東方霊想録   作:祐霊

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どうも、祐霊です。9999兆年ぶりの投稿ですね。大変お待たせしました。

就活が本格的に始まってきたので、しばらくは投稿頻度が落ちます。また、1話ずつ投稿する形になるのでご了承下さい。





#93「師弟」

 叶夢と戦い、妖梨(ようり)に縮地を教わった日から一週間経過した。この一週間、俺は縮地を習得するための修行をしていた。使い魔を使って自分の動きを分析し、改善点を見つけては修正する。地道な作業を積み重ねて漸く形になってきた。今日は妖梨との約束の日で、修行の成果を見てもらっている。

 

「驚いたな。この短期間で随分と成長したね」

「文字通り死ぬ気で練習したからね。それで、どんな感じ?」

「基礎は身に付いていると思うよ。あとは、更に速く動いても基礎を維持できるかだね」

「やったぜ」

 

 俺は僅か一週間で縮地の基本を身につけることに成功した。妖梨の話によれば、叶夢の方は全く進歩していないようだ。それだけに、俺が基礎を身に付けている現状にとても驚いている。

 

 恐らく、叶夢とは練習量と本気度が違う。俺はこの一週間の大半を縮地の練習に費やした。彼は剣術の修行の片手間に縮地の修行をしているだろうから、差が出るのは当然である。

 

 更にいえば、縮地を習得したいと思う気持ちも俺の方が強いだろう。俺は常に危険と隣合わせの生活をしているから、一刻も早く成長しなければならない。そういった気持ちの面でも俺の方が勝っている。まあ、要するに──

 

「人間、死ぬ気でやれば何とかなるんだろうな」

「ある程度はね。どうだろう、更に叶夢と差をつけないか?」

「強くなれるなら、なりたいね」

「それじゃあ次のステップに進もうか」

 

 何をするのかと問うと、妖梨は帯に掛けた刀の柄に手を乗せた。

 

「実戦だよ。弾幕、能力、霊力による身体強化等、何でもありの戦いさ」

「いいね、そういう穏やかじゃない感じ。ルール無用の戦いは好きだよ」

 

 俺は腰に付けた刀に手を添えて気持ちを整える。因みに、叶夢に刀を折られてからは二本の刀を帯刀している。一本は折れた本物の刀。もう一本は創造した刀である。折れてしまった刀に使い道は無いが、その辺に捨てる気にはなれず、常に持っているしかないのだ。

 

「準備はいい?」

「ああ、いつでも」

「先手は譲るよ」

「じゃあ──」

 

 俺は全身に霊力を纏い、縮地を使って妖梨に迫る。駆け出す際の踏み込みと同時に霊力を放出することで、文字通りの瞬間移動を行う。一週間前よりも数倍速く移動し、素早く刀を抜く。

 

「──遠慮なく」

 

 ──我流抜刀術、斬造閃! 

 

 この瞬間、妖梨は身体から霊力を放出した。力強く放出された霊力は形を変え、自身を包む球体となった。

 

 そして、俺の三方向からの斬撃は彼の身を包む球体に弾かれた。

 

「──っ!?」

 

 自分の刃が全く通らない事に驚いた俺は、一旦距離を取る。しかし、今度は妖梨が縮地を使って肉薄してきたため、打ち合いになることは避けられなかった。

 

「く……」

 

 妖梨の斬撃は、妖夢や叶夢よりも重い。俺は刀に霊力を纏わせて応戦するが、妖梨も霊力を使う為、力の差は変わらない。

 

 ──やっぱり妖梨相手だと霊力を使ってもキツイな

 

 幻想郷には、霊力や妖力を使いこなせる人は少ないという。今まで戦ってきた妖怪達は、身体強化等に妖力を使っている様子はなかった。だから、俺が身体強化を使えばそれだけ力の差が埋まっていた。しかし、叶夢や妖梨のように、互いに身体強化をする場合は霊力の量や扱いの上手さが大きく影響してくるのだ。

 

 俺が叶夢と戦えるのは、アイツよりも霊力の扱いが得意だからだ。しかし、妖梨(師匠)は霊力のスペシャリストである。霊力の扱いで彼の右に出る者はいない。先程、俺の斬造閃をガードしたように、他では見られない扱い方ができるのが妖梨だ。

 

 ──俺はこの人に勝てない。

 

「はっ!」

 

 猛攻を仕掛けてくる妖梨は、気迫に溢れた一撃で斬り上げを繰り出す。

 

 ──膨大な霊力が刀に込められている。食らえば致命傷どころか死ぬぞ! 

