しっこうしゃ   作:オモイカネさん

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最近、レディハンクのエロさがもう堪らなく好きで仕方ない。


変異

祠堂とその友達の少女が落ち着いた頃を見計らってお互いの自己紹介を行なった。

少女は祠堂と同じく一年生の後輩で名を直樹美紀というそうだ。

柚村は、祠堂の時と同じくすぐに直樹と仲良くなっていた。

続けて俺も自己紹介を行う。すると少し不審そうに、こちらを警戒しながらも渋々といった形で挨拶され、最後にーー

 

「……あの、圭に変なことしたら許しませんから」

 

と、とても冷たい表情で警告された。さっきのことをまだ根に持っているらしい。

いや、こんな世の中になって人間不信になっているのかもしれない。

 

「安心しろ、幼女を襲う趣味はない」

 

祠堂は側から見てもかなり慎ましい体型をしている。元気いっぱいな言動からも全体的に幼い印象を受ける。

まあそこが彼女のチャームポイントだろうが、ここで敢えて述べるものでもあるまい。また勘違いされそうだ。

 

「よ!?」

 

と思っていたら直樹ではなく祠堂の方が反応を示した。直樹も驚いた顔で少し冷や汗を垂らしている。

どうでもいいが最近の子にしては感受性豊かで微笑ましく思う。

 

「柚村、そろそろ物資調達に移りたいと思うが問題ないか?」

 

一息ついたところで本来の目的である物資調達に移ることにした。

俺よりも柚村の方が一般的な女子高校生の機微に敏感だろうと思い祠堂たちの容態も兼ねて問い掛けた。

 

「……大丈夫だと思うよ」

 

しかし、一瞬呆れた表情をしてから応えた。その反応は少し気になるが万が一があれば彼女の方から言うだろう。

 

「直樹」

 

「は、はい!」

 

「俺たちは君たちを助ける為に来たわけではない。拠点に蓄える物資の調達のためにここに来た。なので今回は君たちにもそれを手伝ってもらう、異論はないな?」

 

というか認めない。

 

「それはいいですけど……」

 

少しは反発するかと思っていたが割とあっさりと承諾してくれた。ただ横目でチラチラと祠堂の様子を伺っているあたり未だ信用はしていないのだろう。当然だ。

 

だが今を生き残るために何をすべきかを的確に判断できているのは評価に値する。

 

「ではこれより物資回収にあたる。まずはここに残った『死体』どもの排除、続けて四階の奴らの排除。上階から順繰りに『死体』どもを掃討する」

 

「はいよ」

 

柚村は待ってましたと言わんばかりに好戦的な笑みを浮かべ愛用のモップを握りしめた。意気込みは買うがお前には後輩の護衛を任せるつもりだ。

 

「え、待ってください! まさかこの建物の奴ら全部倒すつもりですか?」

 

だが直樹が慌てて異議を申し立ててきた。誰か知り合いが奴らの中にいるのだろうか?

 

「……奴らはすでに人間ではない。躊躇すれば食われるぞ」

 

「そういうことではなくて……見たと思いますけど、ここには大量の奴らが」

 

なんだそういうことか。つまり俺だけで奴らを掃討出来るのか心配だと。

 

「問題ない。まあ見ていろ」

 

今日は魔力の温存が十分だ。数日の調査で奴らの特徴も理解している。初日のような失態は犯さない。

俺は不安げに見つめる直樹と他の面々に待機を命じて五階の店内へと駆け出した。

 

 

 

 

「ふっ……!」

 

「グギィ!?」

 

突き出した鉄パイプの先端が『死体』の眉間を貫く。

 

遅れて両脇から同時に奴らの腕が迫る。

だがいかんせん遅すぎる。

 

ぐるりと身体ごと鉄パイプを振れば奴らの首が刎ね飛び伸ばした腕が力無く落ちる。

 

俺はすぐに次の反応があった場所まで駆けた。

 

