武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2-お嫁さんを買いました-   作:belgdol

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バトル終わって、の巻き

 ひとまずの打ち合いを終えたレイットとプルミエは、その後は小細工は要らないとばかりにトンファーと小剣を打ち合わせ始める。

シミュレーターはその殆どをガードと判定していたが、徐々に両手で攻め立てるレイットに対してプルミエが片手に持つ小剣だけでは対処が出来なくなって行った。

ハンドガンは弾を撃ち切りリロード待ちもあったが、それ以上にレイットのトンファー捌きに古典映画リベリオンのようにガンを用いた近接格闘銃撃術を使うというところまでプルミエは至っていなかった。

精々トンファーの打撃に対する盾や、牽制の射撃を行う程度だったが、その内元々他の武器と直接撃ち合わせる物ではないハンドガンの耐久力が尽きてホログラムで爆発演出がなされると強制格納された。

こうなってしまうとジリ貧である、リアパーツが無い為Life Pointに劣るプルミエは武装の差に押されて負けてしまった。

 

レイットの視界にYOU WINという勝利宣言が表示された後、シミュレーターの映像が消え、ただの四角い白い箱となったバトルフィールドで、シミュレーターからの動作干渉によって倒れていたプルミエが立ち上がる。

 

「はぁ、負けちゃいましたね」

「いえ、武装の差が無かったら多分負けていたのは私でした」

「レイットさん、今日が始めてのバトルとは思えないトンファー捌きしてたよ」

「実はアレを買ってもらった日から神姫ネットで武術関連の動画を見て私なりに研究を……」

「なるほど。シミュレーションはばっちりということですか……と、これ以上ここで話し込むわけにはいかないですね。でましょうか」

「はい。それではまた後ほど」

 

 挨拶を交わすとそれぞれ自分が出てきたリフトの搬出口に向けて歩き出す。

そしてリフトに乗ってマスターの元に戻ったレイットを迎えたのはマスターの優しい手だった。

リフトが上がりきってマスターの事を呼ぼうとしたレイットの体を、マスターの手が優しく持ち上げる。

持ちあげた手に腰掛けるように促したマスターはレイットの髪をさらさらと撫でた。

 

「お疲れ様レイット。良く頑張ったね」

「ありがとうございます。マスターも、咄嗟にイメージを送ってくださってありがとうございます」

「ん、ああ。あれはね。昔やってたゲームで自機が滑るように敵の対して回り込んで攻撃するシーンがあってね、リアパーツの機動があれば出来るかなと思ったんだ」

「そうでしたか。マスターはバトル、楽しめましたか?」

「うん。凄い迫力だった。アクション映画は結構好きだからね。まさに目の前で火花散る戦いを見れたのはよかったね」

「そうですか。それなら私も嬉しいです。マスターの嬉しい事は私も嬉しいですから。あっと、それから外でお相手の柴田勝さんやプルミエさんと話しませんか?」

「話せるのかい?」

「バトルをした後は対戦相手と軽い雑談をするのも楽しみの内ですよ」

「……話さなきゃダメ、かな?」

「マスターがあまり話したくないというなら無理にとはいいませんけど……バトルをしていくならこの先もお付き合いがあるかもしれない相手ですから。きちんとした方がいいと思います」

「解った。実を言うと殆ど試合はレイット任せだったから、何を話せばって感じだけど」

「これも経験ですよ。行きましょうマスター」

 

 手の中から飛び出し、背中を押すレイットに促されるままにピットからでると、そこには柴田とプルミエが待っていた。

二人に対して大人のマネーパワーで買ったという負い目があるマスターはぎこちなく挨拶した。

 

「や、やぁ柴田君。試合お疲れ様。レイットの動きはどうだった?」

「試合ありがとうございましたお兄さん。レイットさん強かったね!」

「うん。そうなんだ。強いのはレイットで俺は殆ど何もしてなかったからね」

「え?でも途中の回り込み攻撃はレイットさんのパターンとは明らかに違うってプルミエがいってたよ」

「あ、ああ。アレは一応……俺が昔やってたゲームを参考にイメージしたらレイットがやってくれた。やっぱりレイットの力だよ」

「そんなこと無いよ。ああいう咄嗟のアレンジを入れてあげるのがマスターの役割みたいなところあるよ」

「んー。じゃあ柴田君がアレンジを入れた部分ってあったのかな」

「えへへ、実は僕も自分が操作を受け持ったのはハンドガンで挟み込むように弾を撃ったのだけ。後はずっとプルミエが」

「ははは、そうなんだ。お互い神姫に頼りっぱなしだね」

「そうなんだ。僕もなんとかプルミエの力になってあげたいんだけどなぁ」

「そうだねぇ」

 

