luterlude 1.「サプライズ 前編」
luterlude 2.「作り笑顔の治し方」
luterlude 3.「雷」
luterlude 4.「看病」
luterlude 5.「サプライズ 後編」
luterlude 1.「サプライズ 前編」
――AM5:30 天々座家――
リゼ「すぅ………すぅ…………」Zzz
ここあ「ふぉぇ…………」Zzz
ガチャッ……
使用人「――ちいせぇお嬢、起きてください」
ここあ「むにゃ……」Zzz
使用人「お時間ですよ」トントン
ここあ「んっ……?」
使用人「おはようございます……」ヒソッ
ここあ「ゆうしゃさん……?」
使用人「約束の時間です、起きて準備しましょう」
ここあ「やくそく……」ポワーン
使用人「おべんとうの件です……」
ここあ「……あっ」
ここあ「んっ……」クシクシ
使用人「いけますか?」
ここあ「うんっ」ピョン
使用人「まずは顔を洗って歯磨きしましょう」
ここあ「りぜちゃん……まっててね」ナデナデ
リゼ「ん…………」Zzz
ここあ「――いってきます」
――――――――――――――――――――――
――AM6:00 外――
ここあ「だれもいないね……」
使用人「まだ明け方ですから」
ここあ「…………」ゴシゴシ
使用人「眠たいですか?」
ここあ「ううん、だいじょーぶ」
ここあ「ちのちゃんといっしょに、おいしいのつくるの」ニコッ
使用人「ええ、頑張ってください」クスッ
ここあ「さぷらいずだから、ないしょにしててね?」
使用人「もちろんです、きっと驚きますよ」
ここあ「えへへ……♪」
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――――――
――昨日 天々座家 ガーデン――
ここあ「ちょくだげき!」ブンッ
リゼ「違う!」カンッ!
リゼ「ここあ、敵が側面にいる場合は横打撃が有効だ」
ここあ「よこだげき?こう?」
リゼ「それは防左側撃だ!横打撃で狙うのは相手の肩、この辺りだな」
ここあ「ここ?」
リゼ「そうだ、直突から間髪なしで繋がるから覚えておくんだぞ」
リゼ「よし、もう一度こい」
ここあ「うん!いくよ~!」
ここあ「えいっ!」ブンッ
リゼ「踏み込みが甘い!」カッ!
ここあ「たてだげき!」
リゼ「おっ」カッ!
ここあ「ちょくとつ!よこだげき!」
リゼ「いいぞ、今度はこっちの番だ」
リゼ「直打撃!」ブンッ
ここあ「わわっ」カンッ
リゼ「右側撃!」
ここあ「やっ!しとつ!」ビュッ
リゼ「おっと」カンッ
ここあ「あっ」
リゼ「弾倉撃!」ブンッ
ここあ「ひゃっ……!」
リゼ「大丈夫か!?」
ここあ「うん、へいきだよ!」
リゼ「なかなか良い攻撃だったが、剣先と台尻だけに頼ろうとするな。取り回しの際弾倉で穿つのも有効だ」
ここあ「こうだね!」
リゼ「ああ。でも、さっきの刺突は良かったぞ。上手になってきたな」
ここあ「ほんと!」
リゼ「次は防御の練習だ!いくぞ!」
ここあ「いえっさー!」ビシッ
リゼ「ふふっ」ニコッ
リゼ(楽しいな……//)ニヘラ
使用人「あの、お嬢?」
リゼ「んっ?」
リゼ「ここあ、一旦ストップだ」
ここあ「ごはんのじかん?」
使用人「夕飯はもう少しです、今夜はシチューですよ」
ここあ「やったぁ!」ピョン
リゼ「何の用だ?ここあと遊んでるんだから手短に頼む」
使用人「では……」
使用人「明日のお弁当ですが……確認したところ、やはり早朝は誰もおりませんね」
リゼ「そうか、分かった」
使用人「あっしでよろしければ簡単なものでしたらなんとか……」
リゼ「大丈夫だ、学校の購買でパンでも買うよ」
ここあ「おべんとう?」
使用人「ええ、明日のお嬢の昼食です」
ここあ「がっこうでたべるごはん?りぜちゃん、あしたはおべんとうないの?」
リゼ「心配するな、ちゃんと学校で買うから」ナデナデ
ここあ「でも……――あっ!」ピコーン
使用人(朝一にお店から取り寄せてそれを弁当箱に詰めても――んっ?)
ここあ「♪」ヒョイ ピョンピョン
使用人(あれは、この前二人で決めたお嬢には『秘密の合図』……可愛い)
使用人(……了解です)グッ
リゼ「さぁここあ、続きだ。早く遊ぼう」ワクワク
使用人「あの、お嬢?少し小さいお嬢をお借りしてもよろしいですか?」
リゼ「ダメだ」キッパリ
使用人「即答!?」
リゼ「いま楽しく遊んでるところなんだ、お前の用件は後にしろ」
使用人「遊んでいるって……銃剣術なんてこの子に教えないでくださいよ……」
リゼ「良かったら久しぶりにお前もどうだ?」
使用人「……そうですね」
使用人「なら、あっしが勝ったら10分だけ小さいお嬢を拝借できますか?」
リゼ「ほーう、面白いな。いいだろう、受けて立ってやる」
使用人「ちいせぇお嬢、少しお下がりを」スッ
ここあ「ゆうしゃさん『じゅうけんじゅつ』できるの?りぜちゃんつよいよ?だいじょうぶ?」
使用人「心配には及びません、あっしもプロです……それに、お嬢に銃剣を教えたのは他でもない我々ですから」
リゼ「ふっ、昔のわたしと思ってかかると痛い目を見るぞ」
使用人「一本勝負です。寸止めでも有効、いいですね」
リゼ「ああ……こい!」
使用人「では……」ジャキ
使用人「……直突っ!」ブン!
リゼ「ふっ!」カン!
使用人「はっ!」
リゼ「甘い!」ブン!
使用人「」ヒュッ!
リゼ「なっ……!」
使用人「斬撃!」ブン!
リゼ「くっ!」ヒョイ
リゼ「……危なかった」
使用人「やりますね、お嬢」
リゼ「ここあの前だ、負けてたまるか」
リゼ「いくぞっ!」ブン!
使用人「っと」カン!
リゼ「そこだ!」
使用人「側撃!」バシッ!
リゼ「あっ!」
使用人「突き!」ピタッ
リゼ「うっ……」
使用人「勝負あり、ですね」
ここあ「すごいゆうしゃさん!りぜちゃんにかったぁ!」ピョンピョン
使用人「すいませんお嬢、お怪我はありませんか?」
リゼ「ああ……やっぱり強いな、まだ敵わないか」
使用人「ですがお嬢も、あの頃より遥かに強くなっていて驚きました」
リゼ「……また、時間があったら相手をしてくれ」
使用人「ええ、お嬢の頼みでしたら、いつでも」
リゼ「ははっ」ニコッ
使用人「では約束通り、小さいお嬢は借りていきます」ヒョイ
リゼ「あっ!」
ここあ「りぜちゃん、すこしだけまってて~」
リゼ「あぁ!ここあぁ!!」
リゼ「わたしのここあが……うぅ」ズーン
使用人(たかだか10分でオーバーすぎる……)
――――――――――――――――――――――――
――ラビットハウス チノの部屋――
チノ「ふぅ……」
チノ(あともう少し……最後はここを揃えれば完成)パズル
チノ「これは……」
――トントン
チノ「はい?」
タカヒロ「チノ、ここあくんから電話だよ」キラン
チノ「ここあさんから?」
チノ「はい、もしもし」
ここあ「ちのちゃん?わたしだよー!」
チノ「ここあさん、今日はおうちにいたんですね」
ここあ「うん!おにわでりぜちゃんとあそんでたの、じゅうけんじゅつで」
チノ「銃剣術?」
ここあ「じゅうでたたきあってたたかうんだよ、こんどちのちゃんもいっしょにやろうね」
チノ「は、はい……」
チノ(ここあさんが軍事教育を受けてる……大丈夫でしょうか)
チノ「リゼさんは?一緒ですか?」
ここあ「ううん、りぜちゃんにないしょででんわしてるの」
チノ「えっ?」
ここあ「あのね、ちのちゃんにおねがいがあるの」
ここあ「―――――」
―――――――――――――――――――――――――――
――――――
――――
――
――AM6:16 ラビットハウス――
チノ(卵、キャベツ、にんじん、ミンチ肉……これだけあれば大丈夫かな)
チノ(なにを作ろう、ここあさんが手伝えるような簡単なメニュー……)
チノ(卵焼きは、工夫すればバリエーションを持たせられる……メインディッシュはお肉を使おうかな?副菜はにんじんとキャベツを塩コショウと油で炒めれば……)
――ガチャッ
チノ「!」
ここあ「おじゃましまーす」
チノ「ここあさん」
ここあ「ちのちゃん!」タタタ
チノ「おはようございます。早起きできましたね、偉いです」ナデナデ
ここあ「ゆうしゃさんがおこしてくれたんだよ」
使用人「こんな早朝に申し訳ありません」ペコリ
使用人「これ、食材です。どうぞお使いください」ガサッ
チノ「あっ……ありがとうございます――っ!?」ズンッ
チノ「あ、あの……これは……」グググ
使用人「なにを作るか伺っていなかったので……とりあえず不足のないようにと」
チノ(サワラに鶏肉豚肉、かぼちゃが丸ごと……重い……!)
