武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2-お嫁さんを買いました- 作:belgdol
「今回の試合は地味ながらも着実に勝ち星を拾っている柴田勝&プルミエのコンビと、完全新人!魔星頑駄無&レイットのコンビだ!それでは両者ピットインをお願いします!」
慣れた様子の柴田はそのまますいーっと観戦スクリーンの角のほうにある四畳半ほどの個室に入っていってしまったが、マスターは大人しく係員が誘導してくれるのに従った。
どうも柴田が入っていった個室とは対角線上にある部屋に入れられるようだ。
そして、中に入ればそこにはヘッドギア付きの座席と、神姫サイズのリフトが合った。
「お客様、このバトルシミュレーターについての説明は必要ですか?」
「あ、うん。お願いします」
「では、まずマスターである貴方にはその椅子に座ってヘッドギアを装着していただきます。その後神姫にこちらのリフトの上で武装を展開していただき、コストオーバーなどが無いかのチェックとバトルで使う武装の登録をしていただきます。なお、この時に同時にライドオンも行われ、視界が神姫の物になりますが落ち着いてくださいね」
「解りました」
「そこまでできればあとは実地、実際のバトルあるのみです。実体のよううな判定のある半電子空間での刺激的なバトルをお楽しみください」
「半電子世界というのは……」
「簡単に言うと、ホログラフによる仮想バトルフィールドにおいて、障害物などの足場や障害物になるオブジェクトに触れますと、データ的に神姫の動きを制限する場、という事になります」
「え?じゃあ空中にある障害物とかってどういう判定になるんですか」
「シミュレーターに備えられている斥力発生装置で、随時シミュレーター上の神姫の状態に合わせて足場を足場などの判定を発生させます」
「……凄いな」
「大まかな説明は以上になります。時間制限によるタイムアップなどもありますが、そちらは試合中に神姫に確認すれば、随時応答してくれるはずです。それでは良い神姫バトルを」
「ありがとうございます……ん、これかぶるだけでいいのか」
「はいマスター。ヘッドギアの装着をお願いします」
「いいよ。それじゃあ早速」
レイットに促されてマスターは大きなバイザーのついた、少し重いなと感じるヘッドギアを装着する。
すると、レイットはさらにバイザーを降ろすように求めてきたのでバイザーを降ろすと、カチリという音と共にバイザー画面に「神姫のリンケージ回線開放待ちです」という文字が表示された。
その事をマスターがレイットに伝えると、それではリンクを始めますね、といい、視界が一気に変わった。
いきなり視界に移った無骨な合金製のリフトの姿に視界を左右に振ろうとするが、視界は動かない。いや、首は振っているのだが風景が変わらない。
多少混乱しているとヘッドギアのイヤフォンから耳の中に直接流れ込むようなレイットの声が響く。
「すいませんマスター。現在頚部の制御はこちらが取っていますので、視界は動かないと思います。少し私の体を動かしてみますか?」
そう訊ねるレイットがマスターの側を向いたのか、視界に椅子に座って黒いフルフェイスのヘッドギアを被った自分の姿が映る。
「い、いや。試合ももう始まるし。後は試合場で少し試させてくれれば十分だよ」
「解りました。それではライドバトル、レディオッケーですね」
「ああ、オッケーだよ」
「では」
言葉と共にレイットがリフト内で輝いていた青のSTAND BYと書かれたボタンの下、READY OKと書かれた赤いボタンを押す。
するとマスターの視界の中でリフトがゆっくりと動き始める。そして何時しか足元の方から輝く闘技場への花道へと出ると、シミュレーターという箱の中に居るとは思えない空間の広さに感嘆する。
今回のフィールドはむせる様な砂嵐が吹き荒れそうな、石柱や飛行機のような物が埋まり、中央が砂丘になっている砂漠だった。
「レイット。この戦場って……」
「ランダムバトルだから戦場もその場に立つまでわからないんです。落ち着いてください。始まりますよ」
「う、うん」
レイットの言葉と共に、彼女の視界に映されるRIDE ONの文字、それがすぐにREDY GO!に変わる。
「は、始まった?」
「マスター。落ち着いてください。すぐに敵とは接触しません。それより今のうち少しでも私の動きをイメージしてください、私はそれにあわせるように動くチューニングを行います」