 いざ話してみると、やはり同じ神姫を扱う者同士ということなのか。

年齢の壁を越えて話が弾む。

それはレイットとプルミエが見せた武装の捌き合いにいつかマスターである自分が介入できるようになる日は来るのかなといった事だったり。

貰えるsptが120程度で、勝てば一回300円程度なら勝率3割でも元が取れるようになってるね、といった神姫に関する実利的な事だったり。

とにかく神姫を中心に話が進む。

そのことに機嫌が良くなっていたマスターだが、柴田少年に「こういう風に話が出来る相手は珍しいから嬉しい」と言われて少し固まった。

 

「えっと。珍しいの、俺みたいに話せる相手」

「うん。なんていうかなー、神姫への愛情過多っていうか、軽い挨拶した後は神姫とのプチコントみたいなやり取りだけしていっちゃう大人の人結構いるよ」

「は、はは。それは大変だね……」

「まぁ僕もそういう人と実際戦ったわけじゃないから、店員さんからの受け売りだけど」

「そうなのか」

「うん。そういう人はバトルのマッチングで勝率が高い人ほど多いっていう話だよ」

「適度に負けてマッチングの調整するようにレイットに言おうかなぁ」

「あ、お兄さんそれはダメだよ」

「へ、なんで」

「見てみなよ。レイットさん凄いむすっとしてる」

「ありゃ、ほんとうだ」

「神姫の皆はバトルで全力を出すのが楽しみなんだから、それを台無しにする指示は出さない方がいいよ。嫌われちゃうから」

「解った。ありがとう柴田君。おーい。レイット、さっきの言葉を取り消すから機嫌直しておくれ」

 

 プルミエと話していたレイットがツンと自分に背を向けてしまったのを見て、マスターは腰も低く彼女を迎えに行く。

それを見て話も切り上げ時かと柴田もプルミエを呼ぶ。

 

「どうだったプルミエ、レイットさんと話した感想は」

「マスターがあまりバトル向きではないのが惜しい、という感じですね」

「そんなに凄いの?」

「実戦は初めてでも神姫ネットで集められるデータで演算によるシミュレーションはみっちりやっていたらしいですよ」

「そんなに?あのお兄さんと一緒に居るとそんな暇なさそうだけど」

「レイットさんのマスターは会社員で、かなり時間に自由が利くらしいです。ですからその時間に」

「なるほどなー。だからプルミエと拮抗した?」

「はい。どうも日付的にレイットさんが購入された後にマスターが私を購入したようなので、起動時間としてはレイットさんの方が先輩、ですね」

「そっか。でもプルミエ、武装さえ揃ったら僕達が勝つよね」

「それは勿論。全力を尽くしますよマスター!」

 

 柴田少年とプルミエがその絆を深めていたその時、マスターはというと。

観戦ディスプレイの周囲を覆う観戦用のカウンターで後ろを向いてプレッシャーを放つレイットの機嫌をなんとか直そうと苦心していた。

何とかレイットと視線を交えて会話をしようと回り込もうとするとも、レイットはスーっとリアパーツを使って向きを変えてしまう。

 

「ごめん。ほんとごめん。レイットは手加減なんかしなくていいから。いつでも全力全開で戦っていいから。神姫の存在意義である戦いで手を抜けなんていった俺が悪かった。この通り」

 

 全力で頭を下げるマスター。

何も知らない人ならば、たかが玩具に良い大人が頭をさげるなんてと言うだろう。

だがそれは神姫を傍に置く人間なら、大多数がおかしいことではないというはずだ。

なぜなら神姫とマスターは主従関係でありながら、同時に対等なパートナーともなりうる存在だからだ。

だから、若干周囲の人の邪魔になっているマスターとレイットに、神姫とそれを従える観戦者のマスター達は今の所文句を言わない。

あまりに酷いようなら誰かが仲裁に入るだろうが、今はまだその時ではない。

 

「解りました。マスターの気持ち伝わりましたから。今回はこれで許してあげます」

 

 とうとうマスターの必死の行為に納得したのか、レイットが微笑みながら振り返る。

その可憐な表情にマスターは見とれながら、彼女に釘を刺される。

 

「手加減したい理由があるなら、それをちゃんと言って、私を納得させられたら私も協力します。だからマスター、二人で頑張りましょうね」

 

 地味にきっちりと今後もバトルを行う言質を取って、レイットはマスターの肩の上に飛んで行く。

マスターは彼女のその行動に安堵して、何度もレイットの頭を撫でながら、「もう一戦していくかい」と聞いた。

レイットの答えは勿論、「はい」だった。

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