次々と奴らを葬りつつ俺は今後の計画を立てていた。

確保する物資は食品は勿論のこと服や日用品も必須である。まだ後輩たちをうちで預かるかは決まっていないが当面は面倒を見ることになるなるだろう、そうなれば必然、女性用の日用品の確保も必須だ。

 

思えば柚村が自分で探索に行きたいと言い出したのもそういう問題があったからなのかもしれない。

 

俺自身は特に気にしないのだが彼女たちはそうではないだろう。それくらいは分かる。

なので柚村を護衛として一時的に別行動をとるつもりだ。

 

と黙々と考えているうちに最後の一体を仕留めていた。

 

頭部に突き刺さった鉄パイプを引き抜き付着した血液を振るい落とす。

 

「さて、次は四階か」

 

事前に調べた結果、五階と同じような規模で奴らが徘徊していたがそのくらいならさほど時間はかからないだろう。

 

 

 

 

 

「終わった、次は四階に行くぞ」

 

「え、もう!?」

 

合流早々に告げて階段を降りていると直樹が驚いたように声をあげていた。

 

「確認してきても構わないぞ、五階の奴らは掃討済みだから危険もない」

 

「遠慮します」

 

探知魔術も使って調べたから間違いはないのだがまあいい。

とりあえず順に片付けていくだけだ。

 

 

予想通り大して時間をかけずして四階の掃討も完了した。ここは紳士服売り場なので俺の着替えを物色することにする。

いざ選ぶとなるとそれなりに悩んだりもしたが何着か選んで三階に移動した。

 

三階は比較的女性や子どもの『死体』が多かった。すでに魂は抜け出てしまっているので俺は特に躊躇はしない。見逃してもどのみち治る見込みもない、というか既に死体と遜色ない。

ここも順当に掃討を終える。

 

「女性服売り場か、では俺はここで待っているからお前たちは服を選んでこい。柚村」

 

「わかってるよ」

 

柚村の護衛のもと彼女たちは店へと向かった。

 

さて、では俺も少し休憩としようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を階段付近に残しあたしたちは自分たちの服を見繕いに店に入る。

周囲の警戒を怠らずにあたしも店に並ぶ服を物色する。

 

「結構残ってるじゃん」

 

「はい! この付近はまだ“あの日”以降誰も手をつけてないみたいです」

 

なるほど、汚れも見当たらないことからパンデミック時も比較的人は少なかったのだろう。

あたしたちとしては好都合でしかない。

 

「……」

 

「どうした? あんたも好きに選んでいいんだよ?」

 

後輩の一人、美紀は難しい顔をして服をただ見つめていた。

 

「あの人、本当に信用できるんですか?」

 

と思ったら不意に問いを投げかけてきた。

 

「まあ、背高いし顔も怖いしぶっきらぼうではあるからね。でもあんたたちにひどいことはしないと思うよ? 少なくともあたしは全面的に信頼してる」

 

「どうしてそこまで……」

 

「いやぁ、あいつには初日から助けてもらっちゃったしね」

 

思い返すのは燃え盛る教室で颯爽と現れた彼。強い意志のこもった瞳で「付いて来い」って言ってくれたあの時。

 

「あいつはいい奴だよ。こんな世の中になっちまって少し捻くれちまったけど、根は優しい奴なんだ」

 

きっとそう。これはあたしの願望でもある。彼はパンデミックによって精神を病んでしまったのだと、本当はあんな冷たい瞳をする奴じゃないって。

でも最近になって薄々気付いていた、あれこそが彼の本当の姿なのだと。

 

「そう、ですか……」

 

いまいち納得していない美紀は渋々服選びに戻って行った。

まあいきなり信用しろなんて無理な話だ。だから今は目の前のことを精一杯頑張ればいい。

 

「ほーら、せっかく選び放題なのに辛気臭い顔しない」

 

「わっ!」

 

後ろから急に抱きついてみる。こういう真面目すぎる子には積極的にいってあけた方がいい。

 

「おお? 後輩のくせに生意気な胸してるねぇ、どうやったらこんな育つんだい?」

 

