アルカディア・プロジェクト   作:ムササ

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南瓜が剣を振り回して、モンスターを薙ぎ倒す光景。


#4 兎と小鬼と猿と南瓜

「このゲーム初心者オススメの狩り場とか裏技的なレべリング法とかあんまり無いんだ」

 

 歩きながらレベリングに付いて聞いてみるとそんな答えが返ってくる。

 

「そりゃ、全く無いって訳じゃない。今から行く所も初心者オススメの狩り場だ」

 

「おい、さっきの言葉と早速矛盾してるぞ」

 

「まあ聞けって。アルカディア・プロジェクトにはパワーレベリングを防止するためにいくつかの制限がかけられている。1つは経験値の不均等分配。結構当たり前に採用されてるゲームが多いがアルプロだと顕著に出る。例えばLv.1のプレイヤーとLv.99のプレイヤーが一緒にパーティーを組むと1:99の割合で経験値が分配される。これもキツイがもっとネックになるのが、虐殺者(スローター)だな」

 

虐殺者(スローター)?」

 

「アルプロのフィールド内において、ある一定の範囲内(・・・・・・・・)で、ある一定の時間内(・・・・・・・・)ある一定の数(・・・・・・)のモンスターが倒された場合そのモンスターの数の合計値と同じLvのモンスターが一体ポップする。そのモンスターはそのフィールド内全てのプレイヤーに強力なヘイトを持ち、殺しきるか殺されるまで延々と追ってくる。面倒なのがログアウトしようが(安全地帯)に入ろうが追ってくる所だ。街でログインした瞬間に虐殺者(スローター)に殺されたなんて話はそこら中に転がってる」

 

「えっ、それ普通にやばくね?倒させる気が無いイベントモンスターみたいなもんだろ?そんなのがそこら中のフィールドに転がってんの?」

 

「いや、虐殺者(スローター)はヘイトを持ったプレイヤーを全員キルしたら自然消滅するんだ。ちなみに倒しても何も手に入らないから忌避されてる」

 

「以上の事からアルプロ内での効率的なレベリングは不可能っと」

 

「そういう事」

 

 そりゃあ、高レベルプレイヤーに連れられて美味い狩り場に行ったは良いものの殆ど経験値は持っていかれ、その上粘り過ぎると確実にキルされるならパワーレベリングなんて不可能だわな。

 そんなこんなでまた沢山の目に晒されながらエターリアの端まで到達。門番に挨拶をして草原に出る。

 

「よし、こっからはいつ襲われても不思議じゃない。大丈夫だとは思うけど一応何戦か見たら俺はエターリアに戻る。適当な時間になったらメッセージ送ってくれ。最後に飯食って終わりにしよう」

 

「了解」

 

 そこからはクリップと少し離れて歩く。もちろんパーティーは組んでいない。取り敢えずこんな初心者用のフィールド、しかも草原なんていう見晴らしのいい所で奇襲を食らうことは無いと思うのである程度周りを見渡しながら歩く。

 ああ、これだよ。この緊張感、久し振りにやるとやっばクルものがある。現実では味わえないこの緊張感、ゲームじゃないと楽しめないものだ。

 

「おっと、忘れる所だった」

 

 周りに誰もいない事を確認してウィンドウを操作、装備ページを開いて『名無しの南瓜』を装備っと。

 うん、視野も狭くなってないし、重さもあんまり感じない。バランスもいい感じだな。

 

「ククッ」

 

「おっと」

 

 目の前にモンスター、表示は『ホーンラビット』どうやら俺が認識すると名前が表示されるらしいな。一匹だけだし初戦闘はこいつで決まりだな。

 小太刀を構えて取り敢えず様子を見る。

 

「ク、クッ!」

 

 ホーンラビットは溜めを作ると、跳躍して一直線に突っ込んでくる。

 

「ほっ」

 

 余裕をもって半身で躱す。まだまだ見切れる範囲だな、安直な動きで助かった。

 振り返るとホーンラビットはその勢いのまま地面に突っ込んでいた。

 最近のVRゲームはリアリティの追求が進んでいるが問題になったのが血と肉の問題だ。そこをあまりに追求がしすぎるとあっという間にアンチが湧く。三年前に起きた教育委員会だか子供の健全な育成を守る会だかの起こしたゲーム会社相手の訴訟は全国ネットで放映されたから話題になった。

