戦騎絶響シンフォギア   作:青い青

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予期せぬ来訪 己の内にあるものは

定時に仕事も終わり、職場の先輩といつもの居酒屋で飲んだ後、彼、神城 奏太(かみしろ そうた)は帰途に着いていた。

 

黒髪の短髪、身長174センチ、体重66キロ、少々彫りが深く学生の頃はよく上に年を間違えられていたが、最近は年が顔に近づいたのか、顔が年に近づいたのか、年相応に見られる事も増え、時には若く見られる事すら増えた事を喜ぶ25歳。

 

そんな彼は頬を撫でる程よく冷えた風を浴び、程よく酔った頭を冷ましながら歩いていた。

 

彼の家は最寄りの地下鉄駅から歩いて20分、静かで、近くにはコンビニとそこそこに大きな複合型商業施設がある為、日々の生活に不備を感じたことは無い。

 

一つ不満をあげるならば、近くに酒を飲める店が極端に少ないという事だけだった。

 

「ふぅ、良い風だ」

 

風を浴び、ふと見上げてみると、そこには星空があった。

今夜は雲もなく、街灯も少ないこの道では、いつもよりも幾分か星も多く見えるような気がした。

 

風を浴びつつ、星空を眺めつつ、我が家への帰路を歩くこと10数分、そろそろ自分の住むアパートが見えてくるといった所で、奏太は思いもしないモノと出会う。

 

「ん?」

 

先程より道の先に誰かが居る事は分かっていた。

只、近づくにつれ、先に居る誰かの輪郭がはっきりとしてくるにつれ、それは誰かではなく、()()()であった事が分かった。

 

「な?は?あれって………ノイズ…か?」

 

奏太はそのなにかに見覚えがあった。

戦姫絶唱シンフォギア、そのアニメに敵として出てくる、認定特異災害。

 

ノイズ。

 

「着ぐるみか?…………て、おいっ!?」

 

最初着ぐるみと思い、近づきじっくりと見ようとしたところ、体が捻れ紐状に変形し特攻してきた。

 

「がっ、痛ぅぅ、何だってんだよ!?」

 

突如自身にきた特攻を横に飛ぶように転がり避け、奏太は悪態をついた。

着ぐるみの線は無くなった。

着ぐるみが体を捻り特攻なんてかけてくるわけがない。

信じられない事ではあるが、コレは本物だ。何故とか、どうして、とかはこの際思考の端に置いておく。

今はとにかく逃げなけば死んでしまうのだ。

 

炭素分解。

 

ノイズに接触した部分を起点に、対象者を文字通り炭と化し分解する凶悪な特性。

 

そこには分解して生じた炭のみが残り、分解された者を示すものなど何も残らない。

 

「やばい!やばい!やばすぎる!」

 

その事を、アニメを通じて知っている奏太は走った。ペース配分も何も考えずひたすらに来た道を逆走する形で走った。

 

触れられたら即終了。

少しのミスも許されず、逃げ切らなければ死んでしまうその状況に、奏太は焦りに焦っていた。

 

その焦り故に奏太はあるミスをしてしまう。

そのまま来た道を真っ直ぐに戻り、人通りの多い場所へと戻れば、他の人間にノイズをなすりつけ、やり過ごす事が出来たかもしれなかった。

 

人道的にその選択はどうかと思う者もいると思うが、自身に命の危機が迫る中、他者の命にまで気をかけられる人間はそうそう居ない。

 

ましてや奏太自身、自分の周りさえ平和なら世界がどうなっても良い、と思っている人種だ。

 

しかし、奏太はその選択をしなかった。

 

他人になすりつけ危機を回避する可能性よりも、道を曲がり逃走を複雑にする事でノイズを撒ける可能性にかけてしまったのだった。

 

その選択が間違いであった事は、遂に奏太の体力が尽き、派手に転んでしまったところで、それに気付く。

 

「はあっはぁっはぁっ…………糞がっ!」

 

逃げる最中も、ノイズは体を紐状にして特攻を仕掛けていた。

それをなんとか避けつつ逃げていた為、体力はもう残っていない。

なけなしの体力や、最後の体力等はとうの昔に使い果たしている。

 

今の奏太は、転んだ体勢のままうつ伏せの体を起こすことすら出来ない状態だった。

 

「はぁっ、はぁっ、がっ!?!?!?」

 

それでも、逃げる為、生きる為、走り出そうと顔を前に向け、体を起こそうとした時、紐状と化し特攻してきたノイズが

 

 

 

奏太の腹を貫いた。

 

 

 

「あああああああああああ!!!」

 

激痛と共に底の無い恐怖が奏太を襲う。

絶叫をあげながら、奏太の頭の中は様々な思考に埋め尽くされていく。

 

(貫かれた!?俺の腹!?ノイズに!?炭素分解!?死ぬ!?俺が!?何で!?糞っ!死にたく無い!殺す!嫌だ!)

 

「ごぶっ」

 

ノイズに腹を貫かれた為、口から血を吐き出してしまう。

 

そう、()()()()()()()()()()()()()

 

「そう……いえ…ば……な……で…炭素…………分……解…………」

 

されないんだ?

 

奏太は大量に血を失い、意識が朦朧とする中、最大の疑問にぶつかった。

 

ノイズに触れられた者はタイムラグ無く即座に炭素分解され、炭と化す。

 

その筈だった。

 

たった一度の例外も無い。

 

それなのに、腹部を貫かれた自分はまだ生きている。

 

何故。

 

分からない。

 

だが。

 

それならば。

 

あのキャラの、あのセリフ。

 

アニメのセリフだが、奏太の心を強く打ったあのセリフ。

 

天羽 奏のあのセリフ。

 

現状を打破する言葉ではないことは、奏太も分かっている。

 

それでも奏太の口を出たのは、あのセリフだった。

 

「い……生きる…の…をーーー」

 

 

「ーーー諦めて………たまるかぁぁぁああ!!!」

 

いつもよりも多い星空の下、奏太の絶叫が辺りに響き渡る。

 

万事休す。

 

しかし、奏太の心は諦めてはいなかった。

 

少しでも長く、たとえそれが1秒にも満たない時間だったとしても。

 

生きるのを諦めなかった。

 

『かかか、よう吼えた』

 

「……な…に?」

 

息も絶え絶えの中、突如頭の中で響き渡る謎の声。

 

妙齢の女性を思わせるその声に、奏太は自分の置かれている状況も忘れ、驚き固まってしまう。

 

『かかか、よう吼えた。と、言ったのじゃ。死の間際まで生き汚い人間は今まで多く見てきたが、死が決まった今も、かように生き汚い人間は初めてじゃ』

 

かかか。と、再び頭の中で笑い声が聞こえる。

 

声の正体を問い質したい奏太であったが、現在進行形で血が抜け、刻一刻と死に近づいている現状を、改めて思い出し、ただ一言悪態を吐くだけに止まった。

 

「わ…るい……が………少…し…黙……れ」

 

今はそれどころじゃない。

 

そう続けたかったが、もう声も出せない程に奏太の体は、死に近づいていた。

 

『そうであったな。お主にゆるりと言葉を交わす時間などないのであったな。続きの話は()()()に着いたらゆるりと話すとしようぞ。

 

…………すまぬ』

 

最早謎の声の主が何を言ってるいるかも奏太は理解出来なかった。

 

しかし、辛うじて聞こえた最後の謝罪の言葉、その意味を理解する前に奏太の視界は暗転し、意識は深い闇へと沈むよう途絶えてしまった……。




原作キャラは次回登場予定です。
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