「ひゃっ!? ちょ、ちょっと、柚村先輩!」

 

ムニムニと柔らかいものが手を包む。あたしよりも成長してるとかけしからん胸だ。

 

「ぁ……んぅ……!」

 

揉みしだいていると段々と美紀の声にも艶が出てきた。

あたしもなんだか楽しくなってやめられない。

 

「あーーー!! 先輩何してるんですか!?」

 

と、試着室からすでに着替えの終えた圭が出てきた。

 

「おや、あんたも触るかい?」

 

「え……さ、触ります」

 

おずおずとしかし興味津々に胸を見ながら、慎重に揉み出す圭。

 

「け、圭まで!? 何してるの!?」

 

「うわぁ……思ったより大きくて柔らかい。……羨ましい」

 

「うぅん! ……け、けい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

なにやら彼女たちの向かった方からやけに艶のある声が聞こえてくる。大丈夫だろうか?

 

様子を見に行くか迷っていると、突如けたたましい音を立てて窓が打ち破られ何かが飛び込んできた。

 

「ギエェェェ!!」

 

「なっ!?」

 

それは今まで見たこともない生物だった。いや、ところどころ腐敗しているのを見るに“奴ら”と同類なのは明らかだったが。

 

ソレは鳥の形をしていた。ただ十m以上の巨体と二対の翼、頭部に蠢く複数の眼球を除けばだが。

 

ソレはバサバサと翼をはためかせてから三階の通路へと降り立つ。

 

黄色い体毛を震わせてこちらを見ている。よく見れば翼の先には鋭い鉤爪が備わり、脚には更に巨大な鉤爪。それを床に食い込ませゆっくりと身体を起こす。

 

「何だアレは?」

 

その腹部には無数の人面が浮かび上がっていた。いや、絶えず蠢き微かながら呻き声を上げている。

 

仕事柄、生理的嫌悪感を抱く“物体”は幾つも見てきたが目の前のアレも相当に醜悪な形をしている。

 

極め付けに奴からは濃厚な死徒の“ニオイ”がした。

 

「死者……」

 

しかし霊体の脳があるわけではないらしい。肉があって血も通っている。だがどうにも“死徒”に似た気配を感じる。

 

「何はともあれーー」

 

ーーアレは敵だ。

先程から鋭い殺気が絶えず送られている。

奇妙な点の多い相手だがとりあえずは仕留めてからだ。

 

あの鳥にも多少の知恵はあるようでこちらが臨戦態勢に入っていることを察して様子見に徹している。

ジリジリとお互いに慎重に距離を詰めている。

 

そこへーー

 

「大丈夫かい、すごい音が聞こえたけどーー」

 

最悪のタイミングで彼女たちが戻ってきてしまった。加えて位置もあの鳥の後方だ。

 

「逃げろ!!」

 

「ギエェェェェ!!」

 

俺が声を発すると共に鳥は素早く反転し彼女たちに襲いかかった。

 

「くそっ!」

 

迷わず身体強化を発動し、一気に駆ける。翼についた鉤爪を器用に使って巨体に似合わぬ速度で彼女たちに襲いかかる鳥、それを追い越し面前に立つ。

 

「たぁっ!」

 

間一髪のところで鉄パイプを振るい鳥の頭部を打ち払う。威力を殺しきれずに何歩か後ずさる鳥。

全力で叩いたつもりだったのだが、腕を伝って尋常ではない硬さを感じ鳥を見れば、

 

「ギ、ギ……」

 

殴った面から血を滴らせながらも形状を保った頭部。首くらいは飛ばせるかと思ったが、どうにも強敵のようだ。

 

「柚村!」

 

「はいよ!」

 

呼べば柚村は瞬時に意図を解し、へたり込んでしまっていた後輩たちを連れて後方へと下がって行く。

 

「これでサシだ」

 

「ギギ、ギエェェェ!!」

 

怒りに打ち震えながら鳥は血走った眼でこちらを捉えて離さない。六つの鉤爪を使って高速でこちらに突進してくる。

思ったほど知能はないらしい。

 