 結果としてゲーム会社が敗北、倒産に追い込まれた。それから国産のVRゲームは過度な血しぶきや残虐な表現、度を超えた傷口などの表現は縮小傾向になった。海外産のは例外らしいが、別に好きなわけではないし、むしろ嫌いなので構わない。

 アルプロもその傾向に漏れないらしく、土埃がついて薄汚れているものの、血は出ていない。

 

「よっと」

 

 骨を小太刀、しかも手入れも何もしていない初期武器で切ると刃こぼれしそうなので心臓の辺りを一突き。するとポリゴンが弾けてホーンラビットの体は砕けて跡形も無くなった。

 これも最近のVRゲームではよく見るタイプだ。分かりやすいし、グロくないし。

 

「敵性モンスターのHPは見えないパターンか、ちょっと面倒だな」

 

 今回は一撃でHPバーを削りきったのでよく分からなかったが、おそらくHPバーは見えないパターンだろう。このタイプの方が緊張感と臨場感があって個人的には好きなのだが、やはり見えるパターンと違って細かい挙動に注意しないといけないし、ペース配分を考えるのも難しい。

 

「ドロップは……無しか。まあそんなもんかな」

 

 武器の状態を見ると刃こぼれも無く、勿論血糊が付いているなんていうことも無く、綺麗な刀身のままであった。そういやアルプロだとプレイヤーが最初に与えられる武器は耐久値が無限なんだったか。ヘルプを開いて確認すると無茶な使い方をしない限り刀でも刃こぼれしないし、もし折れても時間が経てば自動修復するとか。親切設計だなぁ。

 

「じゃあもうちょっとモンスターと戯れて見ますか」

 

 俺は目の前の平原を抜けた先に見える森に目標を定めて、歩き始めた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「ギギャ!」

 

「よっと」

 

 その見た目から想像できる通りのTHE・ゴブリンって感じの鳴き声を断末魔にファンタジー世界では怪物にさせられている元ネタは妖精のモンスターを切り伏せる。これで五匹目のゴブリンか。

 森に近づくにつれ、ホーンラビットだけでなく、ゴブリンも現れ始めた。ホーンラビットは普通の野うさぎに角をくっ付けましたっていう見た目だったけどゴブリンは一般的に想像されているゴブリンそのままだった。大きくて1m程の体長、緑色の体表、腰ミノに粗末な武器。

 もう殆ど森、というところまで来るとホーンラビットは居なくなってゴブリンだけになった。これで3連続ゴブリンだ。

 ちなみにホーンラビットからは何個か[ホーンラビットの肉]というものがドロップしている。これはどうやら食用らしく中々良い値段で売れるらしい。

 アルプロでは空腹度というのがパラメーターには表示されないがプレイヤーの間では認知されている。現実と同じ様に食わないと動きが鈍るのだ。基本的には街で何を食べるらしいが、外のフィールドで空腹度を減らしたい場合はこう言ったドロップ品を調理したり携帯食料を持ってくる必要があるらしい。

 それとホーンラビットからは[ホーンラビットの角]というものも1つだけドロップした。肉が通常だとしたら角は少しレアといったところか。どうやら角はマジックポーションの素材らしく肉10個分の値段で売れる。

 ドロップ品は手に取るとマジックバッグに収納され、ウィンドウから詳細情報が閲覧できる。そこでNPC(クォーレ)に対する売値が分かるという訳だ。

 

「さて、ゴブリンからはまだ何もドロップしてないんだよな」

 

 しかし今回は違ったらしい。

 ゴブリンがポリゴンとして爆散した後に何かが残っている。

 

「[粗末なナイフ]か」

 

 どうやらゴブリンが持っていたナイフの様だ。

 耐久値残り15%。俺が使っている小太刀は片手で扱えるから一応二刀流も出来なくは無いが……まあ投擲用だな。牽制としては初心者ということを考えると上等だろう。

 にしてもプレイヤーはてっきり最初の武器しか使えないのかと思っていたが、どうやら違うらしい。これならマン・ゴーシュが欲しいな。

 二刀流で戦えるならかなり俺の得意なスタイルで戦える。

 ちなみにマン・ゴーシュとはよくマインゴーシュの名前で知られる補助的な意味合いの強い両刃の長剣だ。主に白兵戦用の武器だが非人型の敵と戦うのにも使える。大きなガードが付いており、主に相手の攻撃を受け流すのに使う。

 

「その為にも資金集めか」

 

