。でも諦めたまえ。幻想郷の人はなんか知らないけど気軽に弾幕ごっこを仕掛けてくるのだよ。

 

『経験者は語る。ですね』

『大体はボコボコにされる。洗礼だよなぁ』

 

「色が被っているしね。どちらが青の巫女服を着るのにふさわしいか競うのもいいね」

 

 と言う諏訪子。確かに二人共服の色が被っている。最も青いのはスカートだろう。巫女装束の緋袴(ひばかま)の部分。緋色ではなく、青い上に霊華の巫女服は巫女装束というよりはオシャレなスカート……ドレスと呼ぶ方が相応しいだろう。と言ってもウエディングドレスやパーティーに行く時に着るような本格的なものでは無いのだが。

 

 巫女装束ベースのドレスと言えばいいだろうか。大人しい巫女装束を、もう少し馴染みやすく、現代風にアレンジしたイメージだ。霊夢の装束と同様フリルが着いていて可愛らしい。

 

『貴方には、フリル付きスカートがドレスに見えるのですね。まあ、分からなくもないですが』

 

 早苗の下衣(スカート)もまた真っ青で、よく見ると水玉模様が描かれている。スカートの縁には白いフリルがついている。個人的には霊華が着ているものの方が可愛らしい。

 

 さて、上半身に着ている衣服だがこちらは特徴的だ。色自体は一般的な巫女さんが着ている白衣(はくえ)と同じなのだが、袖が一部分着いていない。腋が露出しており、二の腕の真ん中辺りから下に着けられている。

 

 ──どうやってつけているのかな? 

 

 このデザインを考えた人は脇フェチなのだろうか。──ふむ。

 

 袖の両端が青く縁取りされているのは2人とも同じ。

 

 胸元に装飾物を付けているのは霊華だけで、早苗は何もつけていない。霊華は水色のリボンをつけている。これがまた語彙力を無くすほど可愛いんだ。

 

 ──外の世界(リアル)に霊華のような服を着た人がいたら引くけど、幻想郷の世界観には合っている。

 

 顔はどちらも美少女。どちらが優れているとかは考える必要は無いだろう。正直、好みの問題だと思う。

 

『貴方はどちらが好みなのですか』

「うーん……」

「神谷君はさっきから何を考え込んでいるんですか?」

「んぁっ? また声に出してた?」

 

 霊華は「何を言っているの」と言いたげな表情を浮かべた。

 

『難しいな』

『おや、即答で霊華を選ぶと思っていたのですが』

『うん。しかしだね。早苗も可愛い。むむむ……わからん』

 

 続いて髪に移ろう。霊華は癖のない黒髪、早苗は若干の癖がついた緑色の髪だ。前者は腰に届きそうな長さで、後者は胸の位置程までの長さ。ロングフェチの俺に効く。

 

 霊華は顔の両脇に髪を纏めて青い髪飾りを付けており、早苗の方は左側だけを纏めている。

 

 さあ、いよいよ頭頂部だ。早苗はカエルの髪飾りが付いたカチューシャを付けているようだ。可愛い。

 

 霊華は後ろに伸びる髪を、大きな水色のリボンで纏めている。このリボンが俺の推しポイント。霊夢にも言えることだが、とても好き。あ、ほら。語彙力が低下しちゃったじゃん。

 

『誰に解説しているんですか?』

『いや、俺自身の為に分析しているだけですよ? ()()()()()()()()()()()()()()。今頃変態だと思われているだろうよ』

 

「神谷くんー? おーい起きてますかー?」

「ん! はい、何でしょうか」

 

 真剣に2人を分析した結果『どちらも可愛い。それぞれ好きな服を着ればいいじゃないか』という当たり前とも言える結論に至った。結論を纏めた頃、霊華が俺の目の前で手を振ってきた。可愛い。

 

「目を開けたまま寝ていたんですか? やけに難しい顔してましたけど……」

「難しいことを考えていたんだよ。2人とも可愛いんだから別にそのままでいいじゃないかってね」

「巫女服の事ですか? 私も気に入っているから着続けたいですね……」

 

 まあ多分、諏訪子の発言は2人を戦わせるための適当な理由なのだろう。暇つぶしの余興か、好奇心か、幻想郷の強者はこういう事を好むイメージがある。レミリアとか()()()()()()()とか、()()()()()()()()()()とか。

 

「頑張って! 何気に俺、博麗さんが戦うところを見るの初めてかも。楽しみにしているよ」

「ありがとうございます。頑張りますね」

「無理はしないでね。勝ち負けは関係ないだろうから」

 

 うん、と頷いた霊華は外で準備をしている早苗の元へ走っていった。

 

『どっちが勝つと思いますか』

『さあ、2人の力を見たことがないからなんとも。早苗は強いと思いますよ。経験値は圧倒的に霊華が負けている。でもあの子、成長が早いからな。もしかしたら……』

 

 巫女同士の戦い。楽しませてもらおう。




ありがとうございました。良かったら感想ください。

祐哉君による可愛い2人の分析と、彼の癖(へき)がモロバレでしたね……。可哀想に……強く生きて……
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