武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2-お嫁さんを買いました-   作:belgdol

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マスターの大散財は愛ゆえに、の巻き

 小波万は相変わらずの快進撃を見せ、柴田少年とは歳は離れてもバトルの開始時期が近いため友達感覚でバトルについて語り合うようなそんな日々が当たり前になったある日。

マスターは出勤前に彼女のが焼いたカリカリのパンを食べながらいった。

 

「ああ、レイット。今日のお昼は楽しみにしておくといいよ」

「え?今日はマスター早引けですか」

「いや、そうじゃないよ。ちょっとした愉快なものが届くからさ」

 

 そういって曖昧に笑ったマスターの表情に、はてなと小首を傾げたレイットに言ってきますのスキンシップをしてから、マスターは会社に出勤して行った。

その後レイットにできる事と言ったら以前マスターと話し合って加入した特選バトルチョイスチャンネルを見て、プロのマスター達と共に戦う神姫達の動きの型だけでも真似て、結果1人不思議な踊りをしてマスターの不在を埋めることだった。

 

 

 

 そして昼。3時間たっぷりシミュレーションバトルをやり終えたレイットが、マスターが帰る前に一応充電しようとクレイドルで一休みしようとしたその時。

トントンと部屋のドアを叩く音が下ので玄関先まで飛んで行き、声の音量を調節して、扉の向こう側に聞こえるように声をかけると、扉の向こうにいるのは配達屋らしかった。

レイットは「お疲れ様です」と声を掛けながらドアの鍵を開け、その事を伝えると配達屋が扉を開いて印鑑の捺印を求めてきた。

彼女は即座にあまり仕舞う所のないマスターの部屋の中から印鑑を取り出して、受け取り伝票に全身を使って印鑑を捺した。

 

 受け取り伝票の控えを受け取り、印鑑を仕舞って玄関先に戻ったレイットに、配達屋が荷物を室内に運ぶか聞いた。

レイットは縦が自分の全高より少し大きく、横幅は3,4倍ほどの荷物をためしに下から支えてみて、運べない重さではないのを確認すると、配達屋には「大丈夫です」といってお帰り願った。

そうして受け取った荷物を部屋の中のテーブルの上に置き、改めて玄関の鍵を閉めてから荷物を観察した。

 

 箱だ。Ozonという大手ネットショップの包装箱に包まれたそれは、恐らくマスターが楽しみにしておくように言っていた物だろう。

レイットはここで葛藤した。

恐らく、楽しみにするようにといったからには、これはマスターからの贈り物。

マオチャオ型あたりならそれに気づいた時点で遠慮なく開封に走っただろうが、レイットはアーンヴァルMK.2型としてもう少し冷静な視点で考えた。

それは、マスターが自分にどんなことを望んでいるか。

遠慮なく開けて、自分が喜ぶのを想像するだけで楽しむだろうか。

それとも中身に思いを馳せてマスターの帰宅後、二人で中身を開いて目の前で驚き喜んで見せるべきか。

マスターにちょっとでも喜んで欲しくて、どちらが正解かを模索する。

 

 ここでぽんとCPUの計算の中である推測が成される。

先日マスターは服の話をしていた。

という事はこれは神姫用の服に類する物が入っているのではないか。

この推論はかなりの確立で合致していると思いつつ、Ozonで神姫用衣装など扱って居ないという事が疑問を広げる。

しかし、もし服ならきっとマスターはそれを着た自分の姿を楽しみに家路に就くのだろうと考えると、答えは開ける、に決まったのだった。

 

「これは……服、ではなくて、武装?」

 

 箱を開くと現れたのはプラスチックのパックに包まれた黒い衣装だった。

パッケージをよくよく見れば、レベル7武装シスターパック(聖帽“マリア”・聖ドレス“ジャンヌ”・ガター付きストッキング・セイントショスール)と書かれた表示が見えた。

 

「え、ええぇぇぇ!?」

 

 大人しいレイットに珍しく大声を上げてしまった彼女だが、仕方ないだろう。

レベル7武装で、しかもセットである。

よくよくパッケージの隅に書かれている値段を見ればセット価格で40,000spt。

つまり、40万のお買い物である。

それを見たレイットはパッケージ越しに見える白い帯から伸びる肩までの長さの黒いヴェールや、白い襟元を金のリボンで飾る黒い長袖ミニの修道服を前にCSCが一瞬止まったかのような感覚に陥った。