使用人「お帰りの際はご一報ください、お迎えに上がります。では……」
使用人「お料理、頑張ってください。くれぐれも怪我だけはされないように」
ここあ「うん!わたしにまかせなさーい!」
使用人「この子のこと、よろしくお願いします」ペコリ
チノ「いえ、こちらこそ……」アセアセ
――ガチャッ バタン
チノ「さて……ここあさん、厨房にいきましょうか」
ここあ「ちのちゃん、よろしくおねがいします」ペコリ
ここあ「おべんとうつくり、おしえてください」ニコッ
チノ「はい、わたしに任せてください」ガシッ
チノ「リゼさんが驚くような、素敵なお弁当を作りましょう」
ここあ「お~!」ピョン
―――――――――――――――――――――
『チノちゃんのお弁当講座その1・お弁当の基本』
チノ「まずお弁当を作るうえで大切なのは、栄養バランスとカロリー、そして色合いの3です」
ここあ「かろりー?いろあい?」
チノ「例えばですね、ここあさんの好きなものを言ってみてください」
ここあ「えっとね、はんばーぐとからあげと、ウインナーと、あと、とんかつも!」
チノ「ハンバーグは茶色っぽいですよね?からあげもウインナーも。トンカツも決して明るい色ではありません」
チノ「塗り絵をするとき、ここあさんはチューリップを黒だけで塗ったりしませんよね?どうしてですか?」
ここあ「みどりとあかいろもつかわないと、きたなくなるから――あっ」
ここあ「わかった!おにくばかりだとみためがわるくなるんだね!」
チノ「正解です、良く分かりましたね」ナデナデ
ここあ「えへへ♪」
チノ「お弁当をよりおいしく見せるには、野菜や色合いの濃い食べ物なども上手く詰め合わせないといけません」
チノ「これには栄養バランスとカロリーも関わってきます」
チノ「つまりお肉と野菜とご飯、3種類の栄養がバランスよく入っていれば素敵なお弁当が完成します」
チノ「野菜がいかに大切なのが分かりましたか?」
ここあ「うん!ちのちゃんすごいね!」キラキラ
チノ(昨日の夜勉強しておいて良かった……//)
チノ「あと、なるべく冷えてもおいしく食べられるものを使うのも、お弁当を作るうえでのコツです」
チノ「冷えたら油が固まってしまう角煮や、時間が経ったら水分が出てしまう野菜は避けたほうがいいですね」
ここあ「じゃあ『みずなす』はだめだね」
チノ「水ナスを知ってるんですか?ここあさんも物知りですね」
ここあ「りぜちゃんとよんだえほんにのってたの」エッヘン
チノ(可愛い……)
『チノちゃんのお弁当講座その2・卵焼き』
チノ「最初はお弁当に欠かせない、卵焼きから作りましょう」
ここあ「たまごやきならしってるよ。たまごをおはしでといで『ふらいぱん』でやくの」
チノ「そうですね、でも今回はリゼさんをびっくりさせるため、アレンジを加えましょう」
チノ「手順は卵焼きと一緒です。まずは卵を2個割って」
チノ「ここあさん、といでもらえますか?」
ここあ「いえっさー!」ビシッ
チノ(サラダ油を少しひいて、弱火に……)
ここあ「ちのちゃん?おしょうゆは?」
チノ「醤油ではなく今回はだしつゆを使います」
チノ「そうめんのつゆなどでもおいしくできますよ、醤油と違って独特の風味が出るんです」
ここあ「へぇ……!」
チノ「ここあさん、混ぜ終えたらフライパンに入れてください」
ここあ「いっくよ~」
ジュウウウゥ!
チノ「白い部分が無い、ちゃんとかき混ぜられましたね」
ここあ「たくさんまぜたよ、おいしくなるように」
チノ「ここあさんのおかげで綺麗な卵焼きができそうです」
チノ「……そろそろですね」
チノ「ここあさん、そこにスライスチーズが2枚ありますね。卵焼きの上に乗せてくれますか?」
ここあ「これ?のせていいの?」
チノ「お願いします、火傷しないように気を付けてください」
ここあ「うん……――えいっ」
チノ「ありがとうございます、これを崩れないように丸めて……」
チノ「巻きすの上に乗せて……」
チノ「崩れないように、ゆっくりくるみます」クルクル
チノ「ここあさん、リゼさんのこと好きですか?」
ここあ「うん、りぜちゃんすき//」ニコッ
チノ「なら、このカタチですね」ギュッギュッ
ここあ「ふぉぇ?」
チノ「10分ほど冷まして……今のうちにお米を炊いておきましょう」
――10分後――
チノ「できましたよ、ほら」
ここあ「わぁ、すごい!はーとのたまごやき!」
チノ「真ん中にはチーズが入っています、あとはこれを太めにカットして」
チノ「三つ葉を散りばめて、この上に添えれば完成です」
ここあ「ひとつ、もうできちゃった……」
チノ「次は……そうですね」
ここあ「…………」
チノ「……?ここあさん?」
ここあ「ちのちゃん……わたし、やくにたててる?」
チノ「もちろんです、卵をかき混ぜてくれたのも、チーズを置いてくれたのもここあさんじゃないですか」
ここあ「……うん」
ここあ「…………」ウツムキ
チノ「あ……」
チノ(そっか……調理自体にここあさんの手を全く借りてないから……)
チノ(危ないと思って安全な作業ばかり頼んでいたけど、それだと疎外感が……)
チノ(……やっぱり、まだまだですね……わたしは)
チノ「……ここあさん」
ここあ「?」
――ギュッ
ここあ「ちのちゃん……?」
チノ「ごめんなさい。ここあさんのこと、過小評価していましたね」ポンポン
チノ「リゼさんにお弁当を作ってあげたいのは、わたしじゃなくてここあさんなのに」
チノ「わたし一人で作ったって、何も意味が無い……」
ここあ「でも……わたし、なにもできないから……」シュン
チノ「そんなことありません、ここあさんにだってできます」ナデナデ
チノ「一人じゃダメかもしれないけど、だからこそ二人で作るんです」
チノ「手伝います、だから今度は、ここあさんが作ってあげてください」
チノ「大丈夫――わたしが付いてます」ニコッ
ここあ「……!」
チノ「小さいフライパンは――あった」
チノ「ここあさん、頑張れますか?」スッ
ここあ「……うん」グッ
ここあ「ちのちゃんといっしょなら//」ニヘラ
チノ「!」
ここあ「りぜちゃんのために、がんばるっ!」
チノ「……偉いですね」ギュッ
チノ「やっぱり小さくても、暖かくて優しいココアさんのままです……」
ここあ「……?」
チノ「ここあさん……」ポスッ
ここあ「ちのちゃん、おねえちゃんなのにあまえんぼう?」
チノ「はい、でもいいんです……」
チノ「ここあさんは、わたしの妹で……」
チノ「――お姉ちゃんだから」
――――――――――――――――――――――――――
『チノちゃんのお弁当講座その3・赤ウインナー』
チノ「赤ウインナーは色合いを兼ねて添えるので、4本でいいです」
チノ「こうして切り目を入れて……」
ここあ「たこさんういんなー?」
チノ「はい。これをタコのカタチになるまで炒めてください」
チノ「フライパンは、取っ手のこの部分だけを両手で持ってくださいね。根元は火傷するので触っちゃダメですよ」
チノ「風味と焦げ防止に、バターをひいて……火を付けますよ」
カチッ!
チノ「ここあさん、いけそうですか?」
ここあ「うん!」
ここあ「♪~♪♪」ジュウウ
チノ(楽しそう……任せて正解ですね)
チノ「焦げないように時々箸で転がしてあげてください」
チノ(野菜は、色合いを考えて使用人さんが持ってきてくれたプチトマトとブロッコリーを使おう)
チノ(ヘタを取って、ブロッコリーはゆでた後にマヨネーズであえて……)
ここあ「ちのちゃん、ひらいてきたよ」
チノ「あともう少しですね。ここに少しだけ塩をかけます」
チノ「お弁当は作ってかなり時間が経ってから食べるので、味付けを濃くするとちょうどよくなりますよ」
ここあ「すこしからいとおいしいんだね」
チノ「焼けたら、クッキングシートを乗せたこのお皿に移してください」
ここあ(そろそろいいかな……)
ここあ「んっしょ……――ぁ!」
ここあ「ちのちゃーん!できたよー!」
チノ「焦げずにちゃんとタコになっています、上手にできましたね」ナデナデ
ここあ「よかった……」
チノ「副菜も出来合いですが完成しました、これで色合いはバッチリです」
チノ「最後は――メインディッシュの、お肉を焼いていきましょう」
―――――――――――――――――――――――――――
『チノちゃんのお弁当講座その4・生姜焼き』
チノ「豚肉を使って、生姜焼きを作ります」
チノ「ここあさん、これを半分に切ってもらえますか?」
ここあ「はんぶんにするんだね、わかった!」
チノ「指を切らないように気を付けてください」
チノ「わたしは玉ねぎを切ります、生姜焼きはこの二つだけでできるんですよ」
ここあ「ちのちゃん、これくらい?」
チノ「いいです、次はタレを作りましょう」
チノ「生姜は、今回はチューブを使用します」
チノ「これに醤油とみりんを加えて、かき混ぜれば完成です」
ここあ「それだけでいいの?」
チノ「はい、本来は生姜をするのに時間がかかるんですが」
チノ「ではお肉を焼いていきましょう。ここあさん、お願いします」
ここあ「うん!わたしにまかせなさーい!」
ここあ「いろがかわってきたね」ジュウウ!
