武装神姫BATTLE MASTERS Mk.2-お嫁さんを買いました-   作:belgdol

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神姫、クレイドルでお休みの巻き

 どっさりと買い込んだ荷物を抱えたマスターと、その肩に乗るレイットは自宅のアパートへと戻ってきた。

そしてマスターが荷物を降ろすとレイットはひらりと彼の肩から、自分の身長の何倍もあるところからカーペットの上に降り立った。

そして精一杯、自分のご主人様を見上げながら口を開いた。

 

「お疲れ様です。マスター」

「レイットこそお疲れ。いやー、しかし今日は買い込んだなぁ」

「荷物は後で私が整理しておきますね」

「お願いできるかな」

「はい。自分の荷物ですから」

「あ、でもその前に。リアパーツを着けて飛ぶところを見せてもらえないかな」

「いいですよ。えっと、パッケージは自分で開けられますからマスターは向こうを向いていてくださいね」

「武装着ける所を見られるのは恥ずかしい?」

「それは、人間の女性で言えば着替えのようなものですから……」

「そっか。じゃあ武装をつけたら俺を呼んで……じゃ味気ないから、目の前に飛んで来てよ。妖精みたいにさ」

「それくらいでしたら喜んで。じゃあ、少々お時間をいただきますね」

 

 こうして二人の間でちょっとした約束事が出来上がり、マスターがレイットに背を向けると、彼女は袋の中からシンペタラスのパッケージをがさりと取り出す。

そしてプラスチックの擦れ合う音をさせながら、確実にその包装を解いていく。

マスターの耳に一際大きなプラスチックの変形音が届く、「ああ、武装を取り出したんだな」と思いもう少し待つと僅かに空気を吐き出すこぅっという音をさせて、ピンクブロンドの髪で尾を引くレイットがマスターの眼前に停止した。

そして身に着けた武装をマスターにじっくりと見せるようにゆっくりと、その場で一回転して見せたレイットにマスターは笑顔になって言った。

 

「いいね。天使型というより本当に妖精みたいだよ」

「ありがとうございますマスター。ご満足いただけましたか?」

「ああ、満足だよ。ところでそれ、どうやって飛んでるの」

「それはですね、このリアパーツは重力の制御を行って私自身の重さをきわめて少なくするんです。その上でイオンスラスタを推進力として浮いているんです」

「えーと、イオンスラスタって?」

「宇宙の衛星の軌道修正などに使われた動力が基になっている、簡単に言えば電気の力で推進力を得る機関です。少ない推進剤で長期間使えるのが特徴ですけど、それも先ほど言った重力制御機能で推進力をかける本体を軽くしているから飛べるんですよ」

「そんな凄い機能の物があの値段?」

「マスター、私は第三世代の素体を使用して作成されています。それもこれも企業で使用されている個体を入れれば先進国の人間の一人につき二機所有しているという平均値が出るほどの大量生産品だからです」

「なるほど、それならそのコストダウンも納得、かな?」

「技術の進歩もありますし、何より大きいのは民生用として大量生産されるラインが整った事が大きいです。過去の神姫を愛してくださった方達のおかげで、今の小学生でも神姫が購入できる今があるんです」

「なるほど、先駆者様々だね。おかげでこんなに便利な物が手に入るんだから」

「そうですね。おかげで私も、好きな時にマスターのお顔を……あっ」

 

 微笑みかけたレイットの邪魔をするように、ピーというかすかな警告音がした。

マスターが音源をさがしてキョロキョロしていると、レイットが地上に降り立ち、非常に残念そうな声でお願いをした。

 

「すいません。マスター武装の稼動には神姫本体のバッテリーを使うのでそろそろ充電しないといけないみたいです。クレイドルをだしていただけますか」

「ああ、そういえば起動してから一度も充電してないね。すぐだすよ」

 

 マスターは充電を求める音を最後に、昼間に買い物をしたものとは別に置いてあったクレイドルの包装をやや乱暴にこじ開け、すぐに先端の丸い三角錐を半分に切り、ゆったりと体をもたれさせることの出来る傾斜がついた寝台部分を付け加えた機材からコードを伸ばし、電源に接続する。

その間にもレイットは電力の消耗を抑える為か、カーペットに降りて武装を『格納』する。

レイットの動きに気づかず、彼女の方を振り返ったマスターは、「ん?」と首を傾げた。

 

「レイット、リアパーツはどうしたの」

「~~~……っ。はっ。す、すいません、省電力モードで少し意識があやふやに……ええとですね、武装は神姫と接続されていると『格納』と『展開』いう機能が使えるようになります。神姫の持つ四次元スペースに武装を粒子化して格納するんです。だから、マスターが今日見かけた神姫の皆も見た目は素体だけでしたでしょう?」

