重いスーツケースを載せたカートを押しながら、大変混み合っている駅を進んでいく。あの、白い髭のダンブルドア・・・教授とやらが大量の金貨と一緒に置いていった手紙を片手に。それにしても・・・
「9と4分の3番線って、どこにあるんだ?」
落ち着いて考えてみよう。9と4分の3番線というからには、9番線の柱と10番線の柱の中にある、4本の柱の内の3本目の柱に入口があるだろう・・・多分。一瞬、騙されたのかと思ったが、すぐに可能性から消す。孤児をわざわざ騙すような奴は流石にないだろう。メリット無いしな。
一応、調べてみることにした。その柱に恐る恐る触ってみる。すると、指先が消えた。慌てて引き戻したが、指先は特に変化はない。
「・・・という事は・・・?」
つまり、ここが入口だという事なのだろう。カートと一緒に、入っていった。勿論、周囲に見ている人がいないことを確認してから。
そこは、僕と同じ様なカートを押した、少年少女がウロウロしていた。汽車が停まっていて、どんどん乗り込んでいく。僕も、別に別れを惜しむ人もいないので、乗り込む。
適当に奥の方に腰を下ろして、窓の外を眺め始める。別れを惜しむ親たちが沢山いる。と、汽車が動き出した。もう入ってくる人もいないだろう。と、そう思ったら。
「こんにちは。ここって、空いてますか?空いてますよね。あなた1人しか座ってないんだから」
ガラッとコンパートメントのドアを開けて入ってきたのは、茶髪に青い瞳の普通の顔をした少女だった。その少女は、流れる様な動作で椅子に座り、そして言った。
「私、アンダルシア・ドルチェ。よろしくね」
どうやら、自己紹介をしているらしい。僕もつられて言った。
「・・・・僕は、トム・リドル」
「よろしくね、ト・・・」
トム、というつもりらしい。あまり、この名前は好きではない。だから、言った。
「トムじゃなくて、リドルと言え。それから、タメ口じゃなくて敬語を使え」
「は、はい、分かりました。リドルさん」
その少女の顔を見ると、今ではもう見慣れた顔、驚きと警戒を混ぜた様な表情をしている。窓の外に目を移し、
「よし」
自分で自分が嫌になるな、なんか。少女__アンダルシアは、それっきり話しかけてこなくなった。それをいいことに、頬杖をついて、窓の外を眺め続ける。
そういえば・・・どうやら、僕の母さんか父さんは、魔法使いだったらしい。いや・・・母さんは違うな。もしも魔法が使えたなら、今でも生きているはずだ。死んでいないはず・・・。ホグワーツに行けば、なにか手がかりが得られるかもしれない・・・そう、何か手がかりが・・・。
「なにか欲しいものはある?」
そんなことを考えていたら、突然カートを押したおばさんがドアを開けた。もう12時か。お菓子は、なにも買わないつもりだった。ナギニだって、孤児院にいた時に貯めた金を使って買ったものだ。菓子なんか買う余裕はない。
「はい。え〜っと、蛙チョコに、かぼちゃパイに、かぼちゃジュースを2本に・・・」
前に座っていた少女が、沢山のジュースやらお菓子を買い込んで椅子にどさっと落としたときは、びっくりした。
「・・・そんなに食べるのか?」
「はい。あなたの分もありますよ」
「べつに。腹減ってないし」
そう言った瞬間。ぐぅぅぅぅと鳴った。それを聞いて、アンダルシアは、微笑みながらジュースの瓶を差し出してきた。
「お腹減ってるでしょ?ほら。かぼちゃジュース」
「・・・うん」
一応受け取っておいた。蓋を開けて、一口飲んでみる。孤児院で飲んだ、あのクソまずいスープよりも、何倍も美味しい。こんなもんがあったんだな。まぁ、ここは魔法界らしいから、当たり前かもしれないが。
ん?変な色の箱が置いてあった。それを見ながら言う。
「何これ?」
すると、それに気づいたらしいアンダルシアが言う。
「それ、百味ビーンズですよ。色んな味があるんです」
「ふーん」
箱から一個取り出した。どうやら、ゼリービーンズのようなものらしい。口に入れてみる。とたんに、僕を襲ったのは・・・
「うぐっ」
今まで食べたことがないぐらい強烈な味だった。
「何だよこれ⁉︎」
「え?」
表情で気づいたらしいアンダルシアがちょっと笑いながら言う。
「あ、これミミズ味ですよ」
「げっ」
ミミズ味?