チノ「ここで玉ねぎを加えます」
チノ「全体に火が通ってきたらタレを入れて、タレが無くなるまで炒めれば完成です」
ここあ「………………」
チノ「ここあさん?」
ここあ「ごはんをつくるのって、たいへんなんだね」
チノ「……!」
ここあ「りぜちゃんも、ちのちゃんも、ちやちゃんも、しゃろちゃんも……こんなにがんばってくれてたんだ」
チノ「……ここあさん」
ここあ「いつかはみんなに、わたしがつくってあげたいな」
ここあ「ちのちゃんみたいに、おいしいごはんをつくれるようになりたい」ニコッ
チノ「…………」
ここあ「ちのちゃん?」
チノ「大丈夫です」
チノ「ここあさんは、将来おいしいパンが焼ける素敵なお姉ちゃんになりますよ、必ず」
ここあ「ほんと?」
チノ「はい」
チノ「いつか、ごちそうしてくださいね」
ここあ「うん!ちのちゃんのすきなぱんをつくってあげるね!」
チノ「楽しみです」クスッ
―――――――――――――――――――
チノ「そろそろいいでしょう、このお皿に移してください」
ここあ「んっしょ……――んっ」
チノ「あつっ!?」ビクッ
ここあ「っ!ちのちゃん、だいじょうぶ!?」
チノ「大丈夫です、すいません……」
ここあ「ごめんね……!ゆびみせて?」
チノ「人差し指に少し触れただけです、なんともな――」
ここあ「はむっ……」パクッ
チノ「!?」
ここあ「んっ……ちゅっ……んむっ……」
チノ「こ、ここあさん……//」
ここあ「らい、ひょうぶ……ちのちゃん?」ペロッ
チノ「……!//」
ここあ「れろっ……んっ……」
チノ「…………//」
チノ「……っ//」
チノ「――――」スッ
ここあ「――!?」
チノ「ここあさん……//」クチュクチュ…
ここあ「んもっ……んむ……!?//」
チノ「……//」クチュ…
ここあ「んっ……ちの…ひゃん……?//」ジュポ
チノ「抜いたらダメですよ、まだ治ってないです……」スッ
ここあ「あっ……//」
チノ「ここあさんの口、暖かいです……もう少しだけ」
ここあ「うん……でも、うごかしちゃいやだよ……?//」
ここあ「はむっ……ん……//」ペロッ
チノ(……また動かしたら、怒るかな……泣いちゃうかな……)
チノ(…………)
チノ(……ここあさんの優しさを、無下にしたらダメですね)
チノ(ここあさんが悲しむようなことは……絶対に……)
チノ「……ここあさん……ありがとうございます」ナデナデ
チノ「変なことしてごめんなさい、おかげさまでもう大丈夫ですよ」
ここあ「ぇへへ……よかった//」ジュポ
チノ「絆創膏だけ巻いてきますね」
ここあ「うんっ」
ガチャッ バタン
チノ(ふぅ…………)
チノ「………」スッ
チノ(ここあさんが舐めた指……)
チノ「…………」
チノ「……//」
チノ「――……っ」ブンブン
――――――――――――――――――――
――ダイニングルーム――
ここあ「いただきまーす」
チノ「んっ……」モグモグ
チノ(良かった、上手くできてる……)
チノ「ここあさん、どうですか?」
ここあ「おいしいよ、このたまごやき!」
ここあ「これならリゼちゃんもびっくりするね」
チノ「ここあさんのこと、きっと褒めてくれますよ」
ここあ「ちのちゃん、ありがとう。またりょうりおしえてね」
チノ「今度は一緒に夕飯を作りましょう。みんなを呼んでサプライズです」
ここあ「うん!やくそく」スッ
チノ「はい」スッ
ここチノ「//」ニコッ
――ガチャッ
タカヒロ「チノ……ここあくん?」
チノ「お父さん?おはようございます」
ここあ「ちのちゃんのおとうさんもいっしょにたべよっ♪」
タカヒロ「フッ……上手くできたようだね」
タカヒロ「こっそり勉強した甲斐があったかな、チノ」
チノ「お父さん、それは秘密で……//」
タカヒロ「すまない、二人で仲良く朝食を食べているところ悪いが……――チノ?」
チノ「?」
タカヒロ「学校は、いいのかい?」
チノ「え……」
チノ「…………」
チノ「」チラッ
『AM: 8:01』
チノ「」
――スイマセン! オジョウ!
ここあ「あっ……」
タカヒロ「ここあくんのお迎えのようだね」
―――――――――――――――――――――
――ラビットハウス――
ここあ「ゆうしゃさん?」タタタ
使用人「ちいせぇお嬢、あんまり遅いからお迎えにあがりました」
ここあ「ごめんね、ちのちゃんとごはんたべてたの」
使用人「お嬢がとても心配されてましたよ」
ここあ「りぜちゃんおきちゃった?」
使用人「ええ、起きた途端に例の如く過剰に……一応誤魔化しておきましたが」
使用人「しかし、もう8時……恐らく学校に行ってしまわれたかと」
ここあ「えっ……」
使用人「あっ、ご心配なく!お弁当でしたらお昼休みにでも届けましょう」
ここあ「よかった……」ホッ
使用人「お嬢に渡すお弁当、上手くできましたか?」
ここあ「うん!ちのちゃんといっしょにがんばったよ!」
使用人「お疲れ様です、これはお礼代わりの菓子折りですが……お友達はどこに?」
チノ「お父さん、行ってきますっ」ガチャッ
ここあ「ちのちゃん?」
チノ「ここあさん、お疲れ様です。あとはリゼさんに渡すだけですね」
使用人「あの、こちらは本日のお礼の……」
チノ「ここあさんのことよろしくお願いします。では!」タタタ
使用人「あっ、お待ちを……!」
ここあ「ちのちゃんありがとう!いってらっしゃい!」ブンブン
使用人「……仕方ない、親御さんの方に渡してきます。少しお待ちを」
――ガチャッ バタン
ここあ「……………」
ここあ「……りぜちゃん」
ここあ「よろこんでくれるかな……//」
ここあ「ぇへへ……//」ニヘラ
ここあ「……んっ…」クシクシ
ここあ「ふぁ……」プワプワ
ここあ「………………」
ここあ「りぜちゃん……まってて……」
ここあ「……すぅ……すぅ…………」Zzz
後編に続く
----------------------
luterlude 2.「作り笑顔の治し方」
ココア「そっか、でも笑顔なのは良いことだと思うよ?」
シャロ「うん……この前相談したら、千夜もそう言ってくれた」
シャロ「でも、私のは作り笑顔で……ココアみたいに、ほんとに楽しくて笑ってるわけじゃないから」
シャロ「毎日疲れてきて…………それに」
シャロ「学校の友達を騙してるみたいで、自己嫌悪が…………」
ココア「……シャロちゃん…………」
シャロ「うぅ……ごめんね、こんなこと相談して……」
ココア「ううん、頼ってくれて嬉しいよ。でもそっか……作り笑いの治し方かぁ」
シャロ「ココアはいつも笑顔だから、何か良いアドバイスが貰えるかもって千夜が……」
ココア「うーん………………」
シャロ「……………………」ウツムキ
ココア「…………そうだ!」
シャロ「ひゃっ!」
ココア「シャロちゃん、明日空いてる?」
シャロ「明日?えっと、確か夕方からバイトね」
ココア「それなら夕方まで私と一緒に遊ぼうよ♪」
シャロ「ココアと……?う、うん、いいけど……」
ココア「決まりだね!明日の朝から迎えに行くから。寝坊しちゃだめだよ?」
シャロ「あんたじゃないんだから……」
ココア「シャロちゃんと二人きりでお出かけ~♪」
ココア「大丈夫、明日にはきっと治るよ!絶対シャロちゃんの作り笑顔を本当の笑顔に変えて見せるから」グッ
シャロ「ココア…………」
シャロ「うん……ありがとう」
―――――――――――――――――――
――桐間家――
シャロ(明日着ていく服、これでいいかな……)
シャロ(お金は……5000円あれば足りるわよね)
シャロ(またしばらくは節約生活になりそうだけど……)
シャロ「……よし、完璧よ!」
シャロ「ふぅ…………」ベッド ダイブ
シャロ(……………………)
シャロ(そういえば、ココアと二人きりで出かけるのって初めてかも)
シャロ(……………………)
シャロ(…………はっ!)
