人に弱みを見せる行為
俺はその行為をひどく嫌う
本当はそれが当たり前なのに
誰かに助けてもらうことを拒む
いつからこんな生活を送ってきたのだろう。
知っているのに覚えてるのに気持ちが悪くなってくる。
自分の中で拒絶し無意識に助けを求めている。
助けてほしい
たった一言言えばいいのに
その一言が言えなくて
自分で自分を傷つける。
そんな俺が嫌いだ。
体育の時間教室の近く俺は木陰で休んでいた
他人を欺くには大雑把で大胆な行為が必要だ
特に死神と言われる暗殺者から逃げる時
俺は潜伏先に死神の拠点を選んだ
灯台元暗しと言う言葉の通り
基本逃亡者は暗殺者と分かっているのに会話することはない
でも俺はその逆の戦法をとっていた
身近に潜み暗殺者のように動揺や怯えを伝わらないようにする
そんな演技が昔から得意だった
演技力
それが俺が生き延びている最大の武器
だから俺は死神が暗殺に来たときに宿屋を偽り死神に住食寝の場所を提供し
死神と同じように身近に暮らしていた
だから今回も同じように死神から逃げるため至近距離に隠れる
一応窓や校庭から視界になるような場所を選んだので大丈夫だろう。
「……一応昼休みにトラップは仕掛けてきたし大丈夫だろうな。」
今死神は山に俺を探しにいっているが案の定トラップに引っかかり時間稼ぎをできている
あの調子じゃ多分六時間目まではこっちに戻ってこれないのであろう
俺はポケットの中から睡眠薬と精神安定剤を取り出し自分の口に入れさっき容器に入れておいた水道水で流し込む。
即効性のある薬ですぐに眠気が訪れる
そして目を閉じる。
目を閉じるとどこからか幼い声が聞こえる
周りは真っ暗で誰もいない
しかし聞き覚えのある声だった
お兄ちゃん
もう何年ぶりにその声で呼ばれたのであろう
「……佳奈?」
すると視界が明るくなりその姿が見える
そこには泣きながらボロボロになった佳奈が貼り付けになっている姿だった
「……」
その姿を見て俺は息を呑む
鞭や平手で青あざになった姿
痛々しい火傷痕
どれだけ耐えてきたのであろうか
あの写真のように痛めつけられた佳奈の死体が目の前にはあった
「……あぁ。」
そんな声が漏れる
どれだけ拷問を受け続けても決して俺のことを話そうとはしなかったらしい
夢だとわかっていても涙が出てくる
この夢はもう何回目だろう
悪夢が俺を絶望へと陥れる
「康太。」
今度は優しいそうな聞き覚えのある声が聞こえる
もう誰だかわかっている
夢は自分の思い通りには動いてくれない
見たくないのに視界にその人は現れる
そして同時に触手により腹部を致命傷あぐりさんの姿が
声ももう出ない
あげる言葉はない
しばらくすると視界はまた暗くなり闇が広がる
それなのに二人の声が聞こえる
どこか何か届けようとする声
でも聞く気にはなれなかった
「やめてくれ」
暗闇の中で呟く
もう何回目だろうと呟く
怖くて仕方ない
生きることも死ぬことも
俺にとっては怖くて地獄のように感じる
もうやめてくれよ
やだよ
もう嫌なんだ
俺が何をしたんだよ
なんでこんな目に合わないといけないんだよ
俺が生きているってそんなにダメなことなの?
何もしてないのに、ただ俺は好きなことを調べていただけなのに。
危険だと忠告していたのに勝手に人の研究を使われて、国から裏切られ、家族は全員殺された。
俺ってなんで死なないといけないの?
なんで佳奈は、あぐりさんは死なないといけなかった?
目が熱く水滴が流れる。
俺がいたから?
答えは返ってこない
「羽川君。」
するとそんな声がどこからか聞こえてくる
「来るな!!」
俺は叫んでしまう
もうこないでくれよ。
もう大事な人が死ぬのは嫌なんだよ
もう俺に関わらないでくれよ
嫌だよ
もう嫌だよ
もう嫌なんだよ
優しくしないでよ
俺なんて生きてても意味がないんだから
大事な人が増えるのは嫌なんだよ
嫌だよ
一人になるのは嫌なんだよ
それなら一人にしてくれよ
最初から一人でいれば俺だけが苦しめばいいから
失うのが怖いんだよ
来ないでくれ
……助けて。
「羽川君!!」
気がつくとそこには矢田先輩が顔を真っ青にして俺の肩を揺らしていた
えっと確か烏間先生が担当の体育の授業だったからすることもないので木陰で休んでいたんだっけ。
息が切れさっきから制服が濡れている
「……あれ?」
目から涙が止まらない
でもそれはいつものことだった。
精神的にも追い詰められている時に起こる悪夢。
でもそのことよりも俺は焦ってしまう
……やばい
冷や汗が止まらなくなる
よく考えたら授業中どこかいったら誰かが探しに来ることは予測しとくべきだった
初めて弱いところを見られた
その事実が俺を絶望へと追い込む
弱みを見せることはターゲットが一番やってはいけないことだった
体の体温が冷え込み寒気が止まらない
おかげで体が震えて思い通りにいかない
ダメだ逃げないと
立とうとすると体に力が入らない
するとその拍子にポケットからさっき飲んだ錠剤の薬が落ちる
「……」
まずい。と思った時には遅かった
薬を拾おうとした矢先、矢田先輩が先に拾われてしまう
矢田先輩がその表記を見ると驚く
「…羽川君これって睡眠薬じゃ。」
「……」
どうして知ってるのか
俺はそういう考えを起こす前に全身が脱力してしまい座り込んでしまう
終わった
そんな気分だった
恐怖で震えが止まらなくなる
殺される
今の自分には回避をとることができない
死
その一文字が浮かび上がる
「羽川君」
その一言に俺は息を呑む
声は出ない
体はゆうことを聞かない
矢田先輩が近づいてくる
たった一歩
その一歩に恐れてしまう
演技力もこうなったら意味もなくなる
なるようになるしかない
すると矢田先輩は俺の隣に座る
その瞬間目をつぶる
死の恐怖が襲ってくる
「これ使って。」
矢田先輩の声が聞こえてくる
目を開けると可愛らしいピンクのハンカチを差し出してきた
「……へ?」
自分でも腑抜けた声だったと思う
どうしたらいいかわからずに俺は呆然としてしまう
矢田先輩は笑顔で仕方ないなと言いながら俺の顔をハンカチで拭く
多分涙を拭き取っているのだろう
「あ、えっ。」
どうしたらいいのか分からない
ただなるようになるしかなかった