ノーマルクエスト『森の暴れん坊』はアルカディア・プロジェクトを人間国ストルタスで始めたプレイヤーが一番始めに体験するであろうエリアボスが出現するクエストである。故にその難易度はそこまで高くない。ーーもしそれが普通の『森の暴れん坊』であれば。
「ネオン!その子から絶対に目を離すな!」
「なんでこんな範囲攻撃連発してくるっ!」
「ヘイト稼ぐのが限界に近いっ!」
「[シールド]![エリアヒール]![ディフェンスエンチャント]!ダメですっ、これ以上はターゲット貰っちゃいます!」
「おい!
「無理に決まってんだろぉーがぁー!!」
クエスト開始から30分、パーティーは敗走ギリギリまで追い詰められていた。
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遡ること30分。場所は王都エターリア近郊の平原に移る。
「『森の暴れん坊』はエターリアのすぐ側にある森がテリトリーの中型モンスター、『エルダーエイプ』の討伐が目的のクエストだ」
「このエルダーエイプって普通のエリアにも出てくるんだけど森を抜けようとすると絶対に追ってくるんだよな」
「でも、このクエストを受けるとエルダーエイプが追って来なくなるんです。正確に言うとそのクリア報酬を持っていると、ですけど」
「つまり、そのエルダーエイプを倒さない限り森を抜けるのが難しく、クエストをクリアすればその手間が無くなると」
「そういうことだ」
平原を四人で歩きながら
「ちなみにこのクエスト、初心者の登竜門的なものでもあるから結構人が多いわ。まあ今日は平日だから平気だと思うんだけど」
「確かに周りにも人が多いな。全員プレイヤーか?」
「た、多分ですけどクォーレの人も居ると思います。
「そんなに居るのか!?」
「王都エターリアだけで500万人の人口だ。多分アルカディア全体で2億くらいの人口だろうからな」
「におくぅ!?」
その桁違いの人口に思わず叫んでしまう。
そんなのサーバが耐えられるのか?いや、それより管理しきれないだろ。
「ああ、私達も同じ事を思ったよ、だけど確かめようもないし、アルプロならもしかしたらっていう思いもある」
確かに。いくらVRの技術が進んだとはいえ、
まるで
「それにしても……ププッ」
「……なんだよ」
「いや、別っ、に笑ってる訳じゃ」
「どう見てもにやけてるだろうが!トト姉は表情に出過ぎだ!」
「だって……あまりに似合って……ププッ」
「笑うな!」
「えっと……私は、可愛いと思いますよ?」
「ネオンまで……」
二人が言っているのは、『名無しの南瓜』の事である。
見せた時は「
まあ確かに?自分でもシュールな絵面だろうなとは思うけど、そんなに笑う事無いんじゃ無いか?