シャロ(どうしてわたし緊張なんかしてるんだろ!//)ブンブン
シャロ(相手はココアよ、それに二人でどっか遊びに行くだけじゃない)
シャロ(…………………………)
シャロ(もう一度服選び直そう)
―――――――――――――――――――――――
――翌日 待ち合わせ場所――
シャロ「………………」キョロキョロ
シャロ(まだかしら……待ち合わせ時間もうとっくに過ぎてるじゃない)
シャロ(昨日あれだけ寝坊しないように釘刺しておいたのに、まったく……)
シャロ「……………………」
5分後
シャロ「……………………」
10分後
シャロ「……………………」オドオド
シャロ(まさか……忘れちゃったとかじゃないわよね)
シャロ(いや、ココアに限ってそんなこと……)
シャロ「…………………………」
シャロ「……………………」グスッ
シャロ「うぅ……ココア、早く来てよ……」
―――――――――――――――――――
ココア「ヴエエェェ!寝坊しちゃったー!」タッタッタ
ココア「シャロちゃん……あっ、いた!」
ココア「シャロちゃーん!」ブンブン
シャロ「こ、ココアぁ…………」ジワッ
ココア「シャロちゃん!?どうしたの!?」
シャロ「ひっく……遅いわよバカ……」ポロポロ
ココア「ごめん!ほんとにごめんね!お詫びにクレープ奢るから」アセアセ
シャロ「クレープ……?」ピタッ
ココア「うん。ほら、向こうで売ってるから」
シャロ「……しょうがないから許してあげる」ゴシゴシ
ココア「」ホッ
――――――――――――――――――――
シャロ「……………………♪」モグモグ
ココア(こんな幸せそうなシャロちゃん初めて見た……)
シャロ「…………で、ココア?」
ココア「んっ?」モグモグ
シャロ「それはなに?」
ココア「えっ、シャロちゃんたら知らないの?これはね、虫あみって言ってこうやって虫を取るためのものだよ。それでこれは虫かごっていって――」
シャロ「そんなこと分かってるわよ!どうして虫取りなのよ、こういう時は普通映画とかでしょ」
ココア「シャロちゃんと一緒に虫取りしたかったの…………いや?」
シャロ「うっ……べ、別に嫌とは言ってないでしょ……虫は大体平気だし」ゴニョゴニョ
ココア「ありがとう!じゃあ食べ終わったら公園にいこっ」
シャロ「はぁ……わかったわよ」
ココア「♪~♪♪」
――――――――――――――――――――――
――公園――
ココア「えいっ!……あっ、また逃げられちゃった」
シャロ「勢いよく振り下ろすからよ、ちょっと貸して」
シャロ「いい?セミを捕るときはこうやって――」
シュッ
ココア「おおっ!」
シャロ「セミは網に触れたら飛ぶから、上からくっつけるだけでいいのよ」
ココア「すごい!シャロちゃんてもしかして虫取り名人?」
シャロ「上手くなりたかったわけじゃないけどね、小さい頃千夜に毎日つき合わされてたから」
ココア「なるほど~幼なじみっていいなぁ」
ココア「まずは一匹ゲットだね、セミちゃんおいで」ガサガサ
シャロ「ココア待って、そんな捕まえ方したら――」
ビュッ!
ココア「ひゃあっ!」
シャロ「あっ…………」
ココア「うぅ……おしっこかけられた……」グスッ
シャロ「……ふふっ」クスッ
ココア「あっ!シャロちゃん今笑ったでしょ!」
シャロ(小さい頃、私も同じ目に遭って泣いちゃったことがあったっけ……)
シャロ「ごめんなさい、大丈夫?……ふふっ」クスッ
ココア「……それでいいんだよ」
シャロ「えっ?」
ココア「気付いた?今日シャロちゃんが笑顔になったのって、たったの二回だけだよ?」
ココア「クレープ食べてる時と、いまこうして笑ってるのと」
シャロ「……言われてみれば…………」
ココア「それでもわたし、シャロちゃんと一緒にいて楽しいよ?」
シャロ「ココア…………」
ココア「無理して笑わなくてもいいんじゃないかな。楽しい時と嬉しいときに笑う方が、きっともっと素敵だよ♪」
シャロ「…………!」
シャロ「…………そうね……でも……」
ココア「……あそこのベンチ、座ろっか♪」
シャロ「うん…………」
ココア「昨日調べたんだけどね、作り笑顔って、大体は相手に嫌われないようにする自己防衛なんだって」
シャロ「そっか……やっぱり、貧乏っていう後ろめたさがあるからかな…………」
ココア「そうかもしれない……でも私は、シャロちゃんの作り笑顔はそれだけの理由じゃないと思うんだ」
ココア「――きっとね、シャロちゃんの作り笑顔は、相手の笑顔を守るおまじないなんだよ」
シャロ「おまじない……?」
ココア「どんな人だって自分の話しを笑顔で聞いてもらえたら嬉しいよね?」
ココア「シャロちゃんはたぶん、相手のことを思いやるあまりについ笑顔を作っちゃうんだよ」
シャロ「…………!」
ココア「相手に不快な思いをさせないようにって考えるあまり、自分の気持ちを押し殺して……」
シャロ「………………」
ココア「すごく素敵なことだと思うよ?優しい人じゃないと毎日そんな辛いことできないもん」
シャロ「ココア………………」
ココア「でもね…………わたしはそれでも、本当の笑顔の方が良いと思うな」
シャロ「………………」ウツムキ
ココア「あのね、実はわたしイチゴアイスが大好きなの」
シャロ「えっ……?」
ココア「小さい頃ね、初めてお小遣いをもらった時に近所の駄菓子屋でイチゴアイスを5個も食べたんだ」
ココア「そしたらしばらくの間、イチゴアイスに魅力を感じなくなって……」
ココア「それと一緒だよ」ニコッ
シャロ「一緒……?」
ココア「ずっとずっと見ていたら、きっと笑顔に魅力を感じなくなっちゃうんだと思う……」
ココア「楽しいことだって毎日続いたら退屈と変わらなくなるでしょ?いつもじゃないからこそ良いんだよ」
ココア「絶対おまじないより効果あるよ、だって笑顔は人を幸せにできる魔法だもん♪」
シャロ「!……………………」
シャロ「…………わたし……作り笑顔、無くせるかな……」
ココア「…………シャロちゃん」
ギュッ
シャロ「…………!」
ココア「無理に無くそうとしなくていいんだよ」
ココア「シャロちゃんの作り笑顔に救われた人だって、きっといる……」
ココア「ただ作り笑顔だけじゃなく、シャロちゃんの本当の笑顔を混ぜるだけで良いんじゃないかな」
ココア「そしたらいつかは自然と、作り笑顔がほんとの笑顔になるよ」
ココア「だってわたし、今でもイチゴアイス大好きだもん♪」
シャロ「………………っ!」
シャロ「っ…………ひっく……ぐすっ……」ジワッ
ココア「よしよし……シャロちゃん偉いよ」ナデナデ
シャロ「ココア……っ……ぅぐ……!」ポロポロ
ココア「説教してごめんね……」ナデナデ
シャロ「ぅ……っ…………!」ギュッ
――――――――――――――――――――
――夕方――
ココア「シャロちゃん、ほんとに平気?」
シャロ「ええ、もう大丈夫よ」
ココア「それならいいけど……」
シャロ「そろそろ時間だから行くわね、今日は楽しかったわ」
ココア「私もだよ、また二人で遊ぼうね!」
シャロ「うん、約束」スッ
ココア「えへへ……ゆーびきーりげんまん♪」
シャロ「……………………」
シャロ「ココア、ちょっと横向いて」
ココア「横……?」
ホッペ チュッ
ココア「え…………」
ココア「……しゃ……シャロ、ちゃん……?//」
シャロ「そ、それじゃあ行ってくるわ//」スタスタ
ココア「うん…………い、行ってらっしゃーい!//」ブンブン
シャロ「……………………//」
シャロ「…………ココア、ありがとう♪//」
――1週間後――
リゼ「シャロ、おはよう」
シャロ「あっ、リゼ先輩!おはようございます♪」
リゼ「おっ、元気がいいな」
生徒「シャロさん、リゼ先輩、おはようございます」
リゼ「ああ、おはよう」
シャロ「おはようございます♪」
リゼ「………………」
シャロ「♪~♪♪」
リゼ「なぁ、シャロ?」
リゼ「なんだか最近、よく笑うようになったな」
