「よう、終わった?」
受付嬢さんの説明が一通り終わったのでクリップの所まで戻って見ればクリップは一人で何やら柑橘系の香りのジュースを飲んでいた。
そういや、前にやってたゲームは味覚設定とか酷かったな、極端なものしか感じないとか普通だったし。
「ああ、終わったよ。細かいのは全部すっ飛ばしたけど平気?」
「平気平気。そういうのはトト姉が詳しくやってくれる。そういうの好きだし」
「そういやそうだったな」
トト姉はそういう細かい設定とか大好きだからなあ。殆ど身内で集まってるときとかは歩く辞典になってるし。
「じゃあ取り敢えずは装備とアーツだけやったら戦闘やってみるか。組合の奥の部屋借りて来るからちょっと待ってろ。その間スキルのヘルプでも見て待ってろ」
「りょーかい」
クリップを見送りつつ、今さっきウィンドウに送られてきたヘルプを開く。えっと、アーツっと。
どうやらざっくりと読んだ結果、結構どこにでもあるアーツ習得の仕方を採用しているらしい。
その1、アーツを習得するには特定の職業に就くか、特定のアイテムを使用する、特定の行動をするなどといった事が必要。
その2、アーツは習得しただけでは使用出来ず、有効化しなければならない。有効化にはアーツの難易度に応じたアーツポイントを消費しなければならず、アーツポイントはプレイヤーのレベルアップと同時に加算される。
その3、アーツは職業対応の一部のものを除き忘却出来ず、慎重に選ばなければならない。
んで、アーツと似たようなのにスキルがあると。
その1、スキルは基本的に防具に付与されている。世代を重ねた武器にも付与される。
その2、スキルはアーツと違いその装備を外せば使えなくなる。
その3、スキルにはパッシブスキルとアクティブスキルがある。
つまり分かりやすく言い換えれば、アーツが技、スキルが効果。そのままだな。
そんでもって、ついでに開いた俺の現状ステータスがこれ。
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ロータス 男性
Lv.1
職業 軽戦士Lv.1
固有武器 小太刀
HP 100
MP 100
STR 25+50(75)
INT 5(5)
VIT 10+50+25+25(110)
MND 10(10)
DEX 30+10(40)
AGI 35+10(45)
有効化アーツ
有効化スキル
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各ステータスの一番左が俺の素の数値。+で表示されてるのが装備の数値で()の中が合計値らしい。俺の職業である軽戦士はDEXとAGIが伸びやすい傾向にあると書いてあるが、その伸び方もプレイングで変わるらしい。レベルは全く何もしていないので1で当然、アーツとスキルも空欄だ。あっ、いやそういやなんかあの南瓜にはなんか付いてたな。まあここで確認すると騒ぎになる事間違いなしなのでこれは保留で。周りに結構プレイヤーらしき人もいるし。
「おう、終わったぞ。付いて来い」
「おっけー、俺も今終わったわ」
最期まで見終わった時にちょうどクリップが帰ってきたので大人しく付いていく。にしてもこいつやたらと注目浴びてんな、何でだ?