 

「くっ……」

 

 俺は縮地を使って後ろに飛び退くことで、妖梨の斬り上げを回避する。

 

 ──危なかった。こういう時に縮地を使えばいいんだな。なるほど。

 

 などと考えていると、妖梨はその場で刀を振り下ろした。刀の軌道に沿って霊力の衝撃波が飛んでくる。

 

 ──休む暇もない。

 

「はぁッ!」

 

 飛来する衝撃波に対し、俺も霊力の刃を飛ばして相殺する。

 

「さあ、もっと縮地を使いなよ!」

 

 妖梨はそう言って、凄まじい速度で肉薄してくる。

 

 ──そうは言っても、さっきから妖梨の攻撃をどうにかするので精一杯だ。

 

 ──そういや、これはルール無用の戦いだったな。剣術に拘る必要はない。

 

「星符──」

「──させないよ!」

 

 スターバーストを使って妖梨との距離を強引に作ろうとしたが、失敗に終わった。

 

「スターバーストを使う気だったね? アレは魔法陣を作ってからレーザーを放つ技。なら、レーザーが放たれる前に魔法陣を斬ればいい」

「……敬意を込めて言わせて欲しい。化け物でしょ。そんなことされたの初めてだよ」

「僕は君の師匠だからね。このくらいできなくっちゃ」

 

 レーザーを無効化できる人とか、スターバーストを超える威力のレーザーで対抗する人はいたけど、発動もさせてくれないとは。これは俺の中の化け物ヒエラルキーを更新する必要があるぞ。

 

 ──1つだと潰されるなら、小規模のレーザーを沢山打てばいい。

 

 十数個の魔法陣が俺たち二人を囲うように出現する。その後、全ての魔法陣から細いレーザーが放たれる。十数本の線は複雑に重なり、妖梨の動きをかなり制限することができた。俺は更に刀を創造して、妖梨に向かって投射する。

 

「そうそう。大技を撃つのではなくて、そうやって細かい技で攻めるのもアリだよ」

 

 妖梨はレーザーと刀を避けながら賞賛してくる。

 

 ──余裕ありすぎるだろ。俺の攻撃が温いのか? 

 

 俺はレーザーを消して使い魔を創造し、弾幕を張らせる。数体の使い魔によって作り出された高密度な弾幕だ。これで流石の妖梨にも負担をかけられるだろう。

 

「……仕方ないね」

 

 妖梨は何かを呟いた。そして、彼は刀を構え直して目を閉じる。

 

「──風を起こせ、()()!!」

 

 妖梨が叫んだ瞬間、彼を中心に旋風(つむじかぜ)が発生した。旋風は俺の弾幕を全て風に流してしまった。

 

「……それが、妖梨の刀か。やっぱり、妖刀だったんだな」

「そうだよ。これが僕の刀──妖刀・鎌鼬(カマイタチ)だ。白玉楼にいる剣士は皆特殊な刀を持っていることになるね。もちろん、君も含めて」

 

 妖梨の刀は見た目に変化はないものの、素人にも分かる程の膨大な妖力を放っている。

 

 妖夢の楼観剣と白楼剣、妖梨の鎌鼬、叶夢の望斬剣、そして俺の妖斬剣。よくもまあ、訳アリの刀がそんなにあったものだ。

 

「妖刀が相手なら()()が使えるな」

 

 妖梨を相手に使うことはないと思っていたが、妖刀が相手なら話は変わってくる。

 

 俺は相棒の名を呟くことで、刀の力を解放させる。

 

「──(はら)え、妖斬剣」

 

 俺の刀は白く発光し、妖力や霊力とは違う力を放ち始めた。力の正体は分からないが、温かい感覚なので悪い力ではないのだろう。

 

「その刀と打ち合うのは避けた方が良さそうだね。──塵旋風『ダストデビル』」

 

 ──塵旋風ってアレだろ? 校庭とかで発生する竜巻の劣化版みたいなやつだよな。

 