シャロ「へっ?そ、そうですか?//」
リゼ「ああ、以前より学校が楽しそうでなによりだ。新しい友達でもできたのか?」
シャロ「いえ…………ただ――」
シャロ「――おまじないが、魔法になってくれたらいいなって♪」
リゼ「?」
----------------------
luterlude 3.「雷」
――深夜 桐間家――
シャロ「……………………」オドオド
シャロ「誰もいない…わよね……」
シャロ(早く寝ちゃお)バサッ
シャロ「…………………………」
ガタン
シャロ「ひっ!」
シーン
シャロ「うぅ…………」ブルブル
シャロ(学校付き合いとはいえ、やっぱりホラー映画なんて見に行くんじゃなかった……)
チラッ 12時
シャロ(この時間じゃあみんな寝てるだろうし……)
シャロ「はうぅ……ワイルドギースでもいいから帰って来て……」
ミシッ
シャロ「ひゃあ!」
シャロ「い、いま、足音が……」ガクガク
シーン……
シャロ「だ、誰かいるの……?」
シーン……
シャロ「まさか……お化け…………」ブルブル
ポタ
シャロ「!?」
ポタポタ ザーッ
シャロ「雨まで……どうしてこんな時に……」
ピシャーン! ゴロゴロ
シャロ「ひぃ!」
シャロ「か、カミナリ……!」
シャロ「うぅ……だれかぁ……」グスッ
シャロ「カミナリ怖い……お化け怖い……」ガクガク
トントン
シャロ「ひゃあっ!?」ビクッ
シャロ「だ、だれ!?」
千夜「シャロちゃん、起きてる?」
シャロ「その声……千夜!」
千夜「入るわよ?」アイカギ カチャッ
千夜「お邪魔しまーす」
シャロ「ち、千夜ぁ…………」グスッ
千夜「やっぱり怖くて眠れなかったのね」
シャロ「ひぐっ……千夜……!」
千夜「よしよし、もう大丈夫よ」ナデナデ
シャロ「どうして……寝てると思ってたのに」
千夜「さっきのカミナリで目が覚めちゃって、心配だからシャロちゃんの様子を見に来たの」
千夜「そしたら案の定、シャロちゃん小さい頃からカミナリ苦手だものね」
シャロ「千夜……ありがとう」グスッ
千夜「どういたしまして♪」ニコッ
千夜「さてと」スッ
千夜「隣、いいかしら?」
シャロ「えっ……」
千夜「今日は一緒にここで寝るわ」
シャロ「!……いいの?」
千夜「シャロちゃんのためだもの。お邪魔するわね」
スッ
シャロ「…………せまくない?」
千夜「平気よ」
シャロ(千夜の匂いだ……なんだか安心する……)
千夜「ふふっ、シャロちゃんとこうして寝るのっていつ以来かしら」
シャロ「んっ…………忘れた」
千夜「たしか小学校4年生の頃、初めて一緒にホラーDVD見て眠れなくなっちゃったときに――」
シャロ「覚えてるなら最初から聞くなぁ!//」
千夜「あの頃はお互い若かったわ……やっぱりいくつになっても挑戦って大事よね」
シャロ「私たちまだ高校生でしょ!それにあの時はあんたが私を騙して無理矢理見せたんでしょうが!」
千夜「あら、覚えててくれたのね、嬉しいわ♪」
シャロ「はぅ!?………………っ//」
千夜「シャロちゃんたら素直じゃないんだから」
シャロ「うう、うるさい!もう寝るの!//」バサッ
千夜「怒ってもむこう向いたりはしないのね」
シャロ「うっ……こ、怖いからしょうがないじゃない!」
千夜「ふふっ、シャロちゃん可愛い」
シャロ「っ……お、おバカァ!//」
――――――――――――――――――――――
千夜「そう、学校付き合いでホラー映画を……」
シャロ「おかげで今月もまた節制生活だし……」ズーン
千夜「お嬢様学校も大変ね」
シャロ「………………」ハァ
千夜「………………」
千夜「……シャロちゃん?」
千夜「やっぱり、中学生の頃に戻りたい?」
シャロ「……そうね、あの頃はまだ両親もいたし、アルバイトに追われることも無かったし」
千夜「……………………」
シャロ「……でも」
シャロ「それでも、今の方が楽しいわ」
千夜「!」
シャロ「ココア、リゼ先輩、チノちゃん、みんなと会えたし……おかげで千夜とも疎遠になること無かったし」
千夜「シャロちゃん……」
シャロ「最近ね、時間が経つのを忘れちゃうの。こんなに毎日が楽しいのは、きっとみんなのおかげだから」
千夜「…………そうね」
ギュッ
シャロ「うにゃ……な、なによ、急に抱き付いたりして//」
千夜「ん~……ちょっとヤキモチ」
シャロ「はぁ、なんでよ」
千夜「小さい頃の二人きりだった世界よりも……みんなといる今が楽しいって気持ちが分かるような気がするから」
千夜「みんなといる今に、少しだけ嫉妬してるの」クスッ
シャロ「千夜…………」
千夜「……………………」シュン
シャロ「……………………」
シャロ「か、勘違いしないでよ」
シャロ「私が楽しいって言ってる今には、ちゃんと千夜だって入ってるんだから」
千夜「…………!」
シャロ「別に千夜と一緒にいた昔が楽しくなかったわけじゃなくて……その…………そこにみんながプラスになったっていうか」
千夜「…………」
シャロ「と、とにかく!わたしの楽しい毎日には絶対に千夜がいないとダメなの!もうこの話しおしまい!//」プイッ
千夜「…………」クスッ
千夜「ありがとうシャロちゃん……シャロちゃんの気持ち、なんとなく伝わったわ」
シャロ「そ、そう……良かったわね//」
千夜「まさかシャロちゃんに告白される日が来るなんて思ってもみなかった♪」
シャロ「全然分かってないじゃない!//」
千夜「ふふっ、冗談よ。私の楽しい毎日にもシャロちゃんは必要不可欠だもの」
シャロ「それなんか違う意味で言ってない?」ジトー
千夜「そのままの意味よ?だって私、シャロちゃんのこと大好きだもの」ニコッ
シャロ「…………ふん//」パサッ
千夜「手……繋いでもいい?」
シャロ「す、好きにすれば……//」
千夜「………………♪」ギュッ
シャロ「…………//」ドキドキ
千夜「……これからも私たち、ずっと一緒に居ましょうね」
シャロ「……そんなの当たり前でしょ//」
――おしまい
――翌朝――
シャロ「ちょっと……千夜」
千夜「むにゃ…………どこにも行っちゃだめよぉ……」ギュッ
シャロ「う、動けない……ねぇ千夜、起きて!起きなさいよ!」
千夜「えへへぇ……シャロちゃん……♪」ギュッ
シャロ「うっ…………バ、バイト遅れちゃうでしょうが~!」ビェー
千夜(ふふっ、やっぱりシャロちゃん可愛い……大好きよ♪)
----------------------
luterlude 4.「看病」
――桐間家――
シャロ「けほっ、こほっ」
シャロ「うぅ……頭痛い…………」
シャロ(やっぱり千夜に毛布借りれば良かった……)チーン
チラッ
PM4:00
シャロ(そろそろバイト行かなくちゃ……)スクッ
シャロ(今日乗り切れば明日から2連休だし、頑張らないと……)
シャロ(あぅぅ……ふらふらする…………――あれ……?)クラッ
シャロ(なんだか……景色が反対に…………)バタッ
シャロ(ダメ……早く行かないと遅刻しちゃう――)
――――――――――――――――――――――
トントン
千夜「シャロちゃん?そろそろアルバイトの時間じゃ――」ガチャ
千夜「っ!?シャロちゃん!?」
千夜「シャロちゃんしっかりして!ねぇ、シャロちゃんっ!」
シャロ「」
―――――――――――――――――――――――
シャロ「んっ………………」
シャロ「あれ……ここ、千夜の家…………?」
シャロ「確かバイトに行く途中で――――あっ!」
PM5:30
シャロ「あぁっ……あっ…………」ガクガク
シャロ(どうしよう……無断欠勤しちゃった)
シャロ(絶対クビだ…………うぅ……)グスッ
ガチャ
千夜「あらシャロちゃん、目が覚めたのね」
シャロ「千夜ぁ…………」ポロポロ
千夜「シャロちゃんどうしたの!?どこか痛い?」
シャロ「ひっく……今日のバイト、すっぽかしちゃって……」
千夜「バイト…………あっ……ふふ、そんなこと気にしなくていいわ」
シャロ「そんなことって……」
