アルカディア・プロジェクト   作:ムササ

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ゲーム内描写が無いのは初めてかな?


#15 灰は灰に、塵は塵に 第二項

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 ロータス

「という訳なんだ」

 

 クリップ

「成る程……」

 

 ネオン

「火の守人の一族、大精霊、封印、災厄、ですか」

 

 クリップ

「明らかに次のユニークを示してるよな」

 

 ロータス

「そうなんだよ。封印が解けるまで少なくともあと7日。リアルの時間で言えばあと2日と8時間」

 

 ネオン

「今週末の夕方、ですね」

 

 クリップ

「その災厄ってやつが何なのかは詳しくは教えてくれなかったのか?」

 

 ロータス

「分からないな。大精霊は災厄の事を反逆の炎って呼んでたけど」

 

 ネオン

「やっぱり、火属性である事は確定なんですね」

 

 ロータス

「多分な。レベッカも火の守人で巫女だし」

 

 クリップ

「で、その災厄を食い止める為に必要なのが『限界村落を立て直せ』のユニーククエストだっていうのが蓮也の推理か」

 

 ロータス

「ああ、ログアウトする前に確認したら柵を作った事でちょっとゲージが溜まってたし」

 

 ネオン

「今はレベッカちゃん達は何をしているんですか?」

 

 ロータス

「付け焼き刃だろうけど、戦闘経験がある人が成人男性を集めて戦闘訓練しているのと、戦えない人たちはサポートの為に色々作ってくれているよ」

 

 クリップ

「色々作るって何を?精々柵とか塹壕を掘るとかじゃないの?」

 

 ロータス

「いや、あそこの村は色んな所から追い出された人達が作った村だろう?中には研究を異端視されて追い出された研究者とかがいるんだ」

 

 ネオン

「ああ、なるほど」

 

 クリップ

「?どういうこと?」

 

 ロータス

「雑草に与えるとモンスター化するポーションとか、飲んだ人間のHPの最大値を1にする代わりに他の能力を上げるポーションとか、空気に触れると爆発するポーションとか、水に溶かすと爆発するポーションとか、振動を与えると爆発するポーションとか、作ってる人がいる」

 

 クリップ

「それただの爆弾魔じゃね?追い出したの良い仕事じゃね?」

 

 ロータス

「他にも究極の魔法を追い求めて都市一つ消滅させた大魔法使いとか、愛する人を蘇らせる為に転職条件が分からなかったネクロマンサーに転職した人とか、魔物に異常に好かれる体質の人とかいるぞ」

 

 クリップ

「なんでそんな奴らが普通の村人やってんだよ……」

 

 ネオン

「す、凄いですね」

 

 ロータス

「そういや、トト姉は?さっきから会話に参加してないけど」

 

 ネオン

「なんか、大学が忙しいらしいです。そろそろ終わる頃だと思うんですが」

 

 トト

「やっと講義が終わったと思いきや、何やら楽しそうな話をしているじゃないか」

 

 クリップ

「噂をすれば、ってやつだな」

 

 トト

「ログを見てみたところ確かにそれはユニーククエストの前兆だろうな。もしかしたらアルカナクエストの可能性もあるぞ」

 

 ロータス

「アルカナ!」

 

 クリップ

「クエスト!」

 

 ネオン

「息ぴったりですね」

 

 トト

「率直言ってキモいな」

 

 クリップ

「グハッ」

 

 トト

「まあ、それは置いておいて。大精霊が直接警告する災厄とやらは前に聞いた事がある」

 

 ロータス

「マジでか」

 

 トト

「ああ、《魔術師》の正位置 【複眼水龍 セトリア】確かストルタスの北西の街リフューで発見、討伐されたらしいな」

 

 トト

「つまり、大精霊の言う均衡は既に破られていたと言うことだ。ちなみに余分な情報かもしれんが、その時は村一つが壊滅する被害が出た挙句に、そのリフューの街も壊滅、討伐されたのは現れてから2日後だったらしい」

 

 ロータス

「うへえ」

 

 ネオン

「それ、私も聞いた事があります。確か討伐したのはクラン最大手の『ザ・ロード』でしたよね?」

 

