DATE・A・LIVE The Snatch Steal 作:堕天使ニワトラ
雨が降り続く町中。その一角に志保が運転するトラックがとめられた。
「……ここら辺でいいかしら。さてさてターゲットは……」
志保がトラックに備え付けられた霊力探知機を起動し、精霊の居所を調べる。
「あのデパートの中ね。それじゃあまた観測機の出番かしら」
「今度は音声も拾えるように改造してあるからな。前みたいには行かないだろ」
自信満々で端末を操作して、観測機はデパートへと発進する。
しばらく店内を徘徊していると、子供用品コーナーに人影を見つけた。
「ビンゴみたいね。霊力反応もバッチリだわ」
「……にしてもずいぶんと小さいな。よくて中学生くらいか?」
モニターに表示された精霊の姿を見て、零が思わずそんな言葉を漏らす。
そこに映っていたのは、緑色の
左手にはコミカルなウサギのパペットが装着されており、彼女だけが不思議の国にいるかのような雰囲気を醸し出していた。
「……該当情報があったわ。識別名<ハーミット>。空間震の規模が比較的小さくて、AST相手でも自衛程度にしか攻撃しない大人しい
「なるほど。……ASTが外で待機してるってことは、中には他に誰もいないってことか?」
邪魔が入る前に片付けようと考えた零が、軽やかにトラックから降りる。
「……!……待って。どうやら先客みたいよ」
志保が零を止め、<ハーミット>に接近する人影を見る。
そこから現れたのは、先手をとって零の出鼻をくじいた少年、士道だった。
「……また先を越されたか……」
「本当に運がいいわね。幸運の女神でもついてるのかしら?」
だがここは彼に<ハーミット>の情報を引き出してもらうのもひとつの手かもしれない。
そう考えた零は一度腰を下ろし、士道の手並みを拝見することにした。
「……なんだか妹の面倒を見てるお兄さん、って感じね」
「あぁ。恋愛的な好感度じゃなくても、あんなのでも封印できるのか?」
二人が見守る中、士道はあれやこれやと<ハーミット>に近づいていく。
最初は腹話術のように喋るパペットのことに触れて機嫌を損ねかけたが、なんとか持ち直しているようだ。
「さっきから彼、耳のあたりを気にするみたいに触ってるわね。何か付けてるのかしら?」
「考えられるのは小型のインカムだろうな。それで影からサポートしてる連中とコンタクトをとってるんだろ」
やはり近くでこの様子を見ているのか。零は周囲にも監視の目を向ける。
「……あ、やっちゃった……」
思わず志保が負けを確信したような言葉を漏らす。
<ハーミット>がジャングルジムから落下した瞬間、士道がそれを受け止める。
その拍子に互いの唇が接触し、偶然ながらもキスする形になってしまった。
「……いや、霊装が消えてない。それに霊力反応も健在だ」
零が落ち着いた様子で端末に目を向ける。
「これで確信できたわね。彼が霊力を封印するためには、もっと恋愛的な好感度を確保してからキスをする必要があるみたい」
「だな。となるとまだ俺に付け入るチャンスはあるってことだ。……ん?」
そこで端末が霊力の反応をキャッチしたことを報せる。
見るとそこに怒りを露わにし、来禅高校の制服を着た<プリンセス>が立っていた。
「あらら。ずいぶんとタイミングの悪いことで……」
「霊力を封印できたってことは、それ相応に好意があるってことだからな……」
そんな士道が他の女とキスをしているのを見て、気分がいいはずなんてない。
修羅場と化した現場に、すぐに飛び込まなくてよかったと二人はほっとする。
すると<ハーミット>が挑発するように煽り、<プリンセス>は止めようとする士道を押し退け、駄々をこねる子供のように対抗する。
そして<プリンセス>がパペットを掴み上げ、感情的になりながら叫んだ。
「……?……なんか様子が変だな……?」
パペットを取り上げられた瞬間、あんなに口達者だった<ハーミット>が急に黙りこくってしまう。
そして弱々しく手を伸ばし、パペットを返すよう懇願した。
「ええ。性格がさっきと全然違うわね。これってもしかして……」
志保が観察するように眺めていると、<ハーミット>は天使である怪獣のように巨大なウサギの人形を顕現。
そして士道が<プリンセス>を庇う中、<ハーミット>を乗せ、パペットを咥えた天使はデパートから飛び出していった。
「……これで彼のターンは終わりってことね。おかげでいろいろと情報が入ったわ」
「そうだな。……さてと、今度は俺のターンだ」
零は<ハーミット>が