多分、今日以降は就活が激化するのもあって続きを書けない。今日は卒業論文の授業用のレポートを書くためにたまたまPCつけていたから書いただけなんだからネ!
楽器店でゲリラライブをやってそのまま拉致されるかのように喫茶店に連れていかれ、そこでバンドの勧誘を受けたあの日から一週間経った。
「………ついに大学にまで見張り来ちゃったよ……」
大学の本部が入っている建物から出て少し坂道を下ったところにあるバス停の辺りに停まっている、昨日一昨日位からかなりの頻度で見ている黒くて長いリムジンを見て俺はそう呟いた。
「……俺はやんないってあの時きちんと意思表明したんだがなぁ……」
ストレスがかかったのか痒くなってきた頭を左手で掻きながらリムジンが止まっているバス停の方ではなく、そこより少し離れたところにある駐輪場へと俺は向かった。
『ま、いくら粘着質にされたところで俺の意思は変わらないし、いくらあの人たちの身体能力が高いとは言っても流石にこれにはついてこれないっしょ。』
向かった先にあるものを見てそう思いながら俺は手に持った鍵を回す。
キュルキュルキュルキュルと甲高い音が周囲に鳴り響き、ボンッという音とともにエンジンは始動した。
◇◆◇◆◇
「それでそのまますごい勢いでバイクに乗ったまま今日は逃げられちゃったんだって~」
「へぇ、そうかい。その人はいけずな人なんだね。」
「…………」
今日はハロハピの練習があるからとこころに呼ばれて弦巻邸にやってきたところで部屋の扉越しに私の耳に入ってきた会話がこれだ。
「………はぁ……まだあきらめてないのこころぉ~?」
そう言いながら扉を二回ノックして入る。部屋の中にいたのは彼にあったあの時は丁度演劇部の公演があっていなかったギター担当の薫と、こころだった。
「そうよ!だってあのピアノの腕!あれがあたしたちのバンドに加わればもっと素敵な世界を創り出せると思わない!?ミサキだってそう思うでしょ!!」
「ふむ……私も聞いてみたいねその彼の演奏とやらを。」
「あのねぇ……」
「あの時の演奏はたまたま入った楽器店でやってたから録音なんて……え?あるの?ありがとう黒服の人!!」
「なら聞かせておくれよ。」
一瞬だけこちらに意識が向いたと思ったらすぐに二人の世界に入ってしまった目の前の2人を放置して私はふっかふかな、私には一生縁がないはずだったとても柔らかいソファに座って額に手を当てた。
「はぁ……彼も私みたいになるんだろうか……というか、”ガールズ”バンドだから彼が入ったら問題なような気が…?」
額に手を当てながらそう呟くと黒服の人が急いだ様子で部屋に駆け込んできた。
「お嬢様方、急いでこちらに来ていただけないでしょうか。」
そう言うなりこちらに背を向けて一度部屋を出て、私たちが部屋を出たのを確認してからどこかの部屋へと案内をし始めた。
私はこの家に何度か来ているけれどこの広い家の全容なんか全く分からないからただただついていくことしかできない。
しばらく歩いてとある部屋の前で黒服の人は止まり、扉を数回ノックしてから扉を開いてこちらを向いた。
「こちらです。こちらにあの青年がまっています。」
「「「え?」」」
続けて放たれたその言葉に私たち3人は顔を見合わせた。
◇◆◇◆◇
「………」
「…………あのぅ…」
腕を胸の前にくみ、左足を組んだ状態でソファに座っている俺が不機嫌なのを分かっていながらも、どうにか俺に話しかけようとするあの時カノンと呼ばれていた目の前の少女を見つつ、俺は顔をしかめてしまうのを辞められなかった。
何でこんな敵地に乗り込むようなことをしないといけなくなったのかというと、それは十数分前にまでさかのぼる。
十数分前。俺はあの黒服たちから逃げ切ったという確信を持ったまま家へと帰り、そのまま家の電子ピアノの電源をオンにした状態で服を部屋着に着替えようとしていた。………妙に気の抜ける家の呼び鈴が鳴るまでは。
「はい。」
インターフォンの受話器を掴み、呼び鈴に応答すると
「あの、こちらは立花奏さんのご自宅でよろしいでしょうか。」
「………あんたら……嘘だろ……」
インターフォンについているカメラが映し出す来訪者の姿は逃走者を追い詰めるハンターのように真っ黒なスーツを着て、同色のサングラスをかけた男たち。
そしてインターフォンに声をかけるその男の声は、あの日俺を捕まえてそのまま拉致するかのようにあの喫茶店に連れて行った男のものだった。
「帰れ。アンタらのボスか何かには『俺は嫌だといっていた』とでもいってくれ。前にも言ったが俺は自分の
そう言いながらインターフォンを切断しようとするも
「いえ、そう言うわけにはいきませんから。」
「はぁ?」