千夜「ちゃんとお店の方に連絡しておいたから大丈夫」
シャロ「千夜…………!」
千夜「だからシャロちゃんは何も心配せず、ゆっくり休めばいいのよ」ナデナデ
シャロ「うん…………」
シャロ「…………千夜」
千夜「?」
シャロ「……ありがとう」ボソッ
千夜「どういたしまして」ニコッ
シャロ「……………………//」プイッ
千夜(可愛い♪)
千夜「あっ、そういえば夕飯まだよね、おかゆでいいかしら?」
シャロ「うーん……夕飯はいいわ、食欲ないし……」
千夜「……シャロちゃん、めっ」ツン
シャロ「んにぅ」
千夜「ただでさえか細いんだから、食事を抜くなんてもっての他よ」
千夜「少しだけでもいいから……ねっ?」
シャロ「うん……ごめんなさい」
千夜「卵粥でいいわね、栄養もあるし」
千夜「♪~♪♪」
シャロ「…………………………」
シャロ(また千夜に迷惑かけちゃった…………)
―――――――――――――――――――――――――
千夜「お待たせ♪」
シャロ「わぁ……おいしそう」
千夜「それじゃあ――」フーフー
千夜「はいシャロちゃん、あーん」スッ
シャロ「えっ!い、いや、自分で食べれるから//」
千夜「いいから口開けて?あーん」
シャロ「うぅ…………い、いただきます//」
シャロ「……………………」モグモグ
千夜「おいしい?」
シャロ「うん…………」ゴクン
千夜「そう、よかったわ」ニコッ
千夜「」フーフー
千夜「あーん」
シャロ「……………………」モグモグ
千夜「」ニコニコ
シャロ「……………………//」モグモグ
千夜「」ニコニコ
シャロ「な、なによ?//」
千夜「ううん、ただシャロちゃんが可愛いと思って」ニコニコ
シャロ「なっ……~~~~っ!//」
千夜「はい、あーん」
シャロ「た、食べにくいから向こうむいてて!//」
千夜「はーい」
シャロ「……………………//」モグモグ
――――――――――――――――――――――――
千夜「38.7度……あらら、高熱ね」
シャロ「うぅ…………」ズズッ
千夜「はい、風邪薬」
シャロ「ありがと…………」ゴクゴク
千夜「これからはひどくなる前にちゃんと言わないとダメよ?」
シャロ「うん…………」シュン
千夜「シャロちゃんすぐ一人で無理しちゃうから、いつも心配なのよ」ヒエピタ
シャロ「んっ…………」
千夜「それに今日みたいに倒れちゃったりしたら、元も子もないでしょ?」
シャロ「……ごめんなさい…………」グスッ
千夜「わかってくれればいいわ。シャロちゃんも毎日大変だものね」
千夜「学校行って、たくさんバイトして、家事して、生活考えて……」
千夜「……いつもお疲れ様、シャロちゃん」ナデナデ
シャロ「………………」ジワッ
千夜「たまには、わたしを頼ってくれていいのよ」
千夜「シャロちゃんは、わたしにとって一番大切な親友だもの」ギュッ
シャロ「ぐすっ…………ひっく…………」
千夜「シャロちゃん……泣いてるの?」
シャロ「泣いてないわよ……嬉しいのに泣くわけないじゃない……!」グシグシ
千夜「ふふっ……シャロちゃんてばいつもそうよね」
千夜「自分のことよりも人のことでばかり涙流して……」
千夜「覚えてる?小さい頃わたしが怪我したら、いつもシャロちゃんの方が大泣きしてたわよね」クスッ
千夜「千夜血が出てるよーうわぁ~んって♪」
シャロ「昔のこと掘り返さないでよ!心配だったんだから仕方ないでしょ!//」
千夜「きっとシャロちゃんは、小さい頃から強い子だったのね……甘えてたのは、たぶん私の方……」
シャロ「えっ?」
千夜「何でもないわ」ナデナデ
シャロ「?」
千夜「あら、明日は大雪警報が出てるわね」
千夜「シャロちゃん、外出しちゃだめよ?」
シャロ「そんな自殺行為しないわよ!」
千夜「明後日までには風邪、治るといいわね」
シャロ「うん…………」
千夜「それじゃあわたし、甘兎庵に戻るわ」
シャロ「あっ………………」
シャロ「」シュン
千夜「大丈夫、荷物を纏めたらまた戻って来るから」
シャロ「ふぁ……♪はっ!……そ、そう…………」
千夜「ちゃんと安静にしてるのよ」
シャロ「……………………」
シャロ「…………千夜?」
千夜「んっ?」
シャロ「……いつも、ありがとう」
千夜「……ううん、こちらこそ♪」ニコッ
----------------------
luterlude 5.「サプライズ 後編」
――AM11:46 リゼの部屋――
ここあ「………………」
ここあ「…………」チラッ
ここあ「………………」ソワソワ
ここあ「…………」チラッチラッ
ここあ「………………」
――ガチャッ
ここあ「!」
使用人「失礼します」
ここあ「おべんとうもっていくじかん!?」
使用人「いえ、まだ少し早いですね」
ここあ「そっか……」
使用人「ゆっくり待ちましょう、さきに昼食を食べませんか?」
ここあ「うんっ」
使用人「今日はデザートも付いていますよ」
ここあ「やったぁ♪」
使用人「行きましょうか」
ここあ「………」スッ
使用人「?」
ここあ「だっこ、だめ?」
使用人「フッ……承知しました」
使用人「よっ」ヒョイ
ここあ「ぁ……ぇへへ//」ニヘラ
使用人「しっかり掴まっていてください」
ここあ「ありがとうゆうしゃさん」ギュッ
使用人「…………//」
――
――――
――――――
――――――――――――――――――――
――PM12:30 中学校――
チノ「ふぁぁ……」プワプワ
マヤ「チノ~朝からあくびばっかしてない?」
メグ「寝不足?夜更かししたの?」
チノ「逆に早く起きすぎてしまって……」
マヤ「二度寝すればいいのに~わたしなんて朝は目が覚めてもまたすぐ寝られるよ」
メグ「マヤちゃんのはそもそも起きてないんじゃないかな」
チノ「でも、今朝は早起きして良かったです」
マヤ「おぉ、チノのお弁当今日はなんかファンシーだ!」
メグ「もしかしてチノちゃんの手作り?」
チノ「いえ、実はここあさんのお手製で」
マヤ「ここあが!?愛妻弁当じゃん!」
メグ「こんなに上手に料理が……――あっ、もしかしてチノちゃん」
マヤ「早起きして二人で作ったんだ~」
チノ「はい、色々あってのついででしたが」
マヤ「この前のチョコみたいな感じ?ということは本命が他にも!?」
メグ「ここあちゃんにお願いされたんだね、チノちゃん優しいよ」
チノ「わたしを頼りにしてくれるなら、できる限り力になってあげたくて」
チノ「以前のココアさんが、わたしにしてくださっていたように」
マヤ「チノ……」
チノ「マヤさんもメグさんも、良かったらまた一緒に遊んであげてください。ここあさん喜びますから」
メグ「うん♪」
マヤ「当たり前じゃん!またサバゲーとかカルタとかやろうよ」
チノ「ありがとうございます」ニコッ
メグ「…………」
チノ「……?メグさん?」
メグ「チノちゃん、なんだか前より大人っぽくなったね」
チノ「そう…ですか?」
マヤ「確かに~姉御オーラが出てきたかも」
チノ「姉御オーラ!?」
メグ「頼れるお姉ちゃんって感じがするよ、羨ましいなぁ」
マヤ「やっぱりここあが小さくなったからじゃね?」
メグ「すっかりチノお姉ちゃんだね」
チノ「お姉ちゃん……」
チノ「…………//」
チノ「」マドノソト チラッ
チノ「……――!」
チノ「……♪」クスッ
マヤ「チノ?」
メグ「あれは……ここあちゃんとリゼさん家の使用人さん?」
チノ「ここあさん……がんばって」
―――――――――――――――――――――
使用人「着きました、ここです」
ここあ「ここが、りぜちゃんのがっこう……!」
使用人「あっしは中には入れませんので……ひとりで持っていけますか?」
ここあ「うん!わたしにまかせなさーい!」
使用人「あっしは向こうの木の下で待っています、終わったら来てください」
使用人「では、御武運を」グッ
ここあ「いえっさー!」
ここあ「♪」タタタ
――――――――――――――――――――――
ここあ(りぜちゃん……おそとかな?)
