アルカディア・プロジェクト   作:ムササ

25 / 36
#24 ティティ

 

「と、言うわけなんだが」

 

「えっ、えっと。よろしくお願いします!雑用でもなんでもやるのでパーティーに入れて下さい!」

 

 目の前には俺たちに向かって必死に頭を下げる小柄な少女、その後ろには困った表情で俺たちを見守るトト姉達。噴水広場の一角で、明らかに周囲の注目を集めている集団の中、しかもその中心に俺はいた。

 

「取り敢えず、どうしてそんなに俺たちとパーティーを組みたいのか教えてもらってもいいかな?」

 

「あっ、ああ!そうですよね!まだ言ってませんでした。と言っても、そんな凄い理由がある訳では無く……あの、私……恥ずかしながら、ソロ活動が出来るほど強い訳ではないのですが、どうしても組合のパーティー募集だとその、報酬がマチマチで、せ、生活費が……」

 

 せ、生活費ときたか。たしかにクォーレの探求者(クアエシトール)だと生活の為に、と言う人も多いだろう。しかも探求者だと生活の為にモンスターを狩る為に装備を買う為にモンスターを狩るという堂々巡りのようなサイクルをしなければならないのはわかる。

 正直俺だってゲームだからやっているのであって、現実の生活で狩猟生活をしたいとはつゆほども思わない。

 

「そ、それに、私は女なので、男性が主体のパーティーにはちょっと入りにくくて、ぷ、プレイヤーの方々なら平気だと言う話も聞くのですが、それでも、ちょっと……なので、偶然お話を立ち聞きしてしまった、あなた達のパーティーに入れて、いただけたら……と。す、すみません」

 

「うーん。俺個人としては応援したいんだが……」

 

 ここでネックになるのはやっぱり俺だ。個人的な感情としては応援したいし、全然パーティーに入ってもらって構わない。しかし、レベッカと『魂の灯』の事を考えると、クォーレといえど軽々しくパーティーを増やしたいとは思わない。

 

「正直ロータスの気持ち次第だ。私としてはティティを入れることに対するデメリットより、メリットの方が大きいと思う。しかし、ロータスの気持ちもわかる。クランマスターとして、その決断に否は唱えないさ」

 

「うーむ……レベッカはどう思う?」

 

「私としては、入れてあげたいなぁ。クォーレの人が増えたらみんながいない時でも色々出来るし、じょーほーろーえい?も無いんでしょう?」

 

 確かに、俺たち全員がログインしていない時のレベッカを一人にするのは可哀想たと思っていたが、クララ達の配慮で妥協はできていると思った。それでも、アルカディアを自由に歩きまわらせてやれないのは、不便……か。

 辺りを見回すと全員がどうやら賛成の方向に傾いているようだ。だったら、この際。

 

「じゃあ、こちらからも何個か条件がある。それでも良いか?」

 

「は、はいっ!そ、その……えっち……な事とかじゃ無ければ」

 

「違うわ!……ごほん。まず一つ目、取り敢えずは様子見期間として2週間とるから、そこで自分の出来ることを見せて欲しい」

 

 これは前提条件。スパイなどとは疑ってないが、アルカディアでの変な抗争に巻き込まれるのはゴメンだ。

 

「二つ目は俺たちのクランに加入する事。どうせだったらがっちり囲い込むから、嫌なら言ってくれ」

 

「そ、そんな事っ、むしろ有難いですっ」

 

「三つ目は俺たちが居ない時にレベッカを守る事、もっと言えば、寂しく無いようにしてやってくれ」

 

「ふぇっ?そ、その子は精霊ですよね?えっと、精霊はプレイヤーの方々がいない時は顕現出来ないんじゃ……」

 

「まあ、そこらへんはここじゃ話せないから私たちのクランハウスに行こう」

 

「おっ、登録終わったんだな」

 

