武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2-お嫁さんを買いました-   作:belgdol

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マスター神姫とおでかけの巻き

 一通りレイットが無線通信で神姫ネットという、マスターによりよいサポートを提供する為の質問や、ちょっと変態的なマスターに対して面と向かっていえない愚痴を吐き出したりするような、神姫達のコミュニティー。

そこで質問スレッドを立てて、ひとまずマスターの生活に必要な品物をネットで購入したレイットにマスターがそういえばと、「遅まきながらに重要な事を思い出した」などといいながら、一息ついていたレイットに話かけた。

 

「そういえばね、今の内に聞いておくけれど」

「はい。なんでしょうマスター」

「家のドアって手動式でしょ。レイットに留守番を頼んだときに配達が来たら出て貰えるのかなって」

「あ、えと、印鑑の場所や私にクレジットの決裁権を与えていただければ着払いなどにも対応しますけれど」

「ああ、違う違う。ドア、開けられるのって事。後これも大事なことだけど、開けた後閉められるか」

「それでしたら、ドアの開け閉めと軽い荷物の受け取りは私一人でも出来ると思います。ただ……」

「ん?なんだか浮かない顔だね。どうしたの」

「その、鍵を開けるのは空を飛べるリアパーツを買っていただければ出来ると思います」

「ん。あーあーあー、そうえばライドバトルに比べると影薄いけど、神姫の高速飛行大会とかあるらしいね」

「はい、本当はバトルを行う上でのパーツの一種なんですけど、あれば日常生活にも使えるパーツってあるんです」

「ふむ。それは一緒に生活する上で重要な要素だなぁ。いつも俺が傍に居て上げられるわけでもないし……」

「あ、そういえばマスターがお仕事の時はご一緒できないんでしたね……」

「うん。ごめんね。さすがに音声と画像の記録を取得できる私用神姫をどうどうと連れて行くのはセキュリティ的に問題があるからね」

「マスターのお仕事、拝見したかったです」

「まぁまぁ、そんなにいいもんじゃないから」

「えっと、いいとか悪いとかじゃなくて……マスターのお仕事がどんなものか見て、マスターの事を知りたかったんです」

「んー。まぁ事務系統のお仕事だよ。ひたすら資料とにらめっこして、データを打ち込むお仕事です」

「あ、そういう仕事は業務用の私の姉妹機の需要が伸びているって言うデータがありますね。マスターも神姫と並んでお仕事なされてるんですか?」

「んん、まぁ一応並んではいるの、かな?うちの会社では打ち込みは人間がやってるね。神姫にはそのデータの正誤を判断してもらってる。上司の次に怖い相手だよ」

「え、えと。その、すいません。私の姉妹機が……」

「いやいや、確かうちの部署の神姫はえーと、何型だったかな。青いツインテールで、黒いペイントがメインの、ちょっとお堅い子」

「えっと、もしかしてその子ストラーフMk.2ですか?」

「あ、そうそう。その子。いやー真面目でさぁ。定期的にデスクを巡回して俺達の仕事の進捗状況チェックしてるよ。神姫アイに手抜きは通用しません、って感じで」

「ふふふっ。ストラーフ型はマスターに対する忠誠心が高いですから。張り切っているんでしょうね」

「なのかな?確かに頑張っている気はするよ……と大きく話がずれた。もう一回神姫SHOPに言って、リアパーツって言うのを買いに行こう」

「あ、もうお昼も近いですし日を改めて下さってもいいですよ」

「いやぁ、今日は有給取ったからさ。折角なら済ませられる用事は済ませておきたい。さっきは歩いて帰ったけど、急ぐならまたバス使うし。神姫SHOPの近くにはファストフードのチェーン店あったはずだしね」

