ターゲットの暗殺教室 改訂版   作:孤独なバカ

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温かな教室

「おはよー。こうちゃん。」

いつも通り屋根上に来るあかりねぇ。

「よう。」

俺は読みかけのラノベを閉じてあかりねぇの方を見る。

「そういえば、昨日のカルマくん凄かったね。」

「ってかああ言う暗殺が基本なんだよ。馬鹿正直な暗殺方があるかよ。」

俺が言うとするとあかりねぇはクスリと笑う。

「やっぱり、こうちゃんは厳しいね。」

「……厳しいも何も事実だしな。精神的に追い詰めて殺すんだろ。じっくりじっくり痛めつけて少しずつ追い詰める。殺し方としては間違ってねぇよ。」

殺し方としては正しいだろう。怒りは我を忘れさせることにもってこいだし。

「でも、無理だろうな。死神は殺せない。」

「えっ?」

「多分今日は終始警戒すると思うしな…。殺せるはずないだろうな。」

元々殺し屋だった死神なら気付いてるだろう

痛めつけられるのが嫌なら回避すること。

たったそれだけで対策は練れるのだ。

「……よかった。」

「…えっ?」

「殺せんせーが死なないでよかった。」

すると安心するあかりねぇ。

「あかりねぇ?」

「……前にこうちゃんから聞いたこと、殺せんせーから言ってたんだ。お姉ちゃんと殺せんせーのこと」

「そっか。」

俺は大体気付いてしまった。

「……似てるよな今の死神とあぐりさん。」

「うん。おせっかいなところも優しいところもお姉ちゃんそっくりだね。」

「そりゃ、死神の先生だからな。教師を受け継いだってことは、死神はあぐりさんの魅力に気づいたんだろ。」

「……ねぇ。殺せんせーを誰かが殺した時、こうちゃんはどうするの?」

あかりねぇの言葉に俺は少し考える。

「多分だけども海外に逃げるかな。居場所がバレてるわけだし。」

「……そっか。」

心配してくれているのがよく分かる。でもそれが生き残るたった一つの道。

後一年未満

俺が普通に学校に通える時間だ。

「……」

「……」

無言が続く。気まずいってもんじゃない。

「……嫌だ。」

「……」

あかりねぇの言葉に戸惑ってしまう。

聞こえてしまった。

するとあかりねぇはこっちを見る。

「……こうちゃんといられるのが後一年だなんて嫌だ。」

今にも泣き出しそうなあかりねぇに、俺はどうしていいかわからなくなる。

「……」

目を合わせられない。俺だって嫌に決まってる。

でもお互いに分かっているのだろう

それが叶うことがないってことが。

 

「ほら、ここをくくれば。」

「あっ!!本当だ。」

「……すげぇ。分かりやすい。」

「こうちゃん凄い!!」

「倉橋先輩。その呼び方恥ずかしいのでやめてください。」

俺の周りではこんな形だった。なぜか先輩に勉強を教えることが多くなり、わかりやすいと評判だった。

「でも、よく分かるね。まだ、習ってないところでしょ?」

「まぁ、幼稚園の時に全部解きましたから。」

「……やっぱり羽川くんおかしいよ。」

「……まぁ、自覚はしてますが。」

家の事情であったが、よく幼稚園児の時解けたのか今でも不明だった。

「でもこれ殺せんせーより分かりやすいかも。」

「にゅや!」

「しかもノートも分かりやすいし、……羽川コピーとってもいいか?」

「別にいいですけど…木村先輩、ノートは自分でとった方がいいですよ。数学は答えが分かる場所で繰り返し解くことで成績が上がることに繋がるんで。」

「こうちゃん、ここ教えて。」

「……もういいや。えっとここは。」

と教えようとした時死神の触手が伸びる。

「…カルマくん銃を抜いて撃つまでが遅すぎますよ。ヒマだったのでネイルアートを入れときました。」

「……」

「まぁ、そうなるよなぁ。」

俺は少しだけ苦笑してしまう。

「やっと目が覚めたらしいな。」

死神も目が覚めたらしく油断もしていない。

簡単に死なれてもらったら困るんだよ。

と思ってると目の前に16個の丸い物体が入ったものが置かれる

「なんだこれ。」

「羽川くんもその顔じゃ朝ごはんを食べてませんね。そのたこ焼きを食べたら健康優良児に近づきますよ。」

すると目には差し入れと書かれている。昨日のお礼ってとこか

たこやきは初めて食べるけどソースやタコの歯ごたえがとても美味しく感じた。

 

