東方霊想録   作:祐霊

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こんにちは。祐霊です。

巫女さんの強さをご覧下さい。




#87「EX宵闇妖怪 vs 楽園の素敵な巫女」

「はぁ……はぁ……クソ……こんな人間如きに……ここまで苦戦するとは……」

 

 人喰い妖怪ルーミアは、頭に着けた御札によって封印されていた。この御札は彼女自身は触れることができず、解除することができずにいた。ルーミアは祐哉に攻撃され、地面に叩きつけられた際、胸ではなく頭部を破壊しろと言った。そして刀を振り下ろした瞬間、頭を退けて御札を斬らせた。これは刀を胸に突きつけられた時に計画されたことだった。

 

 封印が解け、元の姿に戻ったルーミアは成人女性の様に背が高くなり、身体の膨らみもくびれも相応のものに変わった。力を取り戻したルーミアは空腹だった。故に、目の前にいる人間を食し、その後里にでも出かけて食い漁ろうかと考えていた。

 

 その時、身体に数本の刀が突き刺さった。なんの前触れもなく刺さった其れに対し、彼女は驚愕した。耳に入るのは下等生物であるはずの人間の煽り。かつて猛威を振るっていた彼女にとって、それは矜恃を傷付けられることと同義だった。

 

 今すぐに人間を黙らせたい。だが、刀を抜いて再生したところでもう一度刺されてしまう。ルーミアは仮説を立てた。人間の手品には何かネタがあるはずだ。考えられるのは2つ。1つは対象の体内にある鉄分を利用して刀を生成している。もう1つは何らかの方法で「指定した場所に刀を生成している」。

 

 前者ならば勝ち目は薄い。だが、後者なら……。ルーミアは人間が串刺ししてくるタイミングを見極め、大きくステップを踏むことで回避した。

 

 人間との剣の打ち合いに負けたが、そんなことはどうでもよかった。だが、暫くして身体を真っ二つに斬り裂かれてしまった。死にはしないが、これで怒りが頂点に達した。これ以上人間に不覚をとるのは一生の恥。妖怪としての矜恃に係わる。

 

 ルーミアは本気の殺意を込めて威圧した。すると人間はあっという間に萎縮した。そこで形勢逆転。人間のターンは永遠に終了し、本来あるべき光景が繰り広げられた──。

 

「ん? 何だコレ」

 

 ルーミアは人間が掛けていた眼鏡を手に取り、レンズを覗き込んだ。

 

「へぇ、霊力を感じると思ったら、こんなマジックアイテムを持っていたとは。通りで暗闇の中私に攻撃できていたのね。まあ、どうでもいいわ」

 

 眼鏡のレンズの先には、モノクロの世界が見えていた。ルーミアはポイ捨てをするように眼鏡を落とした。

 

「さて……」

 

 人間を刺したルーミアだったが、かなり消耗していた。強力な再生力を持ち、不死とも思えたルーミア。しかし再生には相当な体力を消費するのだった。妖怪でも体力を使えば、疲労するし、斬られたら痛みを感じる。人間と違うところは体力の量と傷を負って致命傷になるかどうかである。

 

 ルーミアは体力を回復するために目の前の食糧に手をつけることにした。

 

 ──その時だった。

 

 ───────────────

 

「これ程の妖気……アンタ誰?」

「──!?」

 

()は嫌な胸騒ぎがして眠れなかった。こんなことは滅多にない。不安になった私は気になる方向へ空中散歩していた。その時、強力な妖気を感じて駆けつけたら捕食中の現場に居合わせたというわけだ。

 

「念の為持ってきた陰陽玉が役に立ちそうね」

 

 そこで倒れているのは間違いない。私の──

 

「アンタ! 私の友達(祐哉)に手を出してただで済むと思わないことね!」

「ふーん? なんだ、あんたか。今お前を相手にするのはキツいわね……仕方ない──『ダークミスト』」

「あ! 待ちなさい!」

 

 暗闇に身を包んだ妖怪が逃げる事を悟り、私は御札を投げつける。

 

 ──逃がしたか。後を追う前に……

 

「ねぇ、しっかりしてよ! 嘘よ……起きなさいよ!」

 

 祐哉の身体を揺するが何の反応も示さない。脈はまだある。急いで永遠亭に運ばないと! 

