DATE・A・LIVE The Snatch Steal 作:堕天使ニワトラ
<プリンセス>の二度目の現界の次の日、零と志保は<プリンセス>に接近していた少年について、丸一日かけて調べていた。
志保が学校のシステムにハッキングし、二人で表示された情報に片っ端から目を通していく。
「……名前は
「思ってた以上に普通の情報しか無いわね。……明らかに臭うわ」
夕焼けで赤く染まった部屋で、零と志保は真剣な面持ちで見合う。
「普通すぎて俺の勘が逆に怪しいって言ってるな。誰かが何か隠してるのか?」
「となると誰が?って話になるわね。ここまでして隠すとなると、向こうは結構大きな組織って可能性があるわね。しかも精霊のことを知ってるとなると……」
二人はこんなことを企む組織の候補を挙げる。
少なくともASTと協力している様子がないことから、陸自という線は消える。
「DEMはちょーっと考えにくいな。あそこはやるとしたら、武力にものを言わせて強引にやるだろうし……」
「……となると、これだけの力があって、精霊相手に武力なしで近づこうなんて考える組織……」
考えれば考えるほど、その目的が見えなくなってしまう。
精霊とあの少年が仲良くなり、親密な関係にするのが目的なのはわかった。
だがその後はどうするのか。放っておけば自然と消失し、また空間震を起こして現界する。そんな存在を懐柔して戦力にでもするのだろうか。
「……わからん」
「そうね……」
完全に途方に暮れる二人。いっそのことあの少年の後をつけてみるか。―――そう考えた瞬間……、
空間震警報が鳴り響き、二人の意識は思案の海から現実に引き戻された。
「……!……さっそくお出ましか!」
「となるとチャンスね。こうなったらお手並み拝見させてもらおうじゃない」
もしかしたら今回の接触で、あの少年の本格的な目的が見えるかもしれない。
少なくともすぐにどうこうする様子がない以上、<プリンセス>の命を狙っている可能性は非常に低い。
そう考えながら二人はトラックに乗り込み、精霊の反応がある地点に急行した。
そしてトラックを止めたのは、天宮市が幅広く見渡せる高台公園のふもと近く。
「おいおい、何があったんだ……」
「これまた派手にやってるわね……」
現場に駆けつけた二人が見たものは、あまりにも衝撃的な光景だった。
木々が覆い茂る森林地帯には、まるで巨大な猛獣の爪痕のような斬撃痕が刻まれている。
その近くの山に至っては、ナイフで半分にカットされたように、縦に真っ二つになっていた。
その上空を見ると、目視でもわかるほど霊力を解放している<プリンセス>の姿がある。
しかもその手には昨日の戦闘で見たものとは比べ物にならないほど巨大な大剣が握られており、この惨状はその剣によるものだと推測するのは容易だった。
「これはASTが気の毒になるわ。とは言っても助けに飛び込む気にもなれないわね……」
「確かに。……まぁASTには悪いけど、ここは全滅するまで―――」
「―――十ぉぉぉ香ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ―――――ッ!!」
「…………!?」
突如として上空から聞こえてきた叫び声に、二人は揃ってそちらを見る。
すると何もないはずの空の高みから例の少年、五河士道が重力に従って落下してくるのが見えた。
「……!……なんで空から……!?」
「……やっぱり何かいるのよ。彼を影から支援する、とても大きな力が……」
二人が戦慄している間に、<プリンセス>が彼の元に飛来して受け止める。
そして二人で何かを話していると、零と志保は思いもよらぬ光景を目にした。
「なっ……!?」
「あらあら……」
<プリンセス>は思いきったように顔を寄せ、そのまま彼と唇を重ねた。
その直後、彼女が手にしていた大剣が崩壊し、霊力の粒子となって消失する。
「……!?……天使が……!」
零が驚愕で呆然としていると、さらに驚くべき現象が起こる。
同時に霊装が徐々に粒子となり、二人の高度も地上に向かって少しずつ下がっていく。
そして地面に足がついた頃には、ドレスを思わせる<プリンセス>の霊装は完全になくなり、一糸纏わぬ姿を晒していた。
「……どうなってるんだ?いったい……」
「……社長。これを見て」
零の隣で端末を操作していた志保が、霊力探知機のモニターを見せる。
そこには周辺に霊力反応がなく、近くに精霊がいないという解析結果が表示されていた。
「……これも全部あの高校生の仕業か。……博士」
「はいはーい♪」
零が一声かけると、志保は白衣のポケットから小さなケースを取り出す。
それを開けると、中には蚊のような小さな虫が入っていた。
それをそっと指でつまむと、そのまま目の前に向かって伸ばす。
すると志保の腕は途中で消えたように見えなくなる。
「ん~と……この辺かな……?」
そして数秒ほど経ってから腕をゆっくり引き抜くと、腕は何事もなかったかのように元に戻った。
「これでバッチリよ。それじゃあ彼らがこれから何処に行くのか―――」
追跡を開始しようとした瞬間、少年と<プリンセス>を包むように、天からスポットライトのような光が降り注ぐ。
そして二人はゆっくりと浮遊していき、すぐにその場から消えてしまった。
「……!?……消えた!?博士!」
「大丈夫よ。仕掛けた観測機がちゃんと反応してるわ。……恐らく
となると二人は何処に行ったのか。それを知るのは少年に付けた虫型の観測機しかない。
しかし手元にはその情報を受信できる端末がないため、仕方なく零と志保は拠点へと引き上げていった。