「あうぅ、すみませんマスター。もっと早く私の方からリアパーツをお願いしておけばよかったですね」

「気にしない気にしない。それ以外の話をしてたから神姫用のエアジェットクリーナーとか、今まで聞いたことも無いようなものの存在もしれたんだしね」

「でも……」

「はい。そんな気にしない。人間も神姫も完璧なんてないんだから、この話はここでおしまい。出かけよう」

 

 テーブルの上に座らせていたレイットの親指サイズの頭を中指で軽く擦るように撫でてから、マスターはすっと立ち上がってレイットを再び肩の上に乗せた。

ついでにレイットの金髪に隠された背中をつっと撫でて、「ひゃう」なんていう驚きの声をあげさせながら、玄関に向かいスニーカーを履いて鍵を開け、やや日差しの強くなった外に出た。

後、一月か二月もすれば太陽の光は熱された刃のように外出する気を蹴散らそうとするだろうが、それにはまだまだ早い。

近場の停留所に行けば、昼食の少し前という時間帯の為か、人影は無し。

会話をするには絶好の機会だが、マスターとしてはちょっと話し疲れた、というのが正直な所のようで。

元々人と話すのがあまり得意でない彼にはレイットとの会話はそれなりに精神を使うものだったらしい。

なので彼は肩からレイットを持ち上げて、両手で包むとぼうっとしながらバスを待ちはじめた。

一方のレイットは起動直後で好奇心旺盛、なんでもマスターに聞きたい稼働時間の内だったのだが。

漫画でお年寄りが湯飲みを持つような手の組み合わせ方でレイットを囲み、するりするりと彼女の金髪を撫でるマスターに、なんとなく物をいえないでいた。

高度な技術で小さい機械の体に触覚を備えた彼女にはそれがとても心地よい。

マスターとお喋りするのも良いけれど、こんな風に静かに触れ合う時間も、目覚めたばかりのレイットには新鮮で、胸の高鳴る経験だった。

 

 その後初めて乗ったバスに、目覚めたばかりのお嫁さんは興味津々らしい。

神姫にはこういった日常的な物に関するデータは基本データとして入っているのだが、何事も経験。

データと実際のすりあわせをするのが楽しいのか、最初にマスターが彼女を置いた膝の上から、外の景色が見えるように「すいませんマスター。私を窓際に持ち上げていただけませんか」と若干控えめにお願いした姿などは非常に愛らしく、彼女の旦那様を満足させるものだった。

そして一頻り流れる風景を見て満足したのか、軽やかな身のこなしでマスターの膝の上に戻った。

マスターは一連の彼女の行動をずっと眺めていたわけだが、不意にレイットと視線が交わった。

彼女が朝日を浴びた小麦畑のような髪を揺らしながらマスターの事を見上げたからだ。

その可憐さに思わず「可愛いなぁ」という月並みな言葉を発しそうになったマスターに、レイットは輝きの宿る純真な笑顔で言った。

 

「マスター!私、マスターに起動していただいて本当によかったです!起動してもらえなければこんなドキドキする事も、楽しいんだって感じることも無かったんですから!」

「ははは、そういってくれると嬉しいよ。でもね、いや、そうだね。レイットにはそういう、何事も新鮮に感じられる感覚というのを持っていてもらいたいな」

「どうしてですか?」

「俺は引き出しの少ない男なんだよ。慣れが早いとレイットにすぐ飽きられて捨てられちゃうね」

「マ、マスター!何言ってるんですか!神姫がマスターを捨てるわけないじゃないですか。神姫にとってマスターは本当に、大切な人で、捨てるなんて……ふえぇん」

「あ、ああー。泣かないでくれ。言葉のあやだ、捨てられるなんて思ってないよ。大丈夫。俺はレイットのこと信じてるからね。ずっと一緒だ」

「うぅっ。約束、ですよ」

「ああ、約束だ」

 

