死神はずっと授業を続け俺たちはずっとその授業を聞く。
「お題にそって短歌を作ってみましょう。最後の七文字を触手なりけりで締めて下さい。書けた人は先生のところでまで持って来なさい。できたものから帰ってよし。」
時間は国語でどちらかと言うと高校の授業内容に近い。椚ヶ丘は中高一貫の進学校なので別におかしくはないのだが、それは本校舎の生徒だけだ。このE組はその過程から外され、一般受験での入試になる。だから本当は別の授業を組み入れないといけないのだが、ある条件のためにE組も本校舎の授業ペースでしないといけない。
本当に捨て駒みたいな扱い方だ。
俺はこのクラスを見てそう感じる。
だから俺はこのことを予期していた
「……はぁ。」
「どうしたの?羽川くん。」
すると隣の席の矢田先輩が近づいてくる
「いや。少し気になることがあって。」
「……気になること?」
「……火薬の匂いがいつもより濃いんですよ。」
「「「えっ?」」」
すると数人が俺の方を見る。それは死神も同じだったようで俺の方を見る。
「逃亡生活を続けているとどんなに些細なことでも分かるようになるんですよ。五感に関しては特に敏感になる。特に薬品、火薬に関しては他の誰よりも敏感になるんだ。特に安物の花火みたいな物は特にな。そこのえっと?潮田先輩からかすかに火薬の匂い。それも実銃ではなく円形の物体に包まれているんだろうけどな。経験から考えるとおもちゃの手榴弾かな?最初は寺坂先輩が持っていたんですけどね。それならバイク改造のスキルを持っている吉田先輩なら余裕で改造ぐらいできるだろうし。」
「……」
全員が絶句している中俺はため息をつく
「……舐めんじゃねーぞ。だてに五年も逃亡生活を送っているわけじゃないんだ。大体の殺意、方法、感情そして暗殺方法を読み解くスキルは極めてるんだ。それにこのクラスのメンバーの個人情報ぐらいは調べてある。学歴、E組に落ちた理由、そして家庭環境もな。」
殺意を帯びた言葉にクラスメイトはもちろん、死神だって驚いている。
「俺は本気で生きるためにここまでやっているんだ。そこのタコと違って、殺されることを望まないし生きるために必死なんだよ。それなのに。」
俺は拳を握りしめ机をぶん殴る。すると音を立てながら机が砕け散る
いつぐらいだろうか。久しぶりに我を失っている。
本当なら俺だってそっち側に居たかった。
本当なら俺もそっち側にいるはずだった。
真実なんて残酷なんて知っていたのに
過去なんて変えられないのに
「それなのに、自己犠牲で命を捨てるなよ。自分の身を安全にしないんだよ。他人の身を安全にしないんだよ。それなら変わってくれよ。」
俺は叫ぶ。
「こんな醜い世界なんていたくないんだよ。毎日毎日殺されることを怯える人生なんて嫌なんだよ。毎日を命がけで生きているんだ。たとえ、知り合いや家族が死んでもな。そんな中で平和な日本で自爆テロを計画して実行しようとする奴がいると、本気でむかつくんだよ。それが自分じゃなくて他人にさせようとするならなおさらだ。」
命の大切さ、世の中の醜さ全て俺は知ってきた
俺の知り合いなんて死んだ人もかなり多いし、それに殺し屋関係で協定を結んでいることもある
寝るときも安心して眠れず何度だって夜間も魘される毎日
人目を気にしてドブやゴミだめに隠れた事なんてしょっちゅうだ。
ひどい時なんて人間の死骸に隠れた時だってある
「……帰るわ。」
俺は一言呟く
「自殺しようとする奴と他人を犠牲にする犯罪者なんか守る価値がない。……ぶっちゃけそんなことでこいつに死なれたら困るんだわ。そう言った暗殺はこれからは俺が邪魔する。いい加減迷惑だしな。」
俺は冷淡に言い切る。
ただ冷たく、無感情で機械のように。
「……ついでに短歌は終わってるから。」
俺は息を吐き教卓に短歌を置く。
「んじゃ後は勝手にしろ。俺はこんなくだらないことなんて興味はないから。」
「ちょっと待ってください。羽川くん。」
「言いたいことなら、うちで聞く。今日の一件はあんたの依頼に反するしな。でもまずは冷静にさせてくれ。でないとあんたを殺してしまう。」
「……」
すると諦めたようにする死神。
「じゃあまた後で。先生」
内心謝りつつ俺はたった一言だけ言って去っていった。