「ああ、既に金も払ってこの特別性のアイテムボックスに収納されている」

 

 後で聞くところによると特別性のアイテムボックスとはこう言ったクランハウスなどの大きな物を収容する事を前提としたアイテムバッグの事で、探求者は普段そんな大きさのものを持ち運ぶ事は無いので持っていないらしい。

 ちなみにアルカディアではこう言ったアイテムボックスを使っての引越しや建築などが主流で、家を買う際はホログラム状のデータを見て決めて、予定地に出現させる方法が一般的らしい。引越しの際も家ごと収納して、引越し先で取り出すそうな。

 じゃあ砦とかを持ち運んだら狩が捗るかというとそうではなく、アイテムボックスは使い切りの上、なかなか入れられる重量で値段が決まるらしく、こう言った一軒家サイズ以上になると対費用がシャレになってないらしい。

 

「まあ、そういう事だ。ではあらためてよろしく、ティティ。我々『蔦の宮殿ver.2』は君の加入を歓迎する」

 

「っ!はいっ!ありがとうございますっ!」

 

 ちょっと待て、今聞き逃せない単語が聞こえたんだが……

 

「えっ、トト姉?ver.2ってどういう事?」

 

「どういうこともこういうこともない。そのままの意味だが?」

 

 結局、クランの名前は一度登録したら変更出来ないという事が分かるまで、討論会と言う名のお説教は続いた。犯罪防止の為らしいのだが、恨めしいな。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「よし、ここだな。座標を指定して、もうちょっと右か?」

 

 まだ戦火の跡が残る名も無き村の近くに俺たちはやって来ていた。

 今からメンバー入りするティティにクランハウス代を出させるのはどうか、という話になったのでティティは後々余裕が出来たら払うという事になった。

 

「決定……『解放(リリース)』」

 

 トト姉がアイテムボックスの中身を取り出す言葉をかけると、アイテムボックスが割れる演出と共に、見慣れたものとは違うが、何処か似た雰囲気のある館が現れた。

 

「おおーっ」

 

「凄い、です」

 

「わーっ!すごーいっ!」

 

「やっぱ前のと似てるな」

 

「つか、でけえ。俺らだけじゃ持て余すぞ」

 

「ゆ、夢にまで見たクランハウス……やっと、私だけの部屋が……」

 

 と、ここで俺達全員の前にウィンドウが現れた。

 

『システムメッセージ:クランハウスの建設を確認しました。半径500mに先行保持者のいるオブジェクト、発見されず。よってクランハウスの半径500mの円内は全てクラン『蔦の宮殿ver.2』の領地に認定します』

 

「よし、無事に終わったな。早速中に入ってみよう。っと、その前にティティの加入を終わらせなければな」

 

「あっ!その、えっと、ふ不束者ですが、よろしくお願いします!」

 

「ふふっ、ではロータス。ロビーで『名無しの南瓜』と『魂の灯』について説明してやってくれ」

 

「あいよ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「く、クララ様から直接頂いた、フルティア様直々に作り上げた兜……」

 

 ティティが『名無しの南瓜』を手に取ったは良いものの、説明を聞いた途端にガクガク震えだしたんだけど……

 

「そ、そんなもの……国宝級どころの騒ぎじゃ無いですよ!?神殿が見つけたら崇め始めるくらいのものです!こ、これ一つ売れば、一生遊んで暮らせる……?」

 

 プレイヤー(俺たち)にとっては珍しい防具っていう評価でも、クォーレから見たら崇めてる神からもらった神器だもんなぁ。

 

「先に言っておくと、それ俺以外にはどうする事も出来ないらしいからな」

 

「は、はひっ。勿論、売ろうなんて考えても無いですっ」

 

 そう言って、ティティは俺に『名無しの南瓜』を返す。それをしまうのと入れ替えに『魂の灯』を取り出して説明を……

 

神秘防具(アルカナ)……」

 