じろじろと視線に晒されながら俺たち二人はクリップがとった組合の奥の個室へと入った。
「なんでお前あんなにじろじろ見られてたんだ?」
入ってすぐに、気になっていた事を聞く。
「あー、そりゃ、あれだよ。いつも俺ネオンとトト姉とパーティ組んでるから」
「なるほど。両手に花のイケメンクソ野郎に見えるわけだ」
「そういう事」
VRゲームが世に出回って久しいが、現状VRの中と現実とで身体を極端に弄ることは出来なくなっている。理由としては簡単、身体が動かせなくなるからだ。VR発明初期は身長弄ったり、極端なイケメンにしたり、それこそ
なんでこんな話を長々としたのかと言うと、このイケメンクソ野郎と組んでいるパーティメンバーはおそらくかなりの美人だからだ。おそらくと付けたのは
「喜べロータス。今日からお前もそのイケメンクソ野郎の仲間入りだ」
「残念ながら俺はお前ほどイケメンアバターではないからヘイトが集まるのはお前だ」
「くっ、なんでめちゃめちゃイケメンのアバターにしなかったんだ!」
「嫌味か!引きちぎんぞ!」
「何を?」
「鼻」
「猟奇的!マジで出来ちゃうから止めろよ?」
「え、出来ちゃうんだ」
「マジだ。プレイヤーには街中ではPvP挑まないと出来ないけど
クリップの説明によれば、指名手配になったプレイヤーは組合の利用が不可になり、その国の衛兵から追われることになると言う。
「あとちょっと面倒なんだけどPKと犯罪者は違くてさ、PKは別に衛兵に追われたりしないしPKKされたらアイテム全ロスト、所持金全ロストで終わりだ。犯罪者はゲーム内での一定期間投獄が付く。凶悪犯罪はその限りじゃないらしいけどな」
「はー、やっぱPKとかいるのな」
「ああ、PKも犯罪者も出てるな。そいつらのクランも存在する」
「クランもあるのね。もう作ったのか?」
「まだだな、トト姉が割り勘だーって言ってたぞ」
「初心者に何言ってんだよ……」
どうやらトト姉はクランハウスを四人で割り勘できる買いたいらしい。トト姉こういうのには厳しいからなぁ。現実だとカリスマ女子大生でゲームだと頼れるクランマスターか、『姉』って付けちゃうのもわかってもらえると思う。一番歳上だし。
「まあその為にも金策だな。AIから貰った金は取り敢えず消耗品に使えってのがセオリーなんだがそこは俺がやろう。先輩として奢ってやる」
「そりゃどうも」
クリップから貰ったのは「初級ポーション」が5本、「中級ポーション」が2本、「解毒ポーション」が3本、「ランタン」、「投げナイフ」が5本だ。
「まじか、こんなに良いのか?」
「ああ、ポーション類はネオンがヒーラーやってるから滅茶滅茶余るし、ランタンも結構安い、ナイフはちょっと高いけど投資だ投資」
「ん、じゃありがたく貰っとくわ」
「おう、ちなみに初級ポーションは低レベルの軽戦士なら半分くらい、中級なら全快するくらいHP回復するから」
「オッケー、了解」
「あと勿体ないからナイフは投げたら出来るだけ回収しとけ。それも金策だ。よし、じゃあ装備の話。と行きたいところだが、その前にプレイスタイルの確認だ、今回はどうするんだ?」
「前と同じさ、さっきも言ったけど俺はそこまで器用じゃない。前衛で撹乱と物理攻撃だな」
「よし、じゃあまたあのアホみたいなプレイスタイルだな」
「アホみたいなとはなんだ」
別に俺だってアホみたいなプレイスタイルにしようと思ってなった訳じゃ無いんだ。
「いや、十分アホみたいなプレイスタイルだろ。なんだよアレ、敵の攻撃は避けるかパリィしかしないし、つーかお前のパリィ技術気持ち悪いくらいだからな」
クリップがアホみたいなプレイスタイルという俺のスタイルは基本的には避けタンクに近い。敵の攻撃は徹底的にパリィ、どうしても受け切れない攻撃は避ける、でその間に何回も切りつける。基本的にはこれだけ。
何故こんなプレイスタイルになったかと言えば、俺たち四人が最初に出会ったゲームが悪い。そこで俺はレア職であった剣舞騎士という職に就いていた。そのプレイスタイルがそのアホみたいなものだったという事。多分ゲーム内に俺しか居なかったと思う。どうやってジョブチェンジ条件満たしたか俺も分かってなかったし。
まあそのせいで俺はそのプレイスタイルに慣れきってしまったというわけだ。
「それしか出来ないジョブだったからなぁ。必然的にそのプレイスタイルになる訳で」
「まあそれはいい、今やお前の代名詞だし。じゃあロータスが取るべきアーツは回避系とパリィ系と攻撃系だな。取り敢えず習得済みアーツってウィンドウ出してみ」
いくつかの工程を踏んで習得済みアーツのウィンドウを呼び出す。
「おう開いたぞ」
「じゃあ俺にも見えるように可視化してみろ」
言われた通りウィンドウを可視化する。よこからクリップが覗き込む。
「取るべきは軽戦士系の汎用アーツのクイックムーブ、ドリフトステップ、ダブルステップ、クロスカウンター、ってところか」
クイックムーブは一瞬自身のAGIを1.3倍するアーツ。
ドリフトステップはステップ中に曲げることが出来るアーツ。
ダブルステップは二回連続でステップ出来るアーツ。
クロスカウンターはパリィ成功時にカウンターを自動で入れるアーツ。
この4つが俺と似たスタイルの初心者プレイヤーのテンプレートらしい。
「最初はそんなもんだな。スキル付きの装備が手に入るのはまだ先だし……」
「あー、そのことなんだけどさ。俺1000万人目のプレイヤーだったらしくこれ貰ったんだよね」
名無しの南瓜を手の中に取り出す。と、一瞬にしてクリップが近づいてきた。ちょ、今こいつアーツ使ったろ!