ここあ(ぱんをかうっていってたから、こっちかな)タタタ
生徒「あっ、リゼ先輩だ」
生徒「かっこいい……//」
ここあ「!」
ここあ「りぜちゃん――……!」
ここあ(いた!――え……)
ここあ(……あれ)
―――――――――――――――――――
――校庭 ベンチ――
吹き矢部部長(ユラ先輩)「リゼ、なにそれ?」
リゼ「んっ、MREだ」ガサッ
ユラ「ミールレディトゥイート?」
リゼ「ああ、ミートボールとチーズスプレッド、あとドリア風の味付けご飯を持ってきた」
ユラ「相変わらず好きだよねぇ、レーション」
リゼ「おいしいからな」
ユラ「昔はマズかったらしいよ、今は冷凍食品とほとんど変わらないけど」
リゼ「久々に食べないか?ドライケーキだ」
ユラ「くれるの?ありがとう」
リゼ「フルーツミックスのやつもあるぞ、こっちの方が好きなんだっけ?」
ユラ「ん~どっちも好きだよ」モグモグ
リゼ「たくさん持ってきたから遠慮なく食べてくれ」
ユラ「……リゼさぁ」
ユラ「なんだか最近、すごく楽しそうだよね」
リゼ「そうか?」
ユラ「2年になってからも1年の時に比べたらずっと楽しそうだったけど、最近はもう以前にも増してって感じ」
リゼ「……そうだな」
リゼ「自分でも、たぶん今が一番幸せなんだって思う」
リゼ「幸せすぎて……いつか無くなってしまうんじゃないかって、時々怖くなるくらい」
リゼ「毎日が満たされていて……永遠にこのまま、ずっと続いてほしい」
ユラ「………………」
リゼ「永遠なんて望むのは、本来なら馬鹿げてるんだけどな」
ユラ「……そうだね」
ユラ「でも、幸せじゃなかったら望まないよね」
リゼ「…………」
ユラ「学校終わったらまっすぐ帰って、暇があれば無意識にロック画面を開いてホーム画像を見つめてるし」ヒョイ
リゼ「あっ」
ユラ「その小さい女の子って……」
リゼ「違うぞっ!この子は、だな。わたしの大切な家族で……その……//」
ユラ「親戚かなにか?」
リゼ「そんなところだ。訳あってウチに住んでるんだ」
ユラ「ふぅん、その子がリゼの幸せの根源ってわけだ」
リゼ「……まぁ//」
ユラ「へぇ……幼馴染だけど知らなかった」
リゼ「うっ、すまない、黙っていて。別に秘密にしてたわけじゃないんだけど」
ユラ「ううん、別にいいよ」
ユラ「そっか……」
ユラ「――リゼって、ロ〇コンだったんだね」
リゼ「ブッ!おい!!?」
ユラ「ふふっ」クスッ
ワイワイ ガヤガヤ
ここあ(………………)
ここあ(…………)
ここあ(……)
ここあ「…………」スッ
ここあ(どうしよう……せっかくちのちゃんとつくったのに……)
ここあ「………………」
ここあ(りぜちゃん、たのしそう……)
ここあ「………………」
ここあ「…………」
ここあ「……」ウツムキ
ここあ「…………」トボトボ
ここあ「………………」
チノ『リゼさんが驚くような、素敵なお弁当を作りましょう』
ここあ「……ちのちゃん」
ここあ「…………」
??「――ここあ?」
ここあ「?」
シャロ「やっぱり……!」
ここあ「しゃろちゃん……」
シャロ「どうしてここに?まさか一人で?」
ここあ「……あのね」
シャロ「………?」
ここあ「………………」
シャロ「…………」
――スッ
シャロ「なにか、理由があるのね」ナデナデ
ここあ「…………」
シャロ「リゼ先輩に内緒で、こっそり来ちゃった?」
ここあ「…………」コクリ
シャロ「そう……」
ここあ「これ……とどけにきたの」スッ
シャロ「おべんとう……?ここあが作ったの?」
ここあ「うん。でもね、りぜちゃん、もうおひるたべてたから……」
ここあ「だから、しゃろちゃん……かわりにたべて?」
シャロ「そんな……リゼ先輩のために作ったお弁当でしょ、いまからでも届けに――」
ここあ「だめっ!」
シャロ「!」
ここあ「りぜちゃん……おなかいっぱいでもむりしちゃうから、だめ」
ここあ「たべきれなかったら、じぶんのことをせめちゃうから……」
ここあ「りぜちゃんがかなしむの、やだ……」グスッ
シャロ「ここあ……」
ここあ「しゃろちゃん、ないしょにしてて……?おねがい……」ギュッ
シャロ「……」
シャロ「……わかった」
シャロ「リゼ先輩には言わない……このお弁当、貰っておくわね」
シャロ「ありがとうここあ、お腹すいてたから助かったわ」ナデナデ
シャロ「放課後リゼ先輩はラビットハウスでしょうし、バイトが終わったら返しに行くわね」
ここあ「うん……」ニコッ
ここあ「しゃろちゃん、ありがとう。そのおべんとうね、ちのちゃんといっしょにつくったからすごくおいしいよ」
シャロ(チノちゃんが手伝ってくれたのね。わざわざ二人で、早起きして……)
ここあ「そとでゆうしゃさんがまってるの、またね、しゃろちゃん」
シャロ「ええ、気を付けて帰るのよ」
ここあ「♪」フリフリ
シャロ「………………」
シャロ「…………」ピッ
――Prrrrrrrrrrrr
シャロ「あっ……もしもし、千夜。いま大丈夫?」
シャロ「うん……あのね――」
――――――――――――――――――――――――
使用人「本当にお嬢に言わなくて、よろしいんですか?」
ここあ「うん。りぜちゃん、おともだちとたのしくたべてたから」
使用人「……すいません、もう少し早めに出発していれば」
ここあ「ううん、ゆうしゃさんのせいじゃないよ」
ここあ「しゃろちゃんがうけとってくれたから、だいじょうぶ」ニコッ
使用人「…………」
ここあ「ちのちゃんに、あやまらなきゃ」
使用人「…………」チラッ
ここあ「…………」
使用人(やはり…悲しそうだ……)
使用人(しかし、お嬢に言ってしまうとこの子の優しさを裏切ることになる……)
使用人(……どうすれば)
―――――――――――――――――――
――
――――
――――――
――PM6:00 甘兎庵前――
千夜「…………」サッサッ
千夜「あっ――シャロちゃん、おかえりなさい」
シャロ「んっ……ただいま」
千夜「お疲れ様。お弁当箱は?」
シャロ「お昼に洗っておいたわ」
シャロ「千夜が食べたほうがいいって言うから食べたけど……」
千夜「腐らせてダメにしちゃうと、それこそここあちゃんに顔向けできないもの」
千夜「どう、おいしかった?」
シャロ「当たり前じゃない。卵焼きもハート形になっててチーズが入ってたり、ウインナーがタコの形になってたり……」
千夜「ふふっ、きっとリゼちゃんのために一生懸命作ったのね」
シャロ「材料は?何も買っていかなくていいの?」
千夜「ええ、チノちゃんに聞いたら冷蔵庫が溢れるくらい余ってるそうよ」
千夜「それじゃあ、シャロちゃんは先に行ってて」
シャロ「んっ……少しの間なら引き留めておくから、頼んだわよ」
千夜「ええ、なるべく急ぐわ」タタタ
―――――――――――――――――――――
――客室――
使用人「………………」
ここあ「すぅ……すぅ……」Zzz
使用人(結局、気晴らしに遊んであげることしかできなかった……)ナデナデ
使用人(かける言葉のひとつも思いつかないで……本当に情けない)
ここあ「んぅ…………」Zzz
使用人「あと少しで、お嬢が帰ってきますよ」
使用人(晩御飯はなににしよう……なにかこの子の好きなものでも――)
――トントン
使用人「はい?」
??「怪盗ラパン、参上!」バンッ!
使用人「っ!?」ジャキ
??「きゃっ!」
使用人「何者だ?」
??「使用人さん、こんばんは」スッ
千夜「わたしです」ニコッ
使用人「!」
使用人「お嬢のお友達の……失礼いたしました」スッ
千夜「ここあちゃんを寝かしつけていたんですか?」
使用人「いえ、遊んでいたら寝てしまわれて……お嬢が帰ってこられたら起こそうかと」
千夜「でしたら、少しお手伝いしていただけますか?」
使用人「はっ!あっしにできることでしたら……」
千夜「ありがとうございます♪」テ ギュッ
使用人「ぁ……//」
千夜「ここあちゃんのことなんですが――」
――――――――――――――――――――――――
――IN 車内――
ここあ「……ん?」
ここあ「ふぁぁ……」プワプワ
千夜「ここあちゃん、おはよう」
ここあ「ふぉぇ……?」
ここあ「ちやちゃん……?」
千夜「お顔拭きましょうか、じっとしててね」スッ
ここあ「んっ……」
千夜「ごめんなさいね、急に。もう少しで着くから」
ここあ「ここ、くるまのなか?」
千夜「ええ、ラビットハウスに向かってるの」
ここあ「ちのちゃんのところ?」
使用人「ちいせぇお嬢、目が覚めましたか」
ここあ「ゆうしゃさん?」
使用人「あと2分で着きます、今のうちにこれを」スッ
ここあ「これ……えぷろん?」
千夜(メイド服……)
千夜「使用人さん、バックミラーを覗いたりしちゃダメですよ」
使用人「心配無用です、あっしはロ〇コンでもペ〇でもありませんので」
千夜「さすがは紳士ですね。それじゃあここあちゃん、一緒に着替えましょうか」シュル
ここあ「ちやちゃんも?」
使用人「っ!?お、お待ちなすって!それはさすがに……!//」
千夜「クスッ、冗談ですよ、驚きました?」ニコッ
使用人「えっ……あ……//」
使用人「っ……//」ポリポリ
千夜「すいません。ここあちゃん、バンザイして」
ここあ「うんっ」
千夜「良い子ね」パサッ
千夜「わざわざありがとうございました」
使用人「いえ、帰りもご一報いただければ……」
千夜「大丈夫ですよ、みんなと一緒ですから」
千夜「用が済みましたら責任を持って送り届けますので」
千夜「ここあちゃん、行きましょうか」
ここあ「ちやちゃん……?」
千夜「?」
ここあ「もしかして、わたしがちのちゃんにわるいことしたの……しってる?」
千夜「悪いこと?」
ここあ「おべんとうのこと……」
千夜「……そうね」
千夜「お弁当のことは聞いたけど、悪いことなんて一言も聞いてないわ」
ここあ「えっ」
千夜「リゼちゃんがここあちゃんシックになる前に急ぎましょう」
ここあ「あっ……」
ガチャッ――
千夜「お邪魔します」
シャロ「千夜、早かったわね」
千夜「使用人さんがわざわざ送ってくれたの」
チノ「千夜さん、こんばんは。ありがとうございます」
ここあ「ちのちゃん……」
チノ「ここあさん、早朝ぶりですね」
ここあ「……ごめんなさい」
チノ「…………」
ここあ「ちのちゃんとつくったおべんとう……りぜちゃんに、とどけられなかったの……」
ここあ「ちのちゃん……ごめんね……」
チノ「………………」
ここあ「…………」グスッ
チノ「ここあさん……間違っていますよ」
チノ「届けられなかったんじゃなくて――まだ届けていないだけです」
ここあ「えっ……?」
チノ「どうしてここあさんにここに来てもらったか、分かりますか?」
チノ「わたしたちが集まっているのは、ここあさんと一緒に、もう一度お弁当を作るためです」
ここあ「!」
千夜「今頃使用人さんやメイドさんが、リゼちゃんのことを引き留めてくれてるわ」
シャロ「ここあ、あんまり時間が無いから急ぎましょう」
ここあ「……!」
チノ「ここあさん……リゼさんのために、もう一度作りましょう」スッ
千夜シャロ「………………」
チノ「…………」
ここあ「………………」
ここあ「……」ギュッ
ここあ「うん……ちやちゃん、しゃろちゃん……ちのちゃん」
ここあ「――おねがいしますっ」グッ
チノ「……!」
千夜シャロ「」クスッ
チノ「はい」
チノ「お姉ちゃんに、任せてください」
――
――――
――――――
―――――――――――――――――――――――――
――――――
――――
――
シャロ「ここあ、忘れ物ない?」
ここあ「うん!」
チノ「リゼさんのところへ帰りましょう、みんなで一緒に届ければ安全です」
千夜「きっと今頃お腹を空かして、ここあちゃんの帰りを待っていると思うわ」
シャロ(思い切り荒れ狂ってそうと思うのはわたしだけ……?)