 そんなところでメッセージ。クリップからだ。内容は「それだけ戦えるなら大丈夫だな。じゃあ俺はエターリアに戻ってるわ。終わったらメッセージ飛ばしてくれ」か。

 俺は「了解」とだけ返して俺は森に足を踏み入れる。

 

「っ!?とらぁ!」

 

 森に踏み入れた瞬間何かが飛んできた。反応できたのは半ば運だ。というか今[粗末なナイフ]を手に持って無かったら確実に食らってた。今ので耐久値が0%になったらしく手から砕ける感触が伝わってきた。

 どうしようもないので残った持ち手部分を何かが飛んできた所に投げる。

 すると何かが木の上からまた別の木の上に飛び移る。あのシルエットは、猿か!つーかなんだこいつ!木の上から何かを絶え間なく投げてきやがる!1つづつしか投げてこないから小太刀で受けてられるが、めんどくさい!

 

「よし識別できた、表示は『キラーモンキー』か」

 

 しかしさっきから投げてきてるのなんなんだこいつ。

 気になったので次に投げてきた奴は意識的に斜め前に弾く。識別してみると結果は、[イゴの実]?なんだそりゃ。

 キラーモンキーが投げてくるイゴの実を避けたり、弾いたりしながら識別すべく、注視する。

 どうやらイゴの実は外皮がとても硬く、なめすことで盾がわりにもなる木の実らしい。固い殻に守られた中身はとても甘く庶民の甘味として広く親しまれている、とある。

 いくら固いとは言え木の実とぶつかって折れるナイフって一体……と思わなくもないが小太刀でも弾く以上相当固いのだろう。猿の投擲力と相まって当たれば結構なダメージなるだろう。

 

「しかしキラーモンキーと言う割に投げてくるのは木の実とは名前負けしてるなこの猿」

 

 すると何を思ったのかキラーモンキーは木の上から器用に地面に着地。そして背中に背負っていた長剣をスラリと抜き放つ。っておいマジか!

 

「キキッ!」

 

「う、おっ!」

 

 たかが猿と思うなかれ、その踏み込みは人間よりも遥かに強い。

 加えて明らかな素人剣術でただ上段から振り下ろしてくるだけだが、それでも刃物が迫ってくるのは中々に恐怖心を煽る。

 振り下ろした剣を避け、首を断ち切る……マジかこいつ避けやがった。

 前言撤回、確かにこいつキラーモンキーだわ。初心者エリアとは思えない動きをしてきやがる。距離が離れている間は木の実で牽制、倒せればそれで良し動きが鈍れば飛び降りて隠し持っていた長剣で近距離戦か。アルプロのAIはこんな所も凄いなぁおい!

 

「しかぁし!まだまだ及ばんよ猿ぅ!」

 

 やべえテンション上がってきた。序盤の猿でこんだけ強いんだ。こりゃ本当に期待できるぞ。

 気迫に怯んだか少し動きの鈍ったキラーモンキーの振り上げをクイックムーブで余裕を持ってパリィ。そして、クロスカウンター。キラーモンキーは首を真っ二つにされポリゴンになって爆散した。

 初めてアーツを使ったが体が強制的に動くタイプじゃなくてシステムが補助するタイプか。ある程度アーツ発動中も体の自由がきく代わりに自前のリアルスキルが必要になるパターンだな。

 

「ドロップは[欠けた長剣]か。一応サブウェポンとして持っとくか」

 

 耐久値もまだ半分ほど残っている。これならまだ使えるだろう。

 よーし、じゃあこのまま森の探索と行きますか。

 あっ、イゴの実拾っとこ。

 

 




クララ「今回は戦闘システムについてです」

クララ「プレイヤーがモンスターを倒した場合にプレイヤーが手に入れるのは経験値とドロップアイテムです」

クララ「アルカディア・プロジェクトではジョブのLvの合計値がプレイヤーLvです。例えば戦士Lv10、魔法使いLv10のプレイヤーがいたらその人のLvは20です」

クララ「現在就いているジョブにのみ経験値は加算されます。ドロップは完全に確率です。一部のものに関しては100%で固定ですが」

クララ「モンスターは人間などの自身の種族と敵対しているものを発見した場合基本的に襲ってきます。ある程度知能のある個体の場合格上には挑まない事もあります」

クララ「ちなみにロータスが戦ったキラーモンキーはあの森の中でのレアエンカウントエネミーですね。その分強いです」

クララ「では今回はこの辺で失礼致します」
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