東方霊想録   作:祐霊

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はいどうも、祐霊だと思います。

今回は春奇異変の裏話です。本編で書けなかったイベントを書きました。

前半が「霊華の巫女服を創造する時の一悶着」。これは異変調査へ行く前のお話です。

後半は「咲夜に人形作りを依頼される話」。紅魔館でレミリアと祐哉が戦いましたね。その時レミリアが脅しに使った(爆発四散した)人形です。

それでは、楽しんでいってください!



#50「創造者(クリエイター)は変態趣味をお持ちなのですか?」

 〜霊華の巫女服を創造するときの一悶着〜

 

───────────────

 

 霊夢から異変調査を頼まれた後、俺達は部屋に戻って身支度を始めた。外は寒い上、調査にどのくらい時間がかかるかわからないため、防寒対策はしっかりしよう、と決めたのだ。

 

「服は……そうだな。制服か巫女服のどちらかなら作れると思う。女性の衣服をそんなに見た事がないからね。現物がないと作れないんだよ」

「なるほど。それなら、この巫女服でお願いします」

「わかった。それじゃあ悪いけど、その服脱いでくれる?」

 

 そう言うと俺は()()()浴衣と帯を創造する。巫女服を脱いでいる間風邪をひくといけないからね。こちらの準備が終わり、創造したものを霊華に手渡そうとした時、霊華の様子がおかしいことに気づいた。

 

「あ、あの……ここで脱がないとダメですか?」

「へ?」

 

 正座している霊華はもじもじとして落ち着かない。心做しか頬もほんのりと紅い。すでに風邪をひいたか。否、恥ずかしがっている? 

 

「み、見ないでくださいね? その、できれば後ろを見ていて欲しいんですけど……」

 

 …………? 霊華は俺から浴衣を受け取ると、それを抱き締めるようにして持って、「今から着替えるから後ろを見ていて欲しい」と言うのだ。それも、恥ずかしがりながら。

 

「え、もしかしてここで着替えるの? わかった。俺が部屋を出るから、着替え終わったら教えて」

 

 ここ、俺の部屋なんだけどな……と思いながら部屋を出る。

 

 ───────────────

 

「か、神谷君ってもしかして……」

「んー?」

 

 俺は霊華が着ていた巫女服をマジマジと見つめ、触り、中を覗き、なんなら被ったりしている。まだ彼女の温もりが残っている。

 

「その、変態さんなんですか?」

「ええー!? お、俺が?」

 

 何で──と聞こうと思ったが、今俺がしていることを冷静に考えてみると成程そうとしか言えないことに気がつく。

 

「いや、待て、待って欲しい。俺の話を聞いて欲しい。冤罪だ。無実だ。俺は変態じゃあない」

「そう、なんですか?」

 

 完全に疑われているようだ。このままでは嫌われてしまう。

 

「さっき言ったけど俺は女性の衣服のことを知らないんだよ。まして巫女服なんて見たことがない。それに博麗さんが着ているものは霊夢のものと比べて複雑だ」

「確かに、私の物にはオシャレな飾りが多いですね」

「そう、それら全ての情報を頭の中に叩き入れて、CGみたいに3次元モデルを思い浮かべる必要があるんだ」

 

 実は、模倣品を作る方が難しかったりする。完全に俺のオリジナル物を作るのであればある程度適当でも何とかなる。しかし模倣品の場合、頭の中で作る設計図をきちんと作らないと再現度の低いコピーができあがるのだ。

 

 俺は試しに、巫女服を創造してみる。

 

「ほら、もうこれ服じゃないよね。いや服にはなるかもしれないけど……Tシャツと同じだよ。創造失敗」

「飾りも微妙……悪質な中国製品みたいですね」

「そう、しかしだね。じっくりと分析することで、本気を出した中国のように再現度の高い物が作れるんだよ。ああ、質は保証する。その点でいえば中国よりは優れていると思うけど……」

「分かりました。疑ってすみません。続けてください」

「いや、俺の方こそごめん。先に説明するべきだったね」

 

 何とか誤解を解く事ができた。危うく信用を失うところだった。

 

『でも祐哉、まだ温もりが残っている服を触ってドキドキしていましたよね。ほんのりと良い香りもして……』

『──うああああああああああ!!』

『わ、分かりました。からかった私が悪かったです。だからそんなに騒がないでください……』

 

 俺はちょっと泣きそうになりながら巫女服のイメージを脳内で作成していく。

 

 試行錯誤を30分程した後、ようやく満足のいく模倣品が完成した。一度霊華に着てもらって、問題ないことを確認した。後は防寒機能を付与するだけ。この付与はどういう訳か簡単にできる。

 

 出かける前から少し疲れたな……。

 

