アルカディア・プロジェクト   作:ムササ

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アイスボーン楽しい……楽しい……
はい、すみませんごめんなさい何でもしますから。
長い夏休みを(無断で)頂いてしまいました。
エタる事は無いのですみません、すみません。もう少しで大学始まるんでそしたらまた執筆時間が取れるんで安定すると思います。
短いですがリハビリという事でここはひとつ……


#35 少女達よ希望を抱け 第五項

 水の流れは侮ってはならない。たかが時速2km程の流れが足に当たり続けるだけでも人間は容易に流されてしまう。それが魔法という力で増幅された人ひとりを飲み込む様な激流ならば金属の塊とて耐え切れるものではない。

 [リジェクトストリーム]という魔法は本来、対大軍用の面制圧魔法である。波は横に広がり、とてもでは無いがこんな混戦の最中に使える魔法では無い。しかし、賢者にまで至った彼女の魔法はある程度使用者のイメージにより柔軟性を持つ。

 というより本来ならば全員賢者になどならなくても魔法はイメージによってある程度効果を変えられる。他でも無い魔法担当AIであるイザベラがそう設計した。しかし賢者にでもならなければその事実に気付くことは無い。魔法はこうあるべき、という先入観が先行するからだ。

 

「すごいな! グレン、良い仲間を見つけたじゃないか」

 

「がっはっはっ、そいつぁ嬉しい言葉だねぇ。出来れば本人に言ってやってくれや」

 

「ああ、ノーラと言ったか。グレンより前に私が出会っていればうちにスカウトしたいくらいだ」

 

「はいっ、喜んで!」

 

 満面の笑みで堂々と乗り換えを宣言した。

 

「おいぃ!?」

 

「ふふっ、冗談です。私も今の『紅の斧』が結構気に入ってますので」

 

 絶対冗談じゃなかった。俺が許可を出せば絶対こいつ『蔦の宮殿 ver.2』に乗り換えてやがった。そう思いながらグレンは水流に飲み込まれた【サルバネマ】を睨みつける、アルカナに分類されるモンスターがこの程度の魔法一発で沈むなど考えられる訳もなく、果たしてその通り【サルバネマ】は何事もなかった様に立ち上がっていた。

 

「よし、グレン、ノーラ。出来るだけ合間を開けずに攻撃を叩き込むぞ、いくら効きが悪くても自己回復の手段が無い以上、いつかは沈む」

 

「了解しました、トト様」

 

「りょーかい」

 

 自らの丈以上の大斧を肩に担ぎ、大きく息を吐く。

 グレンはトトと同じ重戦士系統の職業(ジョブ)である。しかし狂戦士系統ではなく、重装騎士系統と呼ばれる分岐を選んでいる。狂戦士の特性が[暴走]のスキルだとすれば重装騎士にはこれといった特性は存在していない。重戦士系統が不遇な成長先と言われるのはそこが所以である。しかし単純にステータスの上がり幅が高い。

 これといった奇抜さは持たないものの、高いHP.ATK.DEFで正面から身の丈以上の相手と打ち合うことが出来る、そんなシンプルな性能である。

 

「さて、と」

 

 グレンは自らが平凡である事を自覚している。

 トト(元クランマスター)の様なカリスマは持っておらず、クリップやネオンの様に天才的なアーツ回しをする事も出来ない、当然ロータスの様に一芸に秀でている訳でも無い。

 そんな自分がセラフィム・ワールドという一大ブームを巻き起こしたゲームの中でもトップクランと呼ばれた蔦の宮殿のメンバーだというのは今でも誇りなのである。

 取り柄といえばこの巨体くらいだろうか、それでもそんな自分に対して誘いをかけてくれた仲間がいるのだ、自分を信じて前線を任せてくれた仲間がいるのだ。そして何よりも、そんな自分を憧れだ、そう言って集まってくれた今の仲間がいるのだ。

 故に努力を続けた、必死に効率の良い組み合わせの職業を探した。

 だからそれは必然だったのだろう。

 

「[換装]紅の鎧」

 

 とあるユニーククエストの達成報酬でグレンはそれまでクォーレにのみ発見されていた新しい職業を発見した。今ではそれ以外に十数種類が確認されてはいるものの、その当時大いに議論になった。

 重戦士系統の特殊派生職業、守護者。現在片手で数える程しか確認されていないランクⅤ相当の職業である。

 

「[破断]、[乱破]」

 

 物理攻撃、いつもの様にして古代金属(アダマンタイト)で防ごうとして【サルバネマ】は気付く、その威力が先程の《月》の神秘を持った女とは桁違いな事を。久しく感じていなかった斬られる痛みを。

 守護者の特性は単純、自身のATKとDEFを合算して同数値として扱うというものである。その特性によりATKを上げればDEFも上がり、DEFが下がればATKも下がるという事になる。

 更に鎧類に限り、一瞬にして装備変更が出来る[換装]のスキルが使える様になる。色々なスキルを持った鎧を戦闘中に変更しながら戦えるという戦略性が大幅に広がった物理特化型の職業となっている。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「キキッ、キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ」

 

 ああ、何という事だろうか。ここ久しく感じていなかった痛みを与える者が現れた。しかも我々と同じ神秘を持つ者では無く、水の魔法を使う賢者と古代の職業(・・・・・)を振るう戦士と来た。《月》の神秘を持つ女に突破される事は考えてはいたが、それでは試練を突破したとは言えない。

 神秘を持つ者には新たな試練は与えない。それが大原則ではあるが、まあ別に強制という訳では無い。あのいけすかない【リュージット】は嫌いなのであの女には絶対に試練は与えないが。

 しかしそうか、ここには私と同じ神秘が沢山集まっている。《正義》と《死神》はまだ試練の途中、《月》と《愚者》は見定めたか。全く、羨ましい事だ。我らの宿願とも言える。

 特に《愚者》の選んだ者は英雄か、傍に侍るは大精霊、五千年前と同じ(・・・・・・・)なのは運命か、それとも仕組んだのかは知らないが、此度は上手くいく事を願っているよ、管理者ども。

 

「サア、ソレデハ私モ試練ヲ与エヨウ。我ガ名ハ、サルバネマ。《節制》ノ神秘ヲ司リ、究極金属ノ称号ヲ持ツ者ナリ!」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 時を同じくして、森の北西部には。

 

「はぁっ……はあっ……」

 

 地面に杖を突いて今にも倒れこみそうなネオンと。

 

「糞がっ……」

 

 MPの枯渇により全身に重りを付けられたような脱力感で座り込んでしまっているクリップ。

 

「何で、邪魔をするんですか、よりにもよって貴方が!」

 

 そして……

 

「邪魔では無い。貴様らに神秘を背負う覚悟を問うているだけだ」

 

 炎で出来た鎖に拘束されている《正義》の正位置 超克天使クヴァークを背にしながら、クォーレの英雄、『日輪』とまで呼ばれる最強のクォーレ、グラディス・カンペアドールに剣を突きつけられているシエルの姿があった。

 

 

 

 




ランク0 (1%未満)旅人
ランクⅠ(15%くらい)戦士、軽戦士、魔法使い、付与師etc
ランクⅡ(30%くらい)遊撃士、魔女、薬師etc
ランクⅢ(30%くらい)武闘家、狂騎士、降霊術師etc
ランクⅣ(20%くらい)暗黒騎士、魔人、軍師etc
ランクⅤ(3%くらい)騎士王、大司教、勇者etc
ランクⅥ(片手で数えられる数)???
ランクEX(2%くらい)守護者、占星術師、剣舞騎士etc

例外、罪人。捕まった犯罪者に強制的に付与する職業なので

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