「はい、ティッシュ」
アンダルシアがティッシュを1枚取り出し、手渡してくれた。急いで口の中のものを出す。
「おえっ。ひどいもん食っちまった・・・」
まじで。それを見たアンダルシアが悪戯っぽく笑いながら言った。
「見てません、見てません。私は何にも見てないです。目の前の少年がティッシュにお菓子戻したとこなんて、見てませんよ〜」
軽めに睨みながら言う。
「む〜〜〜。お前は、何食べたんだよ?」
「え〜っと、イチゴ味に、チョコ味に、砂糖漬け果物味に、パイナップル味、クリスマスケーキ味と、わたあめ味・・・」
なっ・・・。
「なんで、そんなにあたりがいいんだよ」
「日頃の行いがいいからじゃないですか」
と、アンダルシアは笑いながら言う。
「もういい。違うの食べる」
子供っぽいと思いながらも、そう言った。今度は、「蛙チョコ」と書いてある箱を取って開ける。
「うわっ」
突然茶色っぽいものが飛び出てきて顔に貼り付いた。それを剥がしながら言う。
「何なんだよ」
さっきから。
「チョコですよ、ほら」
アンダルシアも箱を開け、中身を出す。途端に逃げようとするが、少女の方が速かった。捕まえ、頭を食いちぎった。ここら辺でさっきの仕返しをしてやるかと思い、口を開く。
「あ〜、僕は見てない見てない。目の前の少女が蛙の頭を食いちぎったとこなんて、見てないぞ」
そう言うと、半目で見てきた。
「・・・絶対、さっきの仕返ししてますよね」
「べっつに〜」
目を泳がせながら言う。
ほぼほぼ食べ終わった。
「リドルさんって、蛇飼ってるんですね」
「ああ。ナギニだ」
「私も飼ってますよ、リスザル。アナシアっていう名まえの、女の子です」
と、アンダルシアはケージを指差しながら言った。大きなキラキラした瞳のサルを。片頬で笑いながら言う。
「いつか、ナギニに食わせるぞ」
「んな・・・」
アンダルシアのガビーン!という顔が面白くて、笑みを深める。
「そういえば、教科書って読みました?」
「ああ、勿論。全て覚えた」
「凄いですね・・・」
「当然だ」
「いやいやいや・・・」
時計を見る。あと30分程で、ホグワーツに着くらしい。
「もう少しで着きますから、着替えたほうが良さそうですね」
「めんどくさ」
「えっと・・・じゃあ、先に私が着替えますから、ちょっと外で待っててもらえますか」
「分かった」
素直に出る。それがマナーだと思うから。ドアに寄りかかって待つ。意外に早く、5分ほどで着替え終わったらしい。
「入って良いですよ。今度は、私が外で待ってますね」
「ああ」
アンダルシアは、リスザルの・・・アナシア?を連れて外に出る。入れ替わりに中に入り、扉を閉めてからトランクから制服を出す。今まで来ていた服は、きちんとたたんでトランクにしまう。15分くらいで着替え終わった。
「入って良いよ」
と、声をかけると、アナシアを連れたアンダルシアが入ってくる。
「荷物まとめましょう」
はいはい。そう思いながら、トランクとケージの鍵をしめて、降りる準備をする。
そして、それからすぐに着いた。少々頑張りながら荷物を持って、汽車を出る。
「1年生はこっちに集まって!!」
先生らしき人物が声を限りに叫んでいる方に向かう。
「1年生は、全員集まりましたね。では、これからホグワーツ城に向かいます」
そう言って、歩き出す。何分か暗い道を歩くと、湖のほとりにでた。
「では、4人一組になって、船に乗ってください」
適当に近くにいた人と乗る。
「えっと・・・こんばんは。私、アンダルシア・ドルチェっていいます」
「私は、ベラトリックス・ブラック」
少々ボサッとした黒い髪の女の子が言った。
「俺は、ルビウス・ハグリッドだ」
11歳にしては体格が大きい少年が言う。
「・・・僕は、トム・リドル。リドルと呼んでくれ」
視線を合わせないようにして言う。
反対側の岸に着く。先生に連れられて、大広間に入る。引率の先生の話によると、ABC順に名前を呼ばれ、4つの寮に組み分けされるらしい。
アンダルシアも最初の方に組み分けされ(スリザリンだった)つい僕の番になる。中央の椅子に座り、恐る恐る古ぼけた帽子を被った。頭の中で声がする。
「君には・・・他の人にはないような才能がある」
ほう。これは面白い。まぁ、僕は蛇と話が出来るから、その事を言っているのだろう。そう思いながらも、返答する。
「では、その力を最大限に活かせる寮に入れてくれ」
「・・・分かった。では・・・スリザリン!」
僕の寮が決まった瞬間だった。
拍手に包まれながら、スリザリンのテーブルにつく。すると、間髪入れずにアンダルシアが話しかけてきた。
「同じ寮でしたね」
「そうだな」
「私、本当の友達が出来る寮って言ったんですよ。もしかすると、リドルさんのことかもしれませんね」
アンダルシアが満面の笑みで言う。
「・・・あっそ」
それから校長先生の挨拶に入り、食べ物が目の前のお皿に現れた。皆、次々に食べ物を取って、食べていく。僕も皿に食べ物を取る。
「美味しいですね」
「・・・うん」
そこで、ゴースト「血みどろ男爵」の登場。・・・第一印象は最悪だった。名前の通り銀色の血まみれで、気持ち悪い。
歓迎会が終わり、それぞれの寮に行く時間になった。
「行きましょう、リドルさん」
「あ、リドルじゃなくて、トムで良い。敬語も使わなくて良い」
そんな台詞が、口をついて出てきた。アンダルシアの、大きな瞳がまん丸くなる。
「どういう心境の変化ですか?」
「なんとなく」
「そうですか」
「敬語使わなくて良いって言ったのに」
「癖になっちゃったんで。だんだん抜けてくると思いますよ」
監督生に連れられ、地下の寮に向かう。湖の中にあるらしい。ランプが緑色だ。まぁ、薄暗いから、ナギニも喜んでくれるだろう。
「綺麗ですよね」
「・・・ああ」
一応同意する。
そこから男子寮と女子寮に分かれ、部屋に入る。2人部屋で、僕はレストレンジとかいう男子生徒と相部屋だった。
「よろしくな」
レストレンジが、人懐っこそうな笑顔で言った。それにつられて言う。
「よろしく」
まぁそれ以上話す事も無かったので、寝巻きに着替え、無駄に豪華な天蓋付きベッドに入る。ふわぁぁ・・・孤児院のベッドの数倍は良いベッドに包まれ、あっという間に眠りに落ちた。
次回も大分遅れると思います。まぁ、夏休みに入ったんで、ちょっとはマシになる・・・かなぁ?と思っています!