「わ、解ったよ」
すっとマスターは昔見たカンフー映画で見た演舞のような動きをイメージする。
すっと拳を突き出すと共に足を突き出し右半身を前にする、その姿勢から円を描くように腕と足を引き、元の姿勢に戻る。
それを左右で繰り返し、腰を入れて正拳突きや回し蹴りをする、という漠然としたイメージもレイットが補助してそれを実現する。
「凄い……本当にレイットと一体になったみたいだ」
「うふふ。ですよね。できればこれでマスターもライドバトルにはまってもらえると、私もマスターと一体になるバトルが出来て嬉しいです」
嬉しそうに言うレイットに、「ああ、彼女も『武装』神姫なんだなぁ」と、普段の穏やかな彼女に秘められた闘志にそのもともとの存在意義を感じる。
彼女はお嫁さんでもあるが、その根底にはきちんと戦いを楽しむ心があったのだなぁと感じいる。
そんな事を考えていると、レイットのレーダーが接近する物体を捉える。
マスターはそれを映像では見れないが、感覚として漠然と感じた。
「来ましたマスター。まずは私の自由にして様子見でよろしいですか」
「ああ、頼んだよレイット。俺はしばらく観戦させてもらう」
接近してきたのはプルミエは殆ど素体そのままの姿で、その姿にマスターは一瞬動揺するが、すぐにその理由に行き着く。
単純な理由は資金力だろう。
恐らく柴田は小学生、お小遣いなり、誕生日プレゼントで神姫を手に入れたのだろう。それならば武装が無い事には用意に説明がつく。
マスターが購入したトンファーは比較的安い部類に入るが、それでもsptから円に換算すると3,000円を越す。
小学生にはちょっとした金額だ。
そしてバトルをするにはお金が必要だ、その分のお金もやりくりしなければならないのだ、小学生のマスターは大変だろう。
そんな事を思いつつも、マスターは手加減する気はない。
変に同情して手加減などすれば、真面目にバトルをしてきた柴田やプルミエに失礼だろうし、自分の経験にもならない。
だから心を澄ませてレイットの動きを邪魔いないように精神を統一しようと試みた。
一方、そんなマスターの内心を他所にリアパーツが無い為、体重の軽いとっとっとという音を立てて砂の上を駆けて来たプルミエはハンドガンの武装を展開して射撃を開始する。
レイットはその射撃を冷静にリアパーツによる低空機動で滑るように回避する。
しかしプルミエもそんな機動をされる事の経験があるのか、立て続けに狙いを僅かにレイットから外して撃ち、僅かに誘導する光弾と自らの体をレイットに向けて走らせる。
「マスター、格闘戦のお誘いです。どうしますか?おそらく相手のペースに乗せられていますが」
「ん。こっちも装備しているのは格闘武装だ。乗ろう」
「了解です」
ハンドガンからの光弾を前進して回避したレイットはトンファーを展開し、右手のそれを振るう。
やや大振り気味だったそれをプルミエは新たに展開した小剣で捌こうとして失敗したのか、姿勢を崩す。
レイットに対して左側へ体を泳がせたプルミエのボディを狙ってレイットがトンファーの柄を叩きつけようとするが、プルミエは流れに逆らわずそのまま左前方へと思い切り飛び込んで前転しては寝起き、レイットに向き直る。
それを捉えていたレイットはリアパーツで足を宙から浮かすと、芯地旋回ですばやく対象を捕捉すると再び大地に足をつけ、やや遠い距離からトンファーを振るい、拳側のほうの柄が短く、肘側が長いトンファーをくるりと回してプルミエの顎を狙う。
プルミエは今度は姿勢を崩すまいとその攻撃を力強く受け止めるが、そちらに意識を割きすぎているように見えた。
だからレイットは今度こそ空いた胴にトンファーの一撃を加えようとしたのだが、プルミエの方が一枚上手だったようだ。
トンファーを受け止める左手の小剣をそのままに、右手にハンドガンを展開するとその銃口をレイットに向けた。
撃たれる!そうレイットが思った時、マスターの意志が流れ込んだ。
レイットはそれに従いリアパーツでバレエのように体を回転させながら半円を描くようにプルミエの前から移動すると、回転の力を加えたトンファーの一撃をハンドガンを持つプルミエの腕に叩き込んだ。
「うっ!」
「プルミエ!?」
「大丈夫ですマスター。私の頑丈さは、マスターもご存知でしょう」
「……うん。そうだねリアパーツの差が出たから、対策を考えないと……
「任せてください、何とかします」
僅かに言葉を交わした柴田とプルミエ、二人の闘志は装備の格差を目の前にしても衰えなかった。