遥かな昔、誰かが言っていた。
『腐りかけの星に、まだ侵略される価値はあるのか』と。
その言葉通り、この惑星に降り立った侵略者が狙ったのはこの星に隠されていた資源と二つの神秘の石だった。
だがそれでも、侵略者を魔の手から地球を守り抜いたヒーロー達がいる。
彼等の名は、アベンジャーズ。
大いなる力に伴った、大いなる責任を果たすため、戦い続ける者達のチームである。
そして、この僕、カドック・バードンもその一員である。
〈カドック様、任務と関係ないレポートは控えるべきでは?〉
「そうかい?トニーさんやピーター辺りなら、堅苦しいのはゴメンだ、って言いそうだけど」
〈あのお二方を引き合いに出されると少々……〉
「分かったよ、ジャービス」
僕と、僕のかけているメガネから声を発するトニーさん製作のサポートAI『ジャービスⅡ』がいるのは、国連公認の人理継続保障機関カルデアだ。
何でも人類の絶滅を回避する目的で設立された機関らしいが、その設立の経緯や資金源、インフィニティ・ストーン由来とは違うオカルトの気配等々、叩けば叩くほどホコリが舞い上がるので、不審に思った国連の職員がアベンジャーズへと調査を依頼したのだった。
そこで、師匠や義父さん、キャプテン、それにトニーさんといった錚々たる面々にこの組織へ潜入する任務を、アガモットの眼を師匠の次に使い熟せた僕に白羽の矢が立ったわけだ。
アベンジャーズの面々は、スパイダーマンたるピーターを除けば顔が割れているし、ピーター自身もまだ学生だ。
僕はトニーさんやバナー博士、ピム博士に色々教わって、飛び級で大学を出ているから学業には問題ないしな。
それに、カルデアの場所が場所だけに師匠と同じ魔法が使える僕なら、距離なんてあってないようなものなのも理由だろう。
〈カドック様。そろそろお時間です。レイシフト前のミーティングが、始まります〉
「了解」
人類の絶滅する原因たる特異点の場所へ行くためには、レイシフトという方法でタイムトラベルする必要がある。
そして、そのレイシフトには適正があり、何の因果か俺はその適正が高く最も前線に立つAチーム所属となってしまった。
まあ、元々一般枠で募集していた候補生で応募したらレイシフトの適正の高さ故にAチームとなってしまったわけだが。
ミーティングでは、48人目の最後の候補者が所長の目の前で居眠りをするという勇気ある行いをして、ファーストミッションから外されるという珍事が起こったが、現実は非情にも流れていく。
後で、顔を拝んでおこうかな。
ようやく、レイシフトの準備が整ってコフィンに入った時、ソレは起きた。
〈警告!熱反応を感知!データに無い術式を検知!爆発すると予測します!〉
「マジか!?ジャービス、お前はカルデアのシステムに移れ!」
〈了解しました。カドック様も脱出を!〉
ジャービスの警告から、持ち込んだ装備で常に身に着けているパンサースーツを展開。
ヴィブラニウムが織り込まれた黒豹をモチーフにしたスーツは、ワカンダのティ・チャラ陛下から餞別として贈られた物だ。
鋭利な爪で、コフィンをこじ開けて外に出た瞬間、あちこちで爆発が起きる。
衝撃を吸収してくれるスーツだが、爆風までは吸収されずにあちこち転がり回る。
起き上がって視界に入ったのは、燃え上がるような真っ赤になった地球儀、アルデアスだった。
「ジャービス!!状況は!?」
〈システ……、損傷あ…。レ…シフ……、実行されま……。ひ……な、んを…〉
自分の聴覚がやられたのか、スピーカーが破損したのかジャービスの声が飛び飛びで上手く聞き取れない。
それでも、生存者を探して動こうとした時、今度はハッキリと聞こえた。
――システム、レイシフト、最終段階へと移行します。
――座標、西暦2004年、1月30日、日本。マスターは最終調整に入って下さい。
――観測スタッフに警告。
――カルデアスに変化が生じました。
――近未来100年に亘り、人類の痕跡は発見できません。
――人類の生存を保障できません。
――レイシフト要員規定に達していません。
――該当マスターを検索中。
――発見しました。
――番号2をマスターとして再登録します。
――レイシフト開始まで。
――3。
――2。
――1。
――全行程クリア。ファーストオーダー実証を開始します。
「……うそーん」
無慈悲で冷たいアナウンスの内容に、顔が青褪めるのが分かる。
コフィン無しのレイシフトでは、身に着けている物しかできない。
せめて、これだけはと、トランクから