ソードアート・オンライン ―月の約束―   作:なるふち

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第一層:全ての始まり

 ソードアート・オンライン、通称SAO。

 MMORPGというのが苦手だったこともあり、VRMMORPGもプレイするつもりはなかった。

 だが、唯一の友達とも言えるやつから頼まれたということもあって仕方なく買ってみることにした。

 それが、俺がこのゲームを始めたきっかけだった。

 

 

 

「シン、右の敵をお願い!!」

「任せてくれ!」

 

 SAOの正式サービスが開始された初日に俺たちはこのゲームにログインした。

 VRMMOというものがここまでリアルな世界を作り上げることが出来るのなら、いずれFPSのVRゲームも作られるに違いない。

 目の前で戦っている彼らを見ればFPSのVRゲームもきっと期待出来るなんて考えながら。

 

「……そういう意味ではこの仮想空間にも慣れた方がいいよな。リアルな動きが要求されるならサバゲー仲間とか集めて先に実戦訓練をするのも……」

「はいはい、あんたがFPS好きなのは知ってるけど、その情熱をすこーしくらいSAOと私たち『紅蓮』にも使ってよね!」

 

 自分の世界に入ろうとしているのを遮るように言葉を発してくる。

 紅蓮とは俺たちのギルド名だ。

 ……そう勝手に呼んでいるだけだが、案外こういうのが大きな組織になったりもする。

 ちなみに、リーダーである目の前の彼女はリアルで俺も知っている人物らしいが、ここではセラと名乗っているため正体は分からない。

 

「……やっぱりSAOは馴染めないかな?」

 

 俺の様子を見て微笑をしているのが、このゲームに誘った男。

 古井慎弥、SAOではシンという名前を使っている。

 

「……やるからには全クリするまでは辞めるつもりはねえよ」

「うん、だからこそ僕はどうしても呼びたかったんだ。メロが途中で逃げ出すやつじゃないって知ってるから」

「……そうかよ」

 

 ゲーム歴に関しては俺よりもシンの方が長い。

 歴が長いってことはやりこんだ時間も違うってことで、俺がただのエンジョイゲーマーだとすればこいつは廃人と言っても過言ではない。

 

「そんじゃ、レベリングして今日中に一層攻略する勢いでやるか」

「あー! 勝手にリーダーぶってるけど紅蓮のリーダーは私なんだからね!!」

「はは、たしかに今日一層をクリアできれば僕たちも他から注目されるかもね」

 

 ……もし、この時にログアウトしていればどうなったのだろうか。

 そう考えずにはいられない。

 

 

 

 

「これで、終わり……ッ!」

 

 モンスターの撃破を確認し、確実に実力が上がっているのを確かめる。

 ゲームとはいえ、こうもリアルな動きが出来るともはや仮想と現実の違いがあやふやになるな。

 

「……噂は知ってたけど、それ以上のプレイヤースキルね」

「ん? ……ああ、シンか」

 

 セラの言葉で後ろを振り返る。

 既にシンは俺より多くのモンスターを倒していて尚且つ受けているダメージも減ってきている。

 そして最後の一体を倒し終えたのを見たところでシンの近くに駆け寄った。

 

「お疲れさま、かなり難しかったけどその分楽しめたよ」

「それは良かった! このままボス攻略するのもありだと思ったけど、時間が時間だし今日はログアウトしようか」

「え? ……あ! 明日生徒会で早く学校行かなきゃ!!」

「生徒会?」

「……あ」

 

 俺の知り合いで生徒会といえば……。

 ああ、なるほど。

 

「分かった。明日話しかけるから正解だったら飯奢れよ?」

「奢れって……、もし違ったらどうするつもりよ」

「俺の知り合いで生徒会、あとは女子となると出てくるのは一人だけだ」

「わ、分からないじゃない。ネカマかもよ?」

「あ、明日違いますとか嘘ついたら名前叫ぶからな」

「……あぅ……」

「相変わらずというか、知り合いには大人気ないな……」

 

 そんな会話をしながらログアウトボタンを押そうとメニューを開いた。

 ……だが、ある異変に気付く。

 

「……あれ? 俺のやつログアウトボタンがないな」

「あ、私も……」

「不具合かな? 運営からメールが来るまで暫く待つか」

 

 SAOからログアウト出来ないという状況をただの『不具合の一つ』と考えた俺たちはその状況に何も感じてはいなかった。

 強いて言えば明日どうやってセラをからかってやろうかというようなことばかりを考えていた。

 

 

 ――そして、デスゲームが始まった。

 後にSAO事件と名付けられることになる命をかけたゲームが。

 

 

 

 

「――さあ、語るのはここまでだ」

 

 俺が話終えるとフードの女は笑をこぼした。

 

「それが今や第一層攻略組メンバーでその名を知らない者はいないメロの過去とは……いい記事がかけそうね」

「情報屋、今度は俺の質問に答えろ」

「……前置きしておくけれど私はただの新米記者。信憑性に関してはそこらの情報屋より劣るわよ」

「こんな昔話だけで情報を提供してくれるんだ。有難いさ」

 

 無一文で持っている情報も既に出回っているものばかり。

 唯一残っていたのは数日前の平和だった頃の昔話だった俺に、その昔話を話すだけで情報を提供してくれるのだから今の俺からしてみればタダで情報が手に入ったようなものだ。

 

「そんじゃ、話してもらおうか」

 

 こんな場所に長居する気は毛頭ない。

 だが、百層を目指す前にどうしても見つけなきゃいけない。

 

「――シンの居場所についての情報を」

 

 いなくなってしまった友達を。

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