あっちはこちらの言い分をまったく聞こうとしない。
「嫌だといっている。」
「来てもらいます。」
「警察を呼ぶぞ?」
「どうぞご自由に。こちらは既にそちらの方には話をお付けしておりますので。」
「………」
俺は無言でポケットからスマホを取り出し、警察に通報するも
「………マジかよ。」
警察のオペレーターから言われたのは上層部経由で弦巻家のものが俺の家の前に居座るなどしても今ははそう言ったことへの対応は別にしなくてもいいとの指示を受けているといわれてしまい、俺は顔を引きつらせながら受話器の画面を見た。
画面の向こうで、黒服の男たちが不気味に笑っているような気がした。
「………だったらあの金髪のガキと直接話をつける。今から準備して家出るから近隣の人たちに変な噂にならないようにしてくれよな!!」
そう言って俺は受話器の電源を切り、家の鍵と財布、それと楽譜ケースをもって家を出、鍵を閉まったのを確認したところで
「それではお連れしますね。」
「またかよぉぉぉおお!?」
今回もあの時と同様に拉致されるかのように黒リムジンの中へと放り込まれた。
「ってぇなクソったれが………ってぁん?」
「………ひぇっ…」
悪態をつきつつ、放り込まれた際にぶつけた頭をこすりながら顔を上げるとそこには確か花咲川かどっか……何処やっけな。まぁ、いいや。カーキ色をベースにした制服を着て、こちらをおびえた様子で見ている水色の髪をサイドテールにまとめた少女が座っていた。
「………」
「ひっ……」
結構イラついていたのもあって自分でもどうかしていると思ったが、つい睨みつけてしまった。
「…………」
そんな風に自分の感情をコントロールしきれない自分自身に腹が立った結果、俺は何も言えずにリムジンの中でもこの部屋に連れ込まれてからずっと黙ったまま。目の前のカノンと呼ばれていた少女も怯え切ったままだった。
そして……
「それで、あたしがこの間言った案に同意してもらえるということでいいのかしら?」
「誰がいつそんな風に言った。」
ここ一週間の間ずっとストーカーのように憑き纏われたストレスもあってか俺は再び爆発した……が、
「………一曲だ。このケースの中にある曲のなかで一曲だけ。それでセッションやって俺の心をたぎらせれたら一緒にやってもいい。」
熱いだけじゃあ、どうにもならないことは理解していたので無理やり落ち着かせて俺は楽譜ケースをテーブルの上に置く。
楽譜ケースの中には俺が練習していた楽譜が6曲分入っている。本当はもっと練習していたが、そっちに関しては過去に一度ひどい目にあったときに練習していたものだからあまり弾きたくないのだ。
そんなことを俺が考えているとは露知らず、少女たち4人は顔を突き合わせて6曲の楽譜を見ながら曲を選び始めていた。
「う~ん、これならどうかしら?」
「こころ、その曲一応案には上がっていたけれどまだ練習してない。」
「これはいいかもしれないね。」
「薫さん、その曲は……」
「ん?何か問題でもあるのかい?」
「薫さん、その曲は一度練習しようとしてはぐみが乱暴に弦を弾いたせいで弦を切ったやつです。今の私たちじゃあ到底無理な曲かと。」
「う~ん……ならミサキ!あなたはどの曲がいいと思うの!!」
「え、私!?……そうだなぁ……これは?」
「……良いわね!これにしましょ!!この曲なら前に轢いたこともあるから大丈夫でしょ!!」
どうやら話はまとまったらしい。
ミサキと呼ばれた黒髪の少女、てかこの子前に俺に同情的な目線くれた子だな。その子がある楽譜を持って俺の方に来た。
「この曲でいいですか?」
「ん……」
楽譜を受け取って俺はまずタイトルを確認した。
「ニャル子のあれか……」
受け取った楽譜は「恋は
「だったらちょっとピアノか何かを借りさせてもらうことってできるか?」
俺はミサキって子に聞いてみた。
「え?たぶんできると思いますけれど……もしかして?」
少し不安そうな表情で聞いてくる彼女に俺は不敵に笑っているつもりの笑顔をしながら
「そう、そのまさかだ。」
そう答えた。
黒服の男たちの案内の元、ピアノが置かれている部屋にたどり着く。
楽譜をもって、俺はそのピアノの前に置かれた椅子に座り、椅子の後ろについているレバーを操作して座る高さを調整する。
ピアノの鍵盤の高さと自分が胸の前に構えた際の高さがちょうどいい高さになる様に調整してから俺はどこか期待した表情でこちらをみえる少女たちに告げた。
「俺が今から弾くけれど、俺をたぎらせたいならこれを超えてこないと無理だからな。」
そう言って俺は意識のスイッチを切り替える。
「すぅ…フン!!」
♪ダンッ!ダンッ!ダダダンッ!!ダンダダンダンダン!! ♪ダンッ!
