アルカディア・プロジェクト   作:ムササ

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#13 遺跡と守人の一族

「いやいや、馬鹿言うなよレベッカ。村の周辺の見回りとは言えモンスターも出てくるんだぞ?連れていけるわけないだろ」

 

「えー、大丈夫だよ。私だって戦えるもん」

 

「嘘をつくなよ、まだレベッカ14歳だろ?職業(ジョブ)だって[村人]の筈だ」

 

「嘘じゃないもん。見ててね……ほら!」

 

 ははは、頬を膨らませて抗議をしたって無駄……ってマジか!

 レベッカの突き出した右手の先には自身の顔ほどの大きさの火球が浮かんでいた。

 

「レベッカ、魔法が使えるのか」

 

「えへへ、凄いでしょ?」

 

 凄い。純粋にこれは凄い事だ。

 基本的にクォーレの素質はプレイヤーのそれと比べて圧倒的に劣る。全魔法や武器に適性を持つプレイヤーとは違い、クォーレは生まれた瞬間に生涯に獲得できる武技(アーツ)魔法(マジック)は決められる。レベッカの周りには俺の知る限り火魔法が使えるクォーレはいない。俺たちの中にも火魔法の使える奴はいないから誰からも指導を受ける事は出来ない。故にレベッカは独学で火魔法を習得したことになる。

 

「村の人たちは知ってるのか?」

 

「うん、知ってるよ。たまに火付けてとか言われるもん。これなら付いていっても良いでしょ?」

 

「いや、それは……」

 

 正直付いてきて欲しい。未だに[軽戦士]である俺は遠距離攻撃に乏しい。出来る事と言えばせいぜいナイフを投げつける位だ。

 その点、レベッカが居れば森の中とは言え延焼にさえ気を付ければ強力な支援となるだろう。でも小さな女の子にモンスター討伐を手伝わせるのは……

 

「あっ、そうだ。火球の発現は出来ても命中精度が低ければ意味ないぞ?」

 

「ふっふー。練習したから平気だもん。えいっ!」

 

 レベッカの火球はおよそ10m離れた村はずれの場所に立っている案山子に直撃して一瞬で焼き尽くした。

 

「仕事は終わったのか?さっきまだ仕事があるって言ってただろ?」

 

「もう終わったよ。いつもやってるもん」

 

「モンスターを見てパニックになったりしたら危ないぞ?」

 

「森の主より怖いモンスターを倒しに行くの?」

 

 無理だわこれ。よく考えたらシャドウリザードを倒すときにもしっかりした足取りで走れてたし。

 

「……はあ。分かった一緒に行こうか。だけど村長さんに許可を取ってからな?」

 

「わーい!ありがと、お兄ちゃん!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 村長の許可はあっさりと出て、俺はレベッカと二人で村の外に広がる森へ踏み入った。

 

「なんでレベッカは森に入りたかったんだ?もう薬草は取ったんだろう?」

 

「んー?お兄ちゃんと一緒に居たら楽しいからだよ?」

 

「楽しいからって……」

 

 そんな理由でついて来ようとしてるのか。それならやめさせようか。

 

「えへへ、本当はね。見せたいものがあるの」

 

「見せたいもの?」

 

「うん。お父さんとお母さんが、お爺ちゃんとお婆ちゃんが、ずっとずーっとお爺ちゃんとお婆ちゃんの人たちが守ってきたもの」

 

 レベッカの祖先の人たちがずっと守ってきたものって事か?

 

『私ではなく、私の妻が国から追われる立場だったのです。いえ、正確に言えば王家にでしょうか。妻は犯罪を犯した訳でも無ければ、人間以外の種族でも無かった。私の妻に何一つ国を追われる要素など無かったのです!』

 

 村長さんの言葉が脳裏をよぎる。

 話の流れ的に村長さんの奥さん、つまりレベッカのお婆さんが国から追われた理由って事か?いや、決めつけるには早計か。まだ情報が足りない。

 

「それを見せてくれるのか」

 

「うん!お兄ちゃんになら見せても良いの。お母さんも『レベッカがいつか大きくなった時、ずっと一緒に居ても良いって思った人が出来たら見せなさい』って言ってたから」

 

「あー、ありがとうレベッカ。嬉しいよ」

 

 何これ恥ずかし!めっちゃ顔赤くなってるのが分かるんだけど。アバターでも顔が赤くなるのな。

 てか、これ何イベント!?実質告白だよねこれ。いや、でも落ち着け相手は義妹(いもうと)だぞ。……あれ?義妹なら良いのでは?いやいやレベッカは14だぞ?