「でもさ、やっぱその南瓜やばい代物だよ?」
「はぁ……クリップに散々言われたよ」
「結構、噂になってるみたい、です」
「ついにアルプロに1000万人目のプレイヤーが現れたってね。掲示板とか見てみろよ。凄えことになってるぞ?大手クランが情報に金出してる」
「めんどくせぇ……」
俺はもっと楽しくゲームをやりたいんだ。そんな面倒そうなクランの連中になんて構ってられるか。
「まあでも黙ってればバレないだろ?」
「まあね。
「わかった。気をつけるよ」
「おっと、二人ともそろそろ森だ。こっからはちょっと気を張らないとダメージ負うぞ」
クリップの言葉でようやく森の手前まで来ていることに気がついた。確かにここからは前衛である俺たちも気をだらけさせている場合では無いだろう。
ちなみに平原のモンスターはクリップが全部魔法で近づく前に爆散させてた。レベル差って酷い。
「『森の暴れん坊』の対象エリアはもうちょっと奥だ。さっさと抜けるよ」
そして、クリップのその言葉をキッカケに、蹂躙が始まった。
「[ヘビースラッシュ][クロススラッシュ][グラウンドスラッシュ]」
「[ウインドショット][ウインドブラスト][ウインドアロー]」
「[アジリティエンチャント][ストレングスエンチャント][浄化の光]」
「まるで、戦車が通った後みたいだなおい」
取り敢えずプレイヤースキル云々じゃないキャラクターとしてのLvが全然違う。俺のやる事が全く無い。木をなぎ倒しながら進むトト姉の後をみんなで進むだけだ。
「そろそろクエストエリアだ。エルダーエイプが来るぞ」
森に入って5分足らず、トト姉がパーティーを止める。
そこは少し開けた森の空白とも言える場所だった。
「いや、ちょっと待てトト姉。なんかおかしくないか?」
「ん?……確かに、こんなに開けた場所では無かった筈……」
「あっ、あれ!見てください!」
ネオンの指差すのは森と空白の間部分、そこに銀色の毛並みの巨大なゴリラが傷だらけで倒れていた。
「エルダーエイプ?何故倒れている?」
「俺たちの他には殆どプレイヤーはいなかったしクォーレも見てない、じゃあ誰が?」
クリップが疑問を投げかけたその時、俺はあるものを見た。
その時の事を俺は絶対に忘れないであろう。10年先も死ぬ時まで、ずっと。それは、まさしく運命といえる出会いで、その運命はこの時この瞬間に決まっていたのだろう。
この出会いは俺の、ひいてはアルカディアのこの先を決定づけた第一歩に間違い無いのだから。
「女の子……?」
エルダーエイプのすぐ側に女の子が倒れている。年は12〜3歳だろうか、明らかに日本人離れした顔立ちとその服装からプレイヤーではないと思われる。勿論外国人プレイヤーという線も残ってはいるが、それでもあのくらいの歳の女の子が一人でこんな所に来ることはそうはないだろう。
「ネオン、回復を!」
「っ、はい!」
慌てて四人で駆け寄る。近づくと怪我をしている様子は無い様だ。しかし意識は無い。側のエルダーエイプは既に事切れており、間もなくポリゴンになって爆散した。
「取り敢えず命に別状は無さそうです。怪我らしき怪我もありません、HPも全快ですね」
「そうか、良かった。でも何だってこんな所に、これも『森の暴れん坊』のクエストなのか?」
「……」
「トト姉?」
「っ、いや済まない。考え事をしていた。ロータスの質問だが、答えはNOだ。『森の暴れん坊』はただ単にエルダーエイプを討伐するクエスト。そもそもノーマルクエストに民間クォーレが絡んで来ることなど殆ど無い」
「待て待て、何で民間人って分かるんだ?」
「体つきもまだ子供、魔法を使えそうなレベルでも無い、武器も持ってない。この子は戦闘なんて出来ないよ」
なるほど、一理ある。でもだったらなんでこんな事に?
「先を越されたか?」
「それはない。あまりにエルダーエイプの死体が無くなったタイミングが良すぎる。まるで私達に発見されてから……そうか」
「トト姉?何か気がついたのか?」
「全員、取り敢えずここから離れて森の茂みにまで行こう、そこで作戦会議だ」
その真剣な表情を前に誰も反対する者は居なかった。
「んで?何に気がついたんだよ」
「全員、クエストウィンドウを開け」
「あっ」
「ネオンも気がついたか」
「はい、ユニーククエスト、ですね?」
「ああ、多分私達の誰かが踏んだぞ」
そんな会話を横目にトト姉に言われた通りクエストウィンドウを開く、そこには俺が今受けている『森の暴れん坊』と『鉄の森』それに、もう一つ。
「ユニーククエスト『限界村落の村娘』?」
「ロータス、お前か……」
そこには確かにユニーククエストの文字が。いや、でもいつ?俺受けた覚えが無いぞ?