 クリップ

「あー、あのいけ好かない連中な。でも確かクランリーダーが化け物みたいに強いんだっけか?」

 

 トト

「そうだ。リーダーのサバ缶はプレイヤーの中でならトップ5には入る強さだな。セトリアの神秘防具はサバ缶が★★分、発見者の……誰だったか忘れたが無名のプレイヤーが★分の神秘防具を所有している筈だ」

 

 トト

「うむ、話がズレたが私からも一つ忠告だ。私たちももちろん協力するが、万全を期すのならばレベッカだけでもどこか別の町に逃がすべきだ。私としてもあんな幼い少女がゲームの中でとはいえ殺されるのはしのびない」

 

 ロータス

「それはわかってるが、多分聞き入れてくれないよ。レベッカは村を守る気だからな」

 

 トト

「そうか、ならば仕方がない。そういうクエストなのだろう。最悪、強制的に死ぬのかもしれん、覚悟はしておけ」

 

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「覚悟、ねえ」

 

 正直言って疑問なのだ。

 俺が知る限り、アルカディア・プロジェクトというゲームは最高の出来と言って良い。ゲーム業界に革新をもたらしたのは間違いないし、世界中の人々が熱中するのも分かる。しかし、このゲームにおいてシナリオというものは有って無いようなものだ。そんな強制負けイベントというものは配置されていないような気がする。

 そもそも論になるが、このゲーム、最初からシナリオを作る気はあったのだろうか?メインクエスト?いやいや、誰がどう見てもこのゲームのメインはユニーククエストだ。もちろんメインクエストも大切だが、それではあの文言に反するのではないか?

 

『英雄よ、挑み給え、これは貴方へと贈る物語、貴方が作る物語、貴方の為の物語。そして、願わくば、貴方の旅路が光溢れるものでありますよう』

 

 チュートリアルとキャラクターメイキングを終えた俺にクララがかけた言葉だ。アルカディア・プロジェクトの唯一のCMでアンナが言った言葉にそっくりだが、少しだけ違っている。

 この言葉からして疑問なのだ。

 英雄とは最初は俺たちプレイヤー全体の事を指すのだと思っていた。しかしどうも大精霊の話とクリップの話を考えると俺個人の事を指しているのだと思えてならない。

 自意識過剰と思われるかもしれないが、これはトト姉とネオンにも聞いて確かめた事だ。アルカディア・プロジェクトの世界に送り出される際にクリップも含めて三人とも何かAIから言われていたが、その中に英雄という言葉は含まれていない。

 

『英雄よ、挑み給え、これは貴方へと贈る物語、貴方が作る物語、貴方の為の物語。そして、願わくば、アルカディアに光ある未来あれ』

 

 そう、アンナの販促にも英雄という言葉が含まれているにも関わらずである。その上クリップはアンナにチュートリアルとキャラクターメイキングをしてもらったのだ。もし、全員に対して同じ言葉が使われているのならアンナが英雄という言葉を使わないのはいささか不自然である。

 ならば英雄とは何か?大精霊は俺の事をクララ様の加護持つ者と呼んだ。ステータス上にそんなものは無かった、クララにチュートリアルを手伝って貰っただけでそんな事を言われるのなら加護持つ者ではなく、アルカディアの世界観的にはクララ様の使徒と呼ばれなければならない。ならば、それが英雄なのでは無いだろうか?

 しかしここで疑問が生じる。これはAIが、ひいてはゲームの運営側が勝手に特定の個人を依怙贔屓する。そんなことにならないだろうか?

 こんな事が公になったらゲームの運営であるニトワイアは猛烈なバッシングを受けるだろう。はたしてそんな事をするのだろうか?