 技名から弾幕の構造を推測して距離をとる。妖梨が刀を薙ぎ払うと、数個の塵旋風が巻き起こった。初冬の森には、枯葉が無数に落ちている。それ等は塵旋風に飲み込まれ、凶器となって俺に牙を剥く。

 

 ダストデビル(塵旋風)は、半径数メートルの激しい鉛直渦を発生させる自然現象だ。妖梨の刀はそれを無理やり引き起こすことができるのだろう。

 

「やりづらいな」

 

 ただでさえも森は障害物があって戦いにくいというのに、旋風を起こされてしまっては余計にしんどい。

 

 ──塵旋風から距離を取ってしまっては向こうの思う壷だ。どうにかして妖梨に近づかないと俺に勝機はない。

 

 数個の塵旋風が視界を邪魔していて妖梨の姿を捉えられない。

 

 ──アテナ、妖梨の場所を教えてくれますか? 

 

『技を使う前から動いていませんよ。12時の方向、10メートル先です』

 

 俺はアテナに感謝の言葉を言うと直ぐに縮地を使った。縮地は速すぎて直線的な動きしかできないのが弱点だが、周りに障害物が多いことが幸いした。俺は周りの木に向かって疾走し、木々を足場として方向転換する。足を強化していなければ骨折しそうな勢いで木を蹴ることで、更なる加速を重ねて妖梨に迫る。

 

「くっ──まさかダストデビルを無視して突っ込んでくるとは」

「受け止めるのか……完全に不意打ちだったはずなのに」

 

 妖梨は妖刀で俺の刀を受け止めることで対処してきた。

 

「そんなに俺は遅い?」

「そんなことないよ。ただ、僕が速い人に見慣れているだけさ。僕の知る限り妖夢(お姉ちゃん)が一番速い」

 

 なるほど。妖梨は小さい頃から妖夢と稽古をしていたのだから、彼女の速さに見慣れているのは当然だ。

 

「……まあ、数十年修行してきた人の方が速く動けるのは当然だよな」

「そうそう。見た目じゃ一番若いけど、実は一番年上だからね」

「……俺は結局、妖梨と妖夢の足元にも及ばないって訳だ。やる気失せるね」

 

 文句をぶつけるように妖梨の刀に妖斬剣を叩きつける。

 

「そう気を落とさないでよ。一年弱でここまで成長しただけで相当凄いよ。……さて、そろそろ離れないと刀が悲鳴をあげるな。──鎌鼬!」

 

 妖梨が刀の銘を呼ぶと、それに応えるように何かが起こった。

 

「──っ!」

 

 突然、身体のあちこちに鋭い痛みが生じた。自分の身体を見てみると、全身傷だらけになっていた。

 

「これは……そうか。()()()()()()()()

「気付いたかな? この刀には妖怪鎌鼬が宿っている。鎌鼬は旋風に乗って現れ、人を切りつける。ダストデビルのような風害を起こすこともできる刀だけど、今の使い方が本来の形だよ」

 

 傷口からは血が出ていない。不思議な傷だ。

 

「因みに、その傷口が特殊なのは見た目だけではないよ。この刀に斬られると傷口から霊力が出ていくんだ」

 

 ──通りでさっきから霊力の操作が上手くいかないわけだ。

 

 霊力を使えなくなってしまっては俺は何もできない。

 

「今日はここまでにしよう。縮地を使ういい練習になったと思うよ」

 

 妖梨はそう言って刀を鞘に戻すと、俺に小さな物体を渡した。

 

「その軟膏を傷口に塗ってね。加減してあるから直ぐに治るはずだよ」

 

 ──妖梨は強すぎるな。流石は師匠だ。

 

 素晴らしい師匠に出会えたと思う反面、歳が近いのにこんなに差があると思うと悔しい気持ちになる。

 

 ──もっと精進しよう。




ありがとうございました! よかったら感想ください。

妖梨の強さはバグ。下方修正はよ() 
またやってしまった。私が書くと皆化け物みたいに強くなってしまう。
冗談はさておき、今回は妖梨の強さがわかる回になりましたね。ご覧の通り、祐哉では彼に勝てません。残念ですが、剣術歴一年未満の人間が十数年修行した人に勝ったらそれこそバグですよね。

妖梨も言ってましたが、実は祐哉は優秀な方です。今の環境は命がけなので、より一層成長すると思います。
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