大好きなのに
大好きだから
俺は一歩踏み出せない
裏切られることが当たり前だからなんて言い訳に過ぎない
好意、善意に満たされているあの教室は俺にとってまぶしすぎるのだ
復讐のために一度刃を向けたはずなのに
怖がらせたのに
どこまで走ったのだろうか?俺は森の中に入っていた
トラップがないので奥地までは行っていないと思う
適当に木の上に飛び乗ると俺は木を登っていく
「……」
俺は木を登りきると校舎が一望できた。
「……」
本当に嫌になる
こんな自分が本当に嫌だ
独りぼっちには慣れているはずなのに
ずっと独りだったのに
涙が止まりそうにない
目が滲んで前が見えなくなる
「どうすればいいんだよ。」
言葉が漏れる
「どうすればよかったんだよ。」
本心だった。どう伝えたらいいのか分からなかった
「なんで俺なんだよ。何で俺がこんな目に合わないといけないんだよ。」
心の痛みが消えそうもなく、誰かを傷つけた痛みが襲う
自分が自分勝手ってことも。
全部わかっていたはずなのだ
はずなのに
怖い。
死ぬのが怖い
生きるのも怖い
優しさが怖い
裏切りが怖い
暖かさが怖い
誰かに懐かれるのが怖い
誰かにすかれるのも怖い
何よりも嫌われるのが一番怖い
恐怖が一斉に襲いかかってくる
怖いよ。
誰か助けてよ。
声にならず泣き噦る
何で話しかけてくるんだよ
何で俺みたいな奴を優しくしてくれるんだよ
裏切ったんだぞ
殺意を向けたんだぞ
それなのに何で
何であんなに暖かいんだよ
笑顔で迎えてくれるんだよ
「羽川くん。」
「……」
すると俺に話しかけてくるこういう空気が読めない奴は一人しかいない
「……なんだよ。死神。」
「……ひどい顔してますね。」
「悪いかよ。」
俺は苛つきながら死神を睨む
独りにしてほしかった
独りがよかった
苦しい
誰かいるのももう関係ない
辛い
辛すぎる
ふと声に出してしまう
ここから飛び降りたら楽になれるだろうか
もしくは誰かに殺されると楽になれるだろうか
でも
「ここで苦しまないとあいつらに近づけないだろ。」
嫌なんだ
もう一人がいいって思ってしまう自分が
死んでしまいたいって思ってしまう自分が
「……君は優しい。優しすぎるのが偶に傷になる。人を傷つけることですら躊躇ってしまう。」
するとふとそんなことを言い出す
「だから俺はそんなに。」
「優しいですよ。羽川くんは。君がクラスに馴染ませないようにしてたのも、わざと傷つけているのも。全てE組の皆さんのためですから。」
「……」
「ただ、自分を犠牲にしてしまうところがいけません。君はまだ中学2年生です。……もっとわがままを言ってもいい。」
「わがままって。もう子供じゃないんだからさ。」
「あなたは子供ですよ。あなたがこのまま変わろうとするだけで変われないままじゃいつになろうとも子供のままです。」
的を得た言葉だ。俺は少しだけ笑ってしまう
「厳しいな。確かにそれじゃあ俺は子供のままだな。」
変わりたくても変われない。
いや変わろうとしないのだ。
変わるってことが怖くて臆病であるままだったら
「……人間って難しいな。大体の気持ちはわかっても本当の気持ちって誰にもわからないんだから。」
「えぇ。それが人っていう種族なんですよ。」
本当にそれは厳しいな
俺じゃあ解ける問題ではなさそうだ
「……んじゃ。戻りましょうか。もうそろそろ始業のベルがなりますよ。」
「俺はのんびり戻るから先戻っといて。少し考えたいことがあるし。」
「いえ。今日こそは羽川くんにも朝礼も受けてもらいます。」
「……えっ?」
俺は少し固まってしまう。
「やはり、全員揃って点呼しないのもおかしいですし最近の素行不良っぷりはカルマくん以上ですからね。」
「いや〜それはちょっと。」
「問答無用です。」
触手に掴まれるといつのまにか教室に死神と一緒に来ていた
「おはようございます。皆さん。」
「……えっ?」
いや、何でこんなにも早く学校に着いたのか?
てか俺が見たところ結構離れていたのにもかかわらずに?
キョロキョロと教室を見回すと苦笑いしている潮田先輩と赤羽先輩がいるほか、俺の席と堀部の席以外が全員埋まっている
「マッハ20。いや。距離から計算するにマッハ10くらいか?」
「えぇ。羽川くんの推測通りです。」
だろうな。あの距離から俺の負荷がかからない最大出力はマッハ10くらいだ。
……はぁ。捕まったのが運の尽きか。
消えようにもこれだけ注目とクールタイムが効いた状態では消えることはできないしな。
「……」
俺は席に座ると出席を取り始める死神
「……あはは。大変だったね。」
苦笑している矢田先輩。
「大変ってこれから起こる方が大変だと思いますよ。」
「へ?」
ターゲットに向いてないよ君は
一度華に言われた言葉
俺は少し苦笑する
本当にあんたは俺の教師だよ。
そんなことを思いながらつまらない号令を聞いていた