「ああ、そういえばそうだね。そんな機能まであるとは、神姫は本当に凄いんだね」

「それもこれも製作者の皆様のおかげです……ふぁっ。もうしわけありませんけれど、お先にお休みさせていただきますね」

「ああ、眠いんだね。運んであげるよ」

「はうっ。す、すいません」

「大丈夫だよ。とっても軽いしね。はいクレイドル到着」

「ありがとうございます。すいません、マスターがまだ起きているのに寝てしまうなんて」

「いいんだよ。説明書読んだけど、神姫って完全に動力が無くなってCSCが停止すると酷い不具合がでるかもしれないんでしょ。ここは俺のためにも休んでレイット。この一日で俺はすっかり君を気に入ったんだから」

「それではお言葉に甘えて……おやすみなさい……マスタァ……」

 

 ゆったりとクレイドルに体を預けたレイットは一気にシステムを休眠状態へと移行してその力を抜く。

その様子はまさに歯車の止まった時計のようで、彼女が人間の作り出した機械なのだとマスターに認識させる。

しかし今日一日でマスターの胸に入り込み始めた彼女への愛情はそんな機械的な反応ですら、遊びつかれて途端に寝入ってしまう子供のようだと認識が多少曲がる。

こうしてしばらく、満足げにスリープモードに入った小さなお嫁さんの姿をじっくりと見守り、クレイドルの寝台に散る髪を軽く撫でた後、やにわにマスターは悩み始めた。

残された荷物の整理をどうするか。

起きている自分が代わりにそれを済ませてしまうのは簡単だ、合理的だろう。

しかし、既に頼んでしまった仕事をひょいと取り上げられたら、レイットがどう思うか。

過程の話だがマスターが自分を信頼してくれないと落ち込む可能性もあるのではないか、という事を考えると、無闇に手を出すのは躊躇われた。

考え込み、携帯の時計が七時すぎを示した後、マスターは全て後回しにして途中で買った出来合いのサラダつき弁当を食べることに決めた。

本当はサラダ等ついていない、油物たっぷりの弁当にしたかったのだが、レイットに健康管理の一環ですと言われてチョイスした一品だった。

「野菜苦手なんだけどなぁ」と一人ごちながら、マスターは弁当のサラダから手を着け始めた。

彼は嫌なことはさっさと済ませて楽しいことを楽しみタイプであった。

 

 

 

 食事も終わり、荷物はレイットに任せて明日の昼間からしばらく暇になる彼女の暇つぶしにさせよう。

そう決めたマスターはクレイドルの前で横になってレイットの寝顔を見ていた。

昼間、ちらりと掠め見た緊張や紅潮によって変化した顔ではなく、完全に動きを止めた無防備で、フラットなその表情。

人間ではないので寝息で胸を上下させるという事は無い。当然、指や爪先がピクリと動くという事も無い。

そんな非人間的な姿もまたマスターを満足させる。

人間ではなく完璧な自分の所有物でありながら、パートナーという隣に並ぶ者という役割を果たす少女機械。

そのあり様に深い満足を覚えた。

今は手探りの状態だが、その内気の抜けただらしない所も見せていって、それを受けて入れてもらうつもりなのだ。

時にはレイットが許せない、というか神姫のマスターを思って起こすリアクションとして受け入れられない部分は出てくるだろうが、まぁこれもマスターとしてレイットと付き合っていくうちに最適化されていくだろう。

人造ではあるが確固とした意思を持った存在が近くに居て、お互いに影響を与え合わないはずが無いのだから。

 

 そして新人お嫁さんを見つめていたマスターの目の前でゆっくりとレイットが眼を覚ました。

 

「あ……おはようございますマスター。もしかしてずっとみていらっしゃったんですか?」

「うん。ダメだった?」

「ダメではないですけど、スリープモードをまじまじと見られるのは、少し恥ずかしいです……」

「そう?でも寝てたら見るよ」

「マ、マスターいじわるです」

「だったら充電は俺が寝ている間にすること、いいね?レイットが充電している間、思った以上に寂しかったからね」

「そんな、マスターが寂しいだなんて……」

「結構本気だよ。ところで荷物そのままにしておいたけどどうする?手伝おうか」

「え、あ!大丈夫です。一人で出来ます!マスターには私の働き振りを見ていただかないと」

「そう?じゃあじっくり見させてもらうよ、可愛いお嫁さん」

「あ、う……マスターは、普通の人なら恥ずかしくて言わないような事をいう方なんですね」

「これでも結構、自分で気合入れていってる。内心じゃ結構照れてるよ」

「本当ですか?なんだかマスターって、表情からそういう感情を読み取りにくいです」

「愛想笑いは日本人の処世術だよ。さ、初めてレイット」

「はい。それでは作業を始めさせていただきますね」

 

 言葉と共に武装を展開し、荷物の詰まった袋の中から小物を選んで整理を始めるレイット。

マスターは心密やかに荷物を持ってひらひらと髪をなびかせながら飛ぶ彼女の背中を見ながら、「そういえばリアパーツを着けているとお尻が見えないね」と本人に聞かれたらポスポスと叩かれそうなことを考えるのだった。

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