「っ!」

 

近付いた途端に大きく嘴を開いたのを見て咄嗟に横に躱す。そして間髪入れずに横から目玉を突いた。

 

「っ、硬いっ!」

 

反対側まで貫くつもりが中途半端に刺さってしまった。

 

「ギエェェェェ!!」

 

痛みからかブンブンと頭を振り、落とそうとしてくるもなんとかしがみつき頭部に両足を乗せた。

 

「ふんっ!」

 

そして思いっきり鉄パイプを押し込む。ズブズブ、グチュグチュと不快な音を立てながら頭部に刺さっていく鉄パイプ。

 

「ギギッ、ギギギィィィィ!!」

 

尚も逃れようと頭を振り回す鳥だが気にせず押し込み続け、最後に鉄パイプの先から掌打を叩き込みようやく脳にまで届いたらしい。

 

「ギギギギギ!! ギ……」

 

耳障りな断末魔をあげ、鳥は力無く地面に倒れ伏した。

ズズン、と地響きを立てながら倒れた巨体はもはやピクリとも動かない。

それを確認してから鳥の頭部を降りる。無理に押したせいか鉄パイプは所々折れ曲がっており抜くのも苦労しそうなので破棄する。

 

途中ヒヤヒヤしたが無事に倒せてホッとする。

 

しかし、死徒の気配を放つこいつは一体? とても野生動物には見えないがこいつはなんなのだろう。

 

「先輩っ!!」

 

と、祠堂がこちらに駆け寄ってきた。

 

「もう大丈夫だ、この通り討伐した」

 

横たわる鳥を指差せば祠堂は「ひっ!」と言って顔を背けてしまった。

 

遅れて直樹、柚村も駆けつける。

 

直樹も柚村も鳥をなんとも言えない表情で見ている。

 

「……こいつはなんなんだい?」

 

「さあな、とりあえず仕留めたが正体まではわからん」

 

解剖して調査すれば分かるかもしれないがそんな長時間ここにいるのも危険だ。さっきのように鳥がまた来るかもしれない。

 

「こんな化け物まで……」

 

しかし直樹は異様な鳥を見て絶望の色を深めていた。

まあ、そうなるな。

 

だがどちらにせよ生きるためには物資を回収しなければならない。

 

俺は次の階へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

先ほどは怪鳥の襲撃というイレギュラーがあったが二階は難なく制圧に成功した。ちなみに新たな得物は金属バットだ(硬化のルーンでry

そして二階はどうやらアクセサリー等の店が立ち並んでいる。その中にはレジャー用品やリュック専門店などもある。

 

「よし、ここで物資回収用のリュックを調達する。各自気に入ったものを選べ」

 

「え、なるべく大きいもので統一した方が良いのでは?」

 

直樹がもっともな質問をしてくる。

まあその方が効率的ではある。

 

「大きさはそうだな、自分で運べる大きさにしておけ、撤収する時に重くて走れないとなればそれこそ問題だ」

 

「なるほど」

 

頷く直樹を見届け、他の二人も特に質問はなさそうなので俺も回収用のリュックを探しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

早々に手頃なリュックを見つけ他の面々を見に回った。

すると柚村は特に変わりはなかったが、祠堂と直樹が明らかにビクビクしながら店を回っていた。

あの怪鳥の襲撃が相当堪えたらしい。

 

見かねて二人に声をかける。

 

「そう心配するな、また来たとしても今度は手早く仕留めてやる」

 

「先輩……」

 

尚も不安そうな二人の頭を撫でる。

 

「大丈夫だ。俺が必ず守る」

 

すると祠堂は目に見えて元気を取り戻した。

 

「信じましたからね?」

 

そしていたずらっぽくそんなことを言ってきた。

 

「任せろ」

 

俺も口角を上げて返す。

だが直樹は未だ疑心暗鬼といった様子でこちらを見ていた。若干顔が赤い。怒っているのかもしれない。

 

