DATE・A・LIVE The Snatch Steal   作:堕天使ニワトラ

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与えられた霊結晶

いきなり密林地帯に送られた零は、それから死にもの狂いで命を繋ぎ止めた。

なんとか生き延びてちょうど1年目に、零はまたあの真っ白な空間に連れてこられる。

これで終わりかと安堵した矢先、金色の『何か』は、また零を別の世界へと零を送った。

銀河を二分する規模の戦争が巻き起こっている世界。

他に類を見ないほど『食』が進化した世界。

多次元に侵食する植物の脅威が迫る世界など、20を超える世界を転々とさせられたのだった。

 

 

 

 

 

これで何度目かの役目を果たした零は、また真っ白な空間に呼び出されていた。

 

「……今度はどんな世界に連れて行く気だ?」

 

不機嫌そうに零が用件を聞く。

こんなことが続いて20回目。もう零には文句を言う気力すら起きなかった。

 

―――この霊結晶(セフィラ)の導きに従え。やるべきことはすべて、これが教えてくれる。

 

そう言って差し出したのは、漆黒の輝きを放つ、宝石のような球体。

 

「……?……何だよそれ……?」

 

見慣れない物体に警戒しながら、零はゆっくりと球体に手を伸ばす。

そして零の指がそれに触れた瞬間、球体は一瞬で粒子となり、零の手に吸収された。

 

「……!?……おいっ!これって一体……!?」

 

零が問いただそうとした瞬間、身体の芯が急に熱くなるような感覚を覚える。

 

「……っぐ!……あぁっ……!……な、何しやがった……!?」

 

あまりの苦痛に胸を押さえて(うずくま)りながら、零は金色の『何か』を睨み付ける。

すると零が着ていた衣装が粒子状になり、別な形へと変化させていく。

 

「こ、これは……」

 

完全に別な形状へと変化した衣装を見て、零は思わず呆然としてしまう。

それはタキシードのような高貴さとヴァンパイアのような邪悪さを併せ持ったような形状をしており、常にあの球体のような光を放っている。

しかも先ほどまでの苦痛から一転し、身体の奥から今までにない力が溢れ出てくるような感覚を覚えた。

 

―――霊結晶(セフィラ)をその身に宿し、霊装を身に纏い、天使を行使する存在―――『精霊』。さぁ、旅立ちの時だ。

「……!……おいっ!俺に一体なにを……!?」

 

飛びかかろうと立ち上がった瞬間、金色の『何か』は光を放ち、零は咄嗟に腕で顔を覆う。

 

「せめて何がどうなってんのか説明くらいしろよ!いっつもいっつも言いたいことだけ言いやがって―――」

 

そんな零の叫びは光の中に消え、零の新たな旅が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

―――それから時は経ち、日本の天宮市と呼ばれる市、その一角にある工業地帯。

 

「……もうすぐ30年か。ずいぶんと経ったな……」

 

装甲車のようなトラックの助手席で、黄昏れるように零が呟く。

 

「そうね。……けど有意義な時間だったと思うわよ?顕現装置(リアライザ)なんて発明、すごく研究のし甲斐があったじゃない」

 

零の隣でトラックを運転している白衣の女性が、どこか楽しそうに語りかける。

 

「まぁその辺は否定しないけどな。……おっ、見えてきた」

 

目的地である建物が見えてくると、零が窓から乗り出す。

そこは少し前に小さな製造業が倒産し、空き家になった小さな社屋だった。

 

「あれが新しい活動拠点ね。……前みたいなこと(・・・・・・・)にならないといいけど……」

 

建物の前で車を止め、白衣の女性がげんなりしたように重たいため息を吐く。

 

「それを考慮したからこんな町外れの寂れた工業団地に拠点を作ったんだ。『アレ』が完成するまで見つからなければ上等だって」

 

トラックから降りた零は、見上げるようにその建物を眺める。

 

「……ここが俺たちの新しい城―――『創世重工』のリニューアルオープンだ」

 

そう誇らしげに宣言した零の表情は、どこかわんぱく小僧のように感じられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――精霊。隣界に存在する特殊災害指定生命体。発生原因、存在理由ともに不明。

こちらの世界に現れる際、空間震を発生させ、周囲に甚大な被害を及ぼす。

また、その戦闘能力は強大。

 

対処法1、武力を以てこれを殲滅する。ただし前述の通り、非常に高い戦闘能力を持つため、達成は困難。

対処法2、デートして、デレさせる。

―――そして対処法3、契約して、隷属させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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