 そんな何気ない、しかし大切な約束を交わし二人を乗せて、バスは走った。

しかし大きく震えて走るバスからも降りる時が来る、神姫SHOPまで10分もあるけばつく停留所が彼らのとりあえずの終着点だ。

だが神姫SHOPはさておき、レイットはマスターに昼食を取ることを提案した。

彼女の中の正確極まる電気式の体内時計は、既に時間が十二時近いことを告げていたからだ。

マスターは彼女からの提案に頷いた。

 

 さて、彼はバーガーショップ『ボス・バーガー』内で昼食を取ることにしたのだが、その店内は人の入りの割りにあちらこちらから談笑の声が響き、非常ににぎやかな雰囲気である。

興味を惹かれて店内を良く見たマスターとレイットの視界に、神姫と共に食事をする彼女達の主人と思しき人々の姿が目に入ったのだ。

そう、食事である。

ただ食事とは言っても、人間である主人達とは違い、神姫達は丸く十円玉サイズの大きさと少し膨らませたような厚みを持つ、飲み口と取ってのついた色とりどりの容器から何かを飲んでいるだけなのだが。

 

「なぁレイット。あの子達が飲んでるのは何?」

「ええと、あれがヂェリカンですね。味はわからないですけど、イチゴ味とかバナナ味とか、私達神姫にも感じられる味の素子が入っている嗜好品です」

「飲み物なのか。うーん。すると不思議だ神姫って食べ物を食べられるの?」

「えーと、私達神姫の体にはヂェリカンの内容物であるオイル成分を人間の血液のように循環させた後、廃油となった分は自然揮発で空中へ発散させられるようになっているんです。ですので私達神姫も飲めるんですよ」

「そうなると、定期的には飲んだ方がいいのかな?」

「マスターの神姫をメンテナンスする手間は確かに減りますね。摂り過ぎても揮発しきれない油分がボディの表面を汚したりして、余計に手間になることもありますけど」

「ふーん。それはそうと、あれなら味を感じられるんだね?」

「はい。私達神姫の嗜好品と言ったら武装とヂェリカンっていうくらいですから!」

「よしよし、じゃあ今回は一緒に食べよう。俺はBIGBOSSバーガーのセットで……レイットは何味のヂェリカンが良いかな?」

「え、選んでいいんですか?」

「勿論。初めて味わう味ばっかりだろうから迷うだろうから。ゆっくり選ぶといい。はは、もう期待で眼が行ったりきたりしてる」

「で、でもええと、バニラ味も美味しそうだけどあのプリン味も気になる……カウパス味も昔からのベストセラーの味なんですよね。どうしよう」

「ふふふ、迷え迷えー。その姿がどれほど可愛いか自覚せずに綺麗な金髪を馬の尻尾のように揺らすが良い」

「うっ、マスターいじわるです」

「俺は三つ買っても良いんだ。レイットが油塗れになる覚悟があるなら」

「そ、それはいやです……ええと、じゃあ私はこのミルクチョコ味でお願いします」

「はいよ、じゃあ並ぼうか」

 

 のんびりと列から離れた所でレイットをメニューとにらめっこさせていたマスターは適当な列の最後尾に着いた。

神姫SHOPも近い、神姫と一緒に食事を取れる店内は、神姫好きでながっちりになる客が多いのか、それなりに待たされたが料理の方はそれなりに腹にたまって満足感を得られる物だった。

マスターは紙の包装紙とドリンクのカップにフライドポテトの箱を纏めて可燃ごみのボックスの中に放り込んで、ドリンクのふたとストローは燃えないごみへ、ヂェリカンは回収ボックスへと入れていく。

そして店の外に出て改めて神姫SHOPに向かう、腹ごなしの散歩のような道中で聞くのであった。

 

「美味しかったかい」

「はい!甘くて液体なのに蕩けるような感覚で……初めての食事は大成功でした!」

「そうかそうか。それは良かった」

 

 はしゃぐレイットと、その様子に軽い鼻歌を鳴らすマスター。

二人はマスターのゆるりとした、行楽地を楽しむかのような足取りで本日二回目の神姫SHOPへと到着した。

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