「ユニーククエストは本人の意思とは関係なく、ある一定の条件満たす事で始まるんだ。今回はロータスの条件が『森の暴れん坊』の受注だったんだろう」
「なるほど……っておい!これ推奨レベル70って書いてあるんだけど!?」
「まじかよ、俺らの平均レベルじゃあ格上だぞ」
「不味いな、一旦撤退するか?クエスト名からしてその少女が鍵だろう。身元不明のクォーレを街に連れ込むのは賭けだが、おまけに意識不明と来た」
「そうは、させてくれないみたい、です」
ネオンがおもむろに森の空白を睨む。
そこに居たのは、緑色の巨大なトカゲ。そう形容できる何かであった。というよりあれって……
「……シャドウリザード」
「ドラゴン?」
「ドラゴンでは無いが、レッサードラゴンなんかよりもよっぽど強いぞ。森の影に隠れて鋭い爪で切り裂いて来る」
……面倒な。だから
「う、うぅん」
「あ、起きましたよ」
「こ、こは?お兄ちゃん、誰?」
丁度体勢的に俺が抱き抱える形だったので、女の子が俺の名前を尋ねる。
「俺は、ロータス。君は?」
「私?私は、レベッカ。あっ、そうだ!私月根草を取りに来たんだった!」
「あっ!ちょっと待って!」
「ひゃう!」
いきなり駆け出そうとした少女、レベッカの襟元を掴んで引き止める。少し苦しそうな声を出したが、直ぐに顔が青くなった。多分その拍子にシャドウリザードを見たのだろう。
「あ、あれ、森の主……なんで?もうずっと奥の方にいるから安全だってお爺ちゃんが言ってたのに……」
森の主?という事は少なくともレベッカとお爺ちゃんとやらはシャドウリザードがこの森にいる事を知っていた?
俺は素早くみんなとアイコンタクト、意思の疎通を図る。みんな大体察してくれたようだ。流石、伊達に長い間付き合ってないぜ。
「レベッカ、よく聞いてくれ。俺たちは
「わ、私は村から、来たの」
村?ここら辺に村なんてあったか?みんなも首を振っている。どうやら知らないらしい。という事は俺のユニークが引き金になった可能性が高いか。
「わかった。そこまで案内してくれ、俺たちが護衛する。大丈夫か?」
さっき見た時に『森の暴れん坊』はクリアになっていた。エルダーエイプの討伐は(シャドウリザードが)果たしたからだろう。その代わりにシャドウリザードを相手にする羽目になっているが。ユニーククエスト『限界村落の村娘』のクリア条件はレベッカを無傷で守り抜いての『森の暴れん坊』のクリア。
言い換えれば、レベッカを守り抜いて安全地帯まで駆け抜けろって事だ。この無傷で守り抜いてって所がミソで、このクリア条件なら発生と同時にクリアでも問題なく思えるが、レベッカを安全地帯まで送り届けないとこのクエストは終わらないらしい。
「うん、わかった……お兄ちゃん、大丈夫?」
「おう、お兄ちゃんに任せとけ」
撤退戦の始まりだ。
フルティア「今回は私の担当、装備について詳しくやるよー!」
フルティア「固有装備の中にはいくつかの種類に分かれてるの。武器はプレイヤーと共に成長するから千差万別なんだけど、防具は大きく分けて3つ」
フルティア「一つは神秘防具、これは前にクララ姉さんが説明した通り、アルカナボスを倒した時に得られる最高の勲章。二つ目は記念防具、クララ姉さんのお気に入りのロータスが持ってる『名無しの南瓜』とかそう言うのだね。何かの記念を達成した人にあげてるよ。三つ目は古代防具、ながーいアルカディアの歴史でずっと残り続けた防具が変質したものだね。これには私は関わって無いからよく分かんないけど」
フルティア「殆どの固有装備は私が全部作ってるんだよー?すごいでしょー、えっへん」
フルティア「じゃあ今回はここまで、バイバーイ」