【完結】馬場このみのリフレイン   作:沖縄の苦い野菜

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このみ姉さんのソロ一曲目を聞いて思わず書いてしまった。短編ですが、書ききっていないうちに出してしまったので、更新は不定期。温かい目で見守っていただければと思います。

感想、評価、批評、コメントなどいただけると幸いです(乞食)

※思った以上にシリアスになったので、「あらすじ」を4月21日に修正しました。


愛しいよ

「ほらっ、どうかしら? 私のセクシーな魅力が伝わると思わない?」

 

 試着室の中から出てきた、ルージュのドレスを身に纏う女の子ともいえる女性。大胆に肩と背中を露出させたデザインは蠱惑的な魅力に溢れているが――しかし、彼女が着るとどうしてもおませな女の子、という風に見えてしまう。シナを作って誘惑しようとしているところなど、実に背伸びしたがる子どものように見えて微笑ましい。

 

「やめとけって。ポーズとっても可愛いだけだから」

「……ちなみに、どのあたりが可愛いの?」

「背伸びしている子どもみたいなところが――」

「バカっ!」

 

 シャッ、と鋭く音を立てて彼女と彼をベージュのカーテンが遮る。その様子を見て、彼は意地の悪いような、困ったような笑みを浮かべていた。

 衣擦れの音も束の間、彼女は試着していたドレスを片手に普段着で再登場した。こころなしか、彼女の尻尾のような大きな三つ編みが垂れているように見える。

 

「はぁ……」

「それ片付けるのか? それなら戻してくるけど」

「自分でやるわよ、それくらい」

「なら、ついて行こうか。いいのがあったら見繕いたいし」

「何、女装の趣味?」

「いや、お前のに決まってるだろ」

「冗談よ、冗談。さっきの意趣返し」

「性格が良くて泣けてくるよ」

「ありがとう。無駄口叩いていないで、早く戻しましょう」

 

 そこからは早く、ドレスを戻すのに一分も用いなかった。しかし、その短い時間にも関わらず、彼女が振り向いた時には既に、彼の両手に衣服がかけられたハンガーが握られていた。

 

「白と黒どっちがいい?」

「どっちも嫌よ!」

 

 俗にいうゴシックロリータと呼ばれる服を彼は持っていた。あまりに幼いデザインに、思わず彼女は声を張り上げる。ついでに目線を合わせて話してくる彼に向けて睨みを利かせる。そんな様子を見て彼は気を良くしたようにカラカラと笑い声を上げると、すぐに服を戻し、立ち上がって肩を竦めてみせた。

 

「我儘なプリンセスだ」

「残念、私はクイーンなの。ほら、女王の命令。私に似合うセクシーな服を一緒に探して」

「それはまた、難題だな。でも、難題を出すのは姫のやることだろ?」

「かのシヴァの女王も、ソロモンに向けて難題を浴びせたのよ。女王が難題を出すのも、別におかしなことじゃないの」

「……それ、自分で服選びが難題って認めているよな」

「お姉さんの服選びは大変、文字通り難題なの。ほら、私はあっちを見てくるから。貴方はそっちをお願いね」

 

 言い残すと、彼女はさっさと店の奥に足を運んでいった。

 

「わがままな女王様だ」

 

 口の端を僅かに釣り上げながら、彼は言われたとおり場所を移して服を物色する。そして一式の物色が終われば、彼女のもとにいって試着をしてもらう。

 

 そんなことを繰り返しているうちに、日はあっという間に暮れてしまった。

 

 

 

「んーっ。なかなか良いものは見つからないものね」

「割と真剣に選んだんだけどな。どうにも、サイズがないのがな」

「そうっ、サイズがないのよ! これっ、と思ったデザインのものに限って!」

 

 興奮気味に、両の手に拳を作って力説する彼女の姿。アニメなら「ぷんすか」などと擬音がつきそうな機嫌だ。選べる服が限定されていることが、よほど悔しいのだろう、と彼はあたりをつけて苦笑する。

 

「それで、今日は飲むのか?」

「当然よ! こんな日に飲まないでいられますかっての!」

「……荒れてるなぁ」

 

 ずかずかと先行していく彼女を見て、ため息をひとつ。こんな日は決まって悪酔いすることを彼は知っている。しかし、それでも受け止めるくらいの甲斐性は必要か、と諦めたようにひとり肩をすくめた。

 

「ほらっ、早く行くわよ!」

「はいはい。……てか、運転免許持ってるよな?」

「当然。何、今更自分の心配?」

「……前に少女誘拐の疑いで任意同行求められたな」

「あの時は本当に、誤解をとくのに苦労したわ」

「その節はどうも。てか、それないと居酒屋で門前払いされるだろ」

「うっ……もうっ、ちゃんと持ってるからいいのよ!」

「はいはい」

「わっ、頭に手を置かないでよ! 子ども扱いして、また任意同行求められるわよ!?」

「はっはっは! そんな毎度毎度、冤罪吹っかけられてたまるか――」

 

 すみません、と妙に透き通った声が二人の会話を止めた。背後からだった。振り返ってみてみれば、紺色の制服を着た男性の姿がある。

 

 あれ見たことあるぞこの光景、と彼の顔が思わず引きつった。

 

「警察の者ですが。お二人の関係を少し確認させていただいても?」

 

 決定的な言葉を放たれて、彼は思わず顔を覆って天を仰いだ。星一つ見えねぇ、などとくだらないことを思いながら、指の間から彼女に目配せを一つ。それを受け取った彼女は「はいはい……」と呆れたように、しかし慣れた手つきで財布の中から免許証を取り出した。

 

「これでも二十歳は超えてるわよ! そっちの大男は彼氏よ」

「大男って……このみ、お前言葉選べないわけ?」

「子ども扱いした挙句、彼女に助け求める彼氏なんて、大男で十分よ」

 

 助けられている立場、ということもあって彼は今度こそ頭を抱えてため息をついた。警察官はそんなやり取りを尻目に、差し出された免許証を確認し終わると、それを彼女に返却した。

 

「失礼しました。最近、この近辺にて児童生徒を狙った不審者が出没しているので、どうかお気をつけて」

 

 それだけを言い残すと、警察官は一礼をして何処かに行ってしまった。残されたのは、大男の彼と、小さな少女とも言える彼女だけ。

 

「ふふん、少しはお姉さんに感謝したかしら?」

「あぁ、ほんとに。これ以上ないほど感謝してますよ」

「じゃあ、今日はおつまみくらい奢りなさいよ」

「一品だけな」

「決まりっ!」

 

 得意げだった彼女の顔には笑顔が咲いた。「やった」という小さな言葉と共にその場で跳ね、ガッツポーズをひとつ。

 

「それじゃあ、行きましょう! 早くしないと席が埋まっちゃうわ」

 

 巌のようにゴツゴツとした手を、シルクのように滑らかな小さな手が握り締める。腕を引っ張って、行く方向を逆の手で指差して、早く早く、と。

 

「はいはい。好きなペースでどうぞ」

 

 歩幅を合わせ、歩みを調和させ、彼は彼女に引っ張られるように進んでいく。ネオンの灯りにあふれた街の中に消えていく。

 

 

 

 

 

 

 雫がホロリと。街の中に落ち、それは波紋も立てずに光の中に消えていった。

 

 




確認作業していて思ったこと。
……これって読む人かなり選びそうだなぁ、と。


感想、コメント、批評、評価、心よりお待ちしております。やる気に繋がりますので!

……もう一作の方は、まだしばらくお待ちを。
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