東方霊想録   作:祐霊

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こんにちは。50億年ぶりですね。私は50億年間色々やっていました。執筆もしていましたが、それよりも優先しなければならないことが山ほどありました。

ある程度キリのいいところまで書けたので、また暫くの間毎日投稿しますので、宜しくお願い致します。

前回までの話を忘れてしまった方は1つ前のお話に戻ってください。




#83「これからどうしよう」

 八雲紫に追放を言い渡された日の夜、俺は寝床を探していた。居場所を失ってしまった現状はとても不味い。夜は妖怪の時間。それ故に適当なところで野宿をするわけにはいかないのだ。

 

 幻想郷のあらゆる場所を思い出し、休めそうなところを探しているがいい場所が思いつかない。人里に隠れてもいいのだが、里で野宿をしていては目立つし、ずっと泊まれるほどの資金はない。誰かにお世話になるのも申し訳ない。そういう訳で人里には食事以外は行かないことにした。

 

 ついさっき夕飯を食べてきたのだが、目に映る者全てが敵に見えた。蕎麦屋での食事を2分で終えて釣り銭が発生しないように支払いを済ませ、さっさと撤退した。その間知り合いに会うことは無かったのが幸いだ。

 

 ──いいこと思いついた。

 

 俺は能力を使って指輪を造りだした。この指輪には『認識阻害機能』を付与した。俺の狙い通りに創造できているなら、指輪を身につけている間他人からの認識を曖昧にできるはずだ。

 

『その指輪……あまり当てにしないほうがいいでしょうね。他人の認識を操作する機能を付与するには、貴方の力が未熟なようです』

『どのくらい役に立ちそうですか?』

『──曰く、親密な関係であったり、強く認識されているほど効果が無いそうです』

 

 つまり霊夢と魔理沙、霊華や八雲紫に対して役に立たないということか。

 

 それでも全くの無意味ではなさそうだ。アイツは「指名手配犯として情報を流す」と言った。これから受けるであろう奇襲の頻度を低くできる。

 

 指名手配犯か……俺が何をしたって言うんだ。そもそも、アイツが言っていた「不合格」の意味がわからない。なんだ? 俺は試されていたのか? 

 

『ひとつ助言をします。これからは常に使い魔を控えさせるといいでしょう』

『なるほど、いつ戦闘になってもいいように』

『ええ、理想は霊力と魔力、両方を充填させることですが……』

 

 ──早速やってみよう。

 

 俺は使い魔を五体創造する。すぐ側に居られても邪魔なので少し離れたところから周囲の警戒を命ずる。これで警戒と準備を両立できる。俺が眠っていたとしても、自分が起きている時以上の精度で警戒できるのは強みだ。

 

 問題は寝床なんだ。今は森などの狭い空間を避けて歩いているけど、こんな所では安心して眠れない。

 

 はぁ、と溜息をつきながら暗黒の空を見上げる。今日は曇っていて星も月も見えない。外の世界と違って、里以外は灯りがない。故に完全な暗闇だ。そんな状況で歩けている理由は簡単で、灯りを創造したのだ。サバイバル向きの能力だと思った。ただ敢えて不満をあげるなら、飲食物を創造できない事だろう。

 

 やろうと思えば可能なのかもしれないが、元が霊力であるわけで、創造物を食べるということは霊力を食べることと同じだ。それは、己の血液や尿を飲んで生活しようとしているのと同義。正気の沙汰では無い。

 

 そんな事を考えられる程度にはまだ心に余裕がある。今はまず、サバイバル生活に適応するのが最優先だ。

 

「──3時の方向から生物が接近シマス。警戒してクダサイ」

「──!」

 

 使い魔からテレパシーを受け取った俺は帯刀に手を掛け、目を凝らす。

 

 ──良く見えねぇな

 

「──接触まで残り5、4、3、2、1……」

「──オラッ!」

 

 使い魔のカウントダウンが「0」に到達する直前に目標を捉えた俺は、抜刀しながら霊力の斬撃を飛ばした。目標は熟した果物を地面にたたきつけたような音を立てて吹き飛んでいった。

 

 使い魔によれば、他に敵はいないようだ。俺はホッと息を吐いて納刀する。

 

 ──使い魔の警戒網とアテナの感知能力があるから助かっているけど、俺自身に感知スキルが無いのが不安だな……

 

 自分で位置を感じるのと、他人に指摘されてから補足するのでは時間に誤差が生まれる。その誤差で命を落とすケースもあるだろう。

 

『妖力や悪意の感知は才能が無ければできません。残念ながら祐哉にその才能は無いですが、それでも手が無いわけじゃないですよ』

『本当ですか!?』

『五感を研ぎ澄ますのです。視力を、聴力を、触覚、嗅覚……時には味覚も。敏感に反応できるようになれば今よりも感知しやすいでしょう』

 

 五感を研ぎ澄ます。そのためには心を落ち着かせて集中する必要がありそうだ。俺は深呼吸して五感を研ぎ澄ます()()()()()()。こういうのは形から入った方が早いだろうからね。少しずつ精度を上げる感じで行こう。

 

「──6時の方向、5m先、生物が接近します。警戒してクダサイ」

「またか──!」

 

 俺は先程同様霊力の刃を飛ばして敵を刈り取る。

 

 ──認識阻害機能、全く役に立ってなくないか? 