 

 

 

 

 ───────────────

 

 〜咲夜に人形作りを頼まれるアリス〜

 

 

 

 

「貴方が来るなんて珍しいじゃない。咲夜」

 

 発言主はキッチンから持ってきた紅茶とマカロンをテーブルに置いた。

 

 紅魔館でメイド長を務めている十六夜咲夜は、迷いの森に住むアリス・マーガトロイドの家を訪ねた。2人の仲は特別いいという訳ではなく、アリスが紅魔館の図書館──正確には図書館にいるパチュリー・ノーレッジに逢いに行くため偶に見かけるような仲だ。

 

 そんな関係だと言うのに、咲夜はアリスに会いに行ったのだ。アリスが不思議に思うのも当然だ。

 

「貴女に依頼したいの。特別リアルな人形を作って欲しいのよ。勿論報酬は払います」

「リアルな人形?」

「そう、本物の人間とうっかり間違える程リアルな物。幻想郷で貴女以上に腕のいい人形師はいないわ」

 

 咲夜の説明を聞いたアリスは少し考えて返事をした。

 

「完全自立できる人形は完成してないわよ」

「大丈夫。私が言っているのは見た目だけだから」

「わかった。大きさとか、体型のリクエストがあるなら聞かせて」

 

 アリスには断る理由が無かったので咲夜の依頼を受けることにした。咲夜ニコリと笑って、差し出された紅茶に口をつけた。満足気に頷いた後、人形の詳細を語り始めた。

 

「まずは性別だけど、女性でお願い。髪の色は黒で、腰にかかるくらいのロングストレート。大きさは160cmで、体型は痩せ気味。後は全てお任せするわ」

「あら、服は決めなくていいの?」

「ええ、この人形ね、()()に使うのよ」

 

 マカロンをひとくち食べたアリスは不敵な笑みを浮かべた。

 

「なるほど。()()()に使うのね。わかった。火薬は必要かしら」

「必要ないわ」

「いつまでに作ればいい?」

「4日後までにできるかしら。結構無茶を言っている分報酬は弾むわよ」

 

 咲夜はポケットから紙を取り出してアリスに手渡す。中を見たアリスは目を見開いた。

 

「ええ、了解よ。これなら2日で終わらせる」

「大丈夫? 4日目当日に完成するのでもいいのよ?」

「お得意様だからね。多少の無茶はしてみせるわよ」

 

 契約は成立。話が終わると咲夜は直ぐに席を立った。アリスもこの後直ぐに人形制作を開始するだろう。咲夜は、そんなアリスの動きを読んだ上で行動した。

 

 席を立った咲夜に続いてアリスも立ち上がった。玄関から出る時、咲夜は何かを思い出したように振り返った。

 

「いいこと教えてあげる。貴女が目指す完全自立人形だけどね、似たようなことをやってのけた人間がいるわ」

「……その人も人形使いなの?」

「全然違うわ。ほら、アリスが紅魔館(うち)に案内してきた男よ」

「祐哉、だったかしら。彼がそんな技術を? 魂魄の定着に成功するなんて……」

 

 アリスは人形を作成し、操ることが得意な魔法使いである。一言命令すると暫くの間命令通りに動くという、使い魔のような役割を持たせられる。

 

 他の使い魔と違う点はその器用さだろう。彼女の人形は人間ができる殆どの動作が可能だ。料理をしたり、掃除をしたりできる。今は外で雪かきをしている。

 

 人形への命令は定期的に行わなければならず、アリスは完全な自立人形を作ることを目指している。

 

 自分の目標を成し遂げた人物がいるというのなら、アリスは一目見たくなるだろう。

 

「誤解する前に言っておくわ。彼が作ったのは機械よ。貴方の人形程器用なことができるわけではない。でも、エネルギーの自動補給もできるし弾幕も撃てるし、そして何より賢いわ」

「よく分からないけど、気になるわ。彼は機械エンジニアなの?」

 

 アリスはやはり興味を持った。彼ともう一度会って話したいと思っている。咲夜の返事を待ちつつ、確か博麗神社で暮らしていると言っていた、と脳内の情報を引き出す。

 

「そうではないわ。彼は、そうね……創造者(クリエイター)よ。何だって作れるわ」

「へえ、今度会いに行ってみようかしら」

「それなら、今度の宴会で会えるはずよ」

 

咲夜の話では、つい昨日まで異変が起きていたという。私が住む魔法の森に被害はなかったので全く気づかなかった。彼はその異変の解決に関わったらしい。

 

「そうね。楽しみだわ」

 

 

 




ありがとうございました。

次は待ちに待った宴会です。すみませんがまだ1文字も書いてないので少々お待ちください。全力で書いてきます。

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