 

 そう考えるとアルカディア・プロジェクトには不自然な部分が多くあることに気がつく。『名無しの南瓜』だってそうだ。いくら1000万人目の記念といっても特定の個人に他では絶対に手に入らない装備を渡すか?ネタ装備ならまだしも外見があれとはいえ、普通に強いと言える性能だ。

 神秘防具だってそうだ。世界に44体しかいないボスからドロップする一つだけの装備。どんなに多くても132個しか存在しないものを金を取ったゲームで配置するか?それも少なくとも1000万人がプレイしたゲームだぞ?無くなったら暴動が起きてもしょうがないと思うのだが。

 そもそもなんでニトワイアはCMを流さない?必要ないほど売れているから?いやいや、CMを流したらもっと売れる事くらい子供でも分かる。突飛な発想だが、流せないのでは無いだろうか?

 

 アルカディア・プロジェクトの開発者である、橋下司はセラフィム・ワールドの開発で一躍ゲーム業界でも名を馳せた。元はVRの技術者だったらしいが、趣味の一環で作っていたセラフィム・ワールドが大ヒットした事でゲーム開発者としても一流の人と知られるようになった。

 しかしそんな博士はアルカディア・プロジェクトが発売される2年前に強盗に押入られて殺害されている。なら、その2年間何をしていたのだろうか?こうして発売されているので完成したのは間違いないが、開発者の欄は橋下博士の名前しか無い。既に殺された時には少なくとも9割程は完成していたと見るべきだろう。なら、何故2年待つ必要があった?

 

 そこで考えたのが、ニトワイアはアルカディア・プロジェクトを運営などしていないのでは無いだろうかという事だ。ニトワイアはただ現実においてアルカディア・プロジェクトというソフトを販売しているだけで、実際に運営しているのは上級AIなのでは無いだろうか?だからこそ、あんなにAIが好き勝手しているのでは無いだろうか。

 

「……なんて、考え過ぎか」

 

 ゲームとはいえ決戦を前に気が高ぶっていたのかもな。発想が完全に飛躍していた。

 だってそれを認めたら、クララ達は生きている(・・・・・・・・・・)って言ってるようなものじゃないか。

 

 

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「じゃあ、行ってきまーす」

 

「おう、行ってらっしゃい花蓮」

 

「うん。またねお兄」

 

 バタン、と扉を閉めて花蓮が高校へ行く。今日も俺は大学試験が終わったので学校は休みだ。少なくともあと1週間は休み。それが終わったら卒業式、春休みだ。

 

「さーて、ログインするかね」

 

 あまり不摂生な生活をしていると花蓮に怒られるので朝早くからゲームをしないようにしているが、今の期間は別だ。早くログインして『限界村落を立て直せ』を進めなくては。

 VR本体を起動したところで、扉を開く音。あれ?忘れ物かな?

 

「ごめん、お兄忘れ物って言うか、タブレットの充電切れてたからお兄の貸して欲しいんだけど」

 

「わかった。はい、これ」

 

「ありがと。……それ、アルカディアなんとかっていうゲーム?」

 

「ああ、そうだけど。花蓮ってゲームに興味あったっけ?」

 

「ううん。まあお兄とか美夜ちゃんとかの話を聞いてるからちょっとは興味あるけど」

 

「よかったら今度やってみる?めちゃくちゃリアルで凄いぞ」

 

「へー。うん、じゃあ週末にでもやってみようかな。おっと、急がなきゃ、じゃねお兄」

 

「おう、気をつけろよ」

 

「はーい!」

 

 ふっふっふっ、これは週末の楽しみが増えたな。

 その頃にはユニーククエストにも一旦区切りがついてるだろうし。

 じゃあ、花蓮にアルカディアの良さを見せるためにも頑張るとしますか。




クララ「今回はクランについての話です」

フルティア「大手のクランって言われてるところはいくつかあるよね。ザ・ロードとか、美食探検隊とか」

クララ「あとは肉球愛護団体、フォトマニアなどでしょうか。もちろん他にもたくさんありますが」

フルティア「ろくな名前が無いね」

クララ「まあ個人の自由ですから。クランを作るメリットとしてはクランハウスと名前が売れる事でしょうか。後者はデメリットにもなりかねませんが」

フルティア「一応個人でも家を持つことは出来るんだけど一軒家しかないから高いんだよね。借りるにしても買うにしても」

クララ「クランハウスなら探求者ギルドから補助金が出ますからね」

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