 

 ───────────────

 

「お願い。永琳、祐哉を助けて!」

「こんな重体患者を見るのは久しぶり。けれど私が診る以上、簡単に死なせはしないわ。ウドンゲ、輸血の準備を」

「はい」

 

 得体の知れない宇宙人だけど、月の技術は凄いから祐哉は助かるだろう。

 

 ──アイツ……何処かで見たことがあるのよね……

 

 さっきの妖怪は誰だっただろうか。あの妖怪は強力。それも幽香のような大妖怪と違って野放しにしては危険なタイプの妖怪。正体は分からないけど、そんな気がする。

 

 永遠亭に居ても私にできることはない。私は私のやるべきことをやる。

 

 ───────────────

 

「見つけた!」

「くっ……! だが補給は済んだ! 遅かったなぁ博麗の巫女! 既に5人喰ってやったぞ!」

 

 ルーミアを探しだすのにかなりの時間を要した。新月の今日は手元の灯りだけが頼りだ。ルーミアが強力な妖気を放っていなければ気づくのが送れただろう。──だから、5人で済んだとも言える。

 

 妖怪の周りには人が食われた跡で散らかっていた。この異臭、この感覚。もう味わうことは無いと思っていた……。

 

「アンタみたいな奴がいるからスペルカードルールを作ったんだけどね。アンタ、新米? いや、その顔、随分と大きいようだけどルーミア?」

「そう。私はルーミア。これが本来の姿だ」

「ということは古参ね。封印された後にルールを実装したから新常識を知らないのね」

 

 私はルーミアにスペルカードルールを説明した。

 

「ならば、私が勝てばお前も食糧にしよう」

「好きにしなさい。私が勝ったら封印するわ」

 

 日の出が近いのだろう。真っ暗だった空は薄暗い程度まで明るくなった。故に、ルーミアの姿を眼で捉えることができる。戦いが長引く程私が有利になる。

 

 戦闘開始直後、直ぐに御札を投げつける。ルーミアは余裕そうな笑みを浮かべて躱す。

 

 ──おかしいな。ルーミアみたいな妖怪には効くはずなんだけど

 

「今更そんな札に屈するか! ──新月『ノヴァ・ルナ』」

「真っ黒な弾って……そんなのアリ?」

 

 ルーミアのスペルカードは全弾黒い。幼い姿の時と違って弾幕の密度も濃い。その為、私の視界は再び暗黒で埋め尽くされた。

 

「うそ! あんたは何も見えていないはずなのになぜ避けられるの?」

「弾の色のせいで避けにくいのはあるけど、弾に込められた力は感じられるのよ。その隙間を縫えばいいだけじゃない」

「めちゃくちゃな奴!」

 

 弾幕は勝手に避けてくれるし、私が投げた御札は適当に投げても相手に向かっていく。こう言うといつも嫌そうな顔をされたり呆れられる。

 

「相手が悪かったわね。私じゃなければ当たってたわ」

「ちっ! ──闇符『ダークネビュラ』!」

 

 真っ黒な弾が消え、ルーミアが2枚目のスペルカードを使用すると、取り戻された視界が再び奪われた。

 

 黒いモヤが湧き上がり、中から光弾が飛んでくる。

 

「私は別に、真っ黒な弾を飛ばし来ても構わないんだけど」

「違う違う。弾の発光で雲が見えるでしょ? それが暗黒星雲──ダークネビュラよ」

 

 黒い雲もルーミアの妖力で生成されているためか、感知で弾を避けることが難しくなった。でも大したことでは無い。ぼーっと飛んでいれば弾には当たらないんだから。

 

「祐哉は……アンタがさっき襲った人間は強かった?」

「あの手品師か。確かに強かった。封印されたままだったらヤバかっただろうね」

「そう。強くなったんだ、祐哉……」

「何を嬉しそうに笑っているの? 余計なことを考えられなくさせてやる! ──『常世闇』」

 

 ルーミアが「常世闇」と呟いた瞬間、日が昇りかけて明るくなってきた世界が完全な闇に包まれた。

 

