DATE・A・LIVE The Snatch Steal   作:堕天使ニワトラ

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『新天地』へ―――

創世重工。新社屋跡地。

 

「―――バルティン郷。内部の調査が終了しましたが、データはほぼすべて持ち去られていたようです」

「……チッ!無駄に察しのいい奴だ。<インキュバス>……」

 

魔術師(ウィザード)からの報告を聞き、初老の男性は吸っていた煙草を足下に捨てる。

その目の前には爆撃でもあったかのように、完全に瓦礫の山と化した建物があった。

 

「……まぁいい。これだけ痛い目に遭わせてやったのだ。少しは大人しくなるだろう。……役に立ちそうなものは可能な限り拾い集めろ!」

 

欲深そうな笑みを浮かべると、男性は魔術師(ウィザード)に指示を出す。

彼はとある情報で<インキュバス>の研究所の場所を突き止めた。

そこで見つけたものは、他の円卓会議(ラウンズ)のメンバーを出し抜ける可能性を秘めたものだった。

これと併せて<インキュバス>を独自に捕獲することができれば、<ラタトスク機関>どころかDEMインダストリー、はてまた世界のすべてを支配下に置くことができるかもしれない。そう考えたバルティンの中で、今まで(くすぶ)り続けていた野心が一気に爆発した。

 

「待っていろ<インキュバス>!このバルティン・ドゥルガッセの掌中からは逃れられんぞ!」

 

男性、バルティンは高笑いを響かせながら、瓦礫の山と化した社屋を眺め続けた。

 

 

 

 

 

「―――あらまぁ、これはこれは……」

 

目の前に広がる景色を見て、狂三は驚きの声を洩らす。

そこには海外の海水浴場顔負けの砂浜、見たこともないような植物が覆い茂る亜熱帯。

そしてその中心部にそびえ立つ巨大な建造物が、まるで狂三を未知の異世界に来たような気分にさせた。

 

「喜んでもらえたか?ここが俺たちの本拠地、『新天地』だ。とりあえず中で休もうか」

 

零が指し示したのは、目の前にあるこの近辺でいちばん高いであろう建造物。

そこは古代遺跡のような外観でありながら、所々に現代的な機械をあしらったような容姿をしていた。

 

「はぁ。……ところでここはいったい何処ですの?わたくし、様々な国を見て回ったことはありましたが、このような場所は……」

「でしょうね。……とりあえず地球上にはないどこか(・・・・・・・・・・)とだけ言っておくわ。ほら、こっちよ」

 

志保の曖昧な説明に首を傾げながら、狂三は零や<オルトロス>たちの後に続いて、建物の中に入っていった。

 

 

 

 

 

創世重工本社。

 

「―――社長!」

「社長!よくご無事で……!」

 

広大なオフィスで零を出迎えたのは、新社屋にいた従業員たちだった。

 

「いったい何があった?みんな怪我はないか?」

「はいっ!社長の言いつけ通りに脱出したので、怪我人は誰もいません!」

 

状況確認をする零に、従業員のひとりが涙目になりながら状況を事細かに説明する。

 

 

零と志保が狂三の捕獲に出発してからしばらく経った頃、何の前触れもなく砲弾のような爆発が建物に直撃した。

幸い休憩時間だったので、脱出口が近くにあった休憩室に従業員たちと四糸乃はいた。

そのため異変を察知してすぐに全員が避難し、誰ひとり死傷者を出すことなく脱出に成功したのだという。

 

「……そうか。みんな無事か。よかった……」

 

零は全員の無事を確認し、安堵の表情を浮かべる。

 

 

 

『―――ご主人さま~~~っ!!』

「ご主人、様……!」

 

そこへ隣の部屋から『よしのん』と四糸乃が駆けてきて、零の胸に飛び込んだ。

 

「おぉ、よしのんと四糸乃も、無事で良かった。……聞いたぞ。ちゃんとみんなの言うことを聞いて脱出したってな。偉いぞ」

 

零は『よしのん』と四糸乃の頭をわしゃわしゃと豪快に撫でる。

 

「……ご、ご主人様も、無事で……よかった、です……」

『よしのんたち、ずーっと心配してたんだよ~?ご主人さまは大丈夫かな~って』

「そうか……ごめんな。心配かけて。俺はこの通り何ともないから、心配しなくても大丈夫だ」

 

涙目で見つめてくる四糸乃と『よしのん』を見て、心を痛めた零が無事であることをアピールしてみせた。

 

「あらあら。ずいぶんと可愛らしい方ですわね」

「ええ。四糸乃ちゃんとよしのんちゃん。あなたと同じ精霊だから、仲良くしてあげてね」

 

その様子を傍から見ていた狂三に、志保が簡単に説明する。

 

「そうでしたの。……ということはわたくしの先輩に当たる、ということですわね」

 

四糸乃と『よしのん』をあやすのに必死になっている零を見て、狂三はゆっくりとその側に歩み寄った。

 

「―――あらあら。とても可愛らしい方ですわね」

「ふぇ……?」

『お姉さん、だれ……?』

「く、狂三……?」

 

いきなり間に入ってきた狂三に、四糸乃と『よしのん』、そして零は呆然とする。

 

「初めまして。わたくし、時崎狂三と申しますわ。よろしくお願いしますね。セ・ン・パ・イ・さん?」

『せ、せんぱい……?』

 

その尊敬されるような響きに、『よしのん』の気分が一気に向上する。

情けなく泣いているところを見られては、四糸乃まで後輩に悪い印象を与えてしまう。

四糸乃を守るために気を取り直した『よしのん』は、ブルブルと身震いして涙を振り払った。

 

『あれれ~?もしかして新入りの精霊さん?よしのんはよしのん!可愛いっしょ~?何ならよしのん先輩って呼んじゃってくれていいんだよ~?……ほら、四糸乃も泣いてないで挨拶しなきゃ!』

「ふぇ、えぇっ……!?」

 

急に話を振られ、四糸乃は対応に困ってあたふたしてしまう。

 

「ふふ……本当に可愛らしい方ですわね。よろしくお願いしますわ。四糸乃さん」

 

言いながら握手を求めて右手を差し出す狂三。

 

「えっ?……は、はい。よろしく、お願い、します……」

 

恐る恐るその手を取り、震えながらも握手に応じる四糸乃。

急に話題を変えられたせいか、いつの間にか四糸乃は落ち着きを取り戻していた。

 

「……助かったよ。狂三」

「いえ。お役に立てたなら何よりですわ」

 

これで四糸乃が大泣きせずに済んだ。零は狂三に感謝しながら、四糸乃の頭を優しく撫でる。

 

「先輩なら先輩らしく、ちゃんとしないとな。……さて、そろそろ遅いから飯にするかな。四糸乃と狂三にはここの案内もあるし」

「そうね。……みんなもいろいろあって大変だったでしょ?今日はもう休んでていいわ。お疲れ様」

『お疲れ様でしたー!』

 

志保の挨拶で従業員たちは解散し、わらわらとオフィスを去って行った。

 

「……さてと、俺たちも行くか。四糸乃、狂三。まずは夕食を済ませて、それから部屋に案内するからな」

『はいはーい!ささっ、行くよ!四糸乃♪』

「うん……」

「ご主人様が行くところなら何処へでも……」

「久しぶりの本社の食堂ね。今日は何にしましょうかしら?」

 

零に引き連れられるようにして、四糸乃、狂三、志保は食堂へと向かった。

 

 

 

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