 

「マ、マスター……これはサプライズにしてもやりすぎです……!」

 

 ライドバトルでは規定のLOVE値に達していないため、ライドバトルの武装として使用する許可は降りないだろうが、現実での装着自体は出来る。

だから、マスターのお望みどおりこれを着て帰宅するマスターを出迎えるべきなのだろうが、それは余りにもレイットの感覚では高価すぎた、

彼女の金銭感覚は時折マスターと近所のスーパーに行ったり、過度に豪華な武装を使わない事で庶民派的な形成を見せていた。

そこにこの衝撃である。

 

 レイットはパッケージに触るのも畏れ多いといった慎重な手つきで一旦箱を閉じると、神姫ネットを開いた。

スレッドを立てる為である。

スレッドタイトルは「【無茶】サプライズでマスターがレベル7武装を買ってしまいました【大出費】」である。

その後は現実逃避をするようにスレッド内での他の神姫達からの驚きの声と質問などに答えていった。

それに一段落が着くと、レイットはふらふらとクレイドルに寄りかかり、そのまま思考を放棄するように充電するためのスリープモードへと逃げ込んだのだった。

 

 

 そんなレイットの気持ちを他所に、マスターはのんきな声と共に帰宅した。

 

「ただいまー。レイット。びっくりした?びっくりした?……レイット?」

 

 電気のついてない室内に光を灯すと、反応のないレイットをクレイドルに認めてマスターは一息つく。

そして部屋の中を見渡すと、閉じられた箱を見つけて開いてみて、中身がいまだ未使用である事を見るとすこしがっかりしたようだった。

だがすぐに気を取り直して跪いて、クレイドルに眠るレイットの胸をトントンと叩いて覚醒を促す。

 

「レイット、レイット。起きて。帰ってきたよ」

 

 どこか苦しそうに閉じられていたレイットの瞳が開かれ、ぼんやりとした表情で楽しそうなマスターを捉える。

普段起動に時間の掛からない彼女のそんな様子に、どこか調子が悪いのかな?と思ったマスターは声を掛ける。

 

「おーい。レイット大丈夫?調子悪い?神姫SHOPにメンテしてもらいに行く?」

 

 呼びかけるマスターの声に、ぱっちりと目を開くと、レイットは自分の胸元に置かれたマスターの指を掴んで叫んだ。

 

「何を考えてるんですかマスター!レベル7武装のセットなんて!」

 

 実に常識的な問いだ、マスターだって神姫を持たずに兄弟(居たらだが)が急に40万もする玩具を買ったなどと言われれば同じような事を言っただろう。

だが彼は既にマスターなのだ。

 

「ああ。レイットに着て欲しいと思ってね。ダメだったかな」

「ダメかなって……武装レベル7ですよ。ライドバトルで使えないんですよ。それなのにあんな高価な武装……」

「俺はレイットが着てくれるだけで報われるよ。着てくれないかな」

「で、でもあんな高価な武装もし壊したらって思うと怖くて……」

「大丈夫。怖がらなくていい。壊しても怒らないから。だからさ」

「はい、なんでしょう」

「俺の見てる前で着替えてね」

「え?」

「いやぁ、シスターセットの購入者評価で『フル装備した後にシスター服の下を見せてもらうのはまさに理想郷。神姫LOVEなマスターの方は必見』って書いてあったからさ。どんな風になるか凄い興味があるんだ」

「あ、あの……ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 思わずマスターが耳を押さえる音量で声を上げるレイット。

速攻で隣の部屋から壁を殴る音が聞こえる。

 

「「すいません!」」

 

 即謝った二人が改めて顔を見合わせると、レイットは感情表現機能によって顔を真っ赤にしてマスターを見ていた。

それはそうだろう。

武装を着た上でその下を見せてなどというのは、はっきり言ってエッチ変態あんぽんたんなお願いだ。

臆面もなく言い出すマスターが絶対におかしい。

普通は思っていても言わない。

 

 だが面の皮の厚いマスターは笑顔で言った。

 

「ほら、レイット。着て、見せて」

 

 明らかに着てみせるだけではないアクセントを感じ取ったレイットは、大声で「マスターはおばかさんです!」と叫んで再び壁ドンをされるのだった。

そして、結局マスターの希望に沿ったかどうかはレイットとマスターだけの永遠の秘密だ。

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