「は!?ちょっ、おまっ、は!?マジかロータスマジか!?」
「ちょ、お前が一旦落ち着け……やっぱヤバイかな?」
「やばいなんてもんじゃねえぞロータス。これ目当てに攻略組が何人かログインさせずに残してたって話だ。PKも狙ってるって噂だったな。もうすぐ1000万人のログインになる事は結構前から分かってたし、ユニーク装備はこのゲームだと本当に垂涎の的だ、うっわマジかよ」
「あー、なんかクララも同じような事言ってたな。何でも咽び泣いて受け取るべきだとかなんとか」
「お前、クララとまともに話せたのか。クララはファンクラブが出来るほど人気なのに塩対応で有名だからかなり珍しいぞ。クララのファンクラブ会員がこの話聞いたら発狂するな」
「じゃああの言葉も言われないのか?あの、英雄よ、挑み給えってやつ」
「あー、それ完全に目が付けられてるやつだわ。何でも気に入ったプレイヤーをAIは観察してるって噂だ」
「……何それストーカー?」
「この話も見られてるんだからな?」
それは怖い、不用意な発言は慎まなければ。
って、ぅぉわ!
ウィンドウに新着メッセージ。差出人はプレイヤーナビゲーターAIクララ。内容は「ストーカーって次に言ったらアカウントロックします」
「……」
「……」
無かった事にしよう。そして絶対もう言わないようにしよう。
「俺はアンナで良かったわ」
「別にプレイヤーナビゲーターAIだからクララだった訳じゃ無いのか」
「ああ、五人のAIがランダムにやってくれるらしいな」
その後ちょっと沈黙。まあ、クララで良かったよ。可愛かったし!うん可愛かったし!届けこの思い!(懇願)
「話を戻すが、その南瓜みたいな
いつか手に入れたいものだ。
「トト姉は一個持ってたな。《月》の
「マジか、凄えなトト姉」
「運がよかったって言ってたけどな。どれも強力だし俺もほしーわ」
「てか、ネオンみたいなヒーラーはキツくね?その条件」
「ヒーラー限定のアルカナクエストがあるってもっぱらの噂だ。《女教皇》とかが怪しいって言われてるな」
「へー」
「ちなみにその名無しの南瓜の火属性耐性+1ってのがスキルな。耐性系は+5まで積み重ねればダメージ100%カットだ。+1だと20%だな。その代わりに他の耐性系が無効になる」
という事は俺はこの南瓜を付けてる限り他の耐性系スキルは取れないって事ね。
「じゃあこんなもんかな。取り敢えずその南瓜は街中では外しとけ。少なくとも初心者の頃は。PKは意味ないからされないと思うが、有名クランからのお誘いとか、嫌がらせとか面倒いだろ?」
「面倒いねえ」
「じゃあ後は実戦だな。習うより慣れろだ」
クララ「全く、誰がストーカーですか。ごほん、今回はアルカナに関してです。」
クララ「アルカディア・プロジェクトにはアルカナボスと呼ばれる強力なボスが44体存在しています。前にも話した《守護者》の事ですね。アルカナボスも私以外のAIかいるのでまた概略だけ」
クララ「アルカナボスはタロットの大アルカナにそれそれ対応しています。愚者、魔術師、女教皇、女帝、皇帝、教皇、恋人、戦車、正義、隠者、運命の輪、力、死刑囚、死神、節制、悪魔、塔、星、月、太陽、審判、世界。それぞれの正位置、逆位置のモチーフですね」
クララ「それぞれが発見者ボーナス、MVPボーナス、ラストアタックボーナスとして神秘防具を落とします。一人が複数のボーナスを獲得した場合は統合され、更に強力な1つになります」
クララ「現在何体のアルカナボスが倒されているかは……言わない方が良いですかね」
クララ「では今回はこの辺で失礼します」