「……えっとこれはどうすればいいんですか?」

「えっとねこれは。」

四時間目の調理実習は完全にお荷物状態となっていた。

班ごとにするのだが、倉橋先輩と矢田先輩は手際よく進める中、俺は全く調理器具の使い方も何も使えなかった。

しかも矢田先輩に調理器具の使い方を教わりながらやっているので完全に足手まといだった。

「すみません。迷惑をかけてしまって。」

「ううん。大丈夫だよ。でも本当に一人暮らししてるんだよね?いつもごはんどうしてるの?」

「えっと、罠で動物を狩って血抜きしたやつを丸焼きにしたり、山菜を焼いて食べたり、川魚を焼いて食べてますね。」

「……」

班の中が静寂に包まれる

「ねぇ、気になってたんだけど……羽川くんどこで住んでるの?」

「えっと学校付近の裏山の小さな洞窟ですね。あそこの土地の利権は持ってるので。」

「……それ本当?」

「はい。ってか俺今住民票すら消されてるので家借りられませんし」

だから俺は日本にいることさえ今まで隠してたのだ。理事長の協力のもとアメリカにいるように見せて椚ヶ丘で坂本巧という名前で通っている。それも名義は留学生という肩書きでだ。

「……それって洗濯とかどうするの?」

「洗濯は前までは理事長先生が山に来て制服とか数少ない私服は洗濯してくれたな最近じゃ先生にやらせてるけど。風呂はドラム缶風呂で自分で作った石鹸使ってるかなぁ。」

「……」

「ぶっちゃけ山で生活している以上自然を使って生活するしかないんですよ。寒さで凍え死にそうになった事なんて多いですし。正直暗殺者に狙われるよりも自然相手に生き残るほうが厳しいですよ。」

自然は本当に怖い。東京はまだマシだが脱水症状や低体温症など色々な災難が起こる

「まぁ、普通じゃないのはターゲットですから。まぁこういった料理は知り合いに会った時にしか食べれませんしね。」

「……そうなんだ。」

「ぶっちゃけて言うとこういった料理作るのも作ってる人を見るのは初めてなんですよね。俺子供の時は勝手に料理が出てくるような家だったので。」

「まさかカセットコンロの使い方を知らない人がいるとは思わなかったよ。」

と矢田先輩が苦笑する。

ぶっちゃけ元々は金持ち出身の俺はこういった料理は初めてだった。

この雰囲気が俺にとったら新鮮であることだった

やっぱり学校っていいな

俺にはそう感じる

学校に行くのは憧れだった

今まで聞いたこともなく義務教育で進級できる小学校は両親から行かなくてもいいと言われ入学式はもちろん学校に足を踏み入れたことすらなかった

だから憧れの場所でも会った

あかりねぇやあぐりさんの話を聞いてると学校に行きたいと言う気持ちがあった。

だからこそ夢が叶いこういった状況にもかかわらず

辛いなぁ

俺はなるべく小さく呟く

別れの辛さを知っている俺らにとって幸せはわずかな時間しか幸せの時間がない

もし死神が誰かに暗殺されたら

その時点で俺は逃亡者に逆戻りで

一年間平和に学校で暮らしていた俺にとってはとても嫌なことだった

みんなが笑い、温かな教室がここにはある。

「……」

俺は死神が持って来た死神のエプロンを取ると教室を静かにでる。

そして明るい声が聞こえる教室を離れると俺は座り込んでしまう。

目が熱くなり液体が流れる

「くそ。」

罪悪感と嫌悪で潰されそうになる

「……俺の方が嫌に決まってるだろ。」

別れるのが嫌だ

でもいつかはこのE組は終わってしまう

それがどれくらいの時間がかかるかもわからない。

それでも俺はターゲットであり

いつかはこのクラスを裏切ることになるからだった

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