 ──これ、夜中よりもくらいじゃない。何も見えないわ

 

「今頃幻想郷全てが私の闇に飲み込まれているはずよ。そしてこの世界は灯りを無効化する」

「っ! 危ないわね。まさか黒い弾を飛ばしてきてるの? 反則よ」

「この弾幕でお前を倒せば反則を指摘するものが居なくなるでしょ」

 

 こんな卑怯なヤツはそう滅多に居ない。

 

 何も見えない中、見えない何かが飛んできている感覚と音だけは感知できる。私はそれを頼りに隙間を縫う。鳥目にしてくる奴は居たけどこれはタチが悪いわ。

 

「アンタにスペルカードルールは早かったみたいね。時代について来れないと言うなら、私にだって考えがあるんだから! ──『反則結界』」

 

 全方位に御札をばら撒く。多分ルーミアはこれを避けているはずだ。私は構わず御札を投げ続ける。この暗闇だ。ルーミアも見えているのかどうか怪しいが、御札は一定の距離を進むとしばらくの間その場に留まる。5、6層の御札の壁に閉じ込められたルーミアは限られた空間で私が放つ光弾を避けなくてはならない。光弾は放って直ぐに見えなくなってしまったが間違いなく飛んでいる。

 

「そんなんじゃ当たらないわ。何処狙ってるの? あ、ごめんなさい。あんたには私が見えてないんだったわね」

「アンタから私は見えているの?」

「勿論。でなければ戦闘中に自分まで闇に身を包まないでしょう? 封印されていた時は私自身も闇の中では見えていなかったけど、今ならよーく見えるわ。あの人間(手品師)が持っていた眼鏡よりもクッキリとねぇ!」

 

 こんな無駄話をしている間にも戦闘は続いている。私は闇の弾幕を、ルーミアは御札を避けながら互いにスペルカードを使用している。

 

 私は弾幕に込められた力を感じ、特別避けようと意識しなくても弾に当たらない。ルーミアは私のことは勿論、御札や放った瞬間に闇に()()()される光弾が見えているから弾に当たらない。

 

 先に集中力を切らすか、油断した方が負ける。

 何も見えないけど緊張する必要は無い。私はもっと強いヤツと戦ってきたのだから。

 

「クッ、この札……!」

「ふふ、御札の枚数が増えていくことに気づいたようね。そのうち完全に隙間がなくなるけど、先に反則したのはアンタだからね」

「舐めるなよ、人間がァ!」

 

 御札の間隔が狭くなり、徐々に避けるのが難しくなるのが『反則結界』。声音に焦りを見せたルーミアの弾幕は挙動を変えた。

 

 ──っ! これは……目に見えないレーザー? 

 

 高圧洗浄機が放つ水のように細い数本のレーザーが私を狙って来る。不可視のレーザー、不可視の弾幕。どちらか一方に気を取られ過ぎれば致命傷。

 

 私はそれを──

 

「そんな! これを()()()だなんて……!」

 

 全て避けた私に対し、ルーミアは須臾の隙間を潜ることができなかった。私の勝ちだ。

 

「アンタの敗因は、私を鳥目にした事よ。弾幕の美しさが分からなかったわ」

「そんな無茶苦茶な……! 見えないはずなのに! なんで当たらないのよ!」

「あら、見えないだけで弾幕自体は簡単だったわ」

「答えになってない!」

「……約束通りアンタを封印するわ」

 

 闇に包まれていた幻想郷の空は突如真っ青な晴天になった。後日、私と事情を話した数人の間で『宵闇異変』と名付けられた。

 

 異変解決後の宴会には、ルーミアも参加したが、件の記憶は無いようだった。

 




ありがとうございました!

フェムトわかりやすく言うと須臾。須臾とは生き物が認識できない僅かな時のことよ。時間とは──

──失礼。所謂EXルーミアを出すことになるとは……そんな予定はなかったんですけどね(!?) ルーミアは出落ちキャラなんて知らない()

祐哉をあそこまで追い詰めたルーミアは隠し球を幾つも持っていましたが、それをものともせず完勝した霊夢さんに拍手を。いや、盃を。
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