 

『幸いレベッカも貴方によく懐いているようだ。どうです?心に決まったお人でもいるのですかな?』

 

 落ち着け俺。ここはゲームだぞ。現実なら犯罪……ゲームなら合法?

 

「……お兄ちゃん?」

 

 こてん。と首を傾げる仕草。わかって言ってるのか?これ。

 

「はっ!?いやいや、大丈夫、大丈夫だぞレベッカ。まだ正気だ」

 

「?」

 

 くっ、首を傾げて上目遣い。あざとい、しかしそれが良い。やはり妹=天使=義妹なのか?

 

「いや、そのだな。レベッカの両親は居ないのか?いや、挨拶とかそういう話じゃなくてな」

 

「お父さんとお母さんはね、前にモンスターからこの村を守る為に頑張って、死んじゃったんだって」

 

「……そっか。ごめんな、嫌な事思い出させて」

 

「ううん。私お父さんもお母さんも覚えてないの。それに、村のみんなが優しくしてくれるから寂しくないんだよ?」

 

「そんなわけが……いや、強いんだなレベッカは。俺なんかとは大違いだ」

 

「そんな事無いよ、お兄ちゃん。私には分からないけど、お兄ちゃんは強い人だと思うよ?」

 

「そうかな、そうだといいなぁ。……なあ、レベッカ。後で俺の話しも聞いてもらっても良いか?」

 

「うん、いいよ」

 

「……よし!じゃあ行こうか。その前に両親のお墓に連れてってくれ。挨拶だけさせて欲しい」

 

「うん!」

 

 レベッカに案内されたのは村の南東部に位置する墓地であった。その手前側に存在する一つの墓地にレベッカは立ち止まり、指し示す様なジェスチャーをした。そこにはレベッカの両親であろう二人の名前が彫られており、埃一つ被っていないその姿は誰かがマメに掃除をしていることが伺えた。

 花も何も持っていないので格好がつかないが、それでも手を合わせて冥福を祈る。

 

「さて、そろそろ行こうか」

 

「うん。じゃあねお父さん、お母さん」

 

 別れを済ませたら森の中へと足を踏み入れる。

 ちなみに既に俺は『名無しの南瓜』も装備して戦闘準備は万全だ。レベッカは簡素な造りの革鎧と俺が持たせたプレイヤー初期装備の帽子と村長の家から持ってきた杖という出で立ちだ。

 

「本当にそれで大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ。奇襲さえ防げれば私が全部燃やしちゃうんだよ!」

 

 案外冷静だな。聞けば今までにも何回か森に入った事はあるらしく、その際にモンスター討伐もこなしているらしい。

 そもそもこの森は主と呼ばれるシャドウリザードが生息しているせいで他種族のモンスターがあまり生息していない。例外はエイプ系統のモンスターで、エルダーエイプが倒されては現れの繰り返しで凄まじい繁殖力で森の一画を縄張りとしている。

 この村の辺りはどちらかといえばシャドウリザードの縄張りの方に近く、エイプはあまり寄ってこない為、俺たちが先日倒したシャドウリザードの縄張りが占領されない限り少しの間は安全に狩が出来るらしい。それでもはぐれのモンスターとかがやって来るので間引きを依頼されているのだが。

 

「待った。前方に鹿発見。ホワイトカリブーだな」

 

「うわ、凄いねお兄ちゃん。よく見えるね」

 

「[鷹の目]の効果だな。遠くのものが見えやすくなって、動体視力も上がる」

 

『限界村落の村娘』のクリアの副産物としてレベルが大幅に上がったのでアーツポイントをいくつか使って[鷹の目]というアーツを取った。これは常時発動型(パッシブ)のアーツで、軽戦士系統の代表的なアーツの一つだ。効果としては遠くのものが見えやすくなる望遠機能と、動体視力の向上。パリィを主体とする俺のスタイルには有用だと思ったので取っておいた。まだポイントは残っているのでまた今度じっくり考えてから取ってみようと思っている。

