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・アルカナクエスト 『堅牢タル節制ノ息吹』
発見者『グレン』
クリア条件 《節制》の逆位置 【究極金属 サルバネマ】の討伐
推奨レベル ──
参加人数 42人
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先ずそいつを最初に見た時の感想は水銀であった。
目の前で液状化と固形化を自在に繰り返すこの銀色の物体は水銀の様な有毒性はない……と思いたい。実際、あったとしてもそこまでたどり着けていないのだが。
「トトの姉貴! 左翼の被害がデカイ、俺がそっちに回るぞ!」
「分かった、正面は私に任せろ。グレンはそのまま遊撃として走ってくれ!」
既に戦闘開始から5分程しか経っていないにもかかわらず、『紅の斧』のクランメンバーは4分の1程削られている。『紅の斧』は『蔦の宮殿 ver.2』との戦闘で人数上限の100人のうち、18人が
正直分が悪い。相対する相手はあまり大きくは無いが、その小ささ故に攻撃が当て辛い。その上、水銀の様な軟体さを見せたかと思うとすぐに硬質化して攻撃を弾く。生半可な攻撃では殆どダメージを与えられていない。『紅の斧』のクランメンバーは私達に合わせて後衛職で固められている。グレンの采配だが、そうでなければ既に即席
「[パワーボム]」
両手に握りしめる大剣をアーツを使いながら【サルバネマ】に対して振り下ろす。その一撃は直撃したものの、[パワーボム]の効果である振り下ろした時の爆発は起きず、【サルバネマ】の体が大きくうねり、衝撃を飲み込んだ様に見える。
「くそっ、やっぱりそういう事か」
既にアーツは何度か当てているが、ほとんど効果が見受けられなかった。理由としては【サルバネマ】の特性と重戦士のアーツ全般に言える特性がかなり相性が悪いのが大部分を占める。
トトの現在の
重戦士系統の特性としてHP、ATK、DEFが比較的に伸びやすい系統と言われている。有志のプレイヤーによる検証班による検証でそれは明らかになった。更に覚えられるアーツとしては一撃の威力を求めるアーツである事、比較的クールタイムが長い事が言われる。
それは正道とは離れた成長を遂げる狂騎士でも同じである。重戦士系統が伸びやすいステータスは同じように伸びるのだが、狂騎士はとりわけATKの伸びが良く、前線で他のメンバーの
「魔法は効かない、物理も対して効いていない。その上相手の攻撃は的確で高威力。全く、嫌になるな」
《節制》の逆位置 【究極金属 サルバネマ】
全身を金属で構成し、自在に己の体を扱い神秘を追い求める探求者を追い詰めるアルカナであるが、こいつの特性はたった一つ。
自分の体を瞬時に自身の認識した事のある金属に変化させる。それだけである。
本来、アルカディア・プロジェクトでアルカナと呼ばれるボスにはアンナなどの管理AIによっていくつか特性が付与されている。【エルドゥーク】で例えるならば、自身の周りの熱量を自在に操る、溶岩から自在に操れる眷属を生み出す、などと言ったものだ。
しかし【サルバネマ】の特性は一つ。それも広範囲にわたる強力な能力などでは無く、自身の体に影響する一つのみ。アルカナの中でも比較的に
しかし、この状況では最悪に近い特性なのだ。
「魔法を打ち込めば
固有武器に目を奪われがちだが、プレイヤーに限らず生産職の探求者は固有武器や神秘防具に負けず劣らずの武具を作り出す事を目標としている。勿論だがプレイヤーの装備を全て神秘防具や固有装備で固めることは出来ない。故に腕の良い鍛冶屋というのは大手クランには必須であり、これらの架空金属はプレイヤーの羨望の的なのである。
そんな希少な物を自在に生成し操る【サルバネマ】は一撃の重さを追求する攻撃型の重戦士系統には天敵と言えた。
「レベル的に主力足り得るのは私とグレン、他グレンのクランのサブマスター以下数人。これは、少々厳しいな」
しかしセラフィム・ワールド時代から『蔦の宮殿』という少数ながらもトップクランの一つとして数えられるクランを率いてきた実績は伊達では無い。最盛期のセラフィム・ワールドでは物理無効の敵など山ほど居た、物理無効は必ずしも物理型の
「さて、愚痴をこぼしてばかり居ても始まらんな。アーツが効かないのなら別のやり方を試すまで、特攻が売りの私とて、がむしゃらに突っ込むだけが能では無い。それに……」
──今夜は新月だ。
見上げる空に月は無く、夕日が沈もうとしていた。
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「ガーラ、海老天、お前らは左に回って第三隊の援護に回れ! モグラ率いる第七隊は第五隊の残りを率いてトトの姉貴の援護だ!」