 

『いえ、先程からの妖怪は「神谷祐哉」を襲っていると言うよりは、「人間」を襲っているのだと思います』

 

 やらかしたかも。認識阻害機能とは言ったものの、実際は持ち主が「神谷祐哉」だと分かりにくくする機能だ。だから、人間であることは隠せない。

 

「こんな雑魚でも倒さなきゃ俺が死ぬもんなぁ」

 

 一撃で倒せる敵と戦うのは飽きてくる。まあ、八雲紫と雑魚妖怪×1000体、戦うならどちらがいいかと言われれば雑魚の方だけど。数が多いならレーザーで消せばいいし。

 

『弾幕の練習をしないとな』

『今度から、妖怪を倒す時に弾幕を使ったらどうですか?』

『アリだけど、今度は剣術を忘れそう』

 

 剣術×創造×弾幕という手を取るにしても、わざわざ刀から弾幕を放つメリットがない。それに、俺は今でも刀から弾幕を飛ばすことはできない。やろうとすれば斬撃が飛ぶから、修行法を変えて刀で斬りつつ創造する練習をした。接近戦用の修行はしてあるのだが、弾幕ごっこのような中〜遠距離戦闘の練習はしていない。

 

『霊力の刃を飛ばす時、どの程度消費しますか?』

『雑魚妖怪を斬る程度なら殆ど消費しない』

『それなら創造した弾幕に斬撃を混ぜてみたらどうでしょう?』

 

 なるほど。創造に使う霊力量より、斬撃を飛ばすのに必要な霊力の方が少ないから、節約にもなりそうだ。

 

『まず、常に使い魔を数体用意しておき、霊力と魔力をそれぞれ貯蓄します。これはアクアバレットとプロミネンスを好きな時に使う為でもあります』

 

 確かに、アクアバレットを使いたい時に限って昼間だったりするからなあ。アクアバレットに使う魔力は基本的に夜しか充填できない。対してプロミネンスは昼間に充填できる霊力が必要なのだ。

 

『そして、弾幕を張るのは使い魔に任せます。貴方は敵の弾幕を避ける事に専念できますし、時には自ら斬撃を飛ばす事で圧力を掛けられるでしょう』

 

 アテナの助言を理解した俺は鳥肌が立った。

 

 ──この人めっちゃ頼もしい

 

『戦略を司る神ですから。それに、多くの英雄を支え、見守ってきましたからね。妖夢に頼れなくなった今、私が助言します』

『ありがとうございます』

 

 戦い方のイメージはできたから、あとは試行錯誤するのみ。襲いかかる敵にはなるべく弾幕で対応するようにしようか。

 

『それはオススメできません。八雲紫や追っ手がいつ来るか分からない今、できるだけ霊力を温存するべきです。弾幕は弾幕ごっこ(実践)で練習するべきかと』

『戦いに行けってことですか? それとも、追っ手を待つ?』

『もう少し弾幕のイメージを固めましょう。スペルカードの構想を作るのです。貴方は本番で力を発揮するタイプというよりは、周到に計画立てて成功するタイプですから』

 

 アテナと話している途中も妖怪が近づいてきたので斬撃を飛ばした。さっきから湧いてくる妖怪はどれも形を留めていないか瘴気のようなものを纏った、生物とも言い難いナニカである。原作に登場したような妖怪は出ていない。もし理性を持った妖怪が来たら弾幕戦になるだろう。

 

 雑魚には霊力の刃を。弾幕戦になったら積極的に戦い、試行錯誤する。当面はこれで行こう。

 

「──4時の方向から中型犬が接近。戦闘力不明」

 

 使い魔が知らせてきた。犬と断言できるということは、仮に妖怪ならそれなりの強さを持っているということだろう。だがやることは変わらない。

 

 音で気配に気づいた俺は、そちらに向かって斬撃を飛ばした。敵はそれを躱し、目にも止まらぬスピードで突進してきた。

 

「うわっ──」

 

 ──やばい。食われる! 

 

「──星符」

 

『待ってください! この気配、その犬は()()です!』

 

 なんだって? 全長1mを越すような犬がコロ!? 

 

 コロは霊華の膝の上にスッポリはまる程度の大きさだったはずだ。

 

 しかし、アテナがそう言うならそうなのだろう。

 

「お前……コロなのか?」

 

 俺がそう問いかけると、コロはじっと俺を見つめ返す。

 

「悪いね。俺は()()()と違って君の言葉や気持ちは分からない。どうしてここに来たのか分からないけど……」

 

 俺はポケットに入れておいた()()()()をコロに身に付けさせる。

 

「これを、あの子に渡してくれないかな? 俺はあの子に嫌われてしまったけど、俺の気持ちは変わらない。あの子を守りたいんだ。だから、届けて欲しい」

 

 コロは頷いた後、走り去っていった。俺の言葉を理解できたのかは分からない。でも、コロの正体が「鵺」だというなら強力な妖怪の可能性がある。もしかしたら俺の気持ちも理解しているだろう。

 

 ──頼んだよ、コロ。




ありがとうございました。
今回の話は2ヶ月前くらいに書いたのですが、今見ると「全然話進んでないじゃん」って思いますね。投稿しなかったのはお前だろとツッコミが来そうです。

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