「子どもじゃないんですから、そういうのはやめてください」

 

とすげなく手を振り払われてしまった。だが先ほどのような落ち込んだ雰囲気は感じられずとりあえずは大丈夫だろう。

 

それから少しして全員がリュックを背負っているのを確認しいざ一階の鎮圧に移った。

 

 

 

「少し数が多いから時間がかかるが辛抱してくれ」

 

「別に気にしてないよ、あんたこそ気をつけてね」

 

ただ待っているのも不安だろうに逆に心配された。まったく嬉しいことを言うじゃないか柚村のくせに。

 

「言うようになったな」

 

「なんだい、喧嘩売ってんのかい?」

 

少しからかってみたらかなりガチでキレた顔で怒られたのでさっさと一階の掃除に取り掛かる。解せぬ。

 

 

予想通りかなりの数が蔓延る一階の掃討は時間がかかった。倒しても倒しても現れる奴らに辟易としながらも新たに得物とした金属バットを振るい続ける。

あらかた仕留めたら反応を探しつつ店内を虱潰しに徘徊する。

 

そうして一階の掃除が終われば、あとは出入り口の封印だ。

今までの階と異なり一階は外と地続きとなっている。なので大音量で騒げば外の奴らも進入してくる。

他にも生前にここで働いていた奴らなんかはふらりと立ち寄るかもしれない。

なので簡単な物理障壁を各入り口に施した。

 

 

「残るは地下か」

 

先に軽く気配を探ったが、一階の比じゃない数の奴らが徘徊していた。加えて食料を調達する場だ、下手に奴らの血を撒き散らすわけにはいかない。

 

「柚村、彼女たちの護衛に加えて一階の警戒も頼みたいのだが……」

 

一応、障壁に何かあれば察知できるが、あの鳥のようなイレギュラーが起こるかもしれない。しかも広大な一階フロアで待機させるのは少し気がひけるが。

 

「心配し過ぎ。あたしだってあの子たちを死ぬ気で守るくらいはできるつもりだよ」

 

「死ぬのは認めないが、とにかく頼んだぞ」

 

「はいはい」と分かってるんだか分かってないんだかテキトーな返事を聞きつつ、彼女を“信じる”ことにする。

 

階段を抜けいざ降りてみれば、すでに目に見える範囲で蠢く赤い光が無数にあった。

これは長期戦になりそうだ。

 

とりあえず周囲の奴らの頭をバットでかち割っていく。その音に惹かれて奥から更に団体さんがやってきた。

 

「ふむ、ここらは缶詰コーナーか」

 

なら距離を置いた方がいい。

ふと目を向ければ遠くに生鮮コーナーのプレートが見えた。あそこが適任だろう。

 

のろのろと腕を伸ばす奴らの間を掻い潜り生鮮コーナーまで辿り着く。そして商品棚の淵をバットで何度も打ち付け音を鳴らす。

地下というのもあり広い店内に歪な金属音が鳴り響く。

 

やがてワラワラと奴らが集まり始めた。

 

ある程度集まったところで討伐に移行する。

全部仕留めたらまた音を鳴らし集め、それらを仕留める。それを何度か繰り返しようやく粗方仕留め終わる。

後はバックヤードなどに隠れる奴らを虱潰しにして終わりだ。

 

「よっ、と」

 

精肉コーナーの裏にいた元店員らしき『死体』の頭をバットで潰す。血を吹き出しながら倒れ臥す奴を見てようやく地下の掃討が終わったことを実感する。

奴らの反応はもう無い。あとは物資を回収して帰るだけだ。

 

物資調達に来ただけなのにやけに疲れた気がするが彼女らの安全を考えるなら惜しむべき苦労ではない。

そう思いながら彼女たちに報告に向かおうとして……後ろの気配に気づいた。

 

「っ!」

 

咄嗟にバットでガードしながら振り返る。そこに大きな爪を振りかぶった“奴”が襲いかかった。

 

「こいつっ!」

 