元『蔦の宮殿』、アルカディア・プロジェクトでは大規模PKクラン『紅の斧』のクランマスターであるグレンは戦場を走り回りながら指示出しと並行して【サルバネマ】にちょっかいをかけ続けていた。
「団長! 損害率50%を超えました、右翼の戦線の維持が不可能、私の独断で第一隊を援護に回しました!」
「ノーラか、構わん。サブマスターのお前にはほぼ俺と同権限を与えている。それに第一隊はお前の旗下だろう、好きにしろ」
『紅の斧』はグレンが中心になって発足したクランであるが、そもそもグレンはトトらと共にまた一緒にやるつもりであった。しかし新しく自分のクランを立ち上げたのにはこのノーラと呼ばれた女性プレイヤーが大きく関わっている。
ノーラ、正式にはノーラ@蔦の宮殿近衛隊 遠隔奉仕部 部長 と言う。
@の後も含めて全てがプレイヤーネームである。何となく字面で察する事が出来るだろうが、彼女はセラフィム・ワールド時代の『蔦の宮殿』の大ファンである。大の前に超ド級のが付く程の。
セラフィム・ワールド時代の『蔦の宮殿』はその少人数故の悪目立ちと、それに負けない強さによってかなり多くのファンが居た。ロータス以下殆どのクランメンバーはそういった事に興味が無かったので無関心を決め込んでいたが、クランマスターであるトト、『蔦の宮殿』サブマスターの二人は交流を持っていた。
蔦の宮殿近衛隊はそんなファンクラブの総称である。
「綺麗な華に棘があるように、荘厳な宮殿には蔦がある」とはサブマスターの言葉である、少々管理AIの末娘
『蔦の宮殿』のクランメンバーには鍛冶屋が居たので装備類は間に合っている。更に元々戦闘系のクランでは無く、全てに手を出していた広く浅くのクランだった為、薬師も居たのでポーションも間に合っている。
ならば第一次生産だ。ポーション類の元になる薬草や装備の元の金属を供給しよう。となったのが後方支援部。
戦闘の邪魔をするPKらを(勝手に)倒し、円滑なゲームライフを送れるようにしよう。となったのが遠隔奉仕部。
少数クラン故に拾い損ねた情報を集めて、裏から支援しよう。となったのが情報収集部。
主に近衛隊はこの三つに分けられた。ちなみにこの三つの派閥はそれぞれ一つのクランを形成しており、横の繋がりを何よりも大事にした。これが『蔦の宮殿』をランキング1位に伸し上げた要因の一つになっている事は疑うまでも無い。
しかしトトの受験を皮切りに『蔦の宮殿』のメンバー全員が集まる事は難しくなり、セラフィム・ワールド自体も後継であるアルカディア・プロジェクトの発売で下火になっていった。
それに伴い近衛隊も解散、遠隔奉仕部のクランマスターであったノーラもセラフィム・ワールドを引退した。しかし、アルカディア・プロジェクトでトトというプレイヤーが
もしかしたら……そんな思いを胸に何とか手に入れたアルカディア・プロジェクトを立ち上げてログインしたノーラがグレンと出会ったのは運命だったのだろう。
グレンはトト、ロータス、クリップ、ネオンらに次いで5番目に『蔦の宮殿』に入った人物である。グレンは有り体に言えば四人の少年少女が織りなすあの空気が好きだった。年は離れていたが、弟や妹の様に接した。年甲斐もなくはしゃいだ物だ。今ではロールプレイも板につき、トトの事を姉貴と呼ぶ程である。トトよりもずっと年上だが。
ノーラとグレンは直ぐに意気投合。『蔦の宮殿』の話で盛り上がった。そんな時、二人の入っていた店の外から『蔦の宮殿』を名乗るプレイヤーが明らかに初心者らしきプレイヤーに絡んでいるのを見た。
グレンとノーラはそれに激怒、街の中はPK禁止区域であるにもかかわらず、悪徳プレイヤーをPKした。すぐさまお尋ね者になり、衛兵に追われながらも二人は笑い合っていた。
その時、PKクラン『紅の斧』は始まったのだ。
故に今のこの状況はノーラにとっては夢の如きものである。
憧れの人たちと共に肩を並べて強敵と戦っている。それを夢と呼ばず何と言う。
「射線を開けなさい、[リジェクトストリーム]」
簡略詠唱を経て、ノーラの持つ杖から凄まじい水量の水が【サルバネマ】に襲いかかる。[リジェクトストリーム]、水属性特級魔法。そのレベルはこの戦場でトップを誇るLv.95。魔法使い系統、第四段階の
クララ「今回は今更ですが職業についてです」
クララ「これは私とエレノーラの管轄ですね」
エレノーラ「プレイヤーは初期職業である旅人から一つ第一段階と呼ばれる職業を選び、探求者となります。選べるのは」
・戦士
・軽戦士(ロータス、シエル)
・重戦士(トト、グレン)
・魔法使い(クリップ、ノーラ)
・治療師(ネオン)
・呪術師
・付与師(ティア)
・召喚師
・小作人
・町民
・行商人
エレノーラ「以上のうちから一つですわ。横にあるのは主要人物の現在のカテゴリですわね」
クララ「長くなったので分割します。今回はこの辺りで、失礼致します」