アルカディア・プロジェクト   作:ムササ

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#25 ヒーローズオーダー

 

 

 その日、いつものようにログインした俺は、どうやらいつもとは違う場所に飛ばされたようだ。かといって見覚えがない訳では無く、というより一生忘れたくても忘れられない場所だろう。

 なにせそこは俺が英雄であると誓った場所なのだから。

 

「よお、こんな所にいきなり呼びつけるとは何事だ?クララ」

 

「口を慎みなさい人間。いくら私の英雄だとしても対等の立場でない事は分かっている筈ですが」

 

「はいはい。どうせ俺はお前たちの従順な狗(英雄)サマですよ。んで冗談はともかく、本当に何事だ?アルカディアに何かあったのか?」

 

「はぁ、まあいいでしょう。クエスト(指令)を発行しました。それを完遂して欲しいのです」

 

 目線がウィンドウを開けと言っていたので開いてみるとそこには確かに受けた覚えの無いクエストが発生していた。ヒーローズオーダー(英雄への命令)ねえ、厄介ごとの匂いがするなあ。

 

「クリア条件が書いてないんだが、俺は何をすれば良いんだ?」

 

「アルカディア・プロジェクトに搭載されている未来演算システム『ラプラス』が近い将来に獣人国プグナーデの郊外でクォーレの大量死を予測しました。それを防いで欲しいのです」

 

 はあっ!?今こいつ凄い事言ったぞ!?

 

「ちょ、ちょっと待て。未来演算システム『ラプラス』って何だ!?」

 

「その名の通り、少し先の未来を予知できるシステムです。アンナ姉さんは基本的に『ラプラス』の力を使ってアルカディア・プロジェクトを運営しています。勿論『ラプラス』の力が及ぶのはアルカディア内だけですが」

 

 いやいや、さらっと言ってるけど恐ろしい技術だぞ。

 このインターネット全盛期のこの世界でその力を悪用されたら太刀打ちできる機関なんか無い。

 口ぶり的にこれも橋下博士が作ったものなんだろう。アルカディア・プロジェクトは人間が作り出すゲームの2世代先を行っているとか何とか書いてあったレビューがあったけど、そんなもんじゃない。アルカディア・プロジェクトには世界を変える技術が詰め込まれてるんだ。

 ……俄然ニトワイアが怪しく見えてくるな。正直『ラプラス』一つで殺人をする動機になり得る。

 

「話を戻します。我々としてはクォーレの大量死は避けたい事態です。ですが私たちが軽々とアルカディアのマップに降り立つのは避けなければなりません」

 

 クララ達としてもクォーレが自らの意思を持ち、アルカディアで生きている一個の生命体である以上その生活を縛る事は出来ないし、この世界そのものを運営する立場上、クォーレとの接触もしたくないと。

 そんな時の為に英雄が動く訳だな、そしてその指令こそがヒーローズオーダーであると。

 

「話は分かった、だけど原因が分からないんじゃ対策のしようが無い。『ラプラス』は原因までは突き止めてくれないのか?」

 

「いえ、原因は特定しています。三体のアルカナの同時出現による大災害。それがクォーレの都市を襲います」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「どうしたの?お兄ちゃん、顔色悪いよ?」

 

「いや、何でもない。大丈夫だよ、レベッカ」

 

 クララとの会話を終えた後、俺は直ぐにログアウトした『蔦の宮殿ver.2』のクランハウス内の自室にログインした。どうやらまたもあの空間内での出来事は圧縮した時間の流れになっているらしく、特段不信には思われなかったようだ。

 まあティティを除くメンバーには話しているし、バレても問題無い上、さっきの事は話さないといけないので意味は特に無いのだが。

 しかし顔色が悪いか、それもそうだよな。というか、それどうやって止めれば良いんだよっていう命令貰ったからな。

 

「レベッカ、今誰がここに居るか分かるか?」

 

「ティティちゃん以外は全員居るよ、ティティちゃんは実家に戻ってるみたい」

 

「ん、なら好都合だ。ロビーに集まって貰おう。クララからクエストを貰ってきた」

 

 ウィンドウだとなんだか味気ないので、レベッカにトト姉とネオンの部屋に、俺はティアとクリップの部屋に行ってロビーに集まって貰った。

 

「クララからクエストを受注したと聞いたが、何があったんだ?」

 

 開口一番、トト姉が質問をしてくれたのでさっきクララ聞いた話をみんなにする。

 その反応は予想通りというか何というか、絶句の一言だった。

 

「いやいや、それ無理だろ。プレイヤーに頼む事じゃ無いって」

 

「私も、そう思います」

 

「ねえねえ、話の腰を折って悪いんだけど、クエストって何なの?」

 

「ああ、説明してなかったな。ティア、ウィンドウを開いてクエストっていう欄があるからそこを開いてだな」

 

「ああ、これで良いのかな。あれ?お兄、私も一個なんかクエストあるんだけど」

 

 ん?何か受けたっけな?

 そう思いながらティアのウィンドウを覗き込むとーー

 

 ・ユニーククエスト『アンビリカル』

 

 の文字が。

 

「おまっ、ユニーク踏んだのか」

 

「何?見せてみろ。ふむ、クリア条件的にクォーレをパーティーに入れる事で発生するクエストか?確かにユニークはクォーレ絡みで発生する事が多いからな」

 

「これ、凄いの?」

 

「ティアがこのゲームを遊ぶ上で重要な要素だ。一番の目玉だからな、凄くは無いがやった方が良い」

 

「ほえー、じゃあ今度ティティちゃんを誘って倒しに行こっと」

 

「あれ?今呼びました?皆さん勢揃いでどうしたんですか?」

 

 気の抜けた声と共に玄関の戸が開く、タイミングが良いのか悪いのかティティが帰ってきたようだ。

 

「あー、まあ話すつもりだったし、まあ良いか。ティティ、ちょっとこっち来て座ってくれ」

 

「?はい良いですよ」

 

 俺がクララに選ばれた英雄だという事、クララにクエストを頼まれた事をティティに話す。この世界が作り物であるという事を除いて、俺たちが知る全てをティティに伝えた。

 その間、ティティは何も言わずに静かに聞いていた。

 

「ーー以上だ」

 

「ええーっと、取り敢えず、英雄?ってどういう事ですか?皆さん達プレイヤーの方々は全員アンナ様達の神使では?」

 

 ってあれ?思った以上に驚かれなかったな。英雄はクォーレの中では知られてないのか?