あの特徴的なイントロのメロディラインを右手側で奏でながら左手でSAN値!ピンチ!の所を再現していく。
Aメロをあの作品を見たことがある人にはアニメのいつもにっこり這いよる混沌な冒涜的あれ娘をイメージできるように活発的に弾き、落とすところはきちんと落とす。
サビに入る直前に右手を鍵盤の上左から右へと走らせ、音の粒を輝かせる。
Bメロはもう二度と新しいオリジナルを聞くことは叶わない火の邪神をイメージしながら弾き、最後は風の邪神をイメージしながら最後まで弾ききった。
「……ふぅ」
〆の音を奏でるときに余韻を作るためにペダルを踏んでいた足を上げ、床へとしっかり足をつける。
左手で頭を掻きながら少女たちの方を見ると少女たちは心ここにあらずのようにポカーンとした表情でこちらを見ていた。
「……?」
俺が生きてるか?大丈夫か?と心配を抱いてしまったその時、先にカオルと呼ばれていた紫色の髪を後ろでまとめた少女が突然
「ブラーヴァ!!」
とか言いだしたので俺はびっくりして椅子から転げ落ちそうになった。
「うぉっ!?心臓に悪いなオイ!!」
文句を言いながら立ちあがるも、彼女はそのまま俺の両手を握ってきて、
「今すぐにでも私たちの伝説を作り上げようじゃないか!!」
とか言いながら俺の手を引いて踊ろうとしてくる。
「は?は?チョッ!?おいぃ!!」
そのまま踊らされそうになった時に
「はい、薫さん落ち着いてください。」
ミサキと呼ばれてたあの子がそれを止めてくれた。
「あなたが何を見せたかったのか、よ~~~くわかりました。なので、これから色々と考えますので一旦帰ってもらえないですか?」
ミサキって子から若干の敵意を感じながら俺はその案に従おうとする。だが、其れにはちょっとした問題があってだなァ……
「お……おぅ、別に帰るのはいいけれど……」
「ど?」
俺は肝心なことをよくわかっていない。多分、自分の口で言わないと彼女たちもわからないだろう。
「………この家の出口どこ?」
「……へ?」
俺がそう言った瞬間、部屋の空気が一瞬で変わった気がした。
◇◆◇◆◇
「すごかったわね!!これはもうハロハピ関係なく彼をスカウトしたい気分だわ!!」
「だけどこころちゃん、あの人は自分がやりたいようにやるだけって言ってたから多分何かを強制するのは嫌がると思うのだけれど……」
「彼のピアノが加わったら私たちの音楽はもっと輝けるようになる!!」
「あぁ、もう薫さんまで……美咲ちゃん早く帰って来てぇ…」
彼を玄関の方まで送り出してからとある部屋に立ち寄ってちょっとした用意をしてからさっきのピアノの部屋に戻るとそこでは予想通り自分たちの世界に入ったまま帰ってきてないこころと薫さん、そして少しおろおろした様子の花音がいた。
「(やっぱり…か)」
その光景に内心そう呟いてから私は
「………はいはい~注目して下さ~い。」
「ミッシェル!!」
私が声をかけるなり心はそう言ってこちらに飛び込んでくる。今の私はピンクのクマのぬいぐるみに身を包んでいる。
元々商店街のマスコットになる予定だったのがその時中に入っていた私ごとこころに目をつけられた結果、私専用着ぐるみと化したという経緯を持つこの着ぐるみは、こころの気を引くには十分すぎる力を持っている。
「話は聞いてきました~。なので、とりあえず作戦会議をしたいと思いま~す。あの曲をあそこまで複雑に此処で弾いたということはある意味の宣戦布告だと思えるので~。」
「そうね!!それじゃあ、はぐみも呼んで作戦会議しましょ!!」
こころはそう言うなり、部屋を出て行ってしまった。薫先輩もそれについて部屋から出ていく。
「………ふぅ。」
私は着ぐるみの頭を脱いで首を少し振る。少しの距離だったとはいってもこの着ぐるみの中は結構暑い。
「やっぱり扇風機か何かつけてもらうべきだったかな…」
私はそう呟きながら今は誰もいないピアノに昔聞いたことがあるニヤリと笑う男の影をそこに座ってあの曲を弾いている彼の幻影を通してみた気がした。
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