 寒気がした。『魂の灯』を取り出した瞬間、まるで気温が急激に下がったかのような……いや、というより強烈な圧迫感でそう感じるだけか?その発生源はティティ……と思ったがすぐに収まった。

 

「あ、ああ。よくわかったな。これは『魂の灯』。《愚者》の正位置【反逆炎魔 エルドゥーク】の神秘防具だ」

 

 倒したアルカナまで言うのは躊躇われたが、さっきの圧迫感がティティからなら、これでなにかしら反応があるはず。武器をいつでも抜ける状態にして反応を待つ。

 

「きゅう……」

 

 反応はあった。白目を向いて仰向けに倒れるという反応が。

 

「ティティ!?」

 

「し、神秘防具……嘘でしょ?そんな伝説の装備が目の前に?は、はは。実はもうのたれ死んていて、これは夢なのよ。アンナ様が今際の際に見せた夢」

 

「夢じゃないから、生きてるから」

 

 その後何とかここが現実、ゲームだけど、でもクォーレにとってここは本物の現実で、あぁー!めんどくさい!とにかく、死んでなんてない事を理解してもらい。執拗に崇めようとするティティを食い止め、説明は終わった。

 

「ふ、ふふ。私、入るクラン間違えたんじゃ……こんな所でやっていける気がしない……」

 

 なんか現実逃避してるけど。

 

「おお、終わったか」

 

「終わった?お兄」

 

 そこへトト姉とティアが帰ってきた。どうやら自分の部屋は見てきたらしい。

 

「じゃあ、ここに署名したら正式に加入だ。これからよろしく頼むぞ、ティティ」

 

「よろしくね!ティティちゃん。といっても私も今日からなんだけど」

 

「は、はいっ!精一杯頑張ります!」

 

 こうして、俺たちのクランにティアとティティが加わった。

【エルドゥーク】も倒して、俺のユニーククエストも一区切りついたし、ゆっくりレベル上げと他の国でも見て回りたいな。

 

あとティティはトト姉の《月》の神秘防具を見たのと、レベッカが大精霊という事を知って気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・ユニーククエスト『アンビリカル』

 発生者 ティア

 クリア条件 ティティと一緒に30回モンスターを倒す

 推奨レベル 2

 

 ・ユニーククエスト『ヒーローズオーダー クララ』

 発生者 ロータス

 クリア条件 オーダーの達成

 推奨レベル ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 人間国ストルタス某所の地下で男が酒をのんでいると、一人の男が地下に降りてきた。

 

「大将、ちょいとお耳に入れたい事が」

 

「なんだ?」

 

「また、『蔦の宮殿』を名乗る輩が増えてきました。いかがします?」

 

「んだと?そんなもん俺に聞かなくても手前の頭で考えればわかる事だろうか!」

 

「皆殺しですね?」

 

「当たり前だ!『蔦の宮殿』を名乗る輩は全員殺す、ログインしなくなるまで延々となぁ!PKクラン『紅の斧』の名の下に!」

 

 




クララ「今回は初期職業についてです」

エレノーラ「職業は私の分類てすわ」

クララ「先ずアルカディア・プロジェクトにログインしたプレイヤーは全員旅人という職業につきます」

エレノーラ「そのあと組合で、戦士、軽戦士、重戦士、魔法使い、治療師、呪術師、付与師、召喚士、小作人、町民、行商人のいずれかに転職して頂きます。この11種を初期職業と呼ぶプレイヤーの方々は多いそうですわね」

クララ「旅人を0、初期職業を1としてランクアップは最大6まであります。どの初期職業を選んでも最終的に最低6つの派生職業が選べる上に、転職はいつでも出来ます。よって、やり込んでいる方々は全く違う職業にして、磨いていますね」

エレノーラ「そのほかにも特殊派生の職業は沢山有りますわ。剣舞騎士もそうですわね」

クララ「今回はこの辺りで失礼します」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。