 ホワイトカリブーは高級食材として知られる鹿、正確に言えばトナカイだ。体表が白いので森の中ではとても目立つのだが、警戒心が強い上に逃げ足が速く、倒すのは容易では無い。ちなみにモンスターではなく普通の動物である。しかし安易に接近すると顔を蹴られてデスペナを食らう初心者もいると言うから笑い話ではない。

 

「じゃあホワイトカリブーに当てないように小さな火球を飛ばしてくれ、出来れば俺がいる方角に逃げる様に。わかったか?」

 

「うん。わかった」

 

 レベッカが頷いたので俺は慎重に横に回って木の上に登った。ナイフの光を反射させて合図を送ると、レベッカは注文通りに火球を放ち、驚いたホワイトカリブーは俺のいる木の下にまで走って逃げてくる。

 丁度真下を通り過ぎた時に俺は飛び降りて、ホワイトカリブーの首を上小太刀で切り落とした。

 すぐさま村から持ってきた肉用のマジックバッグに胴体と首を入れる。流石に自分のマジックバッグに動物の死体は入れたくないからな。

 

「凄いね!お兄ちゃん!すぱーって感じただったよ!」

 

「レベッカこそ凄いな、魔法制御が完璧じゃないか!」

 

「えっへん。そうです、凄いのです」

 

 しばらく二人で互いを褒めあった後は、1時間程回って狩を続けた。

 成果としはホワイトカリブーが一匹とビッグボアというイノシシが一匹、普通の野うさぎが二匹、更にはぐれのキラーモンキーが一匹だった。ビッグボアは最初はモンスターかと思ったが、倒してもポリゴンにならなかったので動物だとわかった。レベッカに聞いたら普通に食肉になるらしい。流石にキラーモンキーはレベッカを不要な危険に晒したく無かったので一人で対峙したが、レベルも上がった今群れで出てくるならともかく、一匹なら問題なく対処できた。レアエンカウントエネミーなのにつくづく縁がある様だな。

 マジックバッグが満杯になりつつなった頃に、レベッカが不意に立ち止まった。

 

「この先に見せたいものがあるの」

 

「この先に?でも普通の森だけど……」

 

 マップにも何も表示されていない。そもそも村からちょっとしか離れていないとはいえ普通にモンスターが出てくる森の中にレベッカの祖先が代々守ってきたものがあるのか?

 

「ここは、私のずっと前の代の人たちが守ってきた場所。ストルタスの四地点に点在する場所の一つなんだって。その近くの村にお婆ちゃんとお爺ちゃんが逃げてきたのは偶然じゃ無くて選んだからって言ってたよ」

 

 どういう事だ?こんがらがってきたぞ。村長は偶然あの集落に流れ着いたんじゃなくて、選んであそこに逃げ延びた?このレベッカの見せたいものに関係しているのか?

 

「それが、これ。手を繋いで、お兄ちゃん。じゃあないと入れないから」

 

「入れない?それってどういう……」

 

 言い終わらないうちにレベッカは俺の手を引いて一歩踏み出し、そこには別世界が広がっていた。

 言うなれば遺跡、だろうか。森の中に不釣り合いな巨大な遺跡。

 

「ここ……は」

 

「火の遺跡って言うんだって。私の一族、火の守人の一族がずっと守ってきた遺跡」

 

 火の遺跡……たしかに中央部に飾られている祠には綺麗な火が灯っているのが分かる。

 これが、レベッカの見せたかったもの、か。

 これは……凄いな。




フルティア「やっほ〜、今回はモンスターと動物の違いについてやるよ〜」

フルティア「モンスターと動物は家畜と従属しているものを除いて全て、エネミーっ言われるの」

クララ「そのうち、死んだらポリゴンになって積極的に人類を襲うのがモンスター、死んでもポリゴンにならず食用になるのが動物となります」

フルティア「まあプレイヤーの人たちはテキトーに呼んでるみたいだけどね。区別をつける必要もあんまり無いし」

クララ「ちなみに動物を倒しても経験値は入ります。まあ、当たり前ですよね」

フルティア「じゃあ今回はここまで、ばいば〜い」
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