ここあ「りぜちゃん……まっててね。こんどこそ、このおべんとう――」
ガンガン!!
全「!」
チノ「……?」
リゼ「わたしだ!ここあぁ!!」ガンガン
シャロ「リゼ先輩!?」
千夜「さすがに限界だったみたいね、リゼちゃん」
チノ「待ってください、いま開けますから」
ガチャッ――バタン!
リゼ「ここあっ!」ギュッ
ここあ「きゃっ……」
リゼ「どこにいってたんだ!寂しかったぞぉ!」スリスリ
リゼ「朝起きてもいないし、家に帰ってもまだいないし……!」
リゼ「やっと会えたな……!ここあぁ!」ギュッ
ここあ「うにゅ……りぜちゃん、くるしい…」
シャロ「リゼ先輩、落ち着いてください」
千夜「ここあちゃんが痛がってるわ、りぜちゃん、どうどう」
リゼ「ふぅ……やっと落ち着いた」
リゼ「んっ、良く見たら千夜とシャロもいたのか。みんな集まってどうしたんだ?」
チノ「……ここあさん」
ここあ「……」スッ
リゼ「?」
ここあ「りぜちゃん。ばんごはん、まだたべてない?」
リゼ「ああ。それは……」
ここあ「これ……りぜちゃんにつくったの、おべんとう」
リゼ「!」
ここあ「たまごやきと、ういんなーと、しょうがやきと」
リゼ「ここあが……?」
ここあ「みんなにてつだってもらったけど、でも、がんばったよ」
ここあ「りぜちゃん、たべて?」
リゼ「もらって、いいのか?」
ここあ「りぜちゃんのためにつくったから」
リゼ「……!」
リゼ「……」カパッ
リゼ「綺麗な色合いだ……おかずもバランスよく入ってる」
リゼ「……いただきます」
リゼ「んっ……」モグモグ
千夜シャロ「………………」
チノ「…………」
ここあ「どう……?」
リゼ「……おいしい」
リゼ「食べてきた料理の中で、一番おいしいぞ……」
ここあ「……!」
千夜シャロ「」グッ
リゼ「いつのまにか料理もできるようになってたんだな……わたしが思っていたよりも、ずっとずっと成長してる」
リゼ「ここあ……ありがとう」ニコッ
ここあ「うんっ!//」
チノ「良かったですね、ここあさん」クスッ
ここあ「ちのちゃん!」ギュッ
チノ「!」
ここあ「えへへ……ちゃんととどけられたよ//」ニヘラ
ここあ「ちやちゃん、しゃろちゃん、ちのちゃん……みんなのおかげ……//」
ここあ「ちのちゃん……ありがとう//」ニヘラ
チノ「いいんですよ」ニコッ
チノ「わたしとここあさんは――姉妹なんですから」ギュッ
ここあ「ふふっ……//」
リゼ「ありがとうみんな……迷惑かけたな」
千夜「迷惑なんて全然」
シャロ「ここあが良い子だから、してあげたいから、してるだけです」
リゼ「……そうか」クスッ
ここあ「りぜちゃん、もっとたべて!」
リゼ「全部食べていいのか?」
ここあ「うん!わたしがたべさせてあげる!」
リゼ「っ!?//」
ここあ「はいりぜちゃん、あーん♪」
リゼ「こ、ここあ、みんながいるから……その……//」
ここあ「ふぉぇ?どうして?ふたりのときはいつもたべさせあいっこしてるのに」
シャロ「」
チノ「…………」
千夜「リゼちゃん……」
リゼ「ち、違うぞ!誤解だっ!時々冗談でやりあってるだけだ!信じろっ!//」
シャロ「説得力が無いです先輩……」シラー
チノ「同感です……」
千夜「リゼちゃん、とってもほほえま~だけど、親バカもほどほどにしましょうね」ニコニコ
リゼ「くっ……うぅ……//」プシュ~
ここあ「りぜちゃん」
リゼ「!」
ここあ「あーんして?」
リゼ「ここあ……」
ここあ「」ニコッ
リゼ「!……ふへへ……//」ニヘラ
リゼ「あーん//」
ここあ「どう?おいしい?」
リゼ「ああ、おいしいぞぉここあ!」ギュッ
ここあ「わわっ……おべんとうこぼれちゃう」
リゼ「可愛いから仕方ないんだ!」スリスリ
ここあ「うにゅぅ……//」
千夜「リゼちゃん、続きはおうちに帰ってからしましょうね」
シャロ「お昼のお弁当の件、一応リゼ先輩に言ったほうがいいかしら?」ヒソッ
チノ「伝えるとしても明日ですね……」チラッ
リゼ「千夜、離せ!今日一日会えなかった分ここあをモフモフするんだ!」ジタバタ
千夜「リゼちゃんが満足するまで待ってたら夜が明けるわ、就寝まで我慢しましょうね」
ここあ「りぜちゃん。たまごやきだよ~あーん」スッ
リゼ「」ピタッ
リゼ「あーん//」ニヘラ
○お弁当サプライズ――『成功』
――――――
――――
――
――深夜 12時 天々座家 客室――
リゼ「そうか……お昼休みに」
使用人「申し訳ないです……事前にお嬢に裏でお伝えしていれば」
リゼ「ここあのサプライズしたいって気持ちを汲んでくれたんだろう?お前のせいじゃない、わたしのミスだ」
リゼ「教えてくれてありがとう、感謝するぞ」ガタッ
リゼ「今日一日、ご苦労だったな。ゆっくり休んでくれ」
使用人「あの、お嬢。どうかこのことはあの子には秘密に……」
リゼ「分かってるよ。ここあのこと、裏切りたくないもんな」
使用人「すいません……」ペコリ
リゼ「こっちこそ、いつもすまないな、わたしもここあも、迷惑かけっぱなしだ」
使用人「いえそんな……お気になさらず」
使用人「してあげたいから、するだけです」
リゼ「……」クスッ
使用人「どうかされました?」
リゼ「いや、何でもない」
リゼ「……きっとみんな、そうなんだよな」ボソッ
使用人「えっ?」
リゼ「わたしはつくづく幸せ者だ」
使用人「お嬢?」
リゼ「何でもない、おやすみ」
使用人「はぁ……おやすみなさいませ」
リゼ「あっ、そうだ」
使用人「?」
リゼ「聞いたぞ、千夜をわざわざラビットハウスまで車で送ってあげたらしいな」
使用人「ええ、小さいお嬢が寝てらしたので」
リゼ「…………」ジー
使用人「それがなにか?」
リゼ「前から……千夜には妙に優しくないか?」
使用人「え……あっ、いや、そんなことは……」
リゼ「ラビットハウスまで歩いて15分程度だぞ」
使用人「急いでいらしたので……それに、あの子では小さいお嬢をおんぶして歩くのはさすがに辛いかと思いまして」
リゼ「個人的な感情は無いだろうな?」
使用人「冗談言わないでください……」
リゼ「……しょうがない、信じてやるか」
使用人「信じるも何も」
リゼ「これ、千夜からお前に渡してくれと預かった」スッ
使用人「羊羹、ですか?」
リゼ「今夜のお礼だそうだ」
使用人「ご丁寧に……律儀なお方ですね」
使用人「…………」クスッ
リゼ「やっぱりここあよりも千夜か!?」
使用人「ですからそういうのじゃ……!ほら、明日も学校ですし早くお休みください」
リゼ「明日の晩御飯はわたしとここあが作るから、メイドにも言っておいてくれ」
使用人「承知しました。おやすみなさい」
――バタン
使用人「ふぅ……」ストン
使用人(今日も帰れそうにないな……また宿直室か)
使用人「…………」
使用人(羊羹……)スッ
パカッ
使用人「――!」
『いつもお疲れ様です。甘いものでも食べて、たまにはゆっくり休んでくださいね』
使用人「………………//」
使用人「心遣い、感謝します……」フッ
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end.