 

「あー、まあクララから特別にクエストをもらう立場、かな?」

 

 現実の事をのぞけばそうとしか言いようがない。

 

「成る程、クララ様の信者の方みたいなものですね」

 

「まあそうなる、かな?」

 

「それでですが、そのクエスト私も受けます」

 

「はぁっ!?いやいや、止めとけって。俺たちと違ってクォーレは死んだらそこで終わりなんだぞ!?」

 

「いえ、探求者がアルカナと出会える可能性を捨てる訳がありません。『神秘を探し求める者』それが探求者の語源です。その端くれとしてやっと掴んだチャンスを手放したくはないんです。だからお願いします、私も連れて行って下さい!」

 

「分かった、連れて行こう」

 

「トト姉!?」

 

「その代わり、ティアと一緒にレベル上げだ。流石にそのレベルで連れて行く訳にはいかない。最低でも50は欲しい」

 

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

「一緒に頑張ろうね!ティティちゃん!」

 

「う、うん!ティアちゃん!」

 

「いいん、ですか?」

 

「ああ、ティティも私達の大切な仲間だ。その意思は尊重しなければな。50まで上げれば、逃がす事くらい出来るようになるだろう」

 

 まあ、確かに死なさない為にクランハウスに閉じ込める訳にもいかない、か。それに神秘防具を手に入れてくれれば、戦力アップになるからな。

 

「よし、それでは早速レベル上げと行くか」

 

 あっ、そうだ。

 

「すまん、トト姉。ちょっと俺とレベッカは別行動で良いか?他にやりたい事があるんだ」

 

「べつに構わないが、ロータスにもレベル上げはして貰いたいのだが」

 

「いや、大丈夫。レベル上げと並行してやりたい事があるだけだから」

 

「お兄ちゃん、私聞いてないよ?」

 

「うん、手伝ってもらえるか?」

 

「もっちろん!なんたって私はお兄ちゃんの精霊だからね」

 

「なら良い。取り敢えずレベル上げ期間は3日とろうと思う。ロータス、その時間が起こるのはいつ頃なんだ?」

 

「約2週間後って言ってた」

 

「ならまだ大丈夫だな。では、今日は夕方まで狩りの時間だ。では、解散」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「それで?お兄ちゃん、何をするの?」

 

「取り敢えずエターリアに行こう、【エルドゥーク】との戦いで『鋼造のマン・ゴーシュ』がボロボロなんだ。良い機会だし強化しようと思ってな」

 

「ふーん、それがやりたい事?」

 

「いや、まあちょっと待っててくれ」

 

 これはどうしてもレベッカが居ないと無理だからな。全く、フルティアも面倒な仕様にしやがって。いや、スキルを考えたのは違うんだっけか?

 森を抜けるとすぐにエターリアだ。そして三度目となる鍛冶屋『鋼の森』の戸を開ける。

 

「いらっしゃい、って何だロータスじゃねえか。」

 

「お久しぶりですライレンさん」

 

「べつに久しぶりって程でも無いだろう。2週間くらいだぞ」

 

 そう、このマン・ゴーシュを作ってもらったライレンさんのお店である。レベッカと会う前に会ったのが最後だから久しぶりって感覚だが、そうかまだあれから2週間しか経ってないのか。

 

「にしても、様変わりしたな。あの時は初々しかったが、今は……何やら死線をくぐったみたいじゃねえか。それにその嬢ちゃんは……」

 

「レベッカです、よろしくお願いします」

 

「よろしく、あー、言いたくなきゃ言わなくて良いんだが、嬢ちゃんもしかして火の精霊か?」

 

 まじか、ライレンさんレベッカの素性を見抜きやがった。ただの鍛冶屋のおっさんじゃ無いとは思ってたけど、元探求者かなんかか?

 

「ええ、そうですよ。よく分かりましたね」

 

「いや、何。鍛冶屋ってのは火が大事だろう?だから鍛冶屋ってのは火の精霊を信仰してるのよ。まあ座れや、お前さんの戦いをじっくり聞かせてくれ」

 

「分かりましたじゃあーー」

 

 そうして俺はレベッカと共に駆け抜けたあのクエストを語った。

 

「成る程……そりゃあ難儀だったな。嬢ちゃん、頑張ったなあ」

 

「うん。でもお兄ちゃんがいるから」

 

「そうか。それでその手袋が、神秘防具か。長年鍛冶屋やってるが、初めて見たわ。んで、仕事はそのマン・ゴーシュか」

 

「ええ、流石にボロボロになってしまいまして。幸い資金は集まったんで、強化してもらいたいな、と」

 

「よし、承った。じゃあちょいと預かるぜ、3日くらい貰おうか。代わりにそこら辺から1本持ってきな」

 

「ありがとうございます。じゃあ行こうかレベッカ」

 

「うんっ。じゃあねおじさん」

 

「おう、頑張れよ」

 

 さて、これで用事は一つ済んだ。

 後は、『銀火転霊』の実験だな。

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