それは先ほど頭を潰した個体であり、潰れたはずの頭部には新たに真っ赤な頭部が生えていた。とはいえ元のまんまではなく頭蓋骨に皮が張り付いた程度のものだが。加えてその両手には太く長く伸びた爪が付いている。

 

とにかくこいつを引き離すべく腹部にヤクザキックを食らわし蹴り倒す。

すると全身からグチュグチュという音と共に血が吹き出し、やがてモリモリと筋肉が膨れ上がる。

 

直感で、このままではまずいと感じ咄嗟に頭部にバットを振り下ろす。

しかし左手でがっしりと掴まれ受け止められてしまう。

 

俺は片手でバットを掴んだまま力比べをしつつもう片方の手で腰のハンドガンを取り出し奴に発砲する。

頭部に二、三発くらいつつもまだ動く。頭部は弱点ではなかったのか?

 

苦し紛れに心臓の辺りに撃ち込むとピタリと動きを止めて、バットを掴む手が力無く落ちてそのまま動かなくなった。

撃ち込んだあたりを見てみると淡く紅い光を放って鼓動する心臓が透けて見えやがて動かなくなると同時に光も消えた。

 

こいつの弱点は心臓か。

 

「しかしこれでは前提が崩れる」

 

この数日では問題なく頭部の損傷で即死していた奴らが、今度は復活して心臓に弱点を移行している。

これはもしかすると彼女らにも相応の武器を与える必要がありそうだ。

 

「今は物資の回収が先か」

 

また課題が浮上したことに溜息を吐きながら俺は彼女らを呼びに行った。

 

 

 

 

 

「ねえねえ美紀、うんまい棒があるよ!」

 

「そりゃあるでしょう……私も持っていく」

 

キャッキャしながらお菓子コーナーを物色する後輩を見ながら隣の柚村に声をかけた。

 

「柚村、少しいいか?」

 

「ん?」

 

うんまい棒を咥えながら振り向いた彼女をスルーしつつ先ほど遭遇した変異体と三階で襲撃してきた鳥のことを伝える。

 

「頭を潰してから復活したのかい?」

 

「ああ、あの時確かに頭部を丸ごと叩き潰したはずなんだが、どうやったか頭部を再生させて全身の筋肉も発達させていた」

 

丸ごと叩き潰した、のあたりで露骨に嫌な顔をしていたがスルー。

加えて肥大化した心臓が新たな弱点となっていた。

 

「おまけにさっきの鳥は鳥じゃないって? そりゃあんなデカくてキモいのはいないと思うけど」

 

「俺が考えるに、アレは奴らの変異体なのではないかと思う」

 

数日間の調査では『死体』となっていたのは哺乳類だけだった。鳥類などは全く影響を与えていない。たとえ死肉を食らっていようとそのカラスにはなんの変化もなかった。

 

そこから推測するにアレは奴らが変化した存在なのではないかということ。つまり奴らが進化するという厄介な事象を認めることになる。だがそうすると一度だけ再生した先ほどの個体の説明もある程度つく。

あれも奴らの進化によるものではないかと。

ここ数日の間でそこまでの進化を遂げているということ。

 

「進化、か」

 

だが柚村は特に驚くことも悩むことも焦ることもなく黙々と物資を回収していた。

 

「……それだけか?」

 

「ん?」

 

まるで意味が分からないと首をかしげる柚村。

 

「いや、やはりお前は肝が座っているのだな、と」

 

「うーん、そういうことじゃないんだよね」

 

「? どいうことだ?」

 

言っている意味がわからない。すると柚村は少し悩んでから口を開いた。

 

「だって、アンタなら勝てるんだろ?」

 

と一言。それだけ言っていたずらっぽい笑みを浮かべるとまた物資回収に戻った。

 

なんと単純明快な。なんとあっけない。

つまり彼女は俺に全面の信頼を置いていると、そういうことか。

 

その思考は危険だ、と頭で理解しながらも、俺は少しだけ嬉しかった。

 